福利厚生費とは?経費にするための条件や費用の具体例・仕訳例を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-02-14
- この記事の3つのポイント
- 福利厚生費には法定福利費と、企業が独自に設定する法定外福利費がある
- 法定外福利費を経費とするには、機会の平等性や金額の妥当性など、一定条件を満たす必要がある
- 福利厚生費の種類は多岐にわたるが、現金支給や高額すぎる支出は認められていない
福利厚生費は、従業員の働きやすさを支える重要な費用です。しかし、その内訳や経費計上の条件は複雑で、多岐にわたります。法定福利費と法定外福利費の違いや、認められる事例を知れば会社の経費処理をよりスムーズに進められるでしょう。
本記事では、福利厚生費の基本をわかりやすく解説します。経理担当者だけでなく、企業経営者にも参考になる内容です。ぜひ最後までお読みください。
福利厚生費とは?経費にするための条件や費用の具体例・仕訳例を解説
従業員のために支出する「福利厚生費」とは
福利厚生費とは、給与や賞与とは別に、企業が従業員のために負担する費用のことです。
福利厚生費には、法律で義務付けられている「法定福利費」と、企業が独自に設けている「法定外福利費」の2種類があります。一般的に経費精算において福利厚生費として扱われるのは後者の「法定外福利費」です。
「法定福利費」と「法定外福利費」の違いについて詳しく解説します。
法定福利費とは
法定福利費とは、法律によって企業が従業員に提供しなければいけないと定められている保険の費用です。具体的には、以下の費用が挙げられます。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
これらの費用は法律によって企業負担が義務付けられており、法定福利費として区別されます。
法定福利費の計算方法や法定外福利費との違いについては、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事:法定福利費とは?計算方法や仕訳例、福利厚生費との違いなど解説
法定外福利費とは
法定外福利費とは、企業が独自に設ける福利厚生制度のことです。法律で定められていないため、内容は企業ごとに大きく異なります。主な例として、以下のようなものがあります。
- 健康診断の費用補助
- 通勤手当の支給
- 社員旅行の実施
- 住宅手当や食事補助の提供
- 慶弔見舞金の支給
さらに、休憩室や給湯室にある従業員のためのコーヒーやお茶なども法定外福利費に該当します。
福利厚生費を経費計上するための条件
福利厚生費(法定外福利費)は、どのような内容でも経費として計上できるわけではありません。経費として認められるためには機会の平等性と金額の妥当性が求められ、これらの条件を満たさない場合は損金算入ができない可能性があります。
そのため、福利厚生費として計上する際は内容や金額が適切かどうかを十分に確認することが重要です。詳しい条件について、以下で解説します。
機会の平等性
まずは、従業員全員が平等に福利厚生を受けられることです。従業員全員を対象としており、一部の従業員だけが機会を得られるものではないことが条件となります。
たとえば健康診断費用を助成するという場合、一部の役職だけに助成を与えるという場合には福利厚生費としては認められません。
金額の妥当性
支出する金額の妥当性も求められます。社会通念上妥当な金額でなければ、福利厚生費としては認められません。
たとえば新年会や忘年会などに100万円以上支出したり開催頻度が多かったりする、数名程度で2泊3日の社員旅行に何百万円も支出する場合には、経費として計上できないため注意が必要です。
現金・金券の支給ではない
現金や金券の支給は福利厚生費として計上できないため、注意してください。
たとえば健康診断の場合、企業から医療機関に支払う費用は福利厚生費です。一方、従業員に対して健康診断費用として事前に現金を支給した場合は、福利厚生費になりません。
現金や金券を支給すると、それは賃金とみなされるため課税の対象になります。
福利厚生費の例
ここでは、代表的な福利厚生の例を解説します。
通勤手当
通勤手当とは、公共交通機関や自家用車などを利用して通勤する際にかかる費用に対する手当です。
税法上、一定の限度額までは福利厚生費として認められます。バスや電車などの公共交通機関を利用する場合の限度額は15万円ですが、経済的かつ合理的な経路でなければいけません。自家用車の場合は、2km以上の場合は距離に応じて限度額が決まっています。
参考:国税庁「通勤手当の非課税限度額の引上げについて」
健康診断の費用
従業員全員を対象とする一般的な健康診断であれば、福利厚生費に該当します。
すべての従業員が健康診断を受診できることが条件ですが、年齢によって必要な診断内容を指定するのは問題ありません。また労働安全衛生法によって、企業は従業員に健康診断を受けさせなければいけないと定められています。
住宅手当
住宅手当とは、従業員が個人で賃貸した住宅の家賃の一部を企業が負担するものです。
会社が賃貸物件を借り上げておき、従業員に社宅として貸し出すケースもあります。社宅として従業員に貸し出す場合に非課税対象とするには、従業員が賃貸料相当額の50%以上を負担していることが条件となるため注意しましょう。
慶弔見舞金
慶弔見舞金とは、結婚や出産などの慶事、葬式などの弔事の際に、一定の基準に従って支払う見舞金です。たとえば、以下のようなものが含まれます。
- 結婚祝い金
- 出産祝金
- 死亡慰霊金
- 災害見舞金
- 傷病見舞金
慶弔見舞金については上限額などは決められていません。そのため常識の範囲内であれば認められるでしょう。
慰安旅行費
慰安旅行費とは、いわゆる社員旅行に使う費用のことです。慰安旅行費が福利厚生費として認められるには、一定の要件を満たす必要があります。
福利厚生費とみなされる要件は以下のとおりです。
- 旅行の期間が4泊5日以内
- 旅行に参加した人数が全体の従業員数の50%以上
参考:国税庁「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」
社員旅行の費用を経費に計上できる条件については、下記の記事で詳しく解説しています。ケース別の上限金額を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
関連記事:社員旅行の費用を経費にできる条件は?慰安・研修旅行などケース別の上限金額を解説
新年会・忘年会・親睦会の費用
新年会や忘年会、親睦会などの費用も福利厚生費として認められます。
ただし、従業員全員が対象である必要があります。全従業員に参加資格があれば、やむを得ない事情で欠席する人がいても問題はありません。また、会社の負担額が常識的な金額であることや会社の負担額が一律であることも条件です。
食事の補助
食事の補助費用も、以下の条件を満たせば福利厚生費にできます。
- 従業員が食事の価格の半分以上を負担
- 企業が負担する食事代は従業員一人あたり月3,500円以下(税抜)
例外として、深夜などで食事の提供が難しい場合は1食300円(税抜)までの現金支給でも非課税として認められます。
参考:国税庁「No.2594 食事を支給したとき」
福利厚生費にできない費用の例
福利厚生費として認められない費用の例は、以下のとおりです。
福利厚生費にできない費用の例 | 内容や理由 |
特定の社員だけが受け取る補助 | 一部の社員だけが対象となる住宅手当や食事補助など |
高額すぎる費用 | 一般的ではない検査やオプションを含む人間ドックなど |
現金や金券の支給 | 賃金扱いとなるため |
無利息や低利息での貸付金の利息 | 一般的な無利息や低利息での貸付は、利息分は給与扱いとなるため |
条件を満たさない場合は課税対象や別の経費区分になるため、福利厚生費として計上する費用には注意が必要です。
福利厚生費の仕訳例
福利厚生費の仕訳例をいくつか紹介します。
たとえば健康診断費用10,000円を現金で支払った場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
福利厚生費 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
社員が全員参加する新年会を開催し、30万円の費用をクレジットカードで支払った場合は、まず以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
福利厚生費 | 300,000円 | 未払金 | 300,000円 |
クレジットカードの引き落とし後に、以下のとおり仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
未払金 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
これらは一般的な仕訳例ですが、具体的な処理は状況や金額や内容により異なる場合があります。税務上の要件を満たしているかも確認が必要です。
個人事業主は福利厚生費を計上できる?
個人事業主でも、条件を満たせば福利厚生費を計上できます。ただし、その適用範囲には注意が必要です。
たとえば個人事業主が一人で働いている場合や家族のみを雇用している場合は、福利厚生費として計上することはできません。個人事業主自身や家族に支給される費用は、従業員のための経費として認められないためです。
一方、家族以外の従業員を雇用している場合は福利厚生費を計上できます。具体的には、健康診断や食事補助、社員旅行の費用などが該当します。ただし、支出内容が従業員全員に公平に提供され、金額が妥当であることが条件です。
福利厚生費に関してのよくある質問
ここでは、福利厚生に関してよくある質問とその答えを解説します。
福利厚生を充実させるメリットは?
福利厚生を充実させるメリットは、優秀な人材を確保しやすくなる点が挙げられます。
また、福利厚生を充実させることで従業員のモチベーション向上につながり、従業員の心身の健康を保ちやすくなることもメリットといえるでしょう。
福利厚生費と接待交際費の違いは?
接待交際費は、取引先との関係を築くために使用される経費です。飲食費の場合、基本的に従業員に提供された際は福利厚生費として処理します。一方、取引先などの社外の人に提供された場合には接待交際費として処理するのが基本です。
福利厚生費と給与の違いは?
福利厚生費と給与の大きな違いは、課税対象か否かです。どちらの場合でも損金算入はできますが、給与の場合には税金がかかります。福利厚生費は経費として処理できるため、非課税です。
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福利厚生費は従業員の働きやすい環境を整え、モチベーションを向上させるための重要な経費です。法定福利費と法定外福利費を理解し、従業員全員に平等に機会を提供しましょう。また、社会通念上妥当な金額で支出するよう注意してください。
福利厚生費の管理や仕訳は正確な処理が求められるため、手作業では煩雑になりがちです。効率的に経理業務を進めるためには、経費管理のツールの活用をおすすめします。
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また、法定福利費や法定外福利費に対応した仕訳も簡単に行えるため、税務処理もスムーズに進められます。福利厚生費の適切な運用と経理業務の効率化を目指すなら、「バクラク経費精算」をぜひご検討ください。