保険料の勘定科目は?生命保険・損害保険など種類別の仕訳や受取金の経費処理
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-09-06
保険料の勘定科目は、保険の種類や内容によって異なります。そのため、保険料を会計処理する際に、どの勘定科目を使えばよいのか悩む担当者もいるでしょう。
本記事では、保険料の勘定科目について解説します。また、仕訳例や受取金の経費処理などについても解説するため、ぜひ参考にしてください。
保険料の勘定科目は?生命保険・損害保険など種類別の仕訳や受取金の経費処理
保険料を支払った際の勘定科目
保険料を支払った際に使用する勘定科目は、どのように会計処理するとよいのでしょうか。ここでは、社会保険と生命保険・損害保険のケースに分けて解説します。
社会保険のケース
社会保険料とは、健康保険や厚生年金保険などのことです。このうち、会社側が支払う保険料の場合には、「法定福利費」という勘定科目を用いましょう。
従業員の給与から天引きした保険料については、「預り金」もしくは「法定福利費」を使うのが一般的です。預り金とは他社から預かった金銭のことを指します。
生命保険・損害保険のケース
生命保険や損害保険の保険料を仕訳する際には、勘定科目が以下のように異なります。
- 保険料:契約期間が1年以内の契約の保険料の場合
- 保険積立金:貯蓄性のある保険契約で、会計上の資産に該当する場合
- 前払費用:まだ受けていない役務に対する対価の場合
- 長期前払費用:1年を超えて費用となる、まだ受けていない役務に対する対価の場合
保険料とは?
そもそも保険料とは何なのでしょうか。ここでは、保険料の定義や保険の種類などについて詳しく解説します。
保険料の定義
保険料とは、保険契約に基づき、契約者が保険会社に支払う料金のことです。保険料が発生するものはさまざまで、たとえば社会保険や生命保険、損害保険などが挙げられます。
保険の種類や内容によって使うべき勘定科目は異なるため、どのような保険なのかをしっかりと理解しておくことが重要です。
社会保険
社会保険とは、会社員や条件を満たした労働者が加入する保険です。社会保険には以下の5つの保険が含まれています。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 介護保険
このうち、労災保険を除いた4つは企業と従業員が折半して保険料を支払います。
生命保険
生命保険とは、人の生死に関して保険金が支払われる保険です。たとえば、契約期間に制限のない終身保険や、一定期間のみ保障する定期保険、定期保険と終身保険を組み合わせたような養老保険などが挙げられます。
損害保険
損害保険とは、事故による損害を補償するための保険です。たとえば、火事などが起こった際に補償を提供する火災保険、自動車事故による損害や責任を補償する自動車保険、賠償責任に対して補償を提供する賠償責任保険などがあります。
保険金を受け取った際の勘定科目
生命保険や損害保険などの契約を解約する際に受け取る解約返戻金は、「雑収入」という勘定科目を使いましょう。
保険積立金がある場合の差額は「雑収入」もしくは「雑損失」で処理します。または、保険積立金に計上した金額を取り崩す処理でも構いません。
契約満了時に受け取れる満期保険金も「雑収入」で処理しましょう。
社会保険料の勘定科目・仕訳例
ここでは、5つのケースに分けて社会保険料の勘定科目と仕訳例を紹介します。仕訳に迷った場合は参考にしてください。
企業負担を「未払費用」に計上するケース
厚生年金保険や健康保険、介護保険などは、事業主と従業員が折半して保険料を支払います。会社側が負担する分については「未払費用」として対象月に計上しましょう。
また、労働保険料は6月1日から7月10日の間に1年分納付するため、その他の社会保険料と区別するケースもあります。
ここでは、社会保険料を労働保険とそれ以外で分ける場合の仕訳例を紹介します。
借方 | 貸方 | ||
法定福利費 | 150,000 | 未払費用 | 150,000 |
法定福利費(労働保険料) | 50,000 | 未払費用(労働保険料) | 50,000 |
従業員負担を「預り金」に計上するケース
従業員が負担する社会保険料は、事業者負担分と合わせて事業者が納付するという仕組みです。そのため、従業員負担分は「預り金」として扱い、企業と従業員が収めた社会保険料を区別しておきましょう。
ここでは、従業員負担分を預り金として扱い、事業主がまとめて納付する際に仕訳例を紹介します。
預り金として計上する場合
借方 | 貸方 | ||
給与 | 270,000 | 現金 | 250,000 |
預り金 | 20,000 |
納付する場合
借方 | 貸方 | ||
預り金 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
法定福利費 | 20,000 |
従業員負担を「法定福利費」に計上するケース
従業員負担分を「法定福利費」として計上するケースもあります。基本的なプロセスは預り金と同様で、従業員の給与から保険料を徴収、事業主負担分と合わせて納付するという仕組みです。
ここでは、従業員負担分を法定福利費とし、会社側が負担する分とまとめて納付した場合の仕訳例を紹介します。
法定福利費として計上する場合
借方 | 貸方 | ||
給与 | 270,000 | 現金 | 250,000 |
法定福利費 | 20,000 |
納付する場合
借方 | 貸方 | ||
法定福利費 | 20,000 | 現金 | 20,000 |
保険料計上における発生主義・現金主義
保険料を徴収するタイミングと納付タイミングが異なるため、どの時点で費用を計上するか悩む人もいるでしょう。計上タイミングには、費用や収益が発生したタイミングで処理する「発生主義」と、実際のやり取りが起こったときに計上する「現金主義」があります。
発生主義の場合
借方 | 貸方 | |||
給与計上 | 給与 | 270,000 | 未払費用 | 250,000 |
預り金 | 20,000 | |||
社会保険料計上 | 法定福利費 | 20,000 | 未払費用 | 20,000 |
給与支給 | 未払費用 | 250,000 | 普通預金 | 250,000 |
借方 | 貸方 | |||
社会保険料納付 | 未払費用 | 20,000 | 普通預金 | 40,000 |
預り金 | 20,000 |
現金主義の場合
借方 | 貸方 | |||
給与計上 | 給与 | 270,000 | 未払費用 | 250,000 |
預り金 | 20,000 |
借方 | 貸方 | |||
給与支給 | 未払費用 | 250,000 | 普通預金 | 250,000 |
借方 | 貸方 | |||
社会保険料納付 | 法定福利費 | 20,000 | 普通預金 | 40,000 |
預り金 | 20,000 |
社会保険料の仕訳に関する注意点
厚生年金保険・健康保険・介護保険の3つと、雇用保険・労災保険とでは納付するタイミングが異なります。
厚生年金保険・健康保険・介護保険は、対象月の翌月までに日本年金機構に納付することと定められています。
雇用保険・労災保険は、原則として年1回まとめて納付することとなっています。
生命保険料の勘定科目・仕訳例
ここでは、定期保険・終身保険・養老保険を支払った際の仕訳例を紹介します。
定期保険を支払ったケース
定期保険は一定期間のみ保障される保険で、掛け捨て型保険とも呼ばれています。定期保険料を支払った場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
保険料 | 250,000 | 普通預金 | 250,000 |
終身保険を支払ったケース
終身保険とは保障に期限が設けられておらず、一生涯保障が続く保険のことです。終身保険料を支払った場合の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
保険積立金 | 500,000 | 普通預金 | 500,000 |
終身保険の保険金の受取人が役員や従業員の遺族の場合には、給与として扱いましょう。
養老保険を支払ったケース
養老保険の仕訳は、受取人によって異なります。法人が死亡保険金・生存保険金を受け取る場合は「保険積立金」、役員や従業員遺族が死亡保険金、法人が生存保険金の受取人なら半分は資産(保険積立金)、半分は経費(保険料)として計上しましょう。
養老保険の保険料を法人が支払ったときの仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
保険積立金 | 300,000 | 普通預金 | 600,000 |
保険料 | 300,000 |
損害保険料の勘定科目・仕訳例
ここでは、損害保険料を支払った場合の勘定科目や仕訳例を紹介します。
火災保険を支払ったケース
火災保険の保険料は、経費にあたるため全額を保険料として処理できます。契約期間が2年以上という場合には、期間按分して翌期以降の保険料は「前払費用」として振り替えましょう。
2年契約の場合は以下のように仕訳します。
仕訳時
借方 | 貸方 | ||
保険料 | 100,000 | 普通預金 | 100,000 |
決算時
借方 | 貸方 | ||
前払費用 | 50,000 | 保険料 | 50,000 |
損害保険料の仕訳に関する注意点
損害保険料については、経費にできないケースもあります。たとえば、私的な保険料の支払いは経費としての計上は不可です。一方、事業に関係する保険料なら経費計上可能です。たとえば、オフィスの賃貸契約時に火災保険の契約が義務となっているケースなら、火災保険料を経費として計上しても問題ありません。
解約返戻金の勘定科目・仕訳例
解約返戻金とは、契約を解約する際に返金されるお金です。ここでは、解約返戻金の勘定科目や仕訳例を紹介します。
保険積立金があるケース
解約返戻金が保険積立金より多い場合と少ない場合で、会計処理は異なります。ここでは、解約返戻金が保険積立金を上回った場合と、下回った場合の仕訳例を紹介します。
保険積立金を上回るケース
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 5,000,000 | 保険積立金 | 4,000,000 |
雑収入 | 1,000,000 |
保険積立金を下回るケース
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 4,000,000 | 保険積立金 | 5,000,000 |
雑損失 | 1,000,000 |
保険積立金がないケース
保険によっては保険積立金がない場合もあります。保険積立金がそもそもない場合には、入金額については雑収入で処理しましょう。仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
普通預金 | 100,000 | 雑収入 | 100,000 |
まとめ
保険料は保険の種類や内容によって、勘定科目が異なります。そのため、保険の種類や内容などを把握したうえで、適切に処理することが重要です。この記事で紹介した勘定科目や仕訳例を参考にして、会計処理を行いましょう。
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