前受金とは?売上計上のタイミングや仕訳例、注意点を解説
- 最終更新日:2026-06-04
- この記事の3つのポイント
- 前受金は、商品の引き渡し・役務提供前に代金の一部(全額)を受け取った際に使用する勘定科目
- 前受金処理は、計上時期や消費税対応、流動・固定負債区分、年度またぎの処理に注意して行う
- 類似の勘定科目として、前受収益・仮受金・預り金・売掛金が挙げられる
商品やサービスを提供する前に取引先から代金を受け取った場合は「売上」として計上せず「前受金」として扱います。
前受金処理には複数のポイントがあり、計上のタイミングや会計上の区分に注意が必要です。
本記事では、前受金の意味や仕訳例、計上時の注意点を解説します。前受金と混同しやすい勘定科目や、前受金として扱うかどうかのチェックポイントも紹介していますので、お役立てください。
前受金とは?売上計上のタイミングや仕訳例、注意点を解説
前受金とは?売上計上するタイミングは?
前受金とは、商品を引き渡す前もしくはサービスを提供する前に、代金の一部または全額を受け取った際に使う勘定科目です。予約金・手付金・内金などと呼ばれるものが該当します。予約販売や受注生産のスタイルを取る事業でよく用いられる傾向です。
取引先から入金があると「資産」が増えたイメージがありますが、入金時点では商品やサービスを提供する義務がまだ残っているため、会計上は売上ではなく「負債」として処理します。
商品・サービスの提供が行われない場合には、契約内容に応じて返金が必要です。
前受金が売上に切り替わるのは、原則として商品の引き渡しやサービスの提供など、契約における自社側の義務が完了したタイミングです。サブスクリプションによるサービス提供など継続的な提供を行う場合は、契約期間に沿ったタイミングで売上として認識します。
いずれの場合でも、入金後すぐに売上計上とならない点に留意しましょう。
前受金の仕訳例
前受金を計上する際は、具体的にどのように仕訳すればよいのでしょうか。前受金の仕訳例をケース別に解説します。
代金の全額を前払いで受け取るケース
50,000円の商品を受注し、商品やサービスの代金の全額を前受金で受領した場合の仕訳方法は、以下のとおりです。前述したように前受金は負債として扱うため、代金受領時は貸方に記載しましょう。
タイミング | 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|---|
代金受領時 | 普通預金 | 50,000円 | 前受金 | 50,000円 |
商品提供後 | 前受金 | 50,000円 | 売上 | 50,000円 |
商品・サービスを提供したら、前受金を借方へ振り替えて、売上として確定させます。
先に代金を一部受け取ったケース
商品やサービスの代金の一部を前受金で受領した場合の仕訳方法を見てみましょう。
50,000円の商品代金のうち10,000円を先に受領し、商品提供後に残金を受け取った場合は「売掛金」の勘定科目も使って以下のように処理します。
タイミング | 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|---|
代金受領時 (一部入金) | 普通預金 | 10,000円 | 前受金 | 10,000円 |
商品提供後 (残金は後日入金) | 前受金 | 10,000円 | 売上 | 50,000円 |
売掛金 | 40,000円 | |||
前受金で返金した場合の仕訳は?
前受金の受領後に商品提供をキャンセルした場合は、前受金の返金処理が必要です。
仕訳上は、前受金受領時と反対の処理をすれば完了です。キャンセル・返金理由などを摘要欄に記載しておくと、確認時に役立ちます。
50,000円の商品について代金を受領したものの、返金する際の仕訳例を見てみましょう。
タイミング | 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|---|
代金受領時 | 普通預金 | 50,000円 | 前受金 | 50,000円 |
返金時 | 前受金 | 50,000円 | 普通預金 | 50,000円 |
前受金を受け取った際の請求書の記載項目や書き方については、別の記事で解説していますので、併せてご確認ください。
関連記事:前払いで代金を受け取ったときの請求書の書き方とは?記載項目や注意点を解説
前受金処理のポイントと注意点
前受金を処理する際には、以下に挙げる4つのポイントを把握しておくとスムーズに進められます。
適切なタイミングで売上計上する
前受金はそのままにせずに、適切なタイミングで売上に振り替える必要があります。
具体的には、商品を提供したときです。商品やサービスの提供前に代金を受け取っても、すぐには売上として処理できないため、注意しましょう。
代金を受け取った事実を記録しておくために、先に前受金として処理すると捉えると、イメージしやすいでしょう。
受領時点では消費税の対象とならないため注意する
前受金の受領時点では、消費税の課税対象にはなりません。
消費税とは、原則として商品やサービスが提供される時点で課される税金です。前受金は商品などを提供する前に受け取る代金であり、代金受領時には商品が提供されていないため、消費税として認識しません。
税抜経理で先に受け取った代金に消費税が含まれている場合は、前受金で入金分のすべてを計上し、商品提供後に「売上」及び「仮受消費税」として仕訳しましょう。
消費税は課税期間ごとに課税対象の売上・仕入を集計し、納税額を算出するため、決算時に計上した仮受消費税と仮払消費税を相殺処理します。消費税率が異なるものを取り扱っている場合や、課税対象にならない取引を行った場合は、個別に計算する必要があります。
流動負債・固定負債か判断する
貸借対照表上、負債は「流動負債」と「固定負債」に区分されます。一般的には、事業年度末日の翌日から1年以内に履行または決済されるものは「流動負債」、1年を超えるものは「固定負債」として扱われます。
一般的に、一般的に、前受金は流動負債に該当します。前受金は「将来、商品を引き渡したり役務を提供したりする義務がある状態」と考えられるためです。また、営業取引から生じる前受金は、通常、正常営業循環基準により流動負債として処理されます。
ただし、取引内容や契約期間によっては、固定負債に分類して処理するケースもあります。商品提供や役務提供の時期によって区分が変わる点に留意しましょう。
年度またぎでの処理に注意する
前受金が決算期や年度をまたぐ場合でも、年度内に売上へ振り替える必要はありません。
商品やサービスの提供が翌期になるなら、期末時点では前受金としてそのまま負債に残し、実際に引き渡しや役務提供が完了した翌期のタイミングで売上計上します。
年度末には、前受金残高の内訳を確認し、商品提供済みの取引が混在していないかを確認することが大切です。
商品提供が済んでいるにもかかわらず、売上への振り替えをせず年度をまたいでしまった場合には納税額が変わってしまいます。申告前なら訂正を行い、申告後であれば修正申告を行いましょう。
前受金と間違えやすい勘定科目
勘定科目にはさまざまな項目があり、前受金と間違えやすい勘定科目もあります。ここでは、前受金と特に混同しやすい勘定科目を解説します。
前受収益
前受収益とは、継続的なサービス提供がある取引に関して、役務提供前の未経過期間における収益を計上する際に用いる勘定科目です。当期収益から前受収益として除外する負債の扱いで、翌期に収益へ振り替えます。
たとえば家賃や受取利息、提供が完了していないサブスクリプション料や保守サービス料、期間の定めがある保険料などが挙げられるでしょう。
仮受金
仮受金とは、前受金と同様にお金を受け取った際に用いられる勘定科目です。ただし、目的が不明確な場合に用いられます。
一方、前受金はどの商品・サービスに対するお金かがはっきりしているのが特徴です。商品などの提供前に受け取る可能性がある点は同じですが、計上目的が明確かどうかに違いがあります。
預り金
預り金とは、一時的に従業員や取引先などからお金を預かった際に使われる勘定科目です。たとえば、税務署に納付する源泉徴収や住民税などを給料から差し引いた場合、預り金に該当します。
前受金は最終的に売上に振り替え可能な負債ですが、預り金は自社から第三者へ支払う必要がある負債であり、手元には残らない性質のものです。
預り金の概要や仕訳例については、以下の記事をご確認ください。
関連記事:勘定科目「預り金」とは?仕訳(貸方・借方)の例と会計処理をわかりやすく解説
売掛金
売掛金とは、商品を提供して後日代金を受け取る際に用いる勘定科目です。たとえば、売却代金や運賃、サービス料、請負代金などの未回収分が売掛金にあたります。
一方、前受金は商品提供の前に代金の一部もしくは全部を受け取るため、計上するタイミングが大きく異なります。
売掛金の具体例や仕訳方法は、以下の記事をお読みください。
前受金かどうかの見分け方
前受金として処理すべきか迷う場合には、以下のポイントを踏まえながら判断しましょう。
資産か負債か考える
まずは、資産科目なのか負債科目なのかを考えましょう。資産科目は権利で、負債科目は義務です。貸借対照表において、借方処理するものは資産、貸方処理するものは負債と捉えるのが基本です。
前受金は、代金を受領してから商品・役務を提供する義務があることから、負債として扱います。
損益との関連性から判断する
将来的に損益に関係してくるかどうかも判断材料の一つです。
前受金は受け取った際には負債として処理しますが、商品やサービスの提供後に売上に振り替えます。つまり「商品やサービスの提供後に売上高に振り替える=収益に影響する」といえる状態です。
収益(売上)に直結する前払い金の受領は、前受金の可能性があると判断できるでしょう。
マトリックス図で整理する
マトリックス図で整理してみるのも有効な方法です。マトリックス図とは、縦軸と横軸を用いて項目を配置し、各要素の関係の有無や関連度合いを表すために使うものです。
資産か負債か、収益か損失かなどの項目を軸としたマトリックス図を作成することで、前受金かどうかの判断に役立ちます。
前受収益や仮受金など、前受金と間違えやすい他の勘定科目についても、マトリックス図に配置することで、各勘定科目の役割を把握しやすくなります。
前受金に関連する帳票
前受金に関連する帳票は複数あるため、代表的な帳票について把握しておきましょう。たとえば、以下が挙げられます。
- 前受金元帳:前受金の発生や売上高への振り替えを取引先ごとに記録する帳簿
- 債権元帳:債権の発生や回収状況を記録する帳簿
- 前受残高一覧表:取引先別の繰越残高や差引残高を記録するための帳簿
- 入金予定一覧表:取引先別の入金に関する情報を記録する帳簿
「バクラク請求書発行」で前受金管理を効率化しよう
前受金は、商品・サービス提供前の代金受領を記録するための勘定科目です。商品の提供後には、売上に振り替えるのが基本のルールです。
ただし、事前に受領した代金のすべてが前受金に当てはまるとも限らないため、取引状況や代金の扱いに応じて適切な勘定科目を選定しましょう。本記事で紹介した仕訳例や判断のポイントも参考に、円滑に処理を進められるようになりましょう。
前受金のある取引においては、請求書を複数回発行し、やり取りするケースも少なくありません。このような際には、前払い専用のテンプレートがあると役立ちます。
バクラク請求書発行であれば、さまざまな取引に応じた請求書や納品書などあらゆる帳票を、従来のレイアウトを大きく変えずに発行できます。発行前・発行後の業務も一気通貫で行えるため、フロー短縮にも効果的です。
システム内で帳票のステータス管理ができるため、取引数が多い・部署が多い環境に適しています。
インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応しているため、自社での法改正対応負担の軽減にもつながります。
請求書発行業務の効率化を検討中であれば、バクラク請求書発行をご活用ください。