未収入金とは?勘定科目の仕訳や売掛金・未収収益との違いを解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-10-17
未収入金はよく使われる勘定科目ですが、仕訳する際に類似したものと迷うこともあるでしょう。未収入金は、売掛金や未収収益と間違えやすいため、仕訳に注意が必要です。この記事では、未収入金の概要や仕訳の方法、未収入金を回収する方法などを解説します。経理業務の参考にしてください。
未収入金とは?勘定科目の仕訳や売掛金・未収収益との違いを解説
未収入金(未収金)とは
未収入金とは、本業以外の取引において、一時的に発生した未回収の金額のことです。自社の商品や製品以外で何らかのモノを売却した場合、あるいは本業以外の業務を提供した際に得られる収益で、現預金での回収が見込まれる債権が未収入金に該当します。たとえば、不動産および有価証券の売却益、不動産貸付に伴う代金などです。
未収入金と間違えやすい勘定科目
未収入金と間違えやすい勘定科目には「売掛金」と「未収収益」とがあります。売掛金は、本業の取引において、サービスや物品の販売を行ったことで発生する債権に用いる勘定科目です。未収入金は、本業以外の売却などで発生する債権であるという点が大きく異なります。
未収収益は、未収入金と同じく本業以外の取引で発生する債権に用いる勘定科目です。ただし、未収入金が一時的な利益であるのに対して、未収収益は継続的に得られる利益に対して用いられます。たとえば、利息収入や、本業以外の継続的なサービス提供に対して支払われる代金などです。
未収入金・売掛金・未収収益の勘定科目の違い
貸借対照表においては、未収入金・売掛金・未収収益はいずれも「資産の部」に計上されます。それぞれの違いは以下のとおりです。
- 未収入金:流動資産、固定資産
- 売掛金:流動資産
- 未収収益:流動資産
未収入金のうち、1年以内に回収できる未収集金は「流動資産」に該当します。一方、回収に1年以上かかる場合は「固定資産」に算入し、「長期未収入金」として仕訳を行いましょう。また損益計算書においては、未収入金・売掛金・未収収益はいずれも「経常利益」で計算を行います。それぞれの違いは以下のとおりです。
- 未収入金:資産+営業外損益
- 売掛金:売上高
- 未収収益:営業外利益
未収入金は流動資産か固定資産どちらかの売却益、もしくは売却損失が算入される項目です。これに対して未収収益は営業外利益、つまり流動資産のみが該当します。
未収入金の勘定科目の仕訳
勘定科目を未収入金とする際の仕訳は、売却するものによって変わります。ここでは固定資産、不動産、機械設備それぞれについて、仕訳の方法を解説します。
固定資産
固定資産を譲渡した場合の仕訳は、次のとおりです。
例:5,000,000円の固定資産のうち、500,000円が回収できない場合
借方 | 貸方 | ||
未収入金 | 4,500,000円 | 土地(固定資産) | 5,000,000円 |
固定資産売却損 | 500,000円 |
貸方には土地を購入したときの取得価格を記載します。これに対して、未収入金は借方に記載しましょう。金額は、将来的に入金予定のある金額です。
土地の取得価格よりも実際の売却価格が低かった場合、その差額を借方に「固定資産売却損」として記載します。なお、反対に売却価格(未収入金)のほうが高かった場合は、貸方に「固定資産売却益」として記載が必要です。
参考:固定資産税の勘定科目は?基礎知識や経費計上・仕訳方法を解説!
不動産
不動産を貸し付けた場合の仕訳は、以下のとおりです。
例:5,000,000円で貸付を行った不動産の場合
借方 | 貸方 | ||
未収入金 | 5,000,000円 | 受取地代 | 5,000,000円 |
不動産貸付で生じた未収入金の仕訳方法はシンプルで、借方に貸付の代金を未収入金として記載し、また貸方には同じ金額を「受取地代」として記載します。受取地代とは、土地を貸し付けた場合の賃貸料を示す勘定科目です。ただし、建物の貸付を行った場合は「受取家賃」が使われます。
賃料をすぐに現預金で受け取った場合は、借方を未収入金とせず、現金または普通預金などの勘定科目で記載できますが、支払いが後日になる場合は未収入金を使いましょう。
機械設備
機械設備を売却した際の仕分けは、直接法と間接法に分かれます。2つの違いは、減価償却費の扱い方の違いです。多く採用されているのは間接法ですが、自社の方針に従い記載方法を選択しましょう。以下では、500,000円の機械を購入し、450,000円で売却した場合(減価償却100,000円)を例に挙げ、直接法での仕訳方法と間接法でのやり方をそれぞれ解説します。
直接法
直接法は、固定資産(この場合は、売却を行う機械装置)から減価償却費を直接差し引く方法です。直接法で仕訳をする際は次のように記載します。
借方 | 貸方 | ||
未収入金 | 450,000円 | 機械装置 | 400,000円 |
固定資産売却益 | 50,000円 |
この場合、未収入金は実際の売却価格である450,000円です。本来、機械装置の購入費用は500,000円でしたが、100,000円が減価償却されているため、貸方には機械装置として400,000円が計上されています。
間接法
間接法は、固定資産を直接減らすのではなく、減価償却累計額を計上し、これまでの償却額の合計を表示する方法です。間接法で仕訳をする際は次のように記載します。
借方 | 貸方 | ||
未収入金 | 450,000円 | 機械装置 | 500,000円 |
減価償却累計額 | 100,000円 | 固定資産売却益 | 50,000円 |
貸方には機械装置として、機械の購入額500,000円を計上します。一方、借方に減価償却累計額として100,000円を計上することで、貸方と借方のバランスを取ることが可能です。
未収入金を回収する方法
未収入金を回収するには、次のような方法がとられます。
メールや電話で催促する
社内確認をして社内でのミスがなかった場合には、取引先に連絡します。連絡する際にメールを用いると、催促の証拠が残るためおすすめです。電話の場合は、言った・言わないの水かけ論になる可能性もあるため、まずはメールで連絡したほうが無難です。
催促をするときには、丁寧な対応を心がけましょう。単なるミスによる未入金という可能性もあるため、高圧的な印象を与えないようにすることが大切です。メールでの催促に応じてくれない場合には、電話で連絡しましょう。
督促状を送る
メールや電話で催促をして入金がなければ、法的な強制力を伴わない催促状を送ります。
催促状を送付しても入金されないという場合には、督促状を送付しましょう。督促状とは支払期日までに代金が支払われなかったことを伝えて、入金するように求める書面です。入金を求める書面であることは催促状と同様ですが、催促状と比較すると強制力があります。
督促状は、内容証明郵便で送りましょう。内容証明郵便とは、郵便局が書面の内容や送り主・宛先、受け取った日付などを証明してくれるものです。督促状を受け取っていないという言い逃れができなくなるため、内容証明郵便を使いましょう。
債権を相殺する
請求書の相殺処理とは、売り手と買い手との間で発生した債権と債務をお互いに差し引く、つまり同額で打ち消すことによって帳消しにする処理です。これによって、実際の金銭のやり取りを減らすことができるため、手続きにかかる手間や手数料の負担などが軽減します。
たとえば、売り手が買い手に対して請求書を発行しており、買い手からも請求書を受け取っているとしましょう。この場合、請求書の金額を相殺して残額のみを支払う形になります。相殺処理ができるかどうかを判断するため、取引先に対して未払いの債務を探すと良いでしょう。
詳細は以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。
未収入金を処理する際の注意点
未収入金を処理する際は、以下の点に注意を向けましょう。
発生主義で会計の処理をする
企業会計には「発生主義の原則」という考え方があります。発生主義の原則では、現金が動いたかどうかは関係なく、取引が発生した時点で費用と収益を計上します。経費に関しても、発生主義を徹底することで収支を正確に確認しやすくなります。企業会計では、発生主義に基づいて経費を迅速に精算し、月またぎや年度またぎを発生させないことが重要です。
月またぎ、月ずれについては以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参照してください。
月またぎや年度またぎの経費精算は可能?適切な会計処理と計上漏れの防止策
回収予定を過ぎた残高や取引相手の信用状態を確認する
決算時に回収していない未収入金の残高を確認すると同時に、取引相手の信用状態を確認しておきましょう。未収入金は、そのまま回収できない場合、貸倒損失で計上することもあります。貸倒損失と判断するタイミングは、取引相手の倒産などのほか、連絡をしても反応がない場合、支払いが大幅に遅れている場合などです。
経過勘定の処理を行う
経過勘定とは、損益の「見越し」を財務諸表に表示することです。未収収益が未収入金として扱われる場合は「経過勘定(科目)」の会計処理が必要となります。
経過勘定の処理を必要とするケースで多いのは受取利息です。利息が発生してから、受け取るまでに時間がかかり決算期をまたいでしまう場合、決算期までに発生している未受領の利息を未収収益として仕訳します。
まとめ
未収入金の勘定科目は、売却したものが固定資産か機械設備か、あるいは不動産賃貸による未収入金なのかによって、仕訳の方法が違います。それぞれ具体例をよく参照し、正確な仕訳を行うよう留意してください。
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