メディアプラットフォーム「note」の提供をはじめ、クリエイターの創作活動を支援しているnote株式会社。個人クリエイターとの取引が多い同社の財務経理では、サービスと会社の急拡大に耐えうる経理体制を構築するため、バクラク請求書とバクラク申請の導入を決定しました。
両ツール導入までの流れ、そして導入の成果について、監査法人で勤務経験がある公認会計士の平山雄輝さんにお話を伺いました。
ー 経理業務のミッションをお聞かせください。
平山さん:経理的な事務だけでなく、よりスムーズに流れる業務フローを提案・構築することも重要なミッションであると考え、日々の業務に取り組んでいます。
私が監査法人で公認会計士として働いていた頃、経理部門が会社全体の業務フローから孤立し、経理事務だけを行っている会社をたくさん見てきました。会社の業務フローのなかで、どうしても経理部門は下流に位置するため、事務処理部隊になりがちではありますが、本来は事務処理だけでなく、もっと上流のフローから貢献することができる重要な部署のはずです。
会社全体の取引を記録している部署だからこそ気がつけることも多くあり、そうした知見を経営にフィードバックしていく役割を担うことも大切なのではと考えています。そのためには下流での実務処理の負荷をうまく上流にも分散させることが必要だと強く感じておりました。
川に例えるなら、溜まった汚水を下流できれいにするのではなく、そもそも最初からきれいな水を上流から流すようにしようというイメージです。これは大企業だけでなく、弊社のような中小企業にも当てはまります。
ー note社の請求書処理業務にはどのような特徴があるのでしょうか。
平山さん:月平均で70〜100枚の請求書を経理チームで対応しており、個人クリエイターとの取引が企業との取引よりも多いことが特徴です。
社内のディレクターが個人クリエイターと直接やり取りしており、請求書データがさまざまなツールで送られてきます。
ー note社の経理業務における課題をお聞かせください。
平山さん:この1年半でおよそ100名だった社員が150名ほどに急増したため、支払依頼書の起票を経理がすべて請け負う従来の業務フローでは、いつか支払件数が増えすぎて処理が追いつかなくなるだろうと感じていました。
例えば、請求書の支払先口座や支払期日等の細かな情報を経理が一つひとつ事業部側に確認するだけでも時間と手間が掛かります。そのためにも請求書処理を効率化し、経理チームに集中している支払依頼業務を各部門に分散する必要がでてきました。
弊社で導入しているクラウド会計ソフトにも支払依頼機能はあったのですが、本来経理チームでのみ把握すればよい項目まで事業部側で入力・管理しなければならず、支払依頼の申請をまるごとお願いするには高いハードルがあると感じました。
各部門にお願いしたいことは、あくまでも請求書の回収と事業部門内の承認までであり、クラウド会計ソフトの支払依頼機能では機能が多すぎると感じていました。
ー ツールの比較検討軸について教えてください。
平山さん:この1年で請求書受領の自動化サービスが盛り上がっていると聞き、複数のツールで比較検討を行いました。
我々が比較検討した時点では、バクラク申請だけが唯一購買申請と支払申請を紐付けて管理できる機能を実装していたため、それが決め手となり導入を決定しました。
機能以外では価格も重視しました。バクラク申請は弊社の状況に見合った価格帯で導入しやすいと感じました。
ー トライアルはどのように進められたのでしょうか。
平山さん:既存のクラウド会計ソフトで使っていたワークフローをバクラク申請に置き換えることができるか確認しました。
とても操作しやすく、業務の負担にはならずにワークフローを置き換えられまして、2, 3日で設定は完了しています。このトライアルの結果をもって導入を最終決定しました。
ー バクラク申請の導入はどのように進められたのでしょうか。
平山さん:2段階に分けて導入を進めることになりました。
まず最初の1ヶ月目はコーポレート部門にだけリリースし、2ヶ月目から全社展開を進めました。社内展開していく上では、請求書のやり取りを行なう担当者をキーマンとし、社内勉強会で重点的にレクチャーしています。
また、バクラク申請の簡単な社内マニュアルも作成し、事業部の担当者が迷っても各自で解決できるよう工夫しました。具体的には、事前申請と支払依頼、請求書提出の3点について記載しています。
また、チーム情報や役職ごとの情報がマスターデータとして保存される点も、初期設定を進める上でとても助かりました。チームごとにどの役職者が承認するかという経路の設定ができたので、人事異動があっても再設定する必要がありません。
現在利用しているクラウド会計ソフトでは人事労務データを連携できるサービスを契約していなかったため、人事情報がない状態でワークフローを組む必要があり、人事異動があるたびに一つひとつ設定を変更する作業が非常に手間でした。
ー バクラク請求書の導入で、業務にはどのような変化がありましたか。
平山さん:バクラク請求書の導入で一番変化があったのは、請求書の受領から確認までの作業速度が格段に上がったことです。
特に個人クリエイターから送られてくる請求書には、取り扱いを厳重に管理すべき個人情報が多く記載されています。そのため以前は経理担当と事業部間でクリエイターごとのクローズドな環境を立ち上げてやりとりしており、時間と手間が掛かっていました。
その点、バクラク請求書であれば、最初からクローズドな環境で事業部から請求書を受領することが可能なので、大幅に処理時間を節約でき、非常に助かっています。
ー バクラク申請でお気に入りの機能を教えてください。
平山さん:ワークフローの設定がとてもラクに、かつ柔軟に設定できるところですね。承認者の分岐の設定などとても簡単・柔軟に設定できてとても便利です。
ー バクラク請求書でお気に入りの機能を教えてください。
平山さん:請求書の回収漏れをチェックできる機能がお気に入りです。指定した月で請求書の回収状況をすぐに把握できるので、請求書未回収の担当者にすぐ連絡することができます。
また、源泉所得税レポートもよく活用しています。弊社の場合、個人クリエイターから受領する請求書が多いため、源泉徴収の業務がどうしても多くなります。
源泉所得税レポートのおかげで徴収すべき人からの徴収が漏れていたり、徴収したのに納付できていなかったりといったミスを防げています。
ー バクラク請求書/バクラク申請を導入しての成果をお聞かせください。
平山さん:今回のバクラク請求書とバクラク申請の導入によって、スケーラブルな経理フローへと設計し直すことができました。
請求書の内容についてを事業部に確認する手間が激減したおかげで、月次の締め作業が安定して期日内に処理できるようになりました。
今後、事業規模が急拡大したとしても経理工数は一定程度抑えられ、処理が追いつかなくなる事態に見舞われる可能性は少ないのではと思っています。
また、もし新しい課題が生まれたとしてもLayerXさんであればツール改善で対応してくれるだろうという期待もあります。ミーティングやチャットにLayerXのエンジニアの方が出てくださることもあり、改善要望をしっかり受け止めているなという安心感があります。
これはユーザーとともに成長するSaaSサービスだからこそのメリットですね。
ー 事業部からバクラク申請へのご感想はお聞きしていますか。
平山さん:経理で処理していた業務を一部事業部側へ移管した形になった訳ですが、予想に反して、事業部からのネガティブな意見はまったく聞こえてきませんでした。UIがかなりシンプルで使いやすく、抵抗感なく受け入れられたのだと思います。
ー 業務が効率化されたことで、どのような変化がありましたか。
平山さん:経理事務の業務が減り、弊社のビジネスプロセスの効率化に対して経理視点からの改善案を提案できるようになりました。振込処理の仕組みや、システムのコストを抑える方法など、社内エンジニアと協力してサービス改善にも取り組んでいます。
ー 今後の経理における理想の状態についてお聞かせください。
平山さん:人が頑張って管理しなくても、テクノロジーと仕組みによって回っていく経理が究極の形だと思っています。人が頑張らなければ回らない仕組みでは、どこかで破綻したり、ミスが多発したり、良いことはありません。
しかしその一方で、内部統制を強めるために業務フローを固めすぎてしまうと、ビジネスが死んでしまうような事例も監査法人時代に見てきました。
経理業務の効率化と内部統制、このあたりのバランス感覚が重要になってくるのではないでしょうか。
ー 今回のお取り組みを振り返って、バクラク請求書とバクラク申請はどのような存在に例えられますか。
平山さん:会社のお金の流れを川に例えるなら、浄水場のような存在だと言えます。流れてきた請求書をきれいにし、そのまま支払いまで流すことができるツールです。
経理の仕事は、下流の事務処理だけやればそれで充分ではありません。新しいテクノロジーを取り入れることで上流から業務を設計することに、経理という仕事の「おもしろさ」があるのではないでしょうか。