労働保険料の勘定科目は何費?仕訳の例や納付の流れ・経理処理を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-11-26
労働保険料は仕訳方法によって用いるべき勘定科目が異なるため、どの勘定科目を使うかしっかりと把握しておくことが重要です。正しい会計処理のために、仕訳方法を理解しておきましょう。
本記事では、労働保険料を仕訳する際の勘定科目について解説します。仕訳例や納付の流れ、経理処理についても解説するため、参考にしてください。
労働保険料の勘定科目は何費?仕訳の例や納付の流れ・経理処理を解説
労働保険料とは?
労働保険料とは、雇用保険と労災保険に対して支払うものです。雇用保険とは、雇用安定や就労促進のために使われる保険で、労災保険は勤務中に発生したケガや病気などに備えるための保険です。
労働者を雇用する際には従業員の安全や福利を確保する必要があるため、法律に基づき労働保険料の納付義務が生じます。
勘定科目としての労働保険料
保険料の勘定科目は、一般的に法定福利費を用います。これは、労働保険が福利の一部だと考えられるためです。健康保険や厚生年金などの社会保険も法定福利費に含まれます。
基本的には、保険料の支払いが発生したときに費用計上するという流れになります。実際の支払時に現金・預金の勘定で処理しましょう。
労働保険料に用いられる勘定科目
労働保険料に用いられる勘定科目は、法定福利費・立替金・事業主貸の3つです。ここでは、各勘定科目について解説します。
法定福利費
法定福利費とは、法律によって企業が従業員に提供しなければいけないと定められている保険の費用です。具体的には、以下の費用が挙げられます。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
社会保険や労働保険と呼ばれるものが、法定福利費です。法律によって企業負担が義務付けられており、福利厚生費とは異なる法定福利費として区別されます。
法定福利費については、下記の記事も参照ください。
従業員に対する「福利厚生費」とは?勘定科目の定義・範囲と仕訳の例を解説
【建設・建築業】法定福利費の内訳が記載された見積書の義務化と書き方を解説
立替金
立替金とは、本来は従業員や取引先などが負担する必要のある費用を、会社が一時的に立て替えて支払った場合の勘定科目です。
労働保険料を事業主負担分、労働者負担分で明確に区別したい場合に用いるもので、立替金に該当する費用は多岐にわたります。労働者負担分を法定福利費とせず、立替金として処理します。
立替金については、下記の記事も参照ください。
勘定科目「立替金」とは?仕訳例と出納帳などの帳簿の経理処理を解説
事業主貸
事業主貸とは、事業用資金を事業以外の支払に使用した場合に用いる勘定科目です。
個人事業主の労働保険料は、事業主負担が義務ではありません。そのため、基本的に経費として処理することはできません。帳簿への記帳が必要な場合には、事業主貸という勘定科目を用いて仕訳しましょう。
労働保険料における勘定科目の分類
労働保険料は、事業主と労働者が折半して支払います。事業主負担分と労働者負担分では勘定科目が異なるため注意しましょう。労働保険料における勘定科目の分類は以下のとおりです。
- 雇用保険料:預り金(労働者負担分)、法定福利費(事業主負担分)
- 労災保険料:法定福利費(事業主負担分)
- 健康保険料:預り金(労働者負担分)、法定福利費(事業主負担分)
労働保険料の仕訳方法
労働保険料の仕訳方法は1つではありません。ここでは、労働保険料の仕訳方法を詳しく解説します。
一貫して法定福利費で仕訳をする方法
一貫して法定福利費で仕訳をする方法は、もっとも簡単な方法であり中小企業で一般的に利用されています。概算保険料をすべて法定福利費として計上するため、複雑な仕訳が必要ありません。
給与支払時に、労働者負担分の雇用保険料を法定福利費のマイナスとして計上し、確定保険料の納付額全額を法定福利費として計上します。
厳密にいうと、税法上正しくない部分もありますが、従業員数が多くない場合は指摘事項になりにくいため、規模の大きくない中小企業で使われます。
国税庁が提示する損金算入の方法
国税庁によって提示されている「損金算入」に従う方法もあります。国税庁提示の方法になるため、税法上問題はありません。概算保険料では労働者負担分の労働保険料を立替金で処理します。その後、給与を支払った際に労働者負担分の労働保険料と立替金を相殺しましょう。
費用計上が先に来るため、労働保険料の支払月に法定福利費が大きくなります。従業員数が多い場合は、正しい経営判断はしにくくなるため注意しましょう。
※参考:第3節 保険料等|国税庁
費用の発生を毎月標準化する仕訳方法
前払費用を用いて費用を毎月標準化する方法であり、従業員数の多い上場企業などでよく使われる方法です。計上方法が煩雑になってしまうというデメリットはありますが、月次決算を正確に把握できるというメリットもあります。
概算保険料では事業者負担分を前払費用として、労働者負担分を立替金として計上します。給与の支払時には、前払費用から労働保険料の分の法定福利費を発生させ、労働者負担分の労働保険料は概算納付時に発生した立替金と相殺しましょう。
概算納付時に発生した前払費用・立替金の残高が足りなくなった場合には、未払費用・預り金の勘定科目で処理します。概算保険料が確定保険料を超えた場合には仕訳は必要ありません。
還付する際には、概算保険料の納付時に前払費用として資産計上しておき、毎月法定福利費に振り替えます。
個人事業主が労働保険料を支払った際の仕訳方法
事業用資金から労働保険料を支払っている場合には、事業主貸の勘定科目で仕訳しましょう。事業用資金ではなくプライベート用の口座から支払っている場合には、記帳の必要はありません。
個人事業主として従業員を雇っている場合には、法定福利費や立替金の勘定科目を用いて仕訳をしましょう。
労働保険料の納付の流れ
労働保険料を納付する際には、どのような流れで行うのでしょうか。ここでは、労働保険料納付の詳しい流れを解説します。
納付方法の種類を確認する
まずは、納付方法の種類を確認しましょう。労働保険料の納付方法としては以下が挙げられます。
- 都道府県労働局、労働基準監督署、金融機関の窓口による現金納付
- 口座振替納付
- 電子納付(Pay-easy(ペイジー)、インターネットバンキング、ATM)
どの方法を選んでも構わないため、自社が納付しやすい方法を選びましょう。
必要となる書類を準備する
労働保険料を納付する際には、書類が必要です。必要書類は以下のとおりです。
- 賃金台帳、労働者名簿:労働保険料を計算する際に必要となる
- 労働保険概算確定保険料申告書:納付する機関に提出する必要がある
オンライン納付を活用する場合には、納付書の代わりとして、オンラインシステムで必要事項を入力すれば問題ありません。
基本的な計算方法で合計を把握する
まずは、雇用保険料・労働保険料の合計を把握しましょう。雇用保険料は従業員と企業で折半して支払いますが、事業主負担分と労働者負担分を合計した金額を出しておきましょう。
労災保険料は、給与に一定の率を掛けて算出します。
計算方法については、下記の記事も参照ください。
【建設・建築業】法定福利費の内訳が記載された見積書の義務化と書き方を解説
従業員に対する「福利厚生費」とは?勘定科目の定義・範囲と仕訳の例を解説
保険料率を確認する
労働保険料の保険料率は毎年一定とは限りません。年度によって変更される可能性があるため、注意しましょう。労働保険料を計算する際には、その年の保険料率をしっかり確認しておくことが重要です。
保険料率は、労働局や社会保険事務所など、公的機関のウェブサイト上に公開される告示で確認しましょう。
労働保険料の計算例を把握する
労働保険料の計算例は以下のとおりです。
給与500万円・労災保険料0.3%・雇用保険料率0.8%(事業主負担分0.6%・労働者負担分0.2%)の場合の計算例
- 労災保険料:500万円×0.3%=15,000円
- 雇用保険料:500万円×0.8%=40,000円(事業主負担分30,000円・労働者負担分10,000円)
法人における労働保険料の考え方
労働保険料の支払は法人にとって欠かせないものですが、法人が支払った労働保険料は税務上経費として認められます。労働保険料の金額は、事業内容や前年度の給与、業種のリスクなどを参考にして算出されるため、正確に把握する必要があります。
また、労働保険料の計算基準は、業種や事業内容、労働者の給与によって決まるため、正しく理解して適用しましょう。
労働保険料を仕訳する際のポイント
労働保険の仕訳で注意したいポイントは、仕訳方法によって勘定科目が異なる点です。そのため、自社がどの仕訳方法で仕訳するのか明確にしましょう。
労働保険料は月・年ごとに処理をするため、一貫した仕訳方法を用いることも大切です。支払フローに応じた必要な仕訳を把握したうえで、勘定科目や金額などに間違えがないように仕訳しましょう。
労働保険料の納付・損金算入
労働保険料の計算期間は、毎年4月1日~翌年3月31日までとなっています。申告・納付の期限は6月1日~7月10日となっているため、忘れずに申告・納付を行いましょう。
40万円以上の納付なら3回の分割納付も可能です。損金算入のタイミングは、申告書の提出日もしくは納付日となっています。
※参考:労働保険の年度更新とは|厚生労働省
※参考:労働保険料の申告・納付|厚生労働省
※参考:第3節 保険料等|国税庁
まとめ
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