借入金返済に使用する勘定科目と仕訳方法|支払利息に関する注意点も
- この記事の3つのポイント
- 借入金の元本部分は経費計上できないが、支払った利息は経費として計上可能である
- 借入金の返済に使用する勘定科目は、返済期間や利息の性質に応じて使い分ける必要がある
- 支払利息の仕訳では発生時期と支払時期に応じて、前払利息や未払利息の勘定科目を使用する
企業の資金調達手段の一つである借入金は、返済時の会計処理において正確な理解が求められます。「借入金の元本は経費にできるのか」など、担当者が抱える疑問は少なくないでしょう。
本記事では、借入金返済における勘定科目の扱いや仕訳方法について、詳しく解説します。借入金返済に関する会計処理の参考にしてください。
借入金は経費計上できる?
借入金の経費計上については、元本と利息で扱いが異なります。借入金の元本部分は経費として計上できませんが、支払った利息は経費として計上可能です。
なぜなら、元本部分の返済は単に金銭を借りて返済する行為であり、企業の収益活動から生じる費用とは性質が異なるためです。一方、利息は資金を借りるために支払うコストであるため、費用として認識されます。
借入金の会計処理では、元本と利息を明確に区別し、利息部分のみを経費として計上する必要があります。
借入金の返済に使用する勘定科目
借入金を返済する際、会計処理で用いられる勘定科目は「短期借入金」「長期借入金」「支払利息」の3つです。それぞれの勘定科目を具体的に紹介します。
短期借入金
短期借入金とは、決算日の翌日から数えて1年以内に返済期限が到来する借入金を示す勘定科目です。短期借入金は、貸借対照表上では流動負債に分類されるものです。
具体例として、運転資金の調達のために金融機関から6カ月の期限で借り入れた資金などが挙げられます。
当初は長期借入金として計上されていたものでも、決算日時点で返済期限が1年以内になった際には、会計処理が必要です。短期借入金または1年以内に返済予定の長期借入金へ振替を行ってください。
長期借入金
長期借入金とは、返済期限が決算日の翌日から起算して1年を超える借入金を示す際に使用する勘定科目です。
長期借入金は、企業が設備投資や新規事業の立ち上げなど、長期的な資金調達を行った場合に用いられる勘定科目です。長期借入金は、貸借対照表において固定負債に区分されます。
たとえば、工場建設のために5年間の返済契約で金融機関から融資を受けた場合や、事業拡大を目的として返済期間3年のローンを組んだケースなどが該当するでしょう。
支払利息
支払利息とは、借入金や社債など、他人資本を利用した際に支払う利息を処理するための勘定科目です。支払利息は、損益計算書においては営業外費用として計上します。
具体的には、銀行からの融資に対する利息、ビジネスローンを利用した際の利息、個人から事業資金を借り入れた場合に支払う利息などが挙げられます。
たとえば、運転資金として100万円を年利5%で借り入れ、1年後に5万円の利息を支払った場合は、5万円を支払利息として経費計上しなければなりません。
支払利息の仕訳に関する注意点
支払利息の仕訳に関する注意点を解説します。発生主義に基づき利息の発生時期と支払時期の関係に着目して、前払利息や未払利息などの適切な勘定科目を使用しましょう。
支払利息を前払いするケース
支払利息を前払いする場合は、決算時に適切な会計処理が必要となる点に注意しましょう。企業会計では発生主義を採用しているため、実際に費用が発生した時点で帳簿に記載する必要があります。
前払いした利息については、決算時に費用化されていない部分を「前払利息」や「前払費用」という勘定科目に振り替えなければなりません。
振り替えを行うと、当期に発生した費用のみを正確に計上し、財務諸表に適切に反映できます。前払利息は、将来の期間に対応する費用として扱われ、会計上で費用として認識すべき時期が到来するまで資産として計上されます。
来期以降に利息を支払うケース
支払利息の支払が来期以降になる場合、当期末時点では「未払利息」や「未払費用」として負債に計上しましょう。未払利息は、利息の支払予定はあるものの、現時点で支払が完了していない場合に使用する勘定科目です。
借入期間全体にわたって発生する支払利息は、決算時点で期間按分し、当期に対応する部分のみを費用として認識しなくてはいけません。そのため、来期以降に利息を支払う場合でも、企業会計の発生主義に基づき、当期に発生した費用は適切に計上する必要があります。
借入金を返済するときの仕訳例
借入金を返済する際の仕訳は、返済期限に応じて異なります。ここからは、4つの主要な仕訳例を見ていきましょう。
1.返済期限が1年に満たない場合
支払利息の返済期限が1年に満たない場合は、短期借入金と支払利息の勘定科目を用いて仕訳します。
たとえば、借入期間半年で銀行から借り入れていた300万円のローンを、年利率1.5%に相当する利息(45,000円)とともに、現金で一括納付した場合の仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
短期借入金 | 3,000,000円 | 現金 | 3,045,000円 | ○○銀行 借入金返済 |
支払利息 | 45,000円 |
2.返済期限が1年を超える場合
返済期限が1年を超える借入金の場合は、長期借入金と支払利息で仕訳します。
たとえば、借入期間2年で銀行から借り入れていた300万円のローンを、年利率2%に相当する利息(12万円)とともに現金で一括納付した場合の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
長期借入金 | 3,000,000円 | 現金 | 3,120,000円 | ○○銀行 借入金返済 |
支払利息 | 120,000円 |
3.未払利息を計上する場合
決算時点で未払利息があるときは、未払利息と支払利息で仕訳して費用計上します。
たとえば、借入金80万円を当期の10月1日に期間1年、年利率2%で借り入れたとしましょう。利息は満期日に元金とともに一括返済するものとします。
条件に基づき状況を整理すると、以下のとおりです。
- 年間利息:80万円×2%=1万6,000円
- 決算日までの期間:6カ月
- 未払利息:1万6,000円×(6/12)=8,000円
決算時の仕訳は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
支払利息 | 8,000円 | 未払利息 | 8,000円 |
4.前払いした支払利息を計上する場合
前払いした支払利息については、決算時に前払費用と支払利息で仕訳します。来期の開始日には、支払利息を前払費用に振り替えてください。
たとえば、来期の運転資金を借り入れ、利息50万円を前払いした場合、決算時は以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
前払費用 | 500,000円 | 支払利息 | 500,000円 |
来期の開始日には、以下のように処理を行います。
借方 | 貸方 | ||
支払利息 | 500,000円 | 前払利息 | 500,000円 |
以下の記事でも、支払利息の仕訳例を提示しています。ぜひ参考にしてください。
借入条件から支払利息を計算する方法
借入条件が分かれば、以下のように支払利息を計算可能です。
支払利息=借入金額×年利率×返済期間÷12
たとえば、中小企業が事業拡大のため、以下の条件で銀行からローンを借り入れたとしましょう。
- 借入金額:100万円
- 年利率:1.5%
- 返済期間:10カ月
支払利息は、100万円×1.5%×(10カ月÷12カ月)を計算して、1万2,500円です。
なお、同じ借入金額でも、年利率が2%、返済期間が6カ月のときの支払利息は1万円です。借入金額が同じでも、年利率や返済期間が変わると支払利息の額は変わります。
支払利息の使用が一般的ではない費用
支払利息の使用が一般的ではない費用を紹介します。信用保証料、手形割引料、附帯税、ファクタリング手数料などは、特有の勘定科目を選択して処理してください。
1.信用保証料
信用保証料の勘定科目には、通常「支払保証料」を使用します。信用保証料は、信用保証協会から信用保証を受けるために支払う手数料のことです。
支払利息は借入金に対する利息であるため、信用保証料とは意味合いが異なります。また、支払保証料を支払利息として処理すると、税務申告時に追加の手続きが必要となり煩雑化する可能性があります。
保証料に使用する勘定科目や仕訳例は、以下の記事をご参照ください。
関連記事:保証料(信用保証料や賃貸保証料)の勘定科目は?仕訳例と借入時の経理処理
2.手形割引料
手形割引料の勘定科目には、支払利息ではなく「支払利息割引料」や「手形売却損」を使用します。
手形割引は、企業の資金調達方法の一つです。手形割引では、支払期日が到来する前の約束手形を金融機関や第三者に譲渡します。譲渡した企業は、手形の額面金額から手数料(手形割引料)を差し引いた金額を即時に受け取ることが可能です。
3.附帯税
附帯税の仕訳には「租税公課」の使用が一般的ですが、状況によっては支払利息を使用する場合もあるため注意が必要です。
附帯税は、本来の税金に付随して課される税金です。主な附帯税には、以下が挙げられます。
- 利子税:追加納税が必要になった場合に課される
- 延滞税:ペナルティとして、納付期限後に税金を納付する場合に課される
- 加算税:ペナルティとして、過少申告や無申告があった場合に課される
租税公課については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:租税公課とは?経費計上できるもの・できないものを徹底解説!
4.ファクタリング利用時の手数料
ファクタリング利用時の手数料は、一般的に「売上債権売却損」を用いて仕訳されます。売上債権売却損は、売上債権の売却によって生じた損失に関する勘定科目です。状況によっては、支払利息を使用して、ファクタリング利用時の手数料を仕訳する場合もあります。
ファクタリングは、企業が保有する売掛金(売掛債権)を、ファクタリング会社に譲渡して資金化する資金調達方法です。ファクタリングを利用すると、企業は支払期日を待たずに現金を得られます。
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借入金返済の会計処理では、元本が経費にならない一方、利息は経費計上できる点に留意しましょう。
借入金返済における仕訳では、勘定科目を状況に応じて使い分ける必要があります。特に支払利息は「前払利息」や「未払利息」の勘定科目を用いて正確に処理しなければなりません。
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