請求書の原本はPDFでも法律上有効?発行のメリットや送付・保管の注意点
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-09-06
請求書をPDF化する場合、原本をどうすればよいのか迷っている方は多いでしょう。この記事では、請求書原本をPDF化する際の法的有効性、保存方法、保存期間などについて詳しく解説します。
電子帳簿保存法に基づき、適切な手続きを踏むことで、紙の原本と同様に有効な電子データとして保存できることを説明します。
請求書の原本はPDFでも法律上有効?発行のメリットや送付・保管の注意点
電帳法に則れば請求書のPDFを原本扱いできる
税法では、請求書を含む帳簿書類の保存期間を7年と定めています。通常は紙媒体での保存が基本ですが、電子帳簿保存法に基づく「電子取引」の要件を満たせば、PDFファイルなどの形式で電子的に保存することも認められています。
また、紙の請求書とPDF化された電子発行の請求書は、法律上の有効性に差がありません。これは請求書に限らず、見積書、支払明細書、納品書、領収書などの帳票についても同様であり、紙とPDF形式では法的有効性に違いはありません。
PDFで請求書を発行するメリット
まずはPDFで請求書を発行するメリットについて詳しく解説します。
紙やインクなど物理的なコスト削減に繋がる
PDF化された請求書を利用するメリットには、物理的な印刷と配送コストの削減が挙げられます。紙やインク、封筒、郵送代といった費用が不要になり、経費の削減が可能です。また、保管に必要なスペースや設備コストも低減できます。
これにより、紙の書類を収納するためのファイルキャビネットや保管室などが不要になります。さらに、押印や封入といった手作業が減るため、人的コストの節約にもつながります。
郵送時間を省略することで請求業務の迅速化を図れる
請求書をPDF化することで、郵送にかかる時間を省略し、請求書をリアルタイムで送信することも可能です。これにより、取引先に迅速に請求書を届けることができ、業務のスピードが大幅に向上します。
また、請求書に誤りがあった場合でも、修正と再送を素早く行うことができます。郵送であれば再発行と再送に数日かかるところ、PDFであれば即座に修正し、再送信することが可能です。
デジタル検索により検索性の向上に繋がる
請求書をPDF化することで、デジタル検索が可能になります。デジタル形式で保存された請求書は、特定のキーワードや日付、金額などを使って迅速に検索できるため、必要な請求書をすぐに見つけ出して参照することができます。これにより、監査や社内の問い合わせ対応が大幅に効率化されます。
例えば、過去の請求書を確認する必要がある場合、紙の書類ではファイルキャビネットや収納棚を一つずつ探し出す必要がありますが、PDFであれば数秒で必要な情報にアクセスできます。さらに、PDFファイルは整理が容易で、フォルダ分けやタグ付けにより、関連する請求書をまとめて管理することができます。
PDFで請求書を発行するデメリット
PDFで請求書を発行することはメリットもありますが、一方で2つのデメリットも存在します。以下で詳しく解説します。
オペレーションの再構築が必要になる
請求書をPDF化する際のデメリットの1つは、電子データ化に伴い既存の請求業務プロセスを見直す必要があることです。これには、いくつかの新しいオペレーションの設計が含まれます。
まず、承認フローの見直しが必要です。紙ベースの請求書では、承認印を押すことで進めていたプロセスが、デジタル化では電子承認システムを導入する必要があります。このシステムの選定、導入、運用には時間とコストがかかります。
次に、データの保存方法と保管場所のルール設定が求められます。電子データはクラウドストレージや社内サーバーに保存されるため、どこにどのように保存するか、アクセス権限は誰が持つかなど、明確なルールを定める必要があります。
導入コストが発生する
請求書をPDF化するデメリットは、PDF化を進めるための専用システム導入に初期投資および継続的なランニングコストがかかる場合があることにもあります。専用システムを導入するためには、システムの選定、購入、設置、初期設定、従業員のトレーニングなど、多くのコストが発生します。
また、システムの維持・管理には継続的なランニングコストも伴います。例えば、ソフトウェアのライセンス料、システムの保守費用、セキュリティ対策の更新費用などが挙げられます。これらの費用は毎年かかるものであり、長期的に見ると累積的な負担となるでしょう。
請求書の原本をPDF化する方法
ここからは、請求書の原本をPDF化する方法について3つ解説します。
WordやExcelで作成したデータをPDFに変換する
請求書の原本をPDF化する方法として、WordやExcelで作成した請求書をPDFファイルに変換して送付する方法があります。これは、文書が簡単に編集されるリスクを軽減し、信憑性を保つことができる点で有効です。特別なツールは不要かつ変換は簡単に行えるため、手軽に電子化を進めたい場合に適しています。
具体的には、WordやExcelで請求書を作成した後、「名前を付けて保存」メニューからPDF形式を選択して保存するだけで、PDFファイルに変換できます。これにより、文書内容が固定され、受け取り手による改ざんのリスクを低減できます。
紙の請求書をスキャンしてPDFに変換する
請求書の原本をPDF化する方法として、紙の請求書をスキャナーでスキャンし、PDF形式で電子データ化する方法もあります。これは、手書きの伝票や署名が必要な場合に特に便利です。
ただし、スキャンしたPDFデータを送付する際には、相手方のシステムが電子データの保存要件を満たしているかどうかを確認する必要があります。電子帳簿保存法の要件を満たすためには、適切な電子署名の付与やタイムスタンプの付与、一定の保管期間の確保などが必要となります。
したがって、スキャンしたデータがこれらの法的要件を満たしているかを確認し、相手方とも確認を取ることが重要です。
電子請求書発行システムを活用する
請求書の原本をPDF化する方法の1つとして、専用の電子請求書発行システムを利用する方法もあります。この方法では、請求書をPDF形式で生成し、発行から送付、さらに入金管理までを一元的に行えます。これにより、業務の効率化が期待でき、請求書作成や管理にかかる手間を大幅に削減することが可能です。
ただし、専用システムの導入には初期費用および継続的なランニングコストが発生する点に注意が必要です。初期費用にはシステムの導入・設定費用が含まれ、ランニングコストにはシステムの運用・保守費用が含まれます。したがって、システム導入前には費用対効果を慎重に評価し、自社の業務にどれだけの効率化効果が期待できるかを検討することが重要です。
PDF化した請求書の送付方法
PDF形式の請求書は、一般的にメール添付または専用の請求書発行システムを使用して送付されます。メール添付の場合、作成したPDFファイルを各取引先に個別に送信します。この方法はシンプルで導入コストもほとんどかからないため、少数の請求書を発行する場合には適しています。
しかし、多数の請求書を個別のメールで送付する場合、手間がかかる上に、宛先間違いによる情報漏洩のリスクが高まります。大量の請求書を手動で管理・送信することは、人的ミスが発生しやすく、また業務負担も大きくなります。
そこで、取引先が多い場合には、請求書発行システムの導入が推奨されます。請求書発行システムを使用することで、請求書の発行から送付、さらには入金管理までを自動化することができます。このシステムは、取引先ごとに請求書を自動生成し、適切な宛先に送信する機能を持っているため、効率的かつセキュアな送付が可能となります。
請求書の原本をPDF化する際の注意点
最後に、請求書の原本をPDF化する際の注意点について解説します。
事前に取引先への了承を取得する
PDF形式で請求書を発行する前に、必ず取引先からの了解を得ることが重要です。これは、取引先がPDF請求書の受け取りに戸惑うことを避けるためです。取引先によっては、電子請求書に対応していない場合や、紙の請求書に慣れているために電子形式を受け入れる準備ができていないことがあります。事前に了解を得ることで、こうした未認識の問題を防ぐことができます。
次に、取引先の中には、引き続き紙の請求書が必要な企業もあるため、それらの取引先の要求に応じる必要があります。なかには、法的な要件や内部規定の関係で紙の請求書を求める企業も存在します。
そのため、電子請求書に完全移行する前に、各取引先のニーズを確認し、必要であれば紙の請求書も併用する体制を整えておくことが重要です。
PDFファイルへのパスワード設定を行う
請求書の原本をPDF化する際の注意点として、まず請求書の機密情報を保護するために、PDFファイルにはパスワードを設定することも推奨されます。これにより、PDFファイルを不正に閲覧されるリスクを減らすことができます。
次に、パスワードを設定したPDFファイルをメールで送る場合には、そのパスワードを別途安全な方法で通知する必要があります。例えば、電話で口頭伝達するか、別の通信手段(例えばSMSや専用メッセージングアプリ)を使ってパスワードを共有します。
ただし、パスワードを設定したPDFファイルを単独でメールに添付し、そのパスワードを同じメールで送る「PPAP(Password Protected Attachments)」方式はセキュリティ上の脆弱性が指摘されています。この方法は簡単にパスワードが漏洩するリスクがあるため、安全性が高いとは言えません。
そのため、より安全な方法として、クラウドサービスや請求書電子化サービスを利用することが推奨されます。クラウドサービスを利用することで、取引先とのやり取りがより安全かつ効率的に行えます。
まとめ
本記事では、請求書原本をPDF化する際の法的有効性などについて詳しく解説しました。通常は紙媒体での保存が基本ですが、電子帳簿保存法に基づく「電子取引」の要件を満たせば、PDFファイルなどの形式で電子的に保存することも認められています。
PDF化することで、紙やインクなどの物理的コストを抑えられ、検索性も上がります。
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