領収書の書き方・発行・保存のルール|インボイス・電子帳簿保存法への対応も解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-10-11
領収書は事業活動に欠かせない重要書類です。経理担当者なら書き方や発行、保存のルールについて、しっかり知っておきたいところでしょう。この記事では、初めて経理を担当する方に向けて、領収書の書き方や発行、保存の基本ルールを解説します。
後半では、話題のインボイス制度や改正電子帳簿保存法におけるルールの変更点、領収書を電子化するメリット・方法なども合わせて説明するため、参考にしてください。
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領収書の役割
代金の受け渡しが行われ、完了したことを示す証拠書類が領収書です。領収書には、同じ内容の請求書を2度送る二重請求や、情報の改ざんなど経理の不正を防ぐ役割があります。領収書がなければ、支払いが済んでいることを客観的に示すことは困難です。
「支払った」「支払っていない」の行き違いが生じた際、支払う側の過払いが生じる可能性があります。領収書は税額の算定にも関係する書類です。正しい書き方ができるよう、ルールを十分に把握する必要があります。
領収書の発行・保存ルール
領収書の発行や保存には一定のルールがあります。以下の内容を押さえて、正しい発行・保存を行いましょう。
領収書を求められたら応じる必要がある
買い手から領収書の発行を求められたら、売り手は応じる必要があります。これは、民法486条で「弁済したものは、弁済を受領した者に対して受取証書の発行を請求できる」と定められているルールです。領収書の発行と金銭の受け渡しは、「同時履行の原則」があります。つまり、売り手が領収書の発行を拒否するなら、買い手は代金の支払い拒否が可能です。
法人は領収書の7年保管ルールがある
領収書は、税務上の帳簿書類に該当する書類です。法人における帳簿書類については、法人税法のルールに則り、7年間保存する必要があります。保存期間は領収書の日付から7年ではなく、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年です。例えば、事業年度末が2023年3月31日の法人の場合、領収書の保存期間は2030年5月31日までとなります。
条件を満たせばレシートも領収書として認められる
実は税法上では、書面に「領収書」と書かれていないレシートも、次の条件を満たせば領収書とみなされます。
- 発行者
- 日付
- 取引内容
- 金額 など
レシートは領収書とは違い宛名があるため、正式書類と捉えられる傾向があります。しかし、実際にはどちらも有効な証憑書類です。
電子的な領収書はデータ保存する
2022年1月1日施行の電子帳簿保存法の改正によって、電子取引で受け取った領収書は、電子データのまま保存することが義務化されました。従来は、データで受け取った領収書を印刷して、紙で保存することが許されていました。
しかし改正後は、電子データで受け取った領収書は必ず、電子保存しなければなりません。この電子保存義務化の猶予は2023年12月までですので、状況に応じた準備を進める必要があります。
領収書の記述ルール
領収書には記述ルールがあります。以下では、押さえておきたい、基本的な8つの記述ルールを解説します。
ルール1.タイトル
タイトルは「領収書」と記載します。記載位置は上部左側が一般的です。誰が見ても領収と判別できるように記述しましょう。近年、外国人旅行者をはじめとした、海外の人向けの領収書では、英語での記述を求められるシーンも増えています。
ルール2.宛名
領収書には会社名と部署名を省略せず正式名称でを記載してもらいます。例えば会社名が「株式会社◯◯」であれば、「(株)◯◯」は正式名称ではないため書き直してもらいましょう。また「上様」などの不明確な宛名は避け、支払った人の明確な名前を使用しましょう。
ルール3.日付
代金の受け渡しが行われた日付を記載します。記載方法は西暦と和暦、どちらでもかまいません。例えば、令和5年7月1日に取引が行われた場合は、「令和5年7月1日」もしくは「2023年7月1日」と記載します。
ルール4.金額
金額の箇所は改ざんを防ぐために、以下のような細かいルールが設定されています。
- 金額の先頭には「¥」または「金」をつける
- 数字の3桁ごとに「,」で区切る
- 末尾に「※」「-」「也」などをつける
金額は数字だけでなく、「金壱萬円也」や「金参千弐百円也」など、漢数字で記入可能です。算用数字なら、「¥10,000-」のような形でも記載できます。
ルール5.但し書き
但し書きでは、具体的に何を支払ったか記載する項目です。「品代」「お品代」のような、あいまいな記載は避けます。「手土産お菓子代として」「ギフト代として」など、第三者が見ても何なのかわかるよう、詳しく記載しましょう。
ルール6.内訳
内訳とは、税率ごとに合計した対価の額を記載することです。記載金額は税込でも税別でもかまいません。ただし、税込と税抜では印紙税も異なるため、正確な記載が重要です。また、軽減税率対象品目の場合は税率ごとに記載しましょう。
ルール7.発行者
発行者の欄には、売り手に関する以下の情報を書きます。
- 会社名
- 店舗名
- 住所
- 電話番号
押印は必須ではありません。しかし、偽造防止や商習慣として、会社の角印で押印することが一般的です。また、押印は発行担当者の印鑑を使用する場合もあります
ルール8.収入印紙
5万円以上の領収書には収入印紙の貼付が必要になります。金額別の収入印紙の金額は下表の通りです。収入印紙については、以下の記事で詳しく説明しています。
参考:「収入印紙とは?購入場所や方法、必要なケースや正しい貼り方など徹底解説!」
契約金額 | 印紙税額 |
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円を超え200万円以下 | 400円 |
200万円を超え300万円以下 | 600円 |
300万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 2,000円 |
インボイス制度の適格請求書と認められる領収書のルール
インボイス制度とは、複数税率に対応したものとして開始される仕入税額控除の方式です。インボイス(適格請求書)は、売り手が買い手に対して、正確な消費税率や消費税額などを伝えるための書類を指します。
インボイス制度の適格請求書と認められる領収書には、一定のルールに則ったフォーマット整備が必要です。具体的にどのようなルールがあるか、以下で3つ解説します。
ルール1.登録番号の記載
適格請求書として認められるには、適格請求書発行事業者の氏名または名称、登録番号の記載が必須です。登録番号の取得には税務署への申請が必要になるので、あらかじめ準備しておく必要があります。
ルール2.税率ごとに区分した消費税額
複数税率導入によって、8%と10%が混在することになりました。今までの請求書等保存方式の記載事項に加えて、以下の記載が必要です。
- 軽減税率の対象品目である旨
- 税率ごとに合計した対価の額
例えば、請求額が税抜き120,000円の場合、下表の消費税3,200円と8,000円が「税率ごとに区分した消費税額」に該当します。
8%対象 | 40,000円 | 消費税 | 3,200円 |
10%対象 | 80,000円 | 消費税 | 8,000円 |
ルール3.適用税率
領収書は、税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜きまたは税別)と、適用税率を記入します。適用税率は代金の10%が原則です。食品(外食を除く)や消耗品費などは、8%の軽減税率が適用されます。
インボイス制度で用いる適格請求書では、10%と8%を区分して記入します。仕入の際には、消費税額が10%と8%のものが混在するため、記入の際には注意しましょう。
領収書発行を電子化する必要性・メリット
ここまで領収書の発行・保管・記述のルールについて解説してきましたが、領収書は電子化して保管すると、ルール違反をなくしつつ業務の効率化が可能です。そこで、領収書発行を電子化する必要性とメリットを解説します。
領収書の発行業務を効率化できる【発行側】
領収書を電子化すると、手記入や封筒の宛名を書く手間がいりません。結果として、作成から送付までに要する一連の流れを効率化することが可能です。また、手間やコストの観点からも、電子化には多くのメリットがあります。例えば、領収書の印刷や封入、発送など、郵送までにかかる手間とコストも不要です。
印紙税がかからない【発行側】
電子発行の領収書は、印紙税法の「文書」に該当しません。したがって、印紙税がかからない点がメリットです。領収書においても、電子ファイル(電子データ)で発行すると文書作成には該当せず、印紙税は非課税となります。
領収書の保管・管理が容易になる【受け取る側】
領収書の電子化は、受け取る側にとって保管・管理が簡単になるメリットがあります。紙で領収書を保管する場合、ファイルや段ボールに入れてまとめる必要がありました。しかし、電子化によって保存スペースは必要ありません。スキャンして保存する手間もいらないため、電子化の方が受け取る側の保管・管理業務を効率化できます。
領収書の電子化には経費精算システムが便利
税制改正で領収書の電子保存が可能になってから、領収書の電子化に対応する経費精算システムが増えています。経費精算システムを導入すると、領収書を保管する手間やスペースが省けるため便利です。また、検索性も向上し、精算業務が効率化できる点でも注目されています。
今後、経費精算システムの導入を検討する場合は、インボイス制度と電子帳簿保存法に対応した製品を選ぶとよいでしょう。
まとめ
領収書の書き方や発行、保存にはルールがあるため注意が必要です。近年は法改正し、電子化が義務付けられるケースもあります。しかし実際には、「通常業務に加えて、新制度にも対応できるか不安」「何か使いやすいツールがあれば導入したい」と考えるケースは多いのではないでしょうか。
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