組織に余白を残す。“Just for Fun”を体現する組織づくりの思想とは

組織に余白を残す。“Just for Fun”を体現する組織づくりの思想とは
目次
複数プロダクトを展開する組織のコーポレートとして心がけていること 「会社のために何が最適か」という視点で働く 組織に余白を残し、最適なかたちを模索する 苦しみながらも変化を楽しむ姿勢を 組織の生産性を上げることでお客様に価値を届ける

バクラクビジネスカードをはじめ、バクラクシリーズを活用いただいているお客様に、LayerXの経営陣が聞きたいことをインタビューする連載『バクラク顧客探訪』。

第3回は、急成長組織を支えるコーポレート組織のあり方をテーマに、 STORES 株式会社取締役CFOの齋藤健太郎さんと、LayerX執行役員の川口かおりの対談をお届けします。

メリルリンチ日本証券からキャリアをスタートし、テクノロジー企業向けのM&Aアドバイザリー、資金調達業務、経営企画などに従事してきた STORES の齋藤さん。一方で川口はLayerXにおいて、組織が継続的に成果を出すための仕組みづくりを担当しています。

急成長するスタートアップ企業において、組織づくりという観点で大切にしていることや取り組んでいること、企業の成長を止めないために必要なことについて語り合いました。

複数プロダクトを展開する組織のコーポレートとして心がけていること

  川口   STORES さんの事業は、変化を続けながら急成長されています。「コーポレートにこういう強みがあるから、事業がここまで伸びた」と感じるのは、どのようなところですか。

  齋藤さん   弊社は”Just for Fun”というミッションを掲げ、中小を中心とした店舗運営事業者さまの事業運営を支えるために、お店のデジタル化をまるっと提供し、事業者さまへの付加価値を拡大することで成長を目指しています。

ミッション実現の手段としてコーポレートアクション(財務上の意思決定)を多く活用する会社だと思っています。M&Aもそうですし、資金調達もいろいろなかたちにトライしている中で、 STORES の事業成長においてコーポレートとして担う役割は大きいと思っています。

また、実店舗のPOSレジ、予約システム、ネットショップ等複数のプロダクトをまるっとご利用いただく利便性や価値をお客様にどう提供していくか。そのために、たとえば法務・会計の観点、請求オペレーションでの論点があるか。プロダクト自体のあり方が変化する中で、組織に加えて、管理会計や予実方針をどう設計したら社内で有効な議論を促進できるか、などコーポレートが先んじて考えることは多くあります。

コーポレートとしても、専門領域の強さを磨きこみつつ、ミッション実現に向けプロダクトをいち早くリリースしてお客様に価値を届けることをどうサポートできるか、日々考えています

STORES 株式会社取締役CFO 齋藤健太郎さん

「会社のために何が最適か」という視点で働く

  川口   事業の急成長には、社内のメンバー全員がそれぞれの役割を果たしているという前提があると思いますが、 STORES さんのコーポレートチームのメンバーに見られる姿勢や、共通点などはありますか。

  齋藤さん   弊社には、たとえば会計士や税理士、弁護士のような専門性を持ったメンバーもいますが、専門性はありつつも、自分の領域をつくらない人たちが多いと感じています。

個人的な意見ですが、専門性の高いプロフェッショナルな人材は、自分の領域から出たがらない人が多い印象がありますが、 STORES のコーポレートはそれとは違う傾向が強いと思っています。

弊社の社員は自分の領域を守るという意識がないというか、そもそも自分の領域をつくらずに課題を解決していこうとする人が多いんです。

会社にとって何が適切なのかを考えたうえで、「僕は、私は、これをやります」「この話がなかなか進んでいないみたいなので、この業務を自分が先にやっておけば、会社として進めやすいですよね」「逆に、これはそっちのチームがやったほうがいいんじゃないですか」といった発想や行動、議論ができる社員が揃っています。

バクラクの導入についても、以前は別のツールを使っていたのですが、経理の担当者が「導入は自分たちでやるので、バクラクを入れましょう」と、あえて新しいサービスの導入に飛び込んでくれました。

  川口   社員の方たちからすると、これまで使っていたツールを入れ替えるより、そのまま続けるという判断をされる方が多いと思います。ですが「会社のためにより最適な方法は何か」という視点で考えて、導入を決めていただけたのは嬉しいですね。

それは「自分たちの業務がどうなるか」ではなく、「会社のため」という目線があったからこそだと思います。全社最適で意思決定ができる方々が働いていらっしゃるんですね。

LayerX執行役員 川口かおり

  齋藤さん   そうですね。僕としてもそういう人材を揃えたいと思っていましたし、そういう意識を持ったメンバーたちがいることは、すごくありがたいことですね。

組織に余白を残し、最適なかたちを模索する

  川口   会社のことを「自分ごと」として考えて動けるようなメンバーにしていくために、組織づくりで何か工夫されていることや、こだわっていることはありますか。経営陣がいいメッセージを出したり、そういうことが得意な人材を採用したりするだけでは、なかなか全社には浸透しづらいと思うのですが。

  齋藤さん   「組織に余白を残しておくこと」を意識しています。メンバーの時間的な余白というよりは、組織を最初から固め過ぎないことが大事だと思っています。役割や組織が明確化していないことで混乱することもあるかもしれません。でも、まだ小さな組織だし、みんなで一緒に最適なかたちを模索して、改善していくことを続けていけばいい、と捉えています。

STORES はこれからもプロダクトや事業は変化・進化していきます。それなのに、最初から組織をガチッと固めてしまうと、その後の柔軟性がなくなってしまう。なので、最初はあえて意思決定をせず、「これが会社にとって最適だよね」というかたちが見えてきてからみんなで議論して変える。そういう「余白」があることが自分ごととして物事を考えていくうえで大事なことだと考えています。

変化はストレスにもなるかもしれないですが、ずっと同じだったらつまらないですよね。会社として、みんなで最適なかたちを議論できるのが望ましいと思いますし、その議論自体も楽しいと感じてもらいたい。そして、自分もみんなも成長できる状況をつくりたいと考えています。

  川口   いまから10年ほど前と比べると、スタートアップ企業のケーススタディやさまざまな情報を見ることができるようになりましたよね。でも、そんな時代だからこそ、かえって「失敗したくない」と考えたり、悩んだりしがちな企業さんが多いのかなとも感じます。

組織体制やツールなども含め、情報がありすぎるからこそ早い段階できっちりと固めすぎてしまうこともありがちなのかもしれないですね。

コーポレート部門は組織の成長につれて、ガバナンスを強化していく動きがあると思っています。スタートアップでは特に「スピードとガバナンスのバランス」といった点で葛藤される企業さんが多いのかなと。そうしたバランスについて齋藤さんのお考えはありますか。

  齋藤さん   「きちんと仕組みをつくること」が大事かなと思っています。僕や代表の佐藤が決断することはもちろんありますが、それよりもまず、たとえば事業側とコーポレート側で、きちんと議論を戦わせられる仕組みをつくることが健全な体制だと思います。

ある程度リスクを取らないと成長はできないと思うので、コーポレート側としては、そのリスクを見える化したうえでリスクを取る、取らないの判断ができる仕組みをつくっておく。そうすれば「少しリスクを取り過ぎたのではないか」「こういう好機があるから、この決断でいいんだ」というように、その仕組みの中で検証できます。

バランスを取るのはもちろんのこと、「バランスを取れる仕組みをつくる」ことがより大事かなと思っています。

苦しみながらも変化を楽しむ姿勢を

  川口   STORES さんのミッションは「Just for Fun」ですよね。先ほど、組織に余白を残しておくとおっしゃいましたが、それは「多少はカオスなところがあっても、それも含めて楽しもうよ」という意味合いもあるんですか。

  齋藤さん   「Just for Fun」は、「誰もがこだわって、熱中できる」という意味合いがあります。

たとえば、世の中にはすでにコカ・コーラというおいしいコーラがある。でも、自分でクラフトコーラをつくってみたらどうなるか実際にチャレンジして、こだわりが詰まったすごくおいしいコーラができ、それをビジネスにしてみようと思われる方がいます。こだわりのコーラを届ける仕組みをつくるのは大変だけれど、 STORES をご利用いただくことでそれが簡単に実現できて、美味しいコーラをつくることなどに注力できる。そして、そのコーラを買った人が普通とは違うコーラを美味しく楽しんでくれる。

こうしたことは、事業オーナーさまにとっては楽しいことでありつつも、店舗を運営をすることは苦しかったり、負荷がかかったりしている部分もあると思います。そんなふうに大変なことがあってもその先にある「こだわりや情熱」がビジネスになることが本当に尊いことだと思っていて。そういうオーナーさんや事業を STOERS は応援したいし、社会をそういう「こだわりや情熱」に溢れる商品で満たすことで、社会が豊かになると信じています。

そして、当社は「お客様にいかに価値を届けるか」を大事にしています。事業オーナーさまも常に進化し続けているので、 STORES も会社としてさまざまな変化をしていくと思いますし、働くメンバーたちが、その変化を楽しむ姿勢を持ってもらえると良いなと思っています。

「苦しみながら変化を楽しめる」という意味でも、Just for Funという言葉を使いたいなと思っているんです。

組織の生産性を上げることでお客様に価値を届ける

  川口   先ほど「会社のため」という視点でバクラクを導入いただいたというお話がありましたが、バクラクを利用して良くなった点などありましたら、ぜひお伺いしたいです。

  齋藤さん   以前は稟議承認をメールで送っていたのですが、メールだと見落としがちでリマインドしないと見てくれないケースが多かったんです。

バクラクを導入して、そのやりとりをメールではなくSlack上でできるようになったことは、ありがたいことです。ワークフローの観点でもメリットがありますし、申請者と承認者、それをチェックする者、それぞれがやりやすくなったと思います。

また、これまでは法人カードについても、稟議や証憑などの照合は気合と根性でせざるを得なかったのですが、バクラクビジネスカードを導入してからは自動化し、工数を大きく削減できると期待しています。こうしたシステムを活用しつつ、メンバーがお客様の価値増大に注力して事業の成長に貢献していけたらと思っています。

我々の目的は「お客様に価値を提供すること」ですが、ワークフローがやりやすくなれば、みんなの生産性がより上がって、目的に近づいていくと思うので、これからのバクラクの進化にも期待したいです。

  川口   ありがとうございます。まさに我々も、コストを削減するだけではなくて御社の事業をアクセラレートするプロダクトになると、理想的だなと考えています。今後も、いろんなご意見やご要望をいただければと思います。

最後に、ここから数年先を考えたときに、 STORES さんが会社としてチャレンジしていきたいことはどんなことですか。

  齋藤さん   会社としては、まるっとデジタル化を提供して STORES ならではの価値をお客様に届けていくことを実現していきたいです。事業者と消費者が直接つながる中で、オンラインとオフラインの垣根を超えて、事業をされる方に付加価値を提供していきたいと思いますし、そのニーズは高まっていると感じています。

まさに、中小事業者さまの深い課題解決を STORES だけが提供できる状況をつくっていきたいので、 STORES のプロダクトの幅を広げて磨きこむ必要があります。“Just for Fun” に共感してくれる仲間を増やして組織をより強くしていきたいと思いますし、コーポレートという観点では、予防的なリスクマネジメントにも取り組んでいきたいです。

齋藤 健太郎
STORES 株式会社 取締役 CFO
新卒でメリルリンチ日本証券に入社し、東京及びパロアルトにおいてテクノロジー企業向けのM&Aアドバイザリー、資金調達業務に従事。その後、ブラックロック・ジャパン、ブラックロック・ソリューションズを経て、2019年にヘイ株式会社(現: STORES 株式会社)入社。2020年より取締役CFOとして、コーポレート業務全般と共に、経営管理・企画、業務効率化、財務戦略の執行を担当。

川口 かおり
株式会社LayerX 事業部執行役員(Biz Enabling)
早稲田大学卒業後、競泳選手のマネジメントに従事。2007年リクルートエージェント(現リクルート)に入社。コンシューマ領域の法人営業、新規事業立ち上げ、事業開発部門のマネージャーを経験。2015年にはシンガポールのHRテック企業でのマネジメントを経て、2017年10月にウォンテッドリー株式会社に入社し、執行役員 ビジネスチーム担当に就任。2023年4月入社。

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社名
STORES 株式会社
業種
情報通信業
従業員数
100名〜499名
サービス
バクラクビジネスカード
バクラクシリーズ
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