経費の主な勘定科目20選|正しく仕訳をするための注意点や間違えないポイントも解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-10-16
経費は正しく仕訳をすることで、財務状況が把握しやすくなり、経営判断の指標として役立ちます。
正しく仕訳をするには、第三者でもわかりやすい勘定科目設定や、仕訳に関するルールの社内周知を行い、適切に勘定科目へ分類できる環境を整えておくことが重要です。
この記事では、仕訳で使用する勘定科目や正しく仕訳するための注意点、間違えないポイントを解説します。
勘定科目にしたがって経費を仕訳する理由
勘定科目にしたがって経費を仕訳する理由は、主に以下の3つです。
- 取引内容の正確な記録
- 経営状況の判断指標
- 財務状況の把握
それぞれ解説します。
取引内容の正確な記録
1つ目の理由は、経費が何に使われたかを正確な記録として残すことができるからです。取引内容を具体的に把握できるようになれば、税金の計算を適切に行えるようになります。また、どれだけの経費が使われているか、利用額を勘定科目ごとに細かくチェックできるため、無駄な経費の削減が可能です。
経営状況の判断指標
2つ目の理由は、適切な経営判断を行えるようになるからです。勘定科目を適切に分類することによって、企業の財務状況を正しく把握できるため、その時々で最適なビジネス上の意思決定を下せます。
財務状況の把握
3つ目の理由は、財務状況を明瞭に把握できるようになるからです。勘定科目にしたがって仕訳することで費用を体系的に分類できるようになり、財務の明瞭性が向上します。たとえば、交通費や旅費交通費など似たような項目を異なる勘定科目として仕訳すれば、財務報告の精度を高められるでしょう。
経費の主な勘定科目20選
勘定科目は法律などで明確に定義されておらず、会計ソフトによっても異なります。細かく分類すると200以上の勘定科目があるといわれていますが、よく使う科目は限定的です。ここでは、経費の主な勘定科目の内容と具体例をまとめています。
1.租税公課
租税公課とは、税金や各公共団体に納める公的な目的で支払った経費を指します。租税には、印紙税・自動車税・固定資産税・不動産取得税、公課には商工会や町内会の会費・印鑑証明書・住民票の発行手数料などの例があります。
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2.地代家賃
オフィスが入っている建物や駐車場などの賃料は、地代家賃として仕訳します。家賃だけでなく、オフィスの共益費や管理費、20万円未満の礼金や更新料も地代家賃として計上することが可能です。自宅兼事務所の場合は、事業用と私用の割合を算出したうえで、事業用分だけを経費とします。
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3.給与賃金
給与賃金は従業員へ支払った報酬です。労働の対価である給与のほかに、各種手当も給与賃金に含まれます。具体例としては、基本給・ボーナス・退職金・役職手当・住宅手当などが挙げられます。
4.水道光熱費
水道光熱費は、水道・ガス・電気代などを計上する勘定科目です。企業によっては、水道料金・ガス料金などに分けて仕訳するところもあります。細かく分類することで、コストがかかっている項目を把握しやすくなりますが、増やしすぎると管理の負担が大きくなります。
5.通信費
事業に使った通信に関する経費は、通信費として仕訳します。通話料・FAX代・インターネット費・郵送代・宅配代・テレビの受信料などが通信費に該当します。個人の携帯電話を経費として計上したい場合は、事業用と私用で按分する必要があります。
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6.福利厚生費
福利厚生費とは、給与や賞与とは別に、会社が社員のために負担する費用です。福利厚生には、法律で定められている「法定福利費」と会社が独自に設定している「法定外福利厚生」の2つがあります。一般的に、経費精算における福利厚生費を指すのは後者の「法定外福利厚生」です。
具体例としては、社員の健康診断費用や慰安旅行費・社宅賃料・保養所の維持管理費・新年会や忘年会・レクリエーション費用・慶弔見舞金などがあります。福利厚生費として計上するためには、すべての従業員が利用できる制度であり、支給額も常識の範囲内に設定することが重要です。
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7.接待交際費
接待交際費は、取引先との関係を築くために使用された経費です。接待交際費の代表例としては、飲食代・取引先関係者の慶弔費・贈答品・接待ゴルフなどが挙げられます。
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8.交通費
交通費とは、通常の勤務地の周辺を移動するためにかかる費用です。たとえば、顧客先へ訪問する際にかかる電車賃やバス代などが交通費に該当します。
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9.旅費交通費
旅費交通費とは出張にかかる交通費や経費などのことです。旅費交通費には移動にかかる交通費や宿泊費に加え、出張手当(日当)も含まれます。
10.広告宣伝費
広告宣伝費は、商品やサービスなどの宣伝目的で使われた経費を指します。たとえば、求人サイトの掲載費用・インターネット広告・テレビCMなどが広告宣伝費の項目です。試供品の費用やイベント出店料・チラシやパンフレットの制作費用・ホームページ制作費用も広告宣伝費として計上できます。
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11.販売促進費
販売促進費とは、製品やサービスの売上拡大・販売促進のために使用する経費を指します。具体的には、商品を訴求するために店頭に貼り出すポスターやPOPなどの作成費用、キャンペーンにかかる諸費用、無料サンプルの制作費用、販売手数料などです。
12.消耗品費
取得価格が10万円未満、もしくは耐用年数が1年未満の物品の購入に使われた経費は、消耗品費となります。コピー紙・文房具・名刺・USBメモリやSDカード・洗剤といった消費サイクルが短いオフィス用品は、消耗品費に含まれます。
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13.雑費
雑費とは、ほかの勘定科目に分けにくい費用や、一時的な少額の費用に用いられる勘定科目です。たとえば、ごみの処理費用・クリーニング代・少額の手数料などは、雑費として処理できます。
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14.荷造運賃
荷造運賃は、自社の商品や製品の出荷にかかわる包装と輸送に関連する包括的な費用です。たとえば、商品発送の際の梱包に必要な段ボールやガムテープ・緩衝材などの資材を購入する費用、運送会社や郵便局に支払う発送費用などが該当します。
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15.修繕費
修繕費は、固定資産のメンテナンスや修繕などに使用される経費です。固定資産には、オフィス・社用車・専門機材などがあり、これらのメンテナンスコストが発生した場合は、修繕費として計上します。
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16.新聞図書費
事業に関する情報が得られる媒体を購入したときの経費は、新聞図書費となります。新聞購読料をはじめ、情報誌や雑誌の購入費が該当します。新聞図書という名前が付いていますが、対象は紙媒体に限りません。情報収集を目的にしているのであれば、データベースの利用料やメールマガジン購読料・有料サイト購読料なども新聞図書費に含まれます。
17.減価償却費
減価償却費とは、償却資産の購入費用を耐用年数に応じて計上する経費です。償却資産としては、パソコンやオフィス家具・ソフトウェアなどが挙げられます。耐用年数は資産によって異なるため、国税庁の耐用年数表などで確認が必要です。
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18.諸会費
業務に関係する団体や同業組合などへ支払う会費は、諸会費として計上します。主に商店会・町内会など地域の自治会、医師会・税理士会などの職能団体、商工会議所など業界団体への会費が該当します。
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また、所属している業界団体へ協賛金を支払った場合も諸会費として計上可能です。
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19.仮払金
仮払金とは、支出の段階では用途や金額が決まっておらず、概算で一時的に支払う経費のことです。たとえば、社員が海外出張する際、交通費や宿泊費が高額になる可能性がある場合、すべての費用を社員が立て替えるのは困難です。
そのような際に、あらかじめ概算の費用を社員に渡しておき、後日用途や金額が確定した段階で相殺処理して精算します。このときの概算費用として計上する勘定科目が、仮払金です。
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20.売掛金
売掛金とは、商品やサービスの代金をあとから受け取る場合に計上しておく勘定科目です。いわゆる「ツケ」や仮取引を指すもので、手形などの証書が発行されるわけではなく信用取引となります。取引が発生したときではなく、商品の引き渡しが行われた時点で売掛金として計上するのが一般的です。
迷いがちな経費の勘定科目を判断するポイント
勘定科目には似ているものも多いため、どのように処理すべきか迷ってしまうことがあります。ここでは、迷いがちな経費の勘定科目を判断するポイントを解説します。
福利厚生費と似ている勘定科目
福利厚生費と似ている勘定項目として、接待交際費と会議費があります。どれも飲食代がかかわってくるため混合しやすいですが、下記を参考に振り分けましょう。福利厚生費・接待交際費・会議費は、支出の目的や金額によって区別できます。
福利厚生費 | 従業員全員が対象で、現物支給ではないとき |
接待交際費 | 接待にかかわる費用で、1人当たりの金額が5,000円以上のとき |
会議費 | 会議のための経費で、1人当たりの金額が5,000円以下のとき |
交通費と似ている勘定科目
交通費と似ている勘定科目として旅費交通費があります。どちらも移動の費用を計上するときに使いますが、下記の違いがあります。
交通費 | 通常の勤務地に出社したり、勤務地の近辺で移動したりするとき |
旅費交通費 | 遠方に出張するとき |
移動の経費は「交通費」の勘定科目は使わず、「旅費交通費」だけで処理している企業も少なくありません。企業によっては旅費規定を定めており、ホテルの宿泊費・日当・食事代も旅費交通費に含むケースがあります。
「広告宣伝費」と「販売促進費」の違い
販売促進費とは、会社の商品やサービスの販売業務をスムーズに進めるための費用です。
広告宣伝費と販売促進費は、どちらも損益計算書の「販売費及び一般管理費」に分類されています。
それぞれの違いは費用を支払う目的です。販売促進費は商品やサービスの販売促進、広告宣伝費は広告や宣伝活動を目的として支出を行います。
「雑費」と「消耗品費」の違い
雑費と最も混同されがちな勘定科目として「消耗品費」があります。そもそも雑費と消耗品費はそれぞれ税法上の厳密な定義が存在せず、明確な違いをつけにくいため、会計処理における判断基準がしばしば不透明になりがちです。
両者の主な違いは、「消耗品費のほうが雑費よりも金額が大きな経費に使われる」「通常は消耗品のほうが頻繁に使用され、業務においてより重要な役割を果たす傾向がある」という2点です。
考え方として、消耗品費は、「使用寿命が1年未満または価格が10万円未満の消耗品や物品の購入にかかる費用」を指す一方、雑費は「他の具体的な勘定科目に分類が難しい、通常は小額で一時的な支出」といえます。この点を押さえておけば、より明確な使い分けが可能です。
仮払金と似ている勘定科目
仮払金と混同されがちな勘定科目に、「前払金」と「前払費用」があります。
「前払金」とは、商品の引き渡し前に代金の一部もしくは全額を支払ったときに使用する勘定科目です。たとえば、外注加工業で作業依頼をする際に、納品前や作業前に「手付金」として支払う経費などが該当します。
「前払費用」とは、継続的にサービスを受ける際に、まだ受けていないサービスに対して支払う経費を指します。具体的には、生命保険や火災保険などの保険料、翌月以降の前払家賃、年間契約した際のサブスクリプション利用料金などが該当します。
前払金 | 商品の引き渡し前に代金を支払ったとき |
前払費用 | まだ受けていないサービスの費用を支払ったとき |
売掛金と似ている勘定科目
売掛金にも「未収収益」「未収入金」という似た勘定項目があります。
未収収益は、一定の契約にしたがい継続的にサービス提供を行う際、すでに提供したサービスで未回収の代金を計上する際に使用する勘定科目です。定期預金の受取利息や家賃の未収金などが挙げられます。
一方、未収入金は、固定資産の売却や有価証券の譲渡など、営業活動以外の取引における未回収金を計上する際に用いられる勘定科目です。
未収収益 | 継続的な取引における未回収の収益を計上するとき |
未収入金 | 非継続的な取引で生じる未回収の収益を計上するとき |
経費の勘定科目を選ぶ際の注意点
勘定科目には厳格な決まりはなく、事業や業種に合わせて自由に設定することができます。その分、勘定科目の科目名や科目区分、運用ルールの設定には注意が必要です。
勘定科目はわかりやすい名前を設定する
会計ソフトに適切な勘定科目が見つからない場合、雑費にできなければ新たに勘定科目を設定することができます。新しく勘定科目を追加する場合は、誰が見てもわかる名前にして、専門用語や業界用語は避けましょう。また、勘定科目が増えすぎると会計処理が複雑化する恐れがあるため、社内で必要性を検討したうえで判断することが大切です。
勘定科目のルールを企業内で統一する
勘定科目設定において、企業内でルールを統一し、一貫性を維持することが重要です。特定の費用に対して一度勘定科目を定めたら、変えずに同じ勘定科目を使い続けましょう。仕訳が作業する人によって異なると、会計情報の信頼性が低下するリスクにつながります。
万が一、勘定科目設定のルールが決まっていない会社は、「過去の仕訳を参考にマニュアルを作成する」「仕訳を自動化できるデジタルツールを導入する」など、対策を講じることが必要です。
勘定科目がわからないときや間違えたときは?
勘定科目がわからない場合は、まずは社内ルールの確認や会計ソフトのヘルプ機能を活用しましょう。経費がどのような用途で使われたかを考えたり、過去に同じ内容でどの勘定科目を使ったか確認したりすることも有効です。
万が一、選んだ勘定科目が間違っていた場合でも、少額かつ同じ「経費科目」のなかであればそれほど大きな問題にはなりません。なぜなら、勘定科目は経費の内訳のようなものであり、「経費科目」の計算結果には影響しないからです。ただし、税金の計算に影響がある「交際費」などの勘定科目には注意が必要です。また、税金の計算に影響はなくても、間違った額が大きいと経営判断や財務状況の把握が正確にできなくなるため、気をつけましょう。