研修費の勘定科目は?費用別の仕訳例、経費計上の判断基準を解説

研修やセミナーでは、受講費を始めとするさまざまな費用が発生します。研修時のテキスト代や移動費を、どの勘定科目で計上すべきかお悩みの方もいるでしょう。

本記事では、研修費の仕訳に使用する勘定科目や仕訳例、経費にできるか判断するポイントなどを詳しく解説します。

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研修費の勘定科目は?費用別の仕訳例、経費計上の判断基準を解説

研修費は経費計上できる?

研修費とは、業務に必要な知識・スキルの習得や、免許・資格の取得にかかる費用のことです。具体的には、研修の参加費用やテキスト代、資格の取得に必要な受験料などが該当します。

研修費を含め、経費には基本的に上限がありません。個人事業主でも、事業に必要であれば資格・免許の取得費用などを研修費として処理できます。

経費として認められるか否かを判断するポイントは、発生した費用が業務に必要かどうかです。たとえば、以下のようなケースは認められない可能性があります。

  • 一般事務職の従業員における自動車運転免許の取得費用
  • 自己啓発を目的とした、業務に直結しない分野の書籍の購入費用

研修費の主な勘定科目と仕訳例

研修費の仕訳に使用する主な勘定科目は、以下の5種類です。

  • 研修費
  • 新聞図書費
  • 福利厚生費
  • 前払費用
  • 雑費

それぞれの概要や仕訳例を詳しく見ていきましょう。

研修費

研修費は汎用性が高く、研修に関わる費用を一括で計上する企業も少なくありません。一方で、経費の効率的な管理のために「教育訓練費」「研修採用費」「採用教育費」など、独自の勘定科目を設定する企業もあります。

たとえば、従業員が社外セミナーを受講し、受講料1万円を現金で支払った場合の仕訳例は以下のとおりです。

借方

貸方

研修費

10,000円

現金

10,000円

新聞図書費

新聞図書費は、業務上必要な書籍やテキストなどを購入した際に使用します。経費をまとめて管理したい場合は、研修費で一括計上しても問題ありません。

たとえば、研修で使用した書籍100冊分の代金25万円を、現金で支払った場合は以下のように仕訳を行います。

借方

貸方

新聞図書費

250,000円

現金

250,000円

新聞図書費について理解を深めたい方は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:「新聞図書費」とはどんな勘定科目?経費計上できるもの・仕訳のポイント

福利厚生費

福利厚生費は、給与や賞与を除く実質的な報酬に使用する勘定科目です。資格手当や合格奨励金などの、全従業員を対象として会社が任意で支出するものが該当します。

たとえば、基本情報技術者試験の合格者に、合格奨励金2万円を現金で支給した場合の仕訳方法は以下のとおりです。

借方

貸方

福利厚生費

20,000円

現金

20,000円

福利厚生費の具体例や仕訳例について詳しく知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

関連記事:福利厚生費とは?経費にするための条件や費用の具体例・仕訳例を解説

前払費用

前払費用は、提供前の商品・サービス代金を事前に計上する勘定科目です。長期にわたって複数回開催される研修の参加費用などは、前払費用で一時的に仕訳を行うのが一般的です。

しかし実務上は、支払ったすべての代金を経費とし、決算時に未受講分の代金を前払費用へ振り替えるケースも少なくありません。

この場合、事業年度をまたぐ費用を適切な会計期間に按分します。その上で、翌年度分を前払費用に振り替えなければなりません。

たとえば、1回5,000円のセミナー受講費用を、1年分(6万円)をまとめて振り込んだ場合は以下のように仕訳を行います。

借方

貸方

研修費

60,000円

預金

60,000円

決算の時点で4回未受講の場合は、以下のように前払費用へ振り替えましょう。

借方

貸方

前払費用

20,000円

研修費

20,000円

振り替えた2万円は、翌期首に研修費として計上します。具体的な仕訳方法は以下のとおりです。

借方

貸方

研修費

20,000円

前払費用

20,000円

前払費用について理解を深めたい方は、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:前払費用の勘定科目は?仕訳例・計上タイミングと特例を解説

雑費

雑費は、少額かつ臨時的な支出に使用する勘定科目です。たとえば、研修1回あたりの支払金額や参加回数が少ない場合に使用します。ただし、将来的に同様のケースが多く見込まれる場合は、あらかじめ研修費として仕訳を行うのも一つの選択肢です。

例として、臨時で参加した研修のテキスト代1,000円を現金で支払った場合は、以下のように仕訳を行いましょう。

借方

貸方

雑費

1,000円

現金

1,000円

雑費として計上する例や、ほかの勘定科目との違いについては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:雑費とは?経費計上できる具体例や上限額、消耗品費などとの違い

研修に伴い発生した経費計上可能な費用

本章では、研修に関わる費用のうち、経費として認められる範囲について解説します。使用する勘定科目も紹介しますので、実務にお役立てください。

移動にかかった費用

研修先への移動費用は、研修費のほかに交通費や旅費交通費で計上できます。電車代やタクシー代は交通費、宿泊を伴う研修の場合は旅費交通費として計上するのが適切です。

交通費や旅費交通費について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

関連記事:交通費とは?支給要件や計算方法、課税・非課税のルールなどを解説

関連記事:旅費交通費とは?交通費との違いや該当する費用、仕訳例などを解説

宿泊にかかった費用

研修に伴う宿泊費は、研修費または旅費交通費で仕訳を行います。

たとえば、遠方での研修で2泊した場合のホテル代は、どちらで計上しても問題ありません。社内のルールに従い、一貫性のある処理を行いましょう。

食事にかかった費用

研修中の食事代は、常識的な金額であれば研修費での計上が認められます。

たとえば、必要以上に高額あるいは過度な飲酒を伴う食事代は、研修費として不適切です。研修後の懇親会費用は研修費とせず、目的に応じて接待交際費または参加者の自己負担とするのが望ましいでしょう。

なお、研修後の食事代は接待交際費以外での仕訳が適切なケースもあります。詳しくは以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

関連記事:接待交際費とは?経費にできる範囲(上限金額・内容)や仕訳例

教材・書籍の購入にあてた費用

研修に関わる教材・書籍の購入費用は、状況に応じて研修費または新聞図書費で仕訳を行います。

研修で使用した教材を受講者が持ち帰る場合は研修費、社内で保管する場合は新聞図書費で計上するのがよいでしょう。

講師に支払った費用

講師への謝礼金や研修中の食事代などは、研修費として仕訳を行います。ただし、個人の講師を招いた場合は、報酬に対して源泉徴収が必要です。

源泉徴収制度の対象事業者や計算方法について知りたい方は、以下の記事をご一読ください。

参考:国税庁「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

関連記事:源泉徴収税とは?制度の仕組み・対象となる所得/報酬・計算方法などを解説

その他費用

研修では、ほかにもさまざまな費用が発生します。代表的な費用の例と勘定科目は、以下をご参照ください。

費用の例

使用する勘定科目

会場のレンタル代

研修費、賃貸料、会議費

会場設営やテキストの準備に要した費用

研修費

ノートやペンなどの文房具、名札

消耗品費

プロジェクターやマイクなどの機材レンタル料

研修費、賃貸料

研修当日に不足した教材のコピー代

雑費

地代家賃や会議費、消耗品費の概要や仕訳例を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

関連記事:地代家賃とはどんな勘定科目?仕訳例や計上できない費用の例もわかりやすく解説

関連記事:勘定科目「会議費」とは?定義・接待交際費との違いや上限額・仕訳例を解説

関連記事:「消耗品費」とはどんな勘定科目?具体例や雑費との違い・仕訳例を解説

研修費の仕訳をする際の注意点

仕訳方法の誤りや関連資料の保管漏れがあると、経理担当者の負担増大につながる可能性が否定できません。研修費の仕訳を行う際に、注意すべき2つのポイントを解説します。

研修費か交際費かの区別をつけて仕訳する

取引先を研修に招待する場合、研修費ではなく交際費で計上した方が良いケースもあります。

たとえば、業務に関する知識の共有を目的とした研修は、研修費で仕訳を行うのが適切です。研修後の接待や交流会が主な目的の場合は、交際費として計上するのが望ましいでしょう。

研修の目的から、使用すべき勘定科目を慎重に判断することがポイントです。

税務調査で指摘されないために資料を残しておく

税務調査に備えて、教材や研修レポートなどの関連書類を適切に保管することも重要です。場合によっては、研修と業務の関連性を示す文書を作成すべきケースもあります。

研修費が実質的な給与と判断された場合、源泉徴収義務違反で追徴課税などが科せられる可能性があるため注意してください。

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研修費とは、業務に必要な知識・スキルの習得や、免許・資格の取得にかかる費用を指します。経費を効率的に管理するには、研修の目的や支出の内容に応じて勘定科目を使い分けることが重要です。

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