インボイス制度は中小企業にどう影響する?必要となる対応や判断方法を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-08-13
ビジネスに大きく影響するインボイス制度。後々のトラブル発生を未然に防ぐためには、インボイス制度によって中小企業にどのような影響が及ぶのか把握して、しっかり対応する必要がります。本記事では、インボイス制度が中小企業に与える影響とともに、インボイス発行事業者として登録すべきかなどを詳しく解説します。
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インボイス制度は中小企業にどう影響する?必要となる対応や判断方法を解説
中小企業へのインボイス制度の影響
まずは、請求書の変更点や消費税の端数処理など、インボイス制度が与える中小企業への影響について解説します。
請求書の記載項目の変更
2023年10月からインボイス制度が始まり、課税事業者が仕入税額控除を受けるには、適格請求書を保存する必要があります。適格請求書には、従来の請求書の内容だけでなく、「適格請求書発行事業者の氏名または名称」「登録番号」「税率ごとに区分して合計した金額(税抜または税込)」「適用税率」「税率ごとに区分した消費税額」などを記載しなければなりません。
詳細については以下で解説しているため、あわせて参考にしてください。
※参考:インボイス制度への対応方法も解説 そのまま使える請求書テンプレートのご紹介 – バクラク
なお、従来よりも記載項目が増えるため、特に人手が限られている中小企業では、業務負担が大きくなる可能性があることを留意しておきましょう。
消費税の端数処理のルール化
財務省のホームページでは消費税の相当額に小数点以下(1円以下)の端数が生じる場合を次のように記載しています。『「税抜価格」に上乗せする消費税相当額を算出した際に小数点以下1円未満の端数が生じる場合がありますが、その端数をどのように処理(切捨て、切上げ、四捨五入など)して「税込価格」を設定するかは、それぞれの事業者のご判断によることとなります。』
※出典:財務省|総額表示に関する主な質問
消費税の端数処理は、通常、切り上げ、切り捨て、または四捨五入のいずれかが使われます。どの方法を採用するかは、事業者の裁量によって決定され、消費税の課税標準額や請求書の金額に適用されます。一般的に「切り捨て」を採用している事業者が多い傾向です。消費税率は10%と8%の2種類がありますが、国税の対象は10%の場合7.8%です。企業は消費税を納税する際、端数処理方法を統一する必要があります。
※参考:総額表示に関する主な質問|財務省
なお、請求書発行システムの導入や改修が必要となった場合でも、コストの問題で導入できないケースもありえます。
中小企業のインボイス制度への対応
続いて、中小企業のインボイス制度への対応を「課税事業者」と「免税事業者」に分けてそれぞれ解説します。
インボイス制度、やらないとどうなる?課税・免税事業者の2つのケースで解説!
課税事業者の中小企業のケース
取引先が仕入税額控除を受けるにはインボイスが必要なため、課税事業者になっている場合は早めのインボイス登録が重要です。大企業と取引をしているなら、インボイスが発行できないと取引機会を失う可能性があるため注意しましょう。
また、課税事業者の中小企業は消費税の納税義務が発生するため、納税資金の確保や資金繰り調整などキャッシュフロー管理が必要になります。
免税事業者の中小企業のケース
免税事業者の中小企業はインボイスを登録できないため、課税事業者の取引先へインボイスを交付できません。インボイスを登録する手間はかからないものの、取引先が課税事業者の場合は、取引条件の見直しや課税事業者への転換を依頼される可能性があります。
インボイス未対応のままでは、企業間での力関係が弱い中小企業ほど、取引条件の交渉で不利になりやすいため対策が必要です。
インボイス発行事業者になるメリット・デメリット
インボイス発行事業者になる際はメリットとデメリットを踏まえ、自社の状況に応じて判断しましょう。
【メリット】インボイスを発行できるため取引継続・新規獲得の可能性が高まる
【デメリット】免税事業者が課税転換すると消費税の納付義務が生じるうえ、経理業務が複雑化する
売り手側のメリット・デメリット
まずは、売り手側がインボイス発行事業者になるメリット・デメリットから見ていきましょう。
■メリット
- 適格請求書の発行により、大企業や法人顧客などの取引先から信頼性が向上する
- 適格請求書を発行できるため課税事業者として契約が継続しやすくなる
- 仕入れに対する消費税の控除が可能となり、実質的な税負担を軽減できる
■デメリット
- 売上に対する消費税の納税義務が発生し、キャッシュフローに影響を及ぼす
- 請求書の発行や保存、取引先への適格請求書の提供など事務作業が増加する
- インボイス対応のため、会計システムや請求書発行システムの改修が必要となる場合がある
買い手側のメリット・デメリット
次に買い手側がインボイス発行事業者になるメリット・デメリットを解説します。
■メリット
- 適格請求書を受け取ることで仕入れに対する消費税が控除される
- 取引内容が明確に記載されるため経理処理や税務申告が容易になる
- 財務管理を効率化できる
■デメリット
- 免税事業者からの仕入れは仕入税額控除が適用されないため、取引先の選定が制限される可能性がある
- 適格請求書の受領と保存が必要となり、書類管理の負担が増える可能性がある
- 取引先が免税事業者の場合、インボイス発行に対応できないため、取引条件の再交渉や取引先の変更が必要
中小企業がインボイス登録すべきかの判断
中小企業がインボイス登録すべきかの判断ポイントは、自社の取引先・販売先により次のように異なります。
- 事業者のみ:インボイス交付を求められる可能性が高いため登録がおすすめ
- 一般消費者のみ:交付を求められる可能性が低いため、登録の必要性も低い
- 両方と取引している場合:上記を踏まえて売上割合から判断する
なお、インボイス発行業者に登録する場合は、まず課税転換を行い、インボイス発行事業者の登録申請、インボイス制度に対応したシステム導入という流れで進める必要があります。詳細は以下をご参照ください。
インボイス制度に伴う中小企業の負担軽減措置
現在は、インボイス制度への移行に関連して、中小企業の負担軽減を目的とした次のような緩和措置がとられています。
インボイス制度の経過措置における80%控除とは?適用要件や計算方法
2割特例
課税転換した事業者は、条件を満たせば消費税額を売上税額の2割にすることが可能です。たとえば、売上にかかる消費税額が50万円なら、そのうちの20%である10万円を消費税として納めます。ただし、2割特例の適用期間は2026年9月30日までです。期間外には特例が適用されないため注意しましょう。
※参考:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要|国税庁
各種補助金
中小企業がインボイス制度に対応しやすいよう、下記のように補助金も調整されています。
■小規模事業者持続化補助金
税理士相談・機械装置導入・広報などの費用を対象に、小規模事業者持続化補助金上限が50万円加算されました。
■IT導入補助金(デジタル化基盤導入類型)の下限額撤廃
会計ソフトなどの導入費用は下限なし~最大450万円(2024年度)。これまでは補助下限額が5万円と定められていましたが、インボイス制度の開始により補助下限額が撤廃されました。
インボイスの保存・交付の免除
条件によっては下記のようにインボイスの保存・交付が免除されます。
■少額特例
仕入額1万円未満なら、一定の事項を記載した帳簿を保存のみで仕入税額を控除できます。
適用対象期間:令和11年9月30日まで
■交付義務の免除
返品・値引・割戻しなどの売上にかかる対価の返還を行った場合、インボイス発行事業者であれば、1万円未満なら適格返還請求書の交付が免除されます。
まとめ
中小企業はインボイス制度の開始により、請求書の記載項目や消費税の端数処理などが変化しました。国では、事業運営の急激な変化をサポートするために、期間限定ですが中小企業に向けた負担軽減措置も行っています。
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