売掛金とはどのような勘定科目?間違えやすい仕訳方法と具体例を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-02-14
- この記事の3つのポイント
- 売掛金は金銭債権の一種で、掛取引として扱われる経理上の勘定科目
- 売掛金は買掛金や未収入金、前受金などとは異なるので注意する
- 売掛金を仕訳する際には、適切な手順を踏むことが必要
売掛金とは、企業が商品やサービスを提供した際に発生する将来的に受け取るべき金銭債権を指します。売掛金は企業の資金繰りに影響を及ぼすため、適切に管理することが大切です。
本記事では、売掛金の仕訳方法について解説します。売掛金と間違えやすい勘定科目や、売掛金を仕訳する際の注意点も紹介するので、参考にしてください。
売掛金とはどのような勘定科目?間違えやすい仕訳方法と具体例を解説
売掛金とは?売上との関係性
売掛金は金銭債権の一種で、一般的に掛取引として扱われる経理上の勘定科目です。
具体的には、企業が商品やサービスを提供した際に発生した代金として、将来的に受け取るべき金銭のことを指します。
取引により、相手方に商品などが引き渡された時点で売掛金の仕訳を行うのが原則です。これを実現主義と呼びます。
売掛金と売上には密接な関係があり、売掛金が発生すると同時に売上も計上され、企業は収益を確定できます。ただし、代金が支払われるまでに時間がかかるため、キャッシュフローに影響がでてしまうことに注意しましょう。
具体例を挙げると、商品を100万円で販売し支払いを1カ月後に受け取る場合、顧客からの支払いがあるまで、100万円は売掛金として企業の帳簿に残ります。会計上、この100万円は売上として計上されるのですが、実際の現金の受け取りは1カ月後となります。
売掛金と間違えやすい5つの勘定科目
売掛金と似たような勘定科目は多くあるため、間違って使用しないように注意が必要です。ここからは、売掛金と間違えやすい5つの勘定科目について解説します。
買掛金との違い
売掛金は支払われることが予定されている代金である一方、買掛金はこれから支払うことが求められる代金です。具体的には、企業が商品やサービスを購入した際に発生する未払いの金銭債務のことを指し、A社がB社から信用取引で商品を仕入れた場合、A社は買掛金を計上します。
売掛金と同じく信用取引の一種ですが、売掛金は債権であり、買掛金は債務であることが相違点です。
相違点の詳細や、仕訳する際の具体例や注意点について知りたい方は、関連記事をご参照ください。
関連記事:買掛金とは?仕訳する際の具体例や売掛金の違い、注意点など徹底解説!
未収入金との違い
未収入金とは、営業活動以外の取引で収入されるべき債権のことです。たとえば、固定資産の売却代金や貸付金の利息などによる収益が該当します。
一方の売掛金は通常の営業活動によって発生しますが、どちらも債権の一種であり、貸借対照表上では流動資産に分類されます。
未収入金の詳細や勘定科目の仕訳、売掛金・未収収益との違いについて知りたい方は、関連記事をご参照ください。
関連記事:未収入金とは?勘定科目の仕訳や売掛金・未収収益との違いを解説
前受金との違い
前受金とは、商品やサービスを提供する前に、報酬を受け取った場合に用いられる勘定科目です。代金の一部を受け取ったとき、もしくは代金の全額を商品・サービスの提供よりも先に受け取った場合にも前受金が用いられます。
売掛金と異なる点は、商品やサービスの提供前に受け取るため、将来の収益を先取りする形式となることです。
前受金を受け取った際の請求書の書き方や記載項目については、以下の記事で解説しています。
関連記事:前払いで代金を受け取ったときの請求書の書き方とは?記載項目や注意点を解説
立替金との違い
立替金は、他者が本来負担すべき費用を一時的に支払った場合に使用する勘定科目です。他者には、取引先、役員、従業員、子会社などが該当します。
具体的には、取引先の交通費や接待費を立て替えた際に発生します。あくまで一時的な支出であり、後に回収されることを前提としていることが、売掛金との相違点です。
立替金の仕訳例や帳簿の経理処理について知りたい方は、関連記事をご確認ください。
関連記事:勘定科目「立替金」とは?仕訳例と出納帳などの帳簿の経理処理を解説
仮払金との違い
仮払金は、従業員の出張費用など、用途が未確定の一時的な支出を処理するための勘定科目です。
金銭が使われていたとしても、使途不明の状態では経費へ計上できるかわかりません。そのため、後に用途や金額が確定した段階で、相殺処理して精算する流れが一般的です。売掛金とは異なり、特定の取引に直接関連しない一時的な支出として扱われます。
仮払金の仕訳例や会計処理を効率化する方法について知りたい方は、関連記事をご参照ください。
売掛金を仕訳する際の流れ
売掛金を仕訳する際は、一定の手順を踏む必要があります。
ここからは、売掛金を仕訳する際の流れについて解説します。それぞれの手順の詳細も解説するので、参考にしてください。
1.売上を計上する
売上の計上を行うタイミングは、商品の引き渡しやサービスの提供が完了したときです。実務では、取引先に請求書や納品書を送付したタイミングが基準となることが一般的でしょう。
たとえば、取引先A社に商品を30万円で販売し、引き渡し時に代金を受け取っていない場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 300,000円 | 売上 | 300,000円 |
2.請求書発行と入金確認を行う
商品やサービスを提供したら、請求書を発行し、取引先からの入金を確認します。なお、入金を確認する際には、請求した金額と実際に入金された金額に差異がないかをチェックすることが重要です。
金額に差異があった場合は、まず納品書や請求書を確認しましょう。さらに、値引きや返品が発生していないかを確認し、振込手数料や源泉徴収税額の差し引きがないかも確かめましょう。
3.売掛金の入金消込を行う
売掛金の入金が確認できたら、入金消込処理を行います。
入金消込処理とは、借方の売掛金を貸方に振り替えて消去する作業です。たとえば、取引先A社から30万円が当座預金に振り込まれた場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
当座預金 | 300,000円 | 売掛金 | 300,000円 |
4.残高を確認する
定期的な残高確認を実施することで、売掛金の正確な管理が可能です。
取引先が法人であれば、自社で売掛金として処理した金額は、取引先では買掛金で処理されているはずです。確認の結果、自社の売掛金と取引先の買掛金の残高に差異がある場合は、原因を調査しましょう。
売掛金を仕訳する際の具体例
売掛金を仕訳する際には、状況に応じて適切な勘定科目を用いることが重要です。ここからは売掛金の勘定科目を使用する際のケースと、それぞれの仕訳例について紹介します。
売掛金が発生した場合の仕訳例
企業が商品やサービスを提供し、後払いで取引を行う場合、売掛金が発生します。たとえば、2,000円の商品を販売し代金を後日受け取ることになった場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
売掛金 | 2,000円 | 売上 | 2,000円 |
なお、消費税の取り扱いにも注意が必要です。課税事業者の場合、税込経理方式と税抜経理方式の2種類があります。以下は、それぞれの方式の詳細です。
売掛金を現金で回収した場合の仕訳例
売掛金2,000円を現金で回収した場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 2,000円 | 売掛金 | 2,000円 |
この仕訳は、現金の増加と売掛金の減少を示しています。帳簿上では売掛金の減少が現金の増加と対応する形で反映されるため、債権が回収された場合に使用する処理です。
売掛金を銀行振込で回収した場合の仕訳例
売掛金2,000円を銀行振込で回収した場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 2,000円 | 売掛金 | 2,000円 |
銀行口座に2,000円が入金され、同額の売掛金が減少したため、借方に普通預金2,000円、貸方に売掛金2,000円を記入しましょう。なお、入金が確認された時点で、この仕訳を行うことが求められます。
売掛金のうち一部を現金で回収した場合の仕訳例
売掛金2,000円のうち1,000円を現金で回収した場合、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
現金 | 1,000円 | 売掛金 | 1,000円 |
金額の一部を現金で回収した場合は、残高管理が重要です。どの売掛金に対する入金かを明確にするため、摘要欄に取引先の名称や入金の詳細を記載しましょう。
具体的には、第1回目の入金など、何回目の入金かが分かるようにメモしておくことが挙げられます。後からの確認が容易になり、記録の整合性を保つことが可能です。
売掛金の回収前に商品が返品された場合の仕訳例
売掛金の回収前に商品が返品された場合、売掛金と売上の取り消しを行う仕訳を記載します。たとえば、1,000円の商品が返品されたときは、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | ||
売上高 | 1,000円 | 売掛金 | 1,000円 |
返品が発生した場合、借方に売上高を記入し、最初に計上された売上を取り消す処理を行ってください。このように、商品の返品により当初の売上が無効となり、収益が減少します。
売掛金を仕訳する際の注意点
売掛金を仕訳する際には、いくつか注意すべき点があります。以下は、代表的な注意点とそれぞれの詳細です。売掛金を仕訳する際の参考にしてください。
売掛金には「5年」の時効がある
売掛金には、法的に回収可能な期限があります。具体的な期間は、原則として5年です。時効が過ぎてしまうと法的に回収が難しくなるため、売上を上げていても資金繰りに影響が出る可能性があります。
そのため、売掛金に関する定期的な管理と早期の回収が重要です。売掛金の回収状況は定期的に確認し、必要に応じて対策を講じることが大切です。
売掛金がマイナスになることは通常ない
売掛金がマイナスになることは、基本的にありません。そのため、もしマイナスになった場合は以下の原因が考えられます。
- 売上の計上漏れ
- 記帳ミス
- 過入金
- 他の金銭を売掛金としてまとめて計上
売掛金がマイナスになった場合は、取引内容を確認し、仕訳を正しく修正しなければなりません。「商品やサービスの納品時に売上を計上しているか」「売掛金のマイナス金額が、売掛先企業からの入金額と一致しているか」を確認しましょう。
会計年度をまたぐ場合は未収金としての処理を行う
締め日以降に生じた売上や売掛金は、翌月分として処理します。しかし売掛金が会計年度をまたぐ場合は、未収金として翌年度に繰り越す処理が必要です。
期末に未収金を確認し、適切な仕訳を行うことで、正確な財務報告が可能になります。収益と費用を正確に対応させることで、財務諸表の信頼性を維持できます。
売掛金の仕訳に伴う請求書発行業務を効率化するなら「バクラク請求書発行」
売掛金を仕訳する際には適切な手順を踏む必要があり、また、状況によって仕訳方法が変わるため注意が必要です。さらに請求書の発行業務を伴う場合も多く、担当者の負担が大きくなりがちです。
そのため、請求書発行業務を効率化できるシステムの導入が推奨されます。バクラク請求書発行は、書類を発行する前後の業務を一つのサービスで全て解決します。
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