売上の仕訳方法は?計上基準や記帳方法、仕訳例も合わせて解説

売上の仕訳は経理業務の基本ですが、計上のタイミングや使用する勘定科目など、ルールや状況に応じた判断に迷う方も多いのではないでしょうか。

本記事では、会計における「売上」の基本的な定義や考え方について解説し、さらに「計上基準」や「三分法」について説明します。

売上仕訳に関する一連の流れと注意点を理解し、経理処理を正確かつスムーズに進めるために、ぜひ最後までお読みください。

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売上の仕訳方法は?計上基準や記帳方法、仕訳例も合わせて解説

会計における「売上」とは?

会計における「売上」とは、企業の収益を示す勘定科目です。会計には資産・負債・純資産・費用・収益という5つの要素があります。売上はこの中の「収益」に分類されるものです。収益とは、商品販売やサービス提供といった本業活動によって得られた対価を指します。

仕訳では「売上」という勘定科目を用いますが、会社の一定期間の経営成績を表す損益計算書(P/L)では「売上高」と表記されるのが一般的です。

売上の計上基準

売上を帳簿にいつ記録するかは、企業の損益を正確に把握するために重要であり、会計上のルールである「計上基準」に従って判断します。

企業会計原則において、収益を認識するタイミングには複数の考え方があります。代表的な計上基準は、以下のとおりです。

収益認識基準

内容

現金主義

現金の受け渡しがあった時点で認識

発生主義

経済的な価値の増減が発生した時点で認識

実現主義

商品やサービスの提供が完了し、対価を受け取る権利が確定した時点で認識

さらに、実現主義を適用する具体的なタイミングには、以下の基準があります。

  • 出荷基準:商品を出荷した時点
  • 引渡基準:顧客に引き渡した時点
  • 検収基準:顧客が検品し合格した時点

企業は自社の業種や取引の実態に合った基準を選択し、継続して適用する必要があるでしょう。

会計基準については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事:会計の発生主義とは?現金主義・実現主義との違いや経理処理をわかりやすく解説

関連記事:企業会計原則とは?7つの一般原則や企業会計基準との違いを解説

売上の記帳方法は三分法が一般的

取引を帳簿に記録する方法として「三分法(さんぶんぽう)」が、多くの企業で採用されています。

三分法は「仕入」「売上」「繰越商品」という3つの勘定科目を用いて、商品を管理する記帳方法です。具体的には、商品を仕入れた際にその原価を「仕入」勘定に、商品を販売した際にはその売価を「売上」勘定に記録します。

さらに、期末に棚卸を行い、売れ残った商品の原価を「繰越商品」勘定で処理します。三分法を用いると、期中の仕入・売上の状況と期末の在庫状況を分けて把握でき、損益計算が容易になるのがメリットです。三分法以外の記帳方法として、以下のものがあります。

  • 分記法:取引ごとに利益を計算する
  • 総記法:仕入れも売上も「商品」勘定で一括管理する
  • 五分法:三分法に「仕入値・戻し」「売上値引・戻り」を加えたもの

売上管理のしやすさから、実務では三分法が広く使われているのが実情です。したがって、売上の仕訳を学ぶ際は、三分法の基本的な流れを理解しておく必要があるでしょう。

三分法を用いた仕訳について詳しくは、以下の記事で解説しています。

関連記事:簿記の三分法とは?分記法や総記法との違い、仕訳方法をわかりやすく解説

売上の仕訳例

ここからは、実際の取引における売上の仕訳例を具体的に見ていきましょう。企業の経済活動においては、状況に応じて適切な勘定科目を用いて正しく仕訳する必要があります。

代表的なケースごとに仕訳例を挙げますので、経理処理の参考にしてください。

現金で売上した場合

商品やサービスを提供し、その場で現金を受け取った場合の仕訳です。たとえば、20,000円の商品を販売し代金を現金で受け取った場合は、以下のように仕訳します。

借方

貸方

現金

20,000円

売上

20,000円

振込で売上した場合

商品を販売し、代金が銀行口座に振り込まれた場合の仕訳を見てみましょう。

たとえば、50,000円の商品を販売し、代金が即時に普通預金口座へ振り込まれた場合、以下のように仕訳します。入金された口座に応じて、「普通預金」や「当座預金」などの勘定科目を使用します。

借方

貸方

普通預金

50,000円

売上

50,000円

掛売の場合

商品を先に渡し、代金を後日受け取る約束で販売した、掛売の仕訳です。たとえば、10万円の商品を掛売で販売した場合、まず売上が発生した時点で以下のように仕訳し、未回収の代金を「売掛金」として計上します。

借方

貸方

売掛金

100,000円

売上

100,000円

後日、代金10万円が普通預金口座に振り込まれた際に、以下の仕訳を行います。

借方

貸方

普通預金

100,000円

売掛金

100,000円

売掛金について、より詳しい仕訳方法が知りたい方は以下の記事をご参照ください。

関連記事:売掛金とはどのような勘定科目?間違えやすい仕訳方法と具体例を解説

納品前に入金があった場合

商品の納品やサービスの提供前に、手付金や内金として代金の一部またはすべてを受け取った場合の仕訳です。

たとえば、商品を納品する前に30,000円の現金を代金として受け取った場合、入金時に以下のように仕訳します。この時点では、まだ売上は確定していないため「前受金」として処理しましょう。

借方

貸方

現金

30,000円

前受金

30,000円

商品を納品し、売上が確定した際に、前受金を売上へ振り替える仕訳を行います。

借方

貸方

前受金

30,000円

売上

30,000円

前受金の特徴や請求書の書き方については、以下の記事もご覧ください。

関連記事:前払いで代金を受け取ったときの請求書の書き方とは?記載項目や注意点を解説

商品が返品された場合

販売した商品が、品質不良などを理由に顧客から返品された場合の仕訳です。たとえば、掛売で販売した商品のうち、5,000円分が返品された場合、以下のように売上仕訳の逆の仕訳を行います。

借方

貸方

売上

5,000円

売掛金

5,000円

なお、現金で販売した商品が返品され、現金を返金した場合、貸方の勘定科目は「現金」を用いてください。

手数料や運搬費などの付随費用がある場合

商品を販売する際は、振込手数料や商品の発送にかかる運搬費など、売上に関連する費用(付随費用)が発生する場合があります。不随費用を売主と買主のどちらが負担するかは、取引の契約条件によって決まります。

まず、売主が付随費用を負担する場合を見てみましょう。掛代金40,000円が普通預金口座に振り込まれた際、振込手数料500円が差し引かれて入金されたケースです。

借方

貸方

普通預金

39,500円

売上

40,000円

振込手数料

500円

次に、買主が付随費用を負担する場合です。運搬費1,000円を買主が負担する契約で、売上代金30,000円に含めて請求する場合は、売上高に運搬費相当額を含めて計上します。

借方

貸方

売掛金

31,000円

売上

31,000円

あるいは、自社がいったん運搬費1,000円を現金で立替え払いし、後日売掛金と合わせて回収する場合は、「立替金」勘定を使用します。

借方

貸方

立替金

1,000円

現金

1,000円

売掛金30,000円と立替金1,000円を普通預金で回収した仕訳は、以下のとおりです。

借方

貸方

普通預金

31,000円

売上

30,000円

立替金

1,000円

付随費用の処理は負担者が誰かによって仕訳が大きく異なります。トラブルを避けるためにも、取引前に契約条件をしっかりと確認しておきましょう。

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会計における売上とは、企業の中心的な活動による収益を指します。多くの企業は三分法による記帳方法を使用しており、取引のパターンによっても仕訳例が異なります。本記事を参考に、売上を適切に仕訳しましょう。

なお売上の仕訳は、企業の健全な経営に不可欠であり、売上処理と密接に関連するのが請求書発行業務です。一連の経理業務を効率化したい場合は「バクラク請求書発行」の活用をおすすめします。

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