勘定科目「通信費」とは何?ネット料金や携帯電話代などの仕訳・経理処理の例
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-10-16
- この記事の3つのポイント
- 「通信費」には電話代・インターネット料金・郵送代・放送受信料などが含まれる
- 「通信費」と他の科目(「荷造運賃」や「広告宣伝費」など)の使い分けを解説
- 実際に経理処理で「通信費」を仕訳する例も紹介
「通信費」は、企業の経理業務において最も多く仕訳されているといわれる勘定科目です。しかし、どこからどこまでの項目が通信費として該当するのか、自信をもって範囲をはっきりと説明できない経理担当者も、少なくありません。
本記事では、通信費の概要や内容、仕訳例など解説します。通信費の全体像とその細部を正しく理解し、的確な仕訳につなげられるよう、ぜひ参考にしてください。
勘定科目「通信費」とは?
「通信費」とは、業務の範囲内で必要とされる通信や配送にかかわる費用の勘定科目です。通常、業務を行ううえでは、従業員同士や取引先といった社内外で多数のコミュニケーションが発生します。例えば、電話での通話やFAX送信、メールでのやり取り、郵便物などといった通信手段の利用は必要不可欠です。
また、現代のビジネスシーンにおいては必須である、インターネットやプロバイダの利用料金なども通信費で仕訳されます。そのため、企業の経理業務において、通信費は最も頻繁に仕訳されている勘定科目と言えるでしょう。
通信費には具体的に何が含まれる?対象費用の範囲を解説
通信費には主に以下の費用が仕訳されます。
- 電話料金・FAX代
- インターネット料金・プロバイダ料金
- 郵送代・宅配代
- テレビ・有線放送の受信料
より深く知るために、以上のを4つのカテゴリーについて詳しく解説します。
1. 電話料金・FAX代
固定電話・携帯電話(スマートフォン)の違いを問わず、業務で利用している電話でかかった通話料は、通信費として仕訳されます。かつては、携帯電話が普及する以前に使われていたテレホンカードの代金も、通信費に仕訳されていました。
通話料以外に、FAX送信で発生する費用も通信費に含まれます。今では、FAXに代わってメールやチャットツールなどでのやり取りが増えたものの、業界や企業によってはまだまだFAXが活用されているケースは少なくありません。
▶︎電話料金の勘定科目とは? 固定電話やスマートフォンのケースも!
2. インターネット料金・プロバイダ料金
業務に使用されるインターネット関連の費用も、通信費に該当します。インターネット費には、プロバイダーに支払う毎月の使用料金はもちろんのこと、契約の際にプロバイダーに支払った入会金や、回線を開通するための工事費なども含まれます。
また、現在は各種管理業務やデータ通信などの目的で、クラウドサービスを利用するケースが増えてきましたが、そのサービス利用料もインターネット費として計上される項目です。
3. 郵送代・宅配代
手紙や文書、小包などを郵送する際に発生する費用や、商品や製品などを宅配便で配送する際の宅配代も、通信費として計上できる項目です。
なお、郵送代には、切手そのものや、切手が印字されているハガキの購入料金も含まれます。逆に、切手が印字されていないハガキの購入料金は、通信費には該当しません。社内での手紙や文書・物品のやり取りに利用される社内便、書類や小型郵便物などを近距離に配送する際に便利なバイク便の費用なども、通信費に該当する項目です。
▶︎切手は経費にできる?勘定科目と仕訳の例・消費税の扱い方を解説
4. テレビ・有線放送の受信料
社内にテレビが設置されている場合、個人契約と同様、毎月の受信料がNHKから請求されます。その際、NHKの受信料は通信費として計上できます。また、有線放送やケーブルテレビ、契約している場合、その受信料も通信費として計上できる費用の1つです。
通信費と間違えやすい勘定科目
ここまでは通信費に該当するさまざまな費用を解説してきましたが、逆に通信費ではないものの、通信費として間違えやすい勘定科目がいくつかあります。具体的な内容を1つずつ見ていきましょう。
1. 通信費と「消耗品費」や「リース費」との違い
通話やFAX通信に使用される固定電話機や携帯電話の本体、コピー機、パソコンを購入またはリースした場合、本体代は通信費としては計上されません。本体を購入した場合は「消耗品費」、リースした場合は「リース費」に該当するからです。
また、前述のとおり郵送に必要な切手代は通信費として計上されるものの、郵送される封筒や切手の印字がないハガキ、便せんなどの購入費用は、通信費ではなく消耗品費として計上される項目です。切手が印字されているハガキはあくまで通信費として扱われるので、注意しましょう。
2. 通信費と「租税公課」の違い
業務に使用する郵送費や切手代は通信費として計上されるものの、郵送される対象となる課税文書に貼り付けられた収入印紙は、印紙税に該当します。例えば、不動産売買契約書、土地賃貸借契約書、建築5万円以上の売上代金の領収書などはいずれも課税文書なので、収入印紙が必要となります。収入印紙そのものは、通信費ではなく「租税公課」として取り扱われます。
3. 通信費と「広告宣伝費」の違い
郵便代や宅配代などは通信費に含まれるものの、会社の宣伝を目的とした印刷物や物品などの郵送・配送に使用される場合は、「広告宣伝費」に該当します。
例えば、宣伝目的の文書を送信した際のFAX代や、DM(ダイレクトメール)を配布した場合の送料などは、広告宣伝費です。ただし、企業によっては、商品販売の促進や売上アップなどの目的に使用する費用を、広告宣伝費ではなく「販売促進費」として計上するケースもあります。
4. 通信費と「福利厚生費」の違い
通信費と間違えやすい出費の中には、「福利厚生費」に該当するものもあります。例えば、従業員への祝電やお悔やみの電報などは、一見通信費と考えられがちですが、実際には福利厚生費です。また、在宅勤務をする従業員に、インターネットの接続費などを在宅手当として支給している場合も福利厚生費に該当します。
5. 通信費と「荷造運賃」の違い
通信費と混同して間違えやすい勘定科目に「荷造運賃」があります。特に、郵便物に関する仕訳では、どちらの科目を利用するべきか悩むシーンもあるでしょう。荷造運賃は、主に自社の商品や製品の出荷に関わる包装や輸送に関連する包括的な費用です。
例えば、商品発送の際の梱包に必要な段ボールやガムテープなどの資材を購入する費用や、運送会社や郵便局に支払う発送費用などが該当します。一方、通信費は上記以外の郵送物(はがきや書面など)に使われるのが一般的です。両者の厳密な定義はありませんが、郵送する物が「書類」であるか「商品(製品)」であるか、で仕訳のルールを設定するのが良いです。
通信費に関する仕訳例
経理業務では、どのように通信費を判断して仕訳しているのでしょうか。いくつかの例を用いて解説するので、実際の業務における判断材料として役立ててください。
ケース1. 固定電話代を支払った
第1の例は、固定電話代の支払いです。
例)社内の固定電話料金として、税込みで55,000円が法人の口座から引き落とされた場合:
単純に考えれば、通信費は55,000円となりますが、通信費は課税仕入のため、税抜き処理が必要です。消費税率を10%として税抜処理で計上すると、通信費は50,000円、仮払消費税は5,000円になります。なお、摘要には「〇月分固定電話料金」などとして記載し、いつ・何のための出費であったかを明記しておきましょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
9月31日 | 通信費 | 50,000円 | 普通預金 | 55,000円 | 9月分固定電話料金 |
仮払消費税 | 5,000円 |
ケース2. 切手代を支払った
2つ目の例は、切手代の支払いです。
例)84円切手20枚を現金で購入した場合:
消費税率を10%として税抜き処理で計上すると、通信費は1,540円、仮払消費税は140円として計上されます。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
9月31日 | 通信費 | 1,540円 | 現金 | 1,680円 | 切手 |
仮払消費税 | 140円 |
ただし、期末時点で未使用の切手がある場合は、その分を通信費ではなく、以下のように「貯蔵品」として別途仕訳をする必要がある点に注意しましょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
9月31日 | 貯蔵品 | 1,680円 | 通信費 | 1,540円 | 切手 |
仮払消費税 | 140円 |
ケース3. インターネット費を支払った
3つ目の例は、インターネット費の支払いです。
例)社用携帯ではなく個人携帯を使用して業務上の連絡をしている従業員に対し、何割かを会社の経費として負担する場合:
例えば携帯の通信費用が10,000円で、業務に関わる割合が60%、個人(プライベート)での使用が40%を占める場合は、通信費は6,000円、事業主貸は4,000円として仕訳を行います。なお、摘要には「〇月分インターネット費」などと記載して、用途・内容を明確にしておきましょう。
借方 | 貸方 | 摘要 | |||
9月31日 | 通信費 | 6,000 | 普通預金 | 10,000 | 9月分インターネット費 |
仮払消費税 | 4,000 |
通信費を計上する際における3つの注意点
経理業務で通信費を計上する際、押さえておきたい注意点がいくつかあります。3つのポイントに分けて簡単に解説します。
1. 電子マネーで支払った場合の勘定科目
社用携帯の使用料金は通信費として計上されますが、社用携帯に付帯している電子マネーに関しては注意が必要です。付帯の電子マネーで何かを購入した場合は、購入の目的に応じて勘定科目を分ける必要があります。通信費として一括りにできるものと従業員が勘違いしている可能性もあるため、用途によって勘定科目が異なる点を事前に説明しておくのがおすすめです。
2. 通信費の課税区分
通信費の課税区分がどうなっているかも、注意すべきポイントです。固定電話や携帯電話の通話料、インターネット料、郵送代など、国内で発生する通信費については、消費税区分は「課税」として取り扱われます。
しかし、国際電話や国際郵便など、国内をまたいで海外の相手とのコミュニケーションで発生する通信費の課税区分は「免税」です。さらに、国内をまたがず、海外のみで発生するコミュニケーションに要する通信費は「非課税」としての取り扱いになります。
3. 通信費を計上するタイミング
通信費を計上するタイミングも、業務上意識すべき注意点です。原則として、通信費は利用月に計上するものです。例えば、5月に利用した携帯電話の使用料金は、5月分の経費として計上します。とはいえ、携帯電話の使用料金などは、おおかた利用月の翌月に引き落とされます。
そのため、いったん帳簿上では、携帯電話の使用料金を「未払い金」として計上したうえで、必ず支払日に未払い金から「普通預金」に振り替えるようにしましょう。
まとめ
会社業務のやりとりに関わる費用は、基本的に通信費という勘定科目で仕訳されます。通信費に該当するのは、電話の通話料やインターネット費、郵送代などです。ただし、一部には通信費として間違えて計上されがちなものもあるので、注意が必要です。ぜひ、今回ご紹介した仕訳例を経理業務の参考にしてください。
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