
法人成りした際の仕訳方法とは?引継ぎ方法と注意点もあわせて解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-02-18
- この記事の3つのポイント
- 法人成りした際は、資産や負債の引き継ぎだけでなく、個人事業主の廃業・確定申告が必要
- 資産の引き継ぎ方法は大きく4つあり、それぞれ仕訳方法が異なるため、正しい理解が求められる
- 法人成りの会計処理では、資産の負債のバランスをとりつつ、消費税や支払いについての理解も重要
法人成りした際の仕訳方法とは?引継ぎ方法と注意点もあわせて解説
法人成りとは、個人事業主から法人へ事業を引き継ぐことを指します。法人化にあたっては、会社設立に関する手続きのほか、資産の引き継ぎを含む会計処理も必要です。 資産の引き継ぎは煩雑なものも存在するため、それぞれの特徴や仕訳方法を理解したうえで、適切に対処しなければいけません。 本記事では、法人成りに必要な会計処理と資産引き継ぎの方法を紹介します。具体的な仕訳例や注意点にも触れるので、ぜひ参考にしてください。
1.法人と個人事業主の会計処理の違い
法人と個人事業主の会計処理は、主に会計基準・税務処理・資金の区分が異なります。
個人事業主は「所得税法」に基づき、事業主本人の収入や支出をまとめて処理します。確定申告においては、青色申告・白色申告の選択が可能で、比較的自由度が高いものの、家事関連費と事業支出の区分が曖昧になりやすい点が特徴です。
一方、法人は「会社法」「法人税法」などに従い、会社として独立した会計帳簿を作成します。決算書の作成や法人税申告が義務付けられており、事業と個人の資産が明確に分離している点が特徴です。
法人成りをする場合、個人事業主のときと同じ事業を続けていても、会計上は別の事業体として会計処理を行います。
たとえば、個人事業主では帳簿上の残高の差額は「事業主貸」「事業主借」などの個人勘定で仕訳します。一方、法人の場合は「資本金」「預り金」「未払い金」など、正確な勘定科目で管理しなければいけません。
2.法人成りに必要な3つの会計処理
個人事業主から法人へ移行する際には、資産・負債の引き継ぎや確定申告の提出といった会計処理を行う必要があります。
ここでは、法人成りに必要な3つの会計処理を紹介します。
2-1.事業に関連する資産や負債を会社に引き継ぐ
法人成りではじめに行うのは、事業に関する資産や負債を会社に引き継ぐ処理です。たとえば、ECサイトでは在庫やパソコン、運送業では車両を保有しているケースが多いです。
個人事業主から法人へ移行する際には、上記のような「事業に関連する資産や負債」を引き継ぐための処理を行う必要があります。
たとえば、事業で使用するパソコンを法人へ引き継ぐ場合の仕訳例は以下のとおりです。
▼個人事業主側の売却処理
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
普通預金 | 150,000円 | 事業主貸 | 150,000円 |
▼法人側の引き継ぎ処理
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
備品 | 150,000円 | 普通預金 | 150,000円 |
なお、上記の処理を行う際は譲渡価格を決める必要があります。時価での引き継ぎが原則ですが、帳簿価格と大差がない場合はどちらを記載しても問題ありません。
2-2.個人事業主の廃業届を提出する
法人成りをすると個人事業主ではなくなるため、廃業届を提出する必要があります。国税庁のWebサイトや税務署の窓口で「事業廃止届出書」を取得し記載しましょう。
事業廃止届出書は、設立した会社の名前・代表取締役社長の氏名・納税地等を記載し、所轄の税務署へ提出します。提出期限は、事業を廃止した日から1カ月以内です。
なお、ケースに応じて「青色申告の取りやめ届出書」「消費税の事業廃止届出書」「給与支払事務所等の廃止届出書」などの提出も必要です。
2-3.個人事業主の確定申告書を提出する
法人成りした初年度は、法人分だけでなく、最後の「個人事業主としての確定申告」も提出します。たとえば、2025年10月31日まで個人事業主として事業を行っていた場合は「2025年1月1日〜2025年10月31日」までに発生した収益経費をまとめ、申告します。
確定申告の内容は通常と同じです。白色もしくは青色の申告書と添付書類を用意し、毎年2月〜3月に行われる確定申告の期間内に提出しましょう。
3.資産引継ぎの方法
ここでは、個人事業主から法人への資産引き継ぎの方法を紹介します。
3-1.売買契約
法人成りにおける資産引き継ぎで一般的なのが「売買契約」です。「個人から法人へ資産を売却した」という形式をとり、資産を法人へ移行します。
個人と法人との間で売買契約を締結するだけで完結し、引き継ぎ方法もシンプルです。売買契約書に取引内容(取引日時・資産名・売却価格など)を記載しておくことで、資産の売買があった事実を証明できます。
ただし、売買契約で資産の引き継ぎを行う場合は、法人から個人へ売却価格の支払いが必要で、個人に売却益に対する税金が課されるといった点に注意が必要です。
3-2.賃貸借契約
不動産をはじめ、売却に手間や時間がかかる資産を引き継ぐ場合には、賃貸借契約が用いられます。たとえば、個人がオフィス用の不動産を保有している場合、法人と賃貸借契約書を取り交わして貸し出すという形式をとります。
賃貸借契約のため、契約後は法人から個人へ賃料が支払われます。賃貸借契約で資産を引き継ぐことで、法人側の初期費用による負担の軽減が可能です。
ただし、賃貸借契約で資産を引き継ぐ場合、不動産の所有権は引き続き個人が保持します。法人から支払われる賃貸料は「不動産所得」に該当するため、毎年確定申告が必要です。固定資産税の支払い義務を個人が負うことになる点にも注意しましょう。
3-3.現物出資
「現物出資」とは、現金以外の資産を法人へ出資し、資本金や資本準備金に充てる方法です。「現金以外の資産」は、車両やパソコン、不動産、有価証券などが挙げられます。現金資産に余裕がない場合でも、法人の資本金額を増やせます。
ただし、現物出資は資産価格の適正な評価が必要なほか、定款への記載・法務局への申請・各種名義変更など、手続きに手間がかかる点がデメリットです。
また、出資資産の価額が500万円を超える場合は、裁判所による調査が必要となり、手続きが煩雑になりがちです。
必要に応じて税理士へ相談するとよいでしょう。
3-4.贈与契約
「贈与契約」とは、個人が保有する資産を、法人に無償で譲渡する引き継ぎ方法です。法人側はコストをかけずに、資産を引き継ぐことができます。
ただし、贈与契約は税制上において「みなし譲渡」とみなされ、受贈益(利益)に対して法人税が課税されます。手続きが煩雑になりやすく、税制上のメリットが少ないことから、利用されるケースは多くありません。
4.法人成りで資産を引き継ぐときの仕訳方法
ここでは、法人成りで資産を引き継ぐときの仕訳方法を紹介します。それぞれ注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。
4-1.商品などの棚卸資産
在庫商品や原材料などを棚卸資産として引き継ぐ場合は、原則として通常価格を設定して計上します。
棚卸資産の引き継ぎは「個人から法人に売却する」という形式をとるのが一般的です。個人事業主側は事業所得の売上、法人側は仕入として計上します。
▼個人事業主側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
普通預金 | 150,000円 | 売上 | 150,000円 |
▼法人側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
仕入高 | 150,000円 | 普通預金 | 150,000円 |
なお、在庫商品が流行遅れや賞味期限が迫っているなどの理由で、通常の取引価格の約70%未満の場合には、通常価格の70%相当額の譲渡をしても問題ありません。
また、資金不足により仕入高の金額を支払うことができない場合は、個人への支払義務を「未払金」として処理することも可能です。
4-2.備品などの固定資産
備品(事務用品・パソコンなど)や機械などの固定資産を引き継ぐ場合は「工具器具備品」として計上します。固定資産も売買契約で引き継ぐのが一般的で、売却価額は時価で設定するのが原則です。
▼個人事業主側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
事業主貸 | 150,000円 | 工具器具備品 | 150,000円 |
▼法人側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
工具器具備品 | 150,000円 | 普通預金 | 150,000円 |
なお、売却した時点の帳簿価額と譲渡価額との差額は、事業主勘定で処理します。売却益は「譲渡所得」として課税対象になるため、確定申告時に注意が必要です。
固定資産について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。基準や特例、有形固定資産の減価償却の方法まで、わかりやすく解説しています。
関連記事:固定資産の対象となるものは?基準や特例、固定資産税についても解説
関連記事:有形固定資産とは?定義や具体例と減価償却の方法をわかりやすく解説
4-3.土地や店舗などの不動産
土地や店舗といった不動産を引き継ぐ場合も「固定資産」として記帳します。売買契約で不動産を引き継ぐ際、売却価額は時価で計上するのが原則です。
たとえば、簿価1,500万円の不動産を、法人に時価2,000万円で譲渡する場合の仕訳例は以下のとおりです。
▼個人事業主側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
事業主貸 | 20,000,000円 | 建物(または土地) | 15,000,000円 |
固定資産売却益 | 5,000,000円 | ||
▼法人側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
建物(または土地) | 20,000,000円 | 未払金 | 20,000,000円 |
個人事業主の帳簿上は、不動産を時価で法人に譲渡した形式で計上します。差額(500万円)は譲渡所得に該当し、税金が課される点を理解しておきましょう。
一方、法人は不動産を時価で取得したものとして計上します。減価償却資産は、引き継いだ法人側が減価償却の処理を行う必要がある点に注意が必要です。
4-4.売掛金や買掛金などの売上債権
売掛金や買掛金などの売上債権を引き継ぐ場合は、原則として簿価を記帳します。引き継ぐ場合は、債権譲渡契約を締結するのが一般的です。
売掛金20万円と買掛金10万円を引き継ぐ場合の仕訳例は以下のとおりです。
▼個人事業主側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
事業主貸 | 200,000円 | 売掛金 | 200,000円 |
買掛金 | 100,000円 | 事業主貸 | 100,000円 |
▼法人側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
売掛金 | 200,000円 | 未払い金 | 200,000円 |
未収入金 | 100,000円 | 買掛金 | 100,000円 |
ただし、売上金や買掛金といった未決済のものは、あえて引き継がなくても問題ありません。債権者への通知や融資の名義変更など、手続きが煩雑なためです。
4-5.個人口座から法人口座への入金
個人口座から法人口座へ資金を移した場合は、法人側で「役員借入金」または「預り金」などと記帳します。
個人口座から法人口座へ30万円を入金した場合の法人側の仕訳例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
普通預金 (法人口座) | 300,000円 | 役員借入金 | 300,000円 |
なお「事業主借」は個人勘定に該当するため、法人会計上では「役員借入金」を用いるのが一般的です。
5. 法人成りで負債を引き継ぐ際の仕訳方法
ここでは、法人成りで負債を引き継ぐ際の仕訳方法を紹介します。
5-1.リース契約資産
法人成りの際に個人事業主名義のリース契約資産を法人へ引き継ぐ場合は、事前にリース会社の承認を得たうえで、契約名義を法人へ変更しなければいけません。契約が法人に引き継がれた時点で、法人側がリース資産とリース債務を計上します。
5万円のリース契約資産を引き継ぐ場合の仕訳例は、以下のとおりです。
▼個人事業主側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
リース債務 | 50,000円 | 事業主貸 | 50,000円 |
▼法人側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
リース資産 | 50,000円 | リース債務 | 50,000円 |
上記の処理により、リース資産と対応する負債が法人の帳簿に引き継がれます。名義変更を行わない場合は、支払者と契約者が異なり、経費計上が認められないリスクがあるため注意が必要です。
下記の記事では、リース科の勘定科目について詳しく紹介しています。契約の種類別の仕訳方法も解説しているので、ぜひご覧ください。
5-2.借入金
前提として、法人成りの際に個人名義の借入金を法人へ引き継ぐ場合は、金融機関の承認が必要です。法人設立後に再契約または名義変更の手続きを行います。
承認が得られない場合は、借入金は個人のままとなり、法人が個人へ返済する形(役員借入金)で処理します。
個人事業主の借入残高100万円を法人が引き継ぐ場合の仕訳例は以下のとおりです。
▼個人事業主側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
借入金 | 1,000,000円 | 事業主貸 | 1,000,000円 |
▼法人側
借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
役員借入金 | 1,000,000円 | 借入金 | 1,000,000円 |
ただし、契約名義の変更が完了していない段階での支払いは、法人経費として認められない場合があるため注意が必要です。
6.法人成りの会計処理における注意点
ここでは、法人成りの会計処理における注意点を4つ紹介します。
6-1.資産引継ぎは消費税がかかる場合がある
法人成りで会計処理を行う際、以下に該当する事業者は、資産引き続きによって消費税がかかる点に注意が必要です。
- 基準期間の課税売上高が1,000万円超
- 特定期間の課税売上高(または給与等支払額の合計)が1,000万円超
- インボイス登録事業者
たとえば、固定資産を法人へ引き継ぎ、譲渡益が発生した場合は、課税対象として消費税の支払義務が生じます。法人側も課税事業者かつ本則課税であれば、仕入税額控除が可能です。詳しくは税理士に相談するのがおすすめです。
法人における消費税については、こちらの記事で詳しく解説しています。課税対象の取引や仕組み、計算方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:法人における消費税とは?課税対象の取引や仕組み、計算方法を解説
6-2.資産と負債のバランスに注意する
法人成りの際は、個人事業から引き継ぐ資産と負債のバランスに注意が必要です。
法人の設立時には、引き継ぐ資産と負債を整理し、両者の差額を「資本金」や「役員借入金」として処理します。しかし、資産よりも負債が多い場合、法人の純資産がマイナスとなり「債務超過」となる恐れがあります。
債務超過の状態では、金融機関からの信用を得られず、融資や取引条件に不利な影響を及ぼしかねません。そのため、負債は法人成りの前に整理し、資産とのバランスをとることが重要です。
必要に応じて、役員が私財を出資して資本を補う方法も検討しましょう。
6-3.必要な引継ぎかどうか検討する
法人成りの際は、すべての資産や負債を機械的に引き継ぐのではなく「本当に法人にとって必要なものか」を検討することが重要です。
個人事業で使用していた資産のなかには、法人の事業目的に合わないものや私的利用分が含まれている場合があります。また、不要な負債まで引き継ぐと、法人の財務状況を悪化させる原因にもなりかねません。
引き継ぎ前に各資産・負債の必要性を精査し、法人運営に適した内容だけを選別して移行することが望ましいです。
6-4.会社設立時の支払いも経費計上できる
会社設立のために支出した費用に関して、設立登記が完了するまでは「創立費」、会社設立後から事業開始までに要したものは「開業費」として計上できます。
法人設立にかかる費用は、会社にとって本来の事業活動の開始に不可欠なものであり、繰延資産として処理されます。
繰延資産は将来の収益に対応させるため、5年間の均等償却または任意償却が可能です。設立時の初期費用を効率よく経費にでき、節税効果を高められます。
以下の記事では、登記費用について解説しています。種類や勘定科目、仕訳例も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:登記費用の種類と使える勘定科目、法人設立前後の仕訳例をケース別で解説
7.自動仕訳機能が搭載されている経費精算システム「バクラク経費精算」
法人成りする際には、個人事業の廃業手続きや確定申告のほか、資産・負債の引き継ぎも必要です。引き継ぎ方法によって、仕訳や会計処理が異なるため、正しく理解しておきましょう。
法人成りにおける会計処理は、経費精算システムを導入することで簡略化・効率化を図れます。法人成りや会社設立後の会計処理を効率化したい方には、経費精算システムの「バクラク経費精算」の導入がおすすめです。
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