適格請求書(インボイス)に課税・非課税が混在した時の適切な発行方法と書き方
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-11-29
- この記事の3つのポイント
- 課税と非課税が混在する適格請求書には、課税部分と非課税部分を明確に区別して記載する必要がある
- 適格請求書には税率ごとに税抜金額と消費税の合計金額を記載する
- 非課税取引には適格請求書発行の義務はない
2023年10月から始まったインボイス制度により、詳細な消費税額をインボイスに記載する必要があります。しかし、取引において消費税の課税・非課税が混在する場合もあります。
この記事では、消費税の課税・非課税が混在したケースにおける請求書の発行方法や書き方について解説します。インボイス制度の詳細についても解説しているので、ぜひ参考にしてください。
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適格請求書(インボイス)に課税・非課税が混在した時の適切な発行方法と書き方
適格請求書に非課税・課税が混在した場合はどう記載する?
課税と非課税が混在するインボイスでは、課税部分と非課税部分を明確に区別して記載する必要があります。具体的には、非課税部分に※印を付けて分かりやすくしたり、非課税の文言を記載したりすると効果的です。
なお、インボイスに必要な項目は通常と同じように記載します。具体的な項目は、以下の通りです。
- 適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号
- 取引年月日
- 軽減税率の対象品目だと分かる取引内容
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜又は税込)及び適用税率
- 税率ごとに区分した消費税額等
- 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称
不課税の取引は請求書発行の必要がない
不課税取引とは、その名の通り、課税の対象とならない取引のことです。不課税取引には、事業者が事業として対価を得て行う取引で、寄付や贈与、出資に対する配当などが該当します。
消費税がかからない取引であるため、仕入税額控除の利用とは無関係であり、請求書発行の義務がありません。
また、免税取引も請求書発行の必要がありません。免税取引は一般的に国際輸出に関する取引を指します。消費税の対象となる取引は国内に限られ、国外で行われる取引は対象外となります。
不課税取引と免税取引はどちらも課税されない取引ですが、課税されない理由がそれぞれ異なります。
不課税取引は、国内の取引でありながら、消費税の課税要件を満たさないために不課税となります。一方、免税取引は、モノやサービスの売却先となる場所で税金をかけるという考え方です。
課税区分が混在する請求書の書き方の例
適格請求書を発行する際には、税率ごとに税抜金額と消費税の合計を記載する必要があります。なお、非課税や不課税については合計を分けて記載する必要はありません。
ただし、8%対象や10%対象については記載しなければなりません。つまり、非課税、不課税、10%対象、8%対象の合計金額の記載が求められます。具体的な記載例は以下の通りです。
- 10%対象(税抜10,000円、消費税1,000円)
- 8%対象(税抜20,000円、消費税1,600円)
- 非課税(10,000円)
- 不課税(20,000円)
合計63,000円 消費税2,600円
10%対象 11,000円(消費税1,000円)
8%対象 21,600円(消費税1,728円)
なお、適格請求書の様式は法令などで定められていません。適格請求書に必要な事項が記入されていれば、どんな書類でも適格請求書として扱えます。
インボイス施行後の非課税・不課税・免税取引の扱い方
インボイス施行後の非課税・不課税・免税取引の扱い方について解説します。代表的なポイントは以下の通りです。
ポイント1.非課税取引は適格請求書発行の義務はない
インボイス制度では、非課税取引、不課税取引、免税取引には適格請求書発行の義務がありません。
まず、不課税取引には、国内で行われない取引や無償の取引が該当するため、消費税の課税対象外となります。また、免税取引は国際輸出に関わる取引のため、国内の取引を対象とする消費税の課税要件から外れます。
以上の理由から、非課税取引、不課税取引、免税取引には適格請求書が不要であり、発行しなくても問題ありません。
ポイント2.非課税取引のみの場合は登録する必要がない
インボイス制度は、仕入税額控除によって消費税の負担を軽減する制度です。買手側が仕入税額控除を利用するには適格請求書が必要であり、売手は適格請求書発行事業者に登録することが求められます。
しかし、非課税取引のみであれば買手側が消費税を支払う必要はありません。仕入税額控除を利用しない場合、適格請求書も不要です。
そのため、非課税取引の対象となるモノやサービスのみを提供している事業者は、適格請求書発行事業者に登録する必要がありません。
非課税取引に該当する例
国内で事業者が対価を得て行う取引には消費税が課税されます。しかし、社会政策的配慮から、非課税となる取引も存在します。
代表的な非課税取引として挙げられるのは、土地の譲渡や貸付、有価証券や支払い手段の譲渡などです。また、保険料や郵便切手類、国や地方公共団体が行う一定の事務に係る役務の提供なども非課税取引として扱われます。
非課税の規定が個別に定められている取引もあります。たとえば、土地の貸付は非課税取引に該当しますが、期間が1か月未満の場合は非課税取引とは認められません。
インボイス制度に関する注意点
インボイス制度は複雑ですが、適切に対応することが大切です。ここからは、具体的な注意点とそれぞれの詳細を解説します。
適格請求書発行事業者しか適格請求書の発行はできない
インボイス制度において必要となる適格請求書は、登録を受けた適格請求書発行事業者だけが発行できます。適格請求書と誤認される可能性のある書類を発行すると、法律違反となるため注意が必要です。
具体的には、消費税法により1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されます。なお、2023年9月30日までは、申請書の提出のみで免税事業者から適格請求書発行事業者に転換できました。
現在は、適格請求書発行事業者の登録申請書と、消費税課税事業者選択届出書の提出が求められます。
適格請求書の写しは保存する必要がある
適格請求書発行事業者が適格請求書を発行した場合、その写しを一定期間保存する必要があります。具体的には、交付日を含む課税期間の消費税申告期限から7年間です。
なお、紙媒体と電子データのどちらで保存しても問題ないとされています。どちらも形式でも、消費税を納税する事業所で開示可能な状態で保存することが求められます。
3万円未満の領収書の取り扱いに留意する
インボイス制度の導入に伴い、3万円未満の領収書の取り扱いに留意する必要が生じました。以前は、税込3万円未満の仕入れに関しては、帳簿記載だけで仕入れ税額控除が認められていました。
しかし、インボイス制度下では、上記の特例が廃止され、帳簿記載に加えて適格請求書が必要になります。そのため、適格請求書として認められるレシートや領収書を用意する必要があります。
なお、インボイスが不要と判断される取引もあります。該当するのは、自動販売機や公共交通機関の利用など、適格請求書の交付が難しい取引です。
インボイス制度へ対応する際に利用できる支援措置
インボイス制度へ対応する場合、いくつかの支援措置を利用できます。代表的な支援措置は、以下の通りです。
種類 | 内容 |
小規模事業者持続化補助金制度 | ・小規模事業者の販路開拓や生産性向上を支援する ・通常枠で上限50万円の補助金が出る ・インボイス特例では、さらに50万円の補助金が出る |
2割特例 | ・免税事業者の消費税額を売上税額の2割とする ・2023年10月1日から2026年9月30日までの期間で、インボイス制度を導入することが条件 |
IT導入補助金制度 | ・インボイス対応の会計ソフトの導入を支援する ・50万円以下なら3/4以内の補助を受けられる ・50万円以下なら2/3以内の補助が受けられる |
まとめ
適格請求書は、非課税・課税が混在した場合への対処や、インボイス制度下における扱いなど、注意するべき点が多くあります。
請求書に関する複雑な業務を効率的に対応したり、ミスを減らしたりするためには、専用のシステムの導入が推奨されます。
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