研修費の勘定科目は?従業員への教育・講習にかかる費用の仕訳例と経費処理

研修は、企業を支える人材育成のために欠かせません。しかし、研修ではさまざまな経費が発生して仕訳が複雑になりがちです。研修関連で要した費用の仕訳に悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか。

この記事では、研修の勘定科目や仕訳方法を解説します。ぜひ参考にしてください。

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研修費の勘定科目は?従業員への教育・講習にかかる費用の仕訳例と経費処理

研修費とは?経費としての考え方

研修費は、業務に必要な研修やセミナー、講習会などに関して発生する費用の総称です。業務に必要な知識やスキルの習得、資格取得のための費用が研修費として認められます。

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研修費にできる費用に制限はない

基本的に経費には上限が設定されていないため、研修費についても同様に上限は存在しません。常識的な範囲内での内容や金額であれば、研修費として経費計上が可能です。

研修費の勘定科目の決め方は企業しだい

企業としてルールを決めておけば、管理しやすい勘定科目を選んで構いません。経理業務を効率的かつ適正に行うために、適切な勘定科目を選択しましょう。以下で、主に使われる勘定科目を紹介します。

研修費の主な勘定科目と仕訳例

研修費の主な勘定科目について、具体的な仕訳例にも触れつつ解説します。自社の経理業務に役立ててください。

研修費の仕訳例

研修費は、企業によって「教育訓練費」「研修採用費」「採用教育費」など、独自の勘定科目が設定されている場合があります。汎用性が高い勘定科目であるため、研修にかかった費用を一括で計上したいときは、「研修費」という勘定科目で仕訳をするとよいでしょう。

以下に「社外のオンラインセミナーに従業員を参加させ、1万円を現金で支払った」ときの仕訳例を紹介します。

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研修費10,000円現金10,000円

新聞図書費の仕訳例

新聞図書費は、業務に必要な参考書籍を購入した場合に利用できる勘定科目です。企業としてルール化しておけば、単純に研修費として一括で仕訳しても構いません。ただし、研修費と書籍代を分けて管理したいときは、研修費と新聞図書費の2つの勘定科目を使い分けて、経費の使用状況を明確にしましょう。

以下に、「従業員の研修で使用した書籍100冊分の代金25万円を、現金で支払った」ときの仕訳例を紹介します。

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新聞図書費250,000円現金250,000円

福利厚生費の仕訳例

福利厚生費は、全従業員が参加できる研修に対して使用できる勘定科目です。例えば、資格手当や合格奨励金などについては、福利厚生費で仕訳するとよいでしょう。なお、新聞図書費と同じく、福利厚生費も単純に研修費として仕訳できます。

以下に、「基本情報技術者を取得した従業員に対し、合格奨励金として2万円を現金で支払った」ときの仕訳例を紹介します。

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福利厚生費20,000円現金20,000円

前払費用の仕訳例

複数回開催される長期間の研修は、前払費用の勘定科目を使って仕訳をしましょう。特に、年度をまたぐ長期研修の場合、費用を適切な会計期間に按分して計上しなければいけません。決算時に未受講分の費用があれば、前払費用に振り替えましょう。

「毎月開催されるセミナー代1年分を、まとめて6万円支払った」とき、支払時の仕訳は以下のとおりです。

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研修費60,000円預金60,000円

決算時に、未受講分の費用を前払費用に振り替えます。今回は2万円分のセミナーが未受講とします。

借方貸方
前払費用20,000円研修費20,000円

翌期首の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
研修費20,000円前払費20,000円

雑費の仕訳例

研修に参加する機会が少ない、1回あたりに支払う金額が少ない、という場合は研修関連の費用を雑費として仕訳することも可能です。しかし、将来的に研修の頻度や要する金額が増えるようであれば、あらかじめ研修費として仕訳しておくと効率的で適正な経理業務につながります。

以下に、「研修で使う書籍代として、1,000円を現金で支払った」ときの仕訳例を紹介します。

借方貸方
雑費1,000円現金1,000円

経費計上できるのは業務に必要な費用のみ

経費として計上できるかを判断するポイントは、その費用が業務に必要かどうかです。資格取得のための研修でも、業務に直接関連していない資格を取得する場合は経費として計上できません。従業員の個人的な資格取得にかかった費用を会社が補助した場合は、給与所得とみなされ課税対象となります。

例えば、一般事務職の従業員が自動車運転免許を取得する費用を補助した場合は、研修費として認められない可能性があります。

【経費計上可能】研修にともない発生した費用の勘定科目

研修にともない発生する費用の仕訳について解説します。迷いがちな費用の仕訳をする際に、参考にしてください。

移動にかかった費用

研修にともなう移動費用は、研修費とは別に交通費や旅費交通費として仕訳できます。例えば、電車賃は交通費、宿泊をともなう遠方研修の場合は旅費交通費として計上します。

研修時は、通常の通勤経路と異なる経路を使う場合が少なくありません。研修用の交通費と通勤費は、明確に区別できる状況で計上しておきましょう。

宿泊にかかった費用

研修にともなう宿泊費は、研修費または旅費交通費として経費計上できます。例えば、遠方研修で2泊した場合のホテル代は、研修費に含めて一括で経費計上しても、ホテル代のみ旅費交通費として計上しても構いません。企業のルールに従い、一貫性のある処理を心がけましょう。

食事にかかった費用

研修中の食事費用は、常識的な金額であれば研修費として経費計上できます。ただし、高額な食事や過度な飲酒に要した費用は、研修費として適切ではありません。例えば、研修後の懇親会費用は研修費には含めず、目的に応じて接待交際費として仕訳するか、参加者の自己負担(実費扱い)にするとよいでしょう。

教材・書籍の購入にあてた費用

研修に関連する教材や書籍の購入費用は、状況に応じて研修費や新聞図書費として仕訳できます。例えば、社内に保管する参考書の購入費用は新聞図書費、受講者が保管する教材の場合は研修費としてルールを決めて仕訳しましょう。

講師に支払った費用

講師への謝礼金や研修中の食事代は研修費として仕訳します。個人の講師を招いた場合は報酬に対して源泉徴収が必要です。例えば、個人講師への報酬が10万円の場合、源泉徴収税(2024年7月時点で10.21%)を差し引いた8万9,790円を支払い、残りの1万210円を税務署に納付します。

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

その他費用

研修にともない、他にもさまざまな費用が発生します。代表的な費用の仕訳を以下に示しました。

  • 会場のレンタル代:研修費または賃貸料、会議費
  • 会場設営や書籍やテキストの準備に要した費用:研修費
  • ノートやペンなどの文房具や名札:消耗品費
  • プロジェクターやマイクなどの機材のレンタル料:研修費または賃貸料
  • 教材が不足し、至急当日コピーしたときの印刷代:雑費

研修費の仕訳をする際の注意点

研修費の仕訳をする注意点を解説します。研修費として仕訳した理由を明確にし、必要に応じて説明できるように資料を残しておきましょう。

研修費か交際費かの区別をつけて仕訳する

取引先を研修に招待する場合、目的や内容によっては、研修費ではなく交際費として仕訳する方が適切な場合があります。例えば、純粋に業務知識の共有が目的の研修であれば研修費として計上してください。一方、研修後に接待や交流会が主な目的となる場合は、交際費として計上する方が適切でしょう。

研修の目的が、知識・スキルの向上か、取引先との関係強化であるかを慎重に判断して、勘定科目を決定してください。

税務調査で指摘されないために資料を残しておく

税務調査に備え、教材や研修レポートなどの証拠書類を適切に保管してください。研修の業務関連性を示す文書作成も重要です。研修費が実質的に給与と判断されると、源泉徴収義務違反となり、追徴課税などのペナルティを受ける可能性があります。どのような研修の資料を残してよいか分からないときは、早めに税務の専門家に相談しましょう。

仕訳を効率化するにはデジタル化がおすすめ

仕訳をデジタル化すると、人的ミスを防ぎつつ経理作業を効率化できます。仕訳をデジタル化するシステムには、請求書を自動で読み取る機能や、過去のデータを学習して自動で入力補完する機能などが搭載されています。経理業務の効率化に向け、デジタル化を検討しましょう。

まとめ

研修にかかわる費用は多くの場合、研修費として一括で仕訳できます。ただし、内容によっては適切な勘定科目に分けて計上した方がよい場合があります。勘定科目の選択には柔軟性がありますが、企業として一貫性のあるルールを定めておきましょう。

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