電子帳簿保存法とは?2024年義務化の内容や注意点などわかりやすく解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-12-09
2022年1月に電子帳簿保存法が改正されました。準備期間として用意された2年の猶予を終えて、2024年1月から本格的に義務化がスタートしていますが、正しく対応できているか不安な方もまだ多いかもしれません。
この記事では、電子帳簿保存法について、義務化の内容や、データ化のメリット、注意点などを解説します。ぜひ役立ててください。
電子帳簿保存法とは?2024年義務化の内容や注意点などわかりやすく解説
電子帳簿保存法をわかりやすく解説
電子帳簿保存法が施行されたのは1998年7月のことです。税務関係帳簿書類のデータ保存に関するルールが定められており、以後何度かの改正が行われてきました。
電子帳簿保存法の対象となる保存書類には、国税関係帳簿、貸借対照表などの決算関係書類と、契約書や領収書といった取引関係書類などがあります。これら所得税法・法人税法・消費税法に関する帳簿書類は、従来は「紙」での保存が義務づけられていました。
電子帳簿保存法はこれらの書類を紙ではなく、電子データで保存できるようにするための法律です。
2024年から電子取引のデータ保存が義務化
電子帳簿保存法は、施行以来改正を重ねています。2022年の改正では、電子取引における電子データ保存が「義務規定」とされたのが大きな特徴です。
この改正は2024年1月からの書類に適用されており、2023年12月末までは移行期間として紙での保存が容認されていました。しかしその移行期間も終了したため、現在はデータ保存が義務化されています。
なお、この改正で、電子保存に対する税務署長の事前承認制度も廃止されています。以前は帳簿書類を電子保存する場合、事前に管轄の税務署長による承認を受ける必要がありました。しかし、事業者の事務負担を軽減するため、不要とされました。
電子帳簿保存法の対象となる事業者
電子帳簿保存法の対象となる事業者は、法人税を納める普通法人、公益法人、あるいは所得税の納税義務がある個人事業主などです。いずれの場合も事業規模を問わないと規定されているため、原則としてすべての事業者が電子帳簿保存法の対象となるでしょう。
ただし、電子データを一切取り扱わない企業や個人事業主は、例外的に対象外と規定されています。
電子帳簿保存法による「電子保存」の3つの区分
電子帳簿保存法によれば、電子保存は以下の3種類に区分されます。
1.電子帳簿等保存
電子帳簿等保存とは、電子システムを利用して作る帳簿や書類を、電子データのままで保存することです。
例えば、会計システムで作成した仕訳書や総勘定元帳、貸借対照表、損益計算書などは、紙に印刷して保存するのではなく、電子データとして保存されていれば問題ありません。
2.スキャナ保存
3.電子取引
電子取引は、取引において紙の書類を発行せず、電子データでやりとりすることです。この場合、請求書などの取引関連書類は電子データで作成されているため、そのまま保存すれば良いことになります。
なお自社で発行したものと、取引先が発行したもの、双方が保存対象です。
電子帳簿保存法で2024年から義務化されている内容
電子帳簿保存法で2024年から新たに義務化された内容は、以下のとおりです。
「電子取引」は電子データのまま保存する
「電子保存」の3つの区分のうち「電子取引」については、取引の際に使用した書類を電子データのまま保存することが義務づけられました。
これによって、電子メールなどで受領した書類を印刷し紙で保管することは、法的に認められなくなります。
「真実性の確保」が必要である
電子保存された書類には、その書類が本物であるという印が必要です。電子的な書類の真実性を確保するための技術を、タイムスタンプといいます。
タイムスタンプは名称のとおり、電子的な書類につけられる日時の刻印です。タイムスタンプは、刻印時刻に電子文書が存在していたことと、刻印時刻以降に当該電子文書が改ざんされていないことを証明します。タイムスタンプ刻印時の情報と、刻印時以降の情報を比較し、相違がなければ改ざんされていないと判定できるのです。
タイムスタンプについては、以下の記事で詳しく解説しているので参照してください。
電子帳簿保存法のタイムスタンプとは|仕組みや改正の変更点、不要なケースなど解説
「可視性の確保」が必要である
可視性の確保とは、保存した電子データを必要な時に速やかに表示できる状態を保つということです。
保存した帳簿や書類の電子データは、可視性を確保できるよう適切に管理しなければなりません。例えば、パソコンなどの機材にいつでも操作できるようマニュアルを備え付けて誰でも操作できるようにしておいたり、データ量が多い場合には目的の書類を迅速に探し出せるように検索機能を確保したりする必要があります。
「電子帳簿等保存」と「スキャナ保存」導入のメリット
電子帳簿等保存やスキャナ保存は、現状では「任意」とされています。しかしいずれも、取り入れればメリットが多く得られるでしょう。以下では、電子帳簿等保存やスキャナ保存を導入するメリットを解説します。
省スペース化を進められる
帳簿類や取引書類は、長期間にわたって保管が必要なものです。従来どおり紙で保管する場合は、保管スペースを確保しなければなりません。
一方、電子帳簿等保存やスキャナ保存を使ってデータで保存すれば、省スペース化を進められます。空いたスペースに必要なものを収納したり、オフィスを広く使えたりといったメリットがあるでしょう。
業務の効率化を図れる
紙の書類は、管理や保管に人的リソースを必要とします。
例えば、紙の書類を保管するにはファイリング作業が必要です。一方、書類が必要になった際は、該当するものを探す作業が発生します。廃棄のサイクルが来た場合は破棄の作業も必要でしょう。データ化することによってすべての作業が不要になり、リソースをほかに振り分けることができます。
コスト削減につながる
書類を電子化することによって、業務効率化による人件費、保管スペースのコスト削減が可能となります。
人的リソースはもちろん、紙の保管スペースもまたコストの一つです。同時に、印刷を必要としない電子的取引を主にすれば、紙代やインク代、取引先への郵送費なども削減できるため利点が大きいでしょう。
電子帳簿保存法に対応する際の注意点
電子帳簿保存法に対応するためには、いくつかの注意点があります。ここでは電子帳簿保存法の対応に関する注意点やポイントを解説します。
条件を満たせば「真実性の確保」「可視性の確保」は必要ない
ここまでで、電子帳簿保存法では「真実性の確保」と「可視性の確保」が必要であると解説しましたが、一定の条件を満たせばいずれも免除されます。条件とは、以下の2つです。
- 保存要件を満たせなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請等は不要)
- 税務調査等の際に、電子取引データのダウンロードの求め、およびその電子取引データを印刷した書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができる場合
これらの条件を満たしたとしても、電子取引においては元の電子データをそのまま保存する必要があることにも注意しましょう。
初期投資が必要である
電子帳簿保存法に対応するためには、ある程度の初期投資が必要です。データ管理システムの導入そのものにコストがかかるだけでなく、システムを問題なく長期運用していくためには従業員のスキル向上や研修などに教育コストをかける必要もあるでしょう。
ただし電子帳簿保存法に対応するにあたって永続的に削減できるコストは大きく、長期的にみるとメリットが多いといえます。
電子帳簿保存法に関連する罰則
電子帳簿保存法には、違反した場合の罰則規定が設けられています。ここでは、電子帳簿保存法関連の罰則を3つ解説します。
1. 会社法で過料が科される
電子帳簿保存法に違反すると、会社法(会社の設立や運営、仕組みなどについて定められた法律)にも違反する場合があります。
会社法第九百七十六条に記載されている帳簿や書類の記録や保存に関連する規定によると、国税関係の帳簿書類の保存を適切に行っていない場合、100万円以下の過料が科せられる可能性があります。電子帳簿保存法を守っておらず、電子取引の情報を電子データで保存していない場合はこの罰則に該当する恐れがあるので注意が必要です。
2. 青色申告の承認が取り消される
電子帳簿保存法への違反が明らかになると、控除の大きな青色申告の承認が取り消される場合があります。
ただし、青色申告の取り消しは「電子データの一部を保存せずに書面で保存した」というだけでは適用されません。従来同様に帳簿への記帳が正しく行われており、確定申告にも反映されているケースで、保存すべき内容が書面などの保存データで確認できれば、承認取り消しまでに至ることはないでしょう。
一方、「要請があっても帳簿書類を提示しない」「保存要件に従っていない」などの違反は承認取り消しの可能性があるため注意が必要です。
3. 追徴課税が発生する
電子帳簿保存法を守らず、電子データの改ざんや隠蔽などが判明した場合は、追徴課税の対象になります。税務調査が入った際に、書類に隠蔽や偽装などが発覚した場合は、申告漏れなどに課される重加算税(35%)に加えて、ペナルティとして10%が加重となります。
2022年の法改正には、このような帳簿の不正や悪用を防ぐための罰則強化の意図があります。悪質と指摘された場合は、それなりのペナルティが課せられるため注意しましょう。
まとめ
電子帳簿保存法は、電子取引のデータをそのまま保存するための法律、と考えるとわかりやすいでしょう。ほぼすべての事業者が対象となる大規模な法律ですが、対応することで大きなメリットが得られます。
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