請求書の振込手数料は「先方負担(支払い側)」が基本!書き方や依頼文を紹介

請求書で発生しやすいトラブルとして、振込先の記載ミスや振込手数料の取り扱いが挙げられます。

振込先の情報が正確に記載されていない場合、支払いが遅れたり、未実行となったりする可能性があるため、注意が必要です。

この記事では、請求書の振込手数料について解説します。取引先に振込手数料を負担してもらう方法や、当方負担の振込手数料を処理する方法についても解説するので、参考にしてください。

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請求書の振込手数料は「先方負担(支払い側)」が基本!書き方や依頼文を紹介

振込手数料は発注・受注のどちらが負担すべき?

振込手数料は、発注側か受注側のどちらかが負担しなければなりません。原則として、債務者である発注側が支払います。

しかし、必ずしも発注側が支払うとは限らず、どちらが負担者となるかは企業によって異なります。どちらが振込手数料を負担するかは、あらかじめ双方で取り決めた契約に基づくのがルールです。

なお、振込手数料に限らず金銭の負担に関する事項は、契約書に記載して明確にしておきましょう。取引を開始する前に決めておくことで、トラブルの防止に繋がります。

請求書の書き方を重点的に解説!記載すべき項目や注意点とは

振込手数料とは

振込手数料とは、銀行や金融機関を利用して送金を行う場合に発生する料金のことです。振込手数料の額は一律ではありません。送金する金額の大きさや振込先の銀行、振込方法などによって異なります。

そして、振込手数料は、送金を行った側か送金を依頼した側のどちらか片方が負担します。なお、送金を依頼した側が振込手数料を支払うことが一般的です。

法律上は「支払い側」が振込手数料を負担することが原則

法律上は、支払い側が振込手数料を負担することが原則です。これは、民法第484条と第485条において、持参債務の原則が定められていることを根拠としています。

民法第484条および第485条では、契約上の取り決めがない限り、弁済の費用は債務者が負担するとされています。

弁済とは、債務を履行することで債権を消滅させる行為です。これを参考にすると、請求書を受け取る支払い側が振込手数料を負担することが原則となります。

参考:民法 | e-Gov法令検索

場合によっては売り手側(受注側)の負担になることもある

法律的には、発注側である買い手が振込手数料を負担することが原則とされています。しかし、契約上の取り決めがある場合は、その限りではありません。

たとえば、振込手数料を受注側である売り手が負担すると契約で取り決めていれば、その取り決めが優先されます。

このような場合に自社が請求書を発行すると、請求金額から振込手数料を引いた額が送金されます。

なお、売り手負担の振込手数料は適切に処理することが重要です。具体的には、振込手数料の金額を売上から値引く方法と、買い手が立て替えたと扱う方法があります。

参考:民法 | e-Gov法令検索

インボイス制度導入後も振込手数料の負担は変わらない

2023年10月1日から、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まりました。振込手数料にも消費税がかかるため、仕入税額控除を受けるには金融機関が発行した適格請求書が必要です。

しかし、インボイス制度導入後も、振込手数料の負担に関する変更はありません。売り手が振込手数料を負担する旨の契約をしていない限り、原則として買い手が振込手数料を負担します。

なお、売り手負担の振込手数料の処理方法によって、適格請求書の保存などの対応が変わる点には注意しましょう。

振込手数料の負担に関する請求書への記載例とマナー

契約上の取り決めがない場合、振込手数料は振り込み側が負担します。請求書には、振込手数料は振り込み側が負担する旨を明記しましょう。具体的な記載例は以下の通りです。

▼請求書の書き方について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
「請求書の書き方を重点的に解説!記載すべき項目や注意点とは」

株式会社〇〇御中
請求書

請求番号: 12345
請求日: 2024年5月29日

以下の通り、ご請求申し上げます。

項目 数量 単価 金額
商品A 10 1,000円 10,000円
商品B 5 2,000円 10,000円
合計金額: 20,000円

振込先情報:
銀行名: 〇〇銀行
支店名: 〇〇支店
口座番号: 1234567
口座名義: 株式会社△△

恐れ入りますが、振込手数料はお客様の負担でお願いいたします。
株式会社△△
住所: 〒123-4567 東京都〇〇区〇〇町1-2-3
電話番号: 03-1234-5678
メール: info@example.com

振込手数料における負担の種類

振込手数料における負担には2種類あります。それぞれの種類の詳細は、以下の通りです。

当方負担

当方負担とは、料金を支払う側が手数料を負担する方法です。つまり、請求書を受け取った側が振込手数料を支払うことを指します。

具体的には、取引先が売掛金を振り込む場合や自社が買掛金を支払う場合、振込手数料を加えた金額を振り込みます。

たとえば、請求金額が10万円で振込手数料が500円なら、振り込む金額は10万500円です。そして、相手の口座には請求金額通りの10万円が送金されます。

先方負担

先方負担とは、請求書を発行する側が振込手数料を負担する方法です。つまり、請求書を発行する側が振込手数料を支払うことを指します。

具体的には、取引先が売掛金を決済する場合や自社が仕入先に買掛金を振り込む場合、振込手数料を差し引いた金額が入金されます。

たとえば、請求金額が10万円で振込手数料が500円なら、相手の口座に送金されるのは99,500円です。

取引先に振込手数料を負担してもらう方法

取引先に振込手数料を負担してもらう方法はいくつかあります。ここからは、代表的な方法とそれぞれの詳細を解説します。

新規の場合

振込手数料は、買い手側が負担することが原則です。しかし、契約の内容によっては、売り手が振込手数料を負担することも法律的に可能です。そのため、どちらが振込手数料を負担するかをあらかじめ決めてルールを定めておきましょう。

特に、新規に取引を始める相手とは、正式に契約を結ぶ前に振込手数料の負担に関するルールを決めておくことが大切です。

認識の相違によるトラブルを防げる他、契約した後にスムーズな取引を実現しやすくなります。

なお、振込手数料の負担を依頼する場合は、取引先との信頼関係を損なわないように、丁寧なコミュニケーションを心掛けましょう。

具体的には、貴社で振込手数料をご負担いただくようお願いいたしますなどの一文を記載しておくと、良好な関係構築に役立ちます。

参考:民法 | e-Gov法令検索

既存の場合

これまで自社が振込手数料を負担していたが、取引先に振込手数料を負担してもらうように変更を依頼したいという状況は少なくありません。

しかし、振込手数料は貴社でご負担くださいなどと請求書に記載して一方的に依頼することは避けましょう。

既存の取引先として関係性を築いていたとしても、何の相談もなく突然変更すると混乱を招き、トラブルに発展しかねません。

振込手数料の負担を依頼したい場合は、交渉の場を設けて直接話し合うようにしましょう。また、良好な関係性を維持するために、拒否された場合は無理に要求を通さないことも大切です。

相手との関係性が悪くなるとスムーズな取引が実現しづらくなったり、最悪の場合は取引自体がなくなったりする可能性もあるため、注意しましょう。

文書の場合

取引先に振込手数料の負担を依頼する方法として、文書を用いることが挙げられます。具体的な例文は、以下の通りです。

振込手数料ご負担のお願い

謹啓 貴社の益々のご繁栄を心よりお祝い申し上げます。日頃より格別のご愛顧を賜り、誠にありがとうございます。

さて、これまで当社で負担しておりました振込手数料につきまして、20XX年XX月XX日より下記の通りお客様にご負担いただくことになりましたので、ご案内申し上げます。

今後も高品質なサービスをご提供するために、振込手数料をご負担いただく必要が生じました。

弊社といたしましても、今後一層の業務効率化およびコスト削減に努め、お客様にご満足いただけるサービスの維持・向上を目指してまいります。何卒ご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

なお、ご不明な点やご質問がございましたら、どうぞお気軽にお問合せください。

敬具

メールの場合

メールでも、取引先に振込手数料の負担を依頼することができます。例文は、以下の通りです。

[相手の名前]様

いつもお世話になっております。[自分の名前]です。

日頃より弊社サービスをご利用いただき、誠にありがとうございます。

この度、振込手数料のご負担についてお知らせしたく、ご連絡差し上げました。

これまで弊社が振込手数料を負担しておりましたが、今後も高品質なサービスを維持するために、お客様に振込手数料をご負担いただく必要が生じました。

具体的な振込手数料の金額は[金額]となります。

各銀行の窓口やATMの手数料に関する詳細は、以下のリンクまたは添付資料をご参照ください。

[簡単な案内文や用意した資料、URLを記載]

ご不明な点やご質問がございましたら、どうぞお気軽にご連絡ください。

お客様にはご不便をおかけしますが、何卒ご理解とご協力をお願い申し上げます。

[自分の名前]

当方負担の振込手数料を処理する方法

当方負担の振込手数料を処理する際は、適切に対応することが求められます。ここからは、具体的な方法とそれぞれの詳細を解説します。

売上から値引きする方法

当方負担の振込手数料は、売上からの値引きとして処理することが可能です。なお、2023年度の税制改正により、税込1万円未満の値引きの場合は返還インボイスの交付が免除されます。

そのため、振込手数料を値引きとして処理しても返還インボイスの交付は不要です。仕訳方法については、以下の通りです。

科目金額科目金額
普通預金99,568売掛金100,000
売上432  

買い手が立て替えたものとして処理する方法

売り手負担の振込手数料を一時的に買い手が立て替え、入金時に立替金として精算する処理方法もあります。仕訳方法については、以下の通りです。

科目金額科目金額
普通預金99,568売掛金100,000
支払手数料432  

普通預金や売掛金の科目を用いるのは、売上から値引きする方法と一緒です。しかし、売上の部分を支払手数料として換算しています。

まとめ

振込手数料の金額は大きくありませんが、取引先との関係に与える影響は小さくありません。そのため、双方が契約やルールについて把握し、認識に相違が発生しないように注意しましょう。

しかし、取引先が複数あると、振込手数料を負担するのがどちらか把握するのが大変になりがちです。そこでおすすめしたいのが、専用ツールによる業務の効率化です。

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