請求書の「相殺」処理の書き方(マイナス伝票の付け方)とメリット・デメリット
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-12-12
請求書における相殺処理とは、取引先との間で双方の債権・債務を同額で打ち消す処理のことです。相殺処理によって実際の金銭のやり取りが減り、手続きの手間などが軽減できます。本記事では、請求書の相殺処理について詳しく解説します。相殺処理の書き方や相殺処理のメリット・デメリットも解説するため、ぜひ参考にしてください。
インボイス制度への対応方法も解説 !そのまま使える請求書テンプレートのご紹介
請求書テンプレート5点セット(複数税率、単一税率10%、単一税率8%、源泉徴収あり、源泉徴収なし)をダウンロードいただけます。
インボイス制度対応の留意点と対応のポイントについても記載しています。
請求書の「相殺」処理の書き方(マイナス伝票の付け方)とメリット・デメリット
請求書の相殺処理とは
請求書の相殺処理とは、売り手と買い手との間で発生した債権と債務をお互いに差し引く、つまり同額で打ち消すことによって帳消しにする処理です。これによって、実際の金銭のやり取りを減らすことができるため、手続きにかかる手間や手数料の負担などが軽減します。
たとえば、売り手が買い手に対して請求書を発行しており、買い手からも請求書を受け取っているとしましょう。この場合、請求書の金額を相殺して残額のみを支払う形になります。
原則双方で合意がある場合に相殺処理ができる
相殺処理は、原則として双方の合意がある場合に行える処理のことです。取引先と自社との間に互いに債権と債務がある場合、双方での合意が取れれば同額を消し合ったり減額したりする相殺処理ができるという仕組みになっています。合意を得ずに片方だけで処理すると、相手に金銭的な負担を与える可能性があるため注意しましょう。
これにより、手続きにかかる手間を削減できるだけでなく、支払処理の手数料や人件費、領収書の印紙代などを節約できるため、コスト削減につながります。
条件を満たすことで一方的な相殺処理も可能
前述したように、相殺処理は基本的に双方の合意がある場合に行うものです。しかし、相殺処理は民法上の条件を満たすことで、一方的な意思表示によっても実施できるとされています。一方的な相殺処理が可能となる条件は以下のとおりです。
- 両社間で互いに債権を有していること
- 金銭などの同種の債権を有していること
- ともに弁済期(支払期限を過ぎている)こと
- 相殺禁止に該当しない債権を両社で有していること
相殺処理する場合の請求書の書き方の例
相殺における請求書も請求書の1種であるため、一般的な請求書と同様に記載する必要があります。相殺処理を行う際の請求書に必要な情報は以下のとおりです。
- 発行日
- 請求金額
- 相殺金額
- 相殺後の支払金額
- 代金振込先情報
以上の情報を記載しましょう。たとえば、A社がB社から50万円分の商品を購入して、B社がA社から50万円分の商品を購入し、全額を相殺処理した場合には以下のように記載します。
- 請求金額:500,000円
- 相殺金額:△500,000円
- 差引請求額:0円
A社がB社に50万円の売掛金があり、B社がA社に40万円の売掛金があって、一部を相殺する場合には以下のように記載しましょう。
- 請求金額:500,000円
- 相殺金額:△400,000円
- 差引請求額:100,000円
請求書で相殺処理をする際の実施フロー
請求書で相殺処理をする際には、どのような流れで行えばよいのでしょうか。ここでは、相殺処理の実施フローを解説します。
1.取引先に連絡し、了承を得る
まずは取引先に連絡して、相殺処理の了承を取りましょう。法律上は一定の条件を満たせば一方的な相殺処理も可能ですが、基本的には双方の合意を得ることがビジネス上の暗黙のルールとなっています。
また、一方的な相殺処理をしてしまうと相手の資金繰りに影響を与える可能性があります。取引先との信頼関係を損ねることにつながる場合もあるため、必ず取引先に連絡してから相殺処理を行いましょう。
2.相殺請求書を発行する
取引先からの了承を得たら、相殺請求書を発行します。全額を相殺する場合でも取引内容を明確にする必要があるため、「お振込は不要です」と明記した請求書を作成しなければいけません。相殺請求書の発行時には、以下のような方法が用いられます。
- 金額欄に相殺前の金額と相殺する金額、相殺後の金額を記載する
- 備考欄に相殺前の金額や相殺後の金額といった詳細を記載する
- 相殺する金額と相殺後の金額を記載した請求書を記載し、2枚セットにする
このように、分かりやすい形で相殺請求書を発行することが大切です。
3.必要な場合、相殺領収書を発行する
相殺処理が行われたら、必要に応じて相殺領収書を作成します。相殺領収書は、買掛金の支払い義務が消失したことを証明するための書類です。
相殺領収書の発行は義務ではありません。しかし、取引の内容を明確にするために発行するケースがあるようです。一方が相殺領収書を発行したら、もう一方も発行する必要があります。相殺領収書は簡易的な形式であるため収入印紙は不要です。ただし、一部金銭の受領があった場合には収入印紙が必要になるため注意しましょう。
相殺処理のメリット
相殺処理を行うことで、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、相殺処理で得られるメリットを解説します。
キャッシュフローが安定する
相殺処理を行うことで、現金のやり取りを減らすことができます。相殺処理によって支出を抑えることができるため、キャッシュフローが安定する可能性があるでしょう。金銭の移動をする必要がないため、金銭管理の手間も軽減されます。
また、支払いにかかる事務処理の手間や時間などの削減にもつながるだけでなく、振込手数料などのコストも削減できます。
自社の損失を防げる
掛け取引では、支払い遅延や未回収のリスクがあります。掛け取引においては、貸し倒れによる未回収のリスクや支払い遅延などのリスクが常に存在しており、代金の回収が不可能になることが続いてしまうとキャッシュフローが悪化します。
しかし、相殺処理をすれば金銭のやり取りをする手間を減らすことができるだけでなく、債権回収の重要な担保機能としての役割も果たせるでしょう。そのため、自社のリスクを軽減できます。
コストを削減できる
実際に金銭のやり取りを行う場合には、銀行振込手数料や送金手数料などが発生してしまいます。しかし、相殺処理を行えばこれらの手数料が不要になるため、企業の経費を削減できることは大きなメリットです。
また、人件費の削減にも寄与する可能性があります。手作業での入金確認や帳簿付けには手間がかかるだけでなく人件費もかかります。相殺処理ならこれらの作業が不要になるため、人件費がカットでき総合的なコスト削減効果が期待できるでしょう。
相殺処理のデメリット
相殺処理にはデメリットもあります。ここでは、相殺処理のデメリットを2つ解説します。
資金繰りに影響を与える可能性がある
相殺処理を行うことによって、資金繰りに影響を与える可能性があります。特に、相手側の資金繰りに影響を与える可能性があるため注意しましょう。
相殺処理によって、予定していた入金がなくなります。現金が入ってこなくなってしまうため、相手側のキャッシュフローが悪化するケースもあるでしょう。お互いに同意を得た状態で相殺処理をした場合はあまり問題ありません。しかし、事前に相手方の了承を得ずに相殺処理を行うとトラブルになる可能性が高いため注意しましょう。
通常の現金取引よりも処理が複雑な傾向にある
相殺処理は通常の現金取引より、処理が複雑になりがちです。取引内容や金額の詳細などを正確に把握する必要があるだけでなく、双方の合意を得る必要があるため通常の現金取引よりも処理が煩雑になってしまうケースがあるようです。
また、相殺処理には書類作成や記録管理なども必要です。取引内容が曖昧になることを防ぐためにも適切な管理が求められますが、作業は煩雑になりやすいため事務負担が増加するリスクもあります。
相殺領収書とは
相殺領収書とは、取引先との間で相殺処理を行った場合には発行する領収証のことです。通常の領収書は、金銭の支払いを受けた側に金銭授受があったことを証明するために発行します。一方、相殺領収書はお互いに発生した債権と債務を差し引いた結果、最終的に支払われた金額や相殺処理の詳細などを記録するために発行するものです。
通常の領収書の場合は取引額に応じた収入印紙の貼り付けが必要ですが、金銭のやり取りが発生しない場合には収入印紙は必要ありません。
相殺領収書の発行は法的な義務ではない
前述したように、相殺領収書の発行に法的な義務はないため、発行しなくても問題はありません。しかし、トラブルを防ぐためにも相殺領収書を発行しておいたほうがよいでしょう。
相殺領収書を発行しておくことで、相殺額やお互いの債権・債務などを明確にできます。これにより、二重請求や二重払いなどのトラブルを防ぎやすくなります。取引の透明性を確保してトラブルを防ぐために、相殺領収書の発行が推奨されているようです。
相殺領収書の書き方
相殺領収書は、全額を相殺するケースと一部相殺を行う場合では書き方が異なります。まず、全額を相殺処理するケースです。この場合は、同じ金額を記入したうえで但し書きとして相殺処理を行った旨を記入しましょう。収入印紙は不要です。
一部相殺を行う場合には、取引総額だけでなく内訳を記入して取引額に応じた収入印紙を貼り付けます。日付は双方で同じ日付を記入することで、後から確認しやすくなります。
まとめ
請求書の相殺処理とは、取引先との間で発生している債権と債務を同額で打ち消して帳消しにする処理です。基本的には、双方の合意がある場合に相殺処理ができるため、取引先からの了承を得たうえで相殺処理を行いましょう。相殺処理によってコスト削減や自社の損失を防げるなどのメリットもあります。
バクラク請求書発行は、書類を発行する前後の業務をすべて解決できる請求書発行サービスです。書類の作成から送付先に届くまでの時間を短縮できます。また、インボイス制度や電子帳簿保存法などの法制度にも対応しています。請求業務の効率化をお考えなら、お気軽にお問い合わせください。