雑損失とは?勘定科目の定義や金額の目安と仕訳例を紹介
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-11-01
雑損失とは本業との関連がなく、比較的少額で重要性が低い出費を指します。費用を計上する際に該当する勘定科目がなければ、雑損失を適用するとよいでしょう。この記事では、雑損失とは何か、該当する項目の例、仕訳方法などを詳しく解説します。併せて雑損失処理の注意点も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
雑損失とは?勘定科目の定義や金額の目安と仕訳例を紹介
雑損失とは?
雑損失とは何か、雑損失の定義や雑費・雑損控除との違いを解説します。
雑損失の定義
雑損失は本業の売上に関係のない「営業外費用」に区分される科目です。通常の業務活動外で突発的に発生した損失・支出に対して使用されます。出費のうち少額で重要性が低く、既存の勘定科目に分類できないものは雑損失として仕訳処理するとよいでしょう。ただし、雑損失を多用すると会計処理が不透明になるため、多額で影響が大きい出費については独立した勘定科目を立てる必要があります。
雑損失の定義について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
「雑費とは何を含む?仕訳の具体例と消耗品費・予備費など他の科目との違いを解説」
雑損失・雑費の違い
雑損失と混同しやすい勘定科目に「雑費」があります。この2つの科目は、「本業の売上拡大に関わる支出かどうか」が区別するポイントです。雑費は通常、本業の売上を増やす過程で発生する「経費」で、金額が比較的小さく、特別な勘定科目を設定する必要がない場合に使用されます。雑費の例は下記のとおりです。
- 文房具や日用品の費用
- 機材などの一時的なレンタル代
- クリーニング代
- 引越し料金
- ごみ処理代・廃棄物処理の費用
一方、雑損失は本業の売上拡大に関わらない点で異なります。
雑損失・雑損控除の違い
雑損失と混同しやすい言葉に「雑損控除」があります。雑損控除は災害や盗難、横領などによって、生計に関わる資産に損害が生じた際に受けられる所得控除のことです。雑損控除を利用しても控除しきれない損失は雑損失の金額と呼ばれます。
雑損失の金額は発生した事業年度の翌年から、3年間の繰り越しが認められます。例えば、大きな被害を受けて雑損失が高額になった場合は、翌年以降も雑損控除の繰り越しが可能です。
雑損失に該当する項目の例
雑損失に該当する項目の例は下記のとおりです。
- 違約金・科料・過料・罰金・反則金の支払
- 損害賠償金・補償金の支払
- 廃材処分の支払
- 弁償の費用
- 現金不足
- 自然災害による設備破損の修繕費用
- 火災による商品の損害費用
- 会社備品の盗難による損害費用
科料とは1,000円以上1万円未満の金銭納付を命じる刑罰、過料は行政上の秩序維持のため制裁として金銭納付を命じるものです。科料は前科が付きますが、過料では付かないという違いがあります。
雑損失に該当する項目をいくつか解説します。
現金過不足
現金過不足とは帳簿とレジ内の現金、現金出納帳と実際の残高など、記載された金額と実情が合わない状態のことです。現金が少ない場合は現金不足、多い場合は現金過剰と呼びます。現金過不足による損失は雑損失として計上可能です。会計実務では現金過不足の勘定科目を用いて処理しておき、期末処理の際に雑損失へ振り替えます。
示談金・慰謝料など
交通事故などによる示談金・慰謝料・損害賠償金などの支払は雑損失として計上できます。ただし、示談金・慰謝料・損害賠償金が経費として認められるのは、事故に業務との関連がある場合のみです。また、事故を起こした人物に重大な過失があったり、故意に事故を起こしていたりすると、示談金・慰謝料・損害賠償金でも経費にはできません。
少額のファクタリング手数料
ファクタリングは和訳すると債権買取という意味です。売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いた現金を得られる資金調達方法です。売掛とは取引先から支払われる代金を、取引の後からまとめて請求する方法を指します。売掛債権は売掛の代金を受け取る権利のことです。
ファクタリングにかかる手数料は通常、「売上債権売却損」という勘定科目で処理しますが、比較的少額なら雑損失としての計上が可能です。
少額の解体費用
事務所やオフィス、倉庫など建物の解体費用は特別損失として計上し、固定資産除却損として算入することが原則です。ただし、重要性が低く、比較的少額の解体費用であれば、特別損失ではなく雑損失として計上することもあります。
雑損失処理の注意点
雑損失処理では、損金算入や消費税の区分、雑損失の頻出に注意が必要です。それぞれ詳しく解説します。
損金算入に注意
雑損失処理の際は損金算入に注意が必要です。法人が支払った罰則金・違約金・延滞税・加算税は損金算入が認められていません。ペナルティとして科された金額を損金算入できてしまうと、実質的に法人税の負担が軽減されてしまうためです。
法人税や住民税も損金算入できません。法人税は所得に課されるため、もしも損金として認められてしまうと、算入後の所得で法人税が計算される循環的な変動が生じてしまいます。
消費税の区分に注意
雑損失処理の際は消費税の区分に注意が必要です。雑損失のなかには消費税不課税取引、つまり消費税がかからない取引が含まれています。例えば、違約金の支払には消費税がかからないため、処理の際には消費税の計算に気を付けなくてはなりません。不課税取引となるのは違約金の他に、科料・過料などの支払です。
一方、雑損失であって課税仕入れに該当するものもあります。
雑損失の頻出に注意
雑損失処理の際は頻出に注意が必要です。幅広い営業外費用を雑損失として計上できる点はメリットですが、多用してしまうと会計管理が難しくなる点はデメリットです。また、雑損失での処理が多いと会計の透明性が失われてしまいます。目安として営業外費用の10%を超える損失なら、別途勘定科目を用いて計上しましょう。
雑損失の仕訳方法
雑損失の仕訳では借方(左側)に雑損失、貸方(右側)に普通預金・現金などと記載します。反対に、雑損失を取り消す際は貸方(右側)に雑損失と記載してください。雑損失は損益計算書において費用として計上されるため、企業の利益を減少させることになります。
次項では実際の仕訳例を紹介します。
雑損失の仕訳例
ここでは、雑損失の仕訳例をケース別に紹介します。仕訳の際の参考にしてください。
修繕費を支払うケース
借りていた機材を壊したといった事情で、修繕費(弁償費)として6万円を支払ったケースの仕訳は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
雑損失 | 60,000 | 普通預金 | 60,000 |
修繕費は本業との関係がなく、また金額が比較的少額な点から雑損失として処理できます。
駐車違反の罰金を支払うケース
取引訪問の際に駐車違反してしまい、罰金として1万5,000円を支払ったケースの仕訳は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
雑損失 | 15,000 | 普通預金 | 15,000 |
罰金は本業との関係がなく、また金額が比較的少額な点から雑損失として処理できます。
現金不足を雑損失に切り替えたケース
理由が分からない1,000円の現金不足を雑損失に切り替えたケースの仕訳は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
雑損失 | 1,000 | 普通預金 | 1,000 |
現金不足は本業との関係がなく、また金額が比較的少額な点から雑損失として処理できます。
利子税を納付したケース
5,000円の利子税を納付したケースの仕訳は下記のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
雑損失 | 60,000 | 普通預金 | 60,000 |
利子税とは申告書の提出期限を延長した際に発生する利子、つまり支払猶予を受けたため生じた利息です。利子税は営業外費用で処理できますが、比較的少額で重要性が低いなら雑損失としても処理できます。
まとめ
費用を計上する際に該当する勘定科目がなければ、雑損失として処理できます。雑損失に該当するものは本業と関係がなく、比較的少額で重要性が低い出費です。ただし、雑損失を多用してしまうと会計処理がかえって難しくなってしまいます。目安として営業外費用の10%を超える出費については、別途勘定科目を使って計上するようにしましょう。
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