インボイスの代理交付とは?委託販売での向き・不向きや媒介者交付特例との違い
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-12-12
売り手が買い手と直接取引をしない販売方法では、インボイス発行が難しいため代理交付が認められています。インボイスの代理交付とはどのような制度なのでしょうか。
本記事は請求業務の担当者に向けて、インボイス代理交付の概要を解説しています。また、媒介者交付特例との違いについても解説していますので、参考にしてください。
インボイスの代理交付とは?委託販売での向き・不向きや媒介者交付特例との違い
インボイスの代理交付とは
インボイスの代理交付とは、媒介者が売り手に代わりに適格請求書(インボイス)を交付する制度です。本来は売り手がインボイスを発行しますが、難しい場合には代理交付が認められています。
例えば、委託販売のようなケースが対象です。この場合、売り手が直接インボイスを発行することは難しいため、委託販売業者が代理でインボイスを発行できます。
※参考:3 適格請求書の交付方法|国税庁
インボイス代理交付の向き・不向き
インボイスの代理交付に向いている取引、向いていない取引について解説します。
インボイスの代理交付が向いている取引
インボイスの代理交付は、次のような取引に向いています。
- アパレル店がデザイナーから委託を受け、衣類を販売するケース
- ハンドメイド商品を小売店やECサイトなどで委託販売するケース
どちらも売り手が販売の現場にいなければ、直接インボイスを発行することはできません。そのため、媒介者(アパレル店や委託業者)の代理発行が認められています。媒介者はインボイス未登録でも発行が可能です。
※参考:インボイス制度|国税庁
インボイスの代理交付が向いていない取引
委託販売でも委託や委託販売品が多い場合、代理交付は不向きといえます。
代理交付では、媒介者がレシートなどへ名称・登録番号を記載しますが、道の駅のように産直品などを多く取り扱うケースでは、委託者や委託販売品が複数になるため困難です。
したがって、代理交付は取引先が少数の場合に適した手段といえるでしょう。インボイスの代理交付が向かないケースには、「媒介者交付特例」の利用が最適といえます。
代理交付を利用する流れと注意点
複数の委託者に対してインボイスの代理交付を行う場合は、下記の点に注意が必要です。
- 請求書の「取引先名」の箇所に、各委託者(被代理人)の氏名または名称、登録番号を記載する
- 請求書の「品名」の箇所に、各委託者(被代理人)の課税資産の譲渡等の内容について区分して記載する
- 消費税額などの端数処理は、各委託者(被代理人)の取引を区分して税率ごとに行う
詳しくは国税庁のウェブサイトを確認してください。
※出典:3 適格請求書の交付方法|国税庁
インボイスの媒介者交付特例とは?
インボイスの代理交付と同じような制度に、媒介者交付特例があります。以下で詳しく解説します。
媒介者交付特例の意味
媒介者交付特例とは、代理交付と同じように媒介者が代理でインボイスを交付できる制度です。
適用するためには、販売者・媒介者ともにインボイスの登録が必要です。
媒介者交付特例では媒介者の名称や登録番号を記載できるため、取引先や商品数が多い店舗に適しているといえるでしょう。例えば、農協におけるJAファーマーズマーケットでの委託販売などが該当します。
媒介者交付特例の要件
媒介者交付特例を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。
- 売り手と媒介者が両方ともインボイス発行事業者であること
- 売り手がインボイス発行事業者である旨を、媒介者へ取引前までに通知すること
通知手段には取引の度に登録番号を通知するほか、基本契約時に登録番号を記載する方法があります。
媒介者交付特例を利用する流れ
媒介者交付特例を利用する際の対応を、媒介者側と売り手側に分けて解説します。
媒介者の対応
媒介者側の対応は、次のとおりです。
- 媒介者の名称・登録番号を記載したインボイスを発行
- 発行したインボイスの写しを保存し、売り手に交付する
インボイスの写しは電子記録でも構いません。また、精算書などの売上明細や請求書番号による管理により、インボイスと売り手の関連性を明確にしておく必要があります。
売り手の対応
売り手側の対応は、次のとおりです。
- 媒介者から交付されたインボイスの写しを保存する
- インボイス発行事業者の登録を解除する際は、媒介者へ速やかに通知する
売り手はインボイスの写しを保存する義務があり、7年間の保存が必要です。また、売り手がインボイスの登録を解除すると、インボイスを発行できなくなるため速やかに通知しましょう。
インボイスの代理交付・媒介者交付特例の違い
代理交付と媒介者交付特例は同じような制度ですが、どのような点が異なるのでしょうか。主な3つの違いについて解説します。
適格請求書発行事業者の登録
1つ目の違いは、適格請求書発行事業者(インボイス)登録の有無が異なることです。
- 代理交付:媒介者がインボイス未登録でも利用可能
- 媒介者交付特例:売り手・媒介者ともにインボイス登録が必要
代理交付は売り手がインボイスに登録していれば、媒介者は未登録でも代理交付が可能です。しかし、媒介者交付特例は売り手と媒介者の両方で登録が必須になります。
インボイスの記載事項
2つ目の違いは、レシートなどへの記載事項です。
- 代理交付:売り手の名称、インボイス発行事業者登録番号を記載
- 媒介者交付特例:媒介者の名称、インボイス発行事業者登録番号を記載
代理交付では、売り手の企業名称や、インボイス発行事業者登録番号を記載したレシートなどを発行します。一方、媒介者交付特例では、媒介者の情報を記載しなければなりません。
売り手の匿名性
3つ目の違いは、売り手の匿名性です。
- 代理交付:売り手の匿名性がない
- 媒介者交付特例:売り手の匿名性が高い
前述のとおり、代理交付は売り手の名称などが記載されるため、匿名性がないといえるでしょう。しかし、媒介者交付特例では媒介者の情報が記載されるため、売り手の匿名性が確保される点が特徴です。
インボイス代理交付に似た特例
媒介者交付特例のほかにも、代理交付と同じような特例があります。ここでは2つの特例について解説します。
農協特例
農協特例とは、売り手のインボイス交付を免除し、JA(農協)がインボイスを発行する制度です。売り手がインボイス未登録でも利用できます。
ただし、無条件委託方式による販売、および共同計算方式による精算が要件となります。無条件委託方式は、条件をつけずに販売を委託することです。共同計算方式は、一定期間内に出荷した農産物の平均価格で精算する方法になります。
※参考:インボイス制度|JAグループ
卸売市場特例
卸売市場特例とは、特例の対象となる卸売市場が、売り手の代わりにインボイスを発行する制度です。卸売市場を通した販売では、売り手によるインボイス発行が難しいため交付が免除されます。
特例の対象となるのは、農林水産大臣・都道府県知事の認定、もしくは農林水産大臣の確認を受けた卸売市場です。農協特例と同じく、売り手が必ずしもインボイスに登録している必要はありません。
まとめ
インボイスの代理交付は、売り手によるインボイス発行が難しい場合に利用できる制度です。主に委託販売のような販売方法で利用できます。
売り手のインボイス発行を免除する制度はいくつかありますが、要件が異なるため、違いを理解したうえで利用するとよいでしょう。インボイス制度への対応に不安がある場合は、外部サービスの活用をおすすめします。
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