会計の発生主義とは?現金主義・実現主義との違いや経理処理をわかりやすく解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-11-07
発生主義とは、実際の金銭の収支に関わらず、取引が発生した時点で、収益と費用を計上する考え方です。発生主義の原則に従えば、取引が発生した時点で帳簿に記録する必要があります。この記事では、発生主義について、現金主義や実現主義との違いや関係性、メリットや使用する場面について解説します。ぜひ参考にしてください。
会計の発生主義とは?現金主義・実現主義との違いや経理処理をわかりやすく解説
発生主義とは
発生主義は、会計処理の方法の1つで、企業会計原則における重要な概念です。発生主義の原則に従うと、実際の現金の収支に関わらず、取引が発生したタイミングで、収益と費用を認識し帳簿に記録しなくてはいけません。事業の規模や業種によって異なりますが、青色申告をする際は、原則として発生主義で帳簿を付ける必要があります。
発生主義・現金主義・実現主義の違いと関係性
日本の会計基準では、原則として、収益は実現主義、費用は発生主義として認識します。発生主義・現金主義・実現主義は、収益と費用を認識して記帳するタイミングが異なります。以下の表に、取引の流れと記帳するタイミングを◯で示しました。
取引発生時 | 取引確定時 | 入金・支払完了時 | |
発生主義 | ◯ | ◯ | |
現金主義 | ◯ | ◯ | |
実現主義 | ◯ |
発生主義と現金主義は対照的な概念です。また、実現主義は発生主義の問題点を補う考え方で、企業のリスク管理に寄与します。
現金主義との違い
発生主義と現金主義の主な違いは、収益と費用を認識するタイミングです。現金主義では、実際に現金の収入があった時点で収益を認識し、現金の支出があった時点で費用を認識します。一方、発生主義では、実際の金銭のやり取りの有無にかかわらず、取引が行われた時点で、その収益や費用を帳簿に記録します。現金主義では支払が済むまで費用が計上されないため、未払金の把握が困難です。
実現主義との違い
発生主義と実現主義の主な違いは、収益を確定するタイミングです。実現主義は、実際に入金された時点で収益を確定します。実現主義の考え方は、企業会計原則の損益計算書原則に含まれる「未実現収益は原則として、当期の損益計算に計上してはならない」という規定に基づいています。
※参考:損益計算書原則|厚生労働省
発生主義のメリット
発生主義のメリットは以下のとおりです。
- 正確な財政状況を把握しやすい
- 現金の入出金が先の取引も認識できるため、将来の収益が予測しやすい
- 現金のやり取りがなくても、買掛金や未払い金、売掛金、未収金などを把握できる
- 納税すべき金額を予測しやすい
上記のメリットにより、発生主義で帳簿を付けると企業の財務状況をより正確に把握でき、経営や投資の判断基準となる情報を提供できるようになります。
発生主義のデメリット
発生主義のデメリットは以下のとおりです。
- 現金の入出金によって取引を認識しないため、帳簿上の数字と実際の現金の動きにずれが生じる
- 発生時点と入出金があった時点で会計処理を行うため、帳簿付けの手間が増える
発生主義では、現金の動きと会計上の収支が一致しないため、キャッシュフローの直感的な把握が困難です。また、収益や費用の認識に専門的な判断が必要な場合があり、複雑な取引では会計の専門知識が求められます。特に、リソースが限られている企業では、正確な帳簿付けの負担が大きくなる可能性があります。
発生主義による会計処理の手順
発生主義による会計処理の手順は以下のとおりです。
- 仕入れ日や、商品を受け取った日やサービスを提供された日に、費用を計上する
- 引き落とし日に出金を確認し、会計帳簿に記録する
出金が実際に行われたかを確認することは、会計記録の正確性を保つうえで重要です。会計帳簿に記載された金額と実際の出金額を照合すると、会計上の誤りや取引上のミスを早期に発見できます。
会計処理で発生主義を使う具体例
会計処理で発生主義を使う具体例を、実務で頻繁に生じるケースに関して解説します。
引当金を計上するとき
引当金の計上には、発生主義が適用されます。引当金は、将来に発生する可能性が高い費用や損失に備えて事前に見積額を計上する会計処理です。引当金の例としては、回収が困難となる可能性のある債権に対する貸倒引当金、将来の退職金支払に備える退職給付引当金などが挙げられます。
減価償却するとき
減価償却の際も、発生主義に基づき会計処理を行います。減価償却は、減価償却資産の取得に要した金額を、一定の方法によって各年分の費用として配分していく会計処理です。減価償却を行うと、固定資産の価値が時間とともに減少していく実態を財務諸表に反映でき、企業の財政状態と経営成績をより実態に近い状態で表示できます。
未払い金が発生するとき
未払い金、未収入金に対しても、発生主義に基づき会計処理を行います。発生主義では実際に商品の引き渡しやサービスの提供があった時点で、会計処理を行うためです。未払い金とは、商品を購入したりサービスの提供を受けたりしたときに、代金の支払を済ませていない場合の会計処理のことです。一方、企業が商品やサービスを提供したにもかかわらず、まだ顧客から支払を受け取っていない場合は、未収入金として処理します。
掛仕入のとき
掛仕入のときも、発生主義に基づき会計処理を行います。掛仕入は、商品や原材料を仕入れる際に、目的物を引き渡した後日に、代金を支払う約束をする取引です。発生主義では、金銭のやり取りがまだ行われていなくても、取引が確定した時点で収益や費用を認識します。したがって、掛仕入の場合、目的物が引き渡された時点で仕訳をします。
会計期間を超えてサービスを享受、提供するとき
サービスの開始時期によっては、提供期間が会計年度をまたぐ場合があります。会計期間を超えるサービスの享受においても、発生主義に基づき会計処理を行います。当期に帰属する部分の費用は、サービスの内容に応じた適切な勘定科目で計上しましょう。次期以降に関わる部分は、前払費用として計上してください。
発生主義と現金主義の仕訳例
発生主義と現金主義の仕訳例を挙げ、違いを解説します。例えば、以下の事例があったとしましょう。
- 7月に掛けで100万円分の商品を仕入れた
- 8月にその代金を現金で支払うと共に、掛取引で商品を120万円で売却した
- 9月に代金を振り込みで受け取った
発生主義では以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | |||
7月:仕入れ | 仕入 | 1,000,000 | 買掛金 | 1,000,000 |
借方 | 貸方 | |||
8月:現金の支払と掛取引による売却 | 買掛金 | 1,000,000 | 現金 | 1,000,000 |
売掛金 | 1,200,000 | 売上 | 1,200,000 |
借方 | 貸方 | |||
9月:入金 | 普通預金 | 1,200,000 | 売掛金 | 1,200,000 |
一方、現金主義では以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | |||
8月:現金の支払と掛取引による売却 | 仕入 | 1,000,000 | 現金 | 1,000,000 |
借方 | 貸方 | |||
9月:入金 | 普通預金 | 1,200,000 | 売上 | 1,200,000 |
発生主義ではすべての取引が記録されますが、現金主義では、実際の現金の動きがあった8月、9月の取引のみが記録されます。
まとめ
発生主義とは、実際の金銭の収支に関わらず、取引が発生した時点で、収益と費用を計上する考え方です。現金主義・実現主義の違いを理解して、適切な会計処理を行いましょう。
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