登記費用の種類と使える勘定科目、法人設立前後の仕訳例をケース別で解説

会社を設立するときに悩みの種となるのが、登記費用の種類の多さと勘定科目のわかりづらさです。会社設立時にかかる費用は経費として計上できますが、「創立費」や「開業費」、「租税公課」や「支払手数料」など種類によって勘定科目が異なります。

そのため「会社の宣伝用チラシをつくったけど、勘定科目が分からない」「司法書士に登記申請用の書類作成を依頼した場合の仕訳方法は?」など、細かいケースで迷うことも多いでしょう。

そこで本記事では、登記費用の種類と使える勘定科目、法人設立前後の仕訳例をケース別で解説します。

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登記費用の種類と使える勘定科目、法人設立前後の仕訳例をケース別で解説

登記費用の種類と使える勘定科目

会社設立時や登記記録の変更をする際には、登記費用がかかります。登記費用は経費として計上できますが、種類によって使用する勘定科目が異なるため注意が必要です。

たとえば、会社設立時にかかった費用は「創立費」や「開業費」で処理しますが、登録免許税は「租税公課」で処理します。また、創立費や開業費は、決算の際に償却処理が必要です。複雑なので、仕訳の際は注意しましょう。

登記費用の具体例と使える勘定科目の一覧は、以下のとおりです。

登記費用の種類使える勘定科目
創立費創立費
開業費開業費
登記簿謄本代

租税公課

支払手数料

雑費

司法書士報酬

支払手数料

顧問料

登録免許税租税公課
印鑑証明書発行費用

租税公課

支払手数料

雑費

創立費の仕訳

「創立費」は、会社設立のために要した費用を指す勘定科目です。会社設立前や設立時に発生した費用や、設立登記前後の費用を含みます。

創立費は原則として繰延資産として計上可能です。計上する際は均等償却か任意償却を選び、決算期に償却処理をしましょう。

3月決算の会社を2024年4月に設立した場合の、具体的な仕訳例を見ていきましょう。

2024年4月に、定款作成費として5万円を現金で支払った。

借方貸方
創立費50,000円現金50,000円

2025年3月に創立費を1万円償却し、未償却残高4万円は来期以降に繰り延べた。

借方貸方
創立費償却10,000円創立費10,000円

開業費の仕訳

「開業費」は、会社設立後から事業開始までの間に発生した準備費用を計上するための勘定科目です。チラシ制作などの広告宣伝費や、トイレットペーパーなどの消耗費を含みます。

開業費は創立費同様、原則として繰延資産として計上可能です。計上する際は均等償却か任意償却を選び、決算期に償却処理しましょう。

3月決算の会社を2024年4月に設立した場合の、具体的な仕訳例は以下のとおりです。

2024年4月に、開業前の広告宣伝費として10万円を現金で支払った。

借方貸方
開業費100,000円現金100,000円

2025年3月に開業費を3万円償却し、未償却残高7万円は来期以降に繰り延べた。

借方貸方
開業費償却30,000円開業費30,000円

費用・収益それぞれの会計処理や、繰延資産への計上について詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

関連記事:「繰延」とは?費用・収益それぞれの会計処理や繰延資産への計上を解説

登記簿謄本代の仕訳

登記簿謄本とは、不動産(土地や建物)に関する重要な情報が記載された公的な証明書です。

登記簿謄本代に使用する勘定科目は「租税公課」「支払手数料」「雑費」の3種類があり、一般的には、租税公課を使用します。登記簿謄本代は、行政サービスの事務手数料として支払うものだからです。

具体的な仕訳例を見ていきましょう。

登記簿謄本の取得にかかる手数料600円を現金で支払った。

借方貸方
租税公課600円現金600円

司法書士報酬の仕訳

司法書士報酬は、司法書士が提供する法的サービスに対して支払う費用です。登記申請用の書類作成や添付書類の準備などが含まれます。

司法書士報酬に使用する勘定科目は「支払手数料」や「顧問料」が挙げられます。

司法書士に支払う金額が1万円を超える場合は、源泉徴収するようにしましょう。源泉徴収額は預り金で処理します。ただし相手が司法書士法人ならば、源泉徴収は必要ありません。

具体的な仕訳例を見ていきましょう。

司法書士への報酬33,000円から3,369円の源泉徴収を行い、残額29,631円を普通預金から支払った。

借方貸方
支払手数料600円普通預金29,631円
 預り金3,369円

登録免許税の仕訳

登録免許税は、不動産の登記や会社の設立登記などを行う際に支払う国税です。会社の設立時だけでなく変更登記でも登録免許税が必要で、金額は登記の内容によって異なります。

仕訳時の勘定科目は「租税公課」を使いましょう。

具体的な仕訳例は、以下のとおりです。

登録免許税5万円を普通預金から支払った。

借方貸方
租税公課50,000円普通預金50,000円

印鑑証明書発行費用の仕訳

印鑑証明書発行費用は、公的機関から印鑑証明書を取得する際に支払う手数料のことです。印鑑証明書は、会社設立や不動産取引など、さまざまな手続きで必要です。

自治体によって費用は異なりますが、法人の場合は通常1通450円程度、個人の場合は1通300円程度かかります。

なお費用の目安は、当社が独自調査したものです。印鑑証明書を発行する際は、各自治体に問い合わせるとよいでしょう。

印鑑証明書発行費用の勘定科目には「租税公課」「支払手数料」「雑費」があります。一般的には「租税公課」を使用します。

具体的な仕訳例を見ていきましょう。

印鑑証明書発行費用450円を現金で支払った。

借方貸方
租税公課450円現金450円

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会社設立の前後では、さまざまな費用がかかります。もちろん経費として計上できますが、費用の種類によって異なるので注意が必要です。

たとえば、会社設立時にかかる費用は「創立費」や「開業費」、登記簿謄本代や登録免許税、印鑑証明書発行費用は「租税公課」、司法書士報酬は「支払手数料」で仕訳します。

仕訳が複雑なので、手作業での会計処理はどうしても時間がかかってしまう場合もあるでしょう。そのような場合は、経費精算システムがおすすめです。

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