請求書原本って破棄できる? 正しい保管方法&紙と電子での違いについて

請求書を紙媒体で保管することは手間がかかるだけでなく、保管場所や費用も要するため、苦労する経理担当者が多く存在すると思います。最近は請求書がPDF等の電子形式で発行されることも増え、改正電子帳簿保存法や、インボイス制度の法改正の中で、請求書の保存方法も変わってきています。

本記事では、請求書保存の必要性をはじめ、破棄してもよいのかどうかや請求書の保管方法について解説します。

請求書原本って破棄できる? 正しい保管方法&紙と電子での違いについて

請求書原本の保管義務

請求書は証憑書類であることから、取引の証明書類となるため、定められた適切な方法で、なおかつ保存期間中は破棄することなく保管する必要があります。

請求書の詳細な保管方法に関しては後述しますが、原則的には受け取った原本(紙媒体)で保管する必要があります。

なお保管期間は、以下のように明確に定められています。

個人事業主

確定申告期限日の翌日から起算して5年間

法人

事業年度の確定申告書の提出期限日の翌日から起算して7年間

請求書の保管期間は、請求書が作成された日付から起算するわけではないので、注意が必要です。

長期にわたる保管が義務付けられていることから、保管場所を確保することが求められ、さらに管理のためには人件費等の経費もかかってしまうため、負担が大きいと言えるでしょう。特に原本(紙媒体)を保管している場合は尚更です。

原本(紙媒体)での保管をメインにしている場合において、特に請求書の保管を電子化することはできないかと考えている経理担当者も多いのではないでしょうか。

そもそも請求書を電子化したいと考えた時、法律的に電子保管を行うことに関して問題があるかないかを押さえておく必要があります。電子化した請求書を取引先に送付する場合と、取引先から電子化された請求書を受領する場合に分けて解説します。

<電子化した請求書を取引先に送付する場合>
請求書をPDF等の電子データ化し、取引先に送付することは、法律的には問題はありません。
ただし、双方において請求の内容を認識しておくことが必要です。

メールに添付する場合、多くの未読メールの中に埋もれてしまって請求書を確認してもらえないことがあるため、メールの件名には「請求書添付あり」等と記載し、必ず開いてもらえるような工夫をしましょう。さらに念を押して、メールを送付した旨を電話で伝えるということも予防策の一環です。

また、例えばMicrosoft WordやMicrosoft Excelといった誰でも内容の変更ができる電子データで送付してしまうと、意図せず数字が書き変わってしまったり、改竄や不正が行われるリスクが生じるため、PDF等の書き換えが難しい電子データで送付することが一般的です。

改竄や不正を防ぐために、昔からの慣習で電子データの請求書にも捺印が必要だと思われている方が多くおり、企業においても捺印することが規定されている場合がありますが、実は法律的には捺印は必要ありません。もし、規定を変えられるのなら、捺印を廃止することでスムーズに電子化された請求書を作成することができます。

さらに、メールで請求書を取引先に送付する場合には、情報流出等を防止するために、請求書を開示する際にパスワードを設定しておく等のセキュリティ対策を行うことが重要です。PDFファイルそのもの、あるいはzipファイルに圧縮した上でパスワードを設定し、パスワードは別のメールで取引先に送付しましょう。

例えば、Adobe Acrobatというソフトでは、次の3種類のパスワードを設定することが可能です。

  • 文書を開くためのパスワード
  • 権限のパスワード
  • 添付ファイルを開くためのパスワード

他のソフトでも簡単にパスワード設定ができるので積極的に取り入れていきましょう。

<取引先から電子化された請求書を受領する場合>
PDF等の電子データ化された請求書を受領した場合の詳しい保存方法については後述しますが、近年の税制改正における規制の緩和により、スマートフォン端末やタブレット端末等で撮影された画像であっても保存可能とされています。

自社が発行する請求書が紙媒体のままであったとしても、今後多くの企業ではペーパーレス化が進むと予想されるため、業務効率化のためにも電子データで保存できる仕組みづくりを行うことが必要になってくるでしょう。

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(要件を満たせば)請求書の原本は破棄できる

受領した請求書に関しては、支払い処理を行なった後にファイリングし、原本(紙媒体)を管理することが必要です。この作業に多くの時間と手間がかかってしまうのが経理担当者の悩みの種でしょう。

しかし、要件を満たすことができれば請求書の原本(紙媒体)を破棄できることをご存知でしょうか?

請求書保管を電子化するにあたって、関係してくる法律は主に3つ存在します。

まず、2022年1月に法改正された「電子帳簿保存法」では、国税関係書類を電子化することを促進しています。主な規定としては以下の通りです。

  • 国税関係帳簿書類の電子保存を認める
  • 国税関係書類のスキャナ保存を認める
  • 電子取引に係る取引情報の保存を義務付ける

次に2005年に制定された「e-文書法」では、文書及び書類に関する多くの法律に対して、文書全般の電子化を認めるよう、横断的な効力を持っています。この法律が施行されたことで、前述した電子帳簿保存法が改正されることにも繋がりました。

さらに2023年10月から適用される「インボイス制度(定格請求書等保存方式)」では、仕入税額控除を受けるための要件として、請求書を受領する側だけでなく、発行する側にも電子化することを促進しています。

請求書原本の保管方法

前述した電子帳簿保存法の通り、受領した請求書を保管する場合には、必ずしも原本(紙媒体)を保管する必要はなく、要件を満たせば電子化した上で保管が可能です。

本項目では、請求書を紙媒体で受領した場合と、電子データで受領した場合とに分け、適切に保管を行う方法について解説します。

紙原本の保管

はじめに、紙媒体で受領する請求書について、次の2点の保管方法をご確認ください。

  1. 紙原本の保管
  2. スキャナ保管(&紙原本を破棄)

上記2点の保管方法について掘り下げます。

1.紙原本の保管
紙媒体の請求書を受領し、なおかつ紙媒体のまま保管する場合には、大きな問題点はありません。自社で規定されている通り(月別保管や取引先別保管等)、ファイリングを行い保管しましょう。

2.スキャナ保管(&紙原本を破棄)
請求書を紙媒体で受領したが、紙媒体のまま保存を行うと保管場所に困る…といった場合には、前述の通り原本(紙媒体)を破棄し、スキャナで読み取り電子データとして保管が可能です。

ただし、電子帳簿保存法に定められている下記のスキャナ保存要件を満たす必要がありますので覚えておきましょう。

  • 請求書受領日からおよそ2ヶ月以内にスキャナでの読み取りを行う。
  • 請求書改ざんや不正を防止するため、タイムスタンプ機能がついたシステムでの保管を行う。(※訂正削除不可あるいは訂正削除の履歴が残るシステムにおよそ2ヶ月以内に保存を行った場合には、タイムスタンプは不要)

電子データで受け取る請求書

次に、PDF等の電子データで請求書を受領する場合、考えられる保管方法は次の2点です。

  1. 紙に印刷して保管
  2. 電子保存

上記の保管方法について掘り下げます。

1.紙に印刷して保管
世の中のデジタル化が進む中、原則通り電子データを紙に印刷して保管していたという企業も多いかもしれませんが、電子帳簿保存法が改正されたため、2022年1月以降は、元々電子データである請求書をわざわざ紙に印刷して保管することは認められなくなりました。

併せて仕入税額控除適用対象外にもなってしまうことから、注意が必要です。

2.電子保存
PDF等の電子データとして請求書を受領した際に、そのまま電子データとして保存することが最もスムーズな流れとなりますが、下記の電子帳簿保存法の要件を満たすことが必要です。

全て満たす必要あり

  • システムの概要を記載した書類等の関連書類の備え付け。
  • ディスプレイ及びプリンタ等の見読可能装置の備え付け。
  • 取引年月日及びその他の日付をはじめ、取引金額、取引先といった検索機能の確保。

いずれかを満たす必要あり

  • 取引先からタイムスタンプが付けられた請求書及び領収書の受領
  • 受領後遅れることなくタイムスタンプを付けること
  • 電子データの訂正及び削除を行った場合、記録が残るシステムあるいは訂正及び削除が不可能なシステムを採用
  • 訂正及び削除の防止に関する事務処理規程を整備

電子データの請求書を保管する際には、事務処理のフローを明確にし、社内規定を見直すことで、上記の要件をスムーズに満たすことができるでしょう。

請求書が電子化されることで、様々なメリットを得られます。

<請求側のメリット>
請求書をPDF等の電子データにし、メールで送付することは効率のよい請求へと繋がります。請求書作成、封筒への封入、投函までの一連の業務の多くを省略できるため、人件費や郵送費といった諸経費も削減できるでしょう。

メールの送受信履歴により、請求書の未達等のトラブル発生も著しく軽減可能です。

<受領側のメリット>
電子データ化された請求書はメール等で送付されてくるため、従来の郵送と違い即日受け取ることができます。さらに、印刷して保管する必要がないことから、紙の使用量を削減でき、コスト削減をしながら環境にも優しい取り組みへと繋げられます。

また、請求書が電子化されることで省スペースになり、開いたスペースを有効活用できます。

一方で請求書が電子化されることで生じるデメリットもあります。

<請求側のデメリット>
請求書を送付する相手企業が電子化された請求書を受領できないことがあるため、そういった場合には個別に紙媒体の請求書を発行しなければなりません。

<受領側のデメリット>
請求書の電子データを保管する際には、システムトラブルが発生するといったデメリットがあります。万が一システムトラブルが発生した際のために、対策をしておくことが必要です。

大前提として、メインで使用するシステムとは別のシステムに、電子データのバックアップを取っておきます。サーバー障害及びセキュリティ障害、さらには自然災害等によって予期せぬ停電等が発生してしまった時、どのように復旧するのかというフローを確立し、周知しておきましょう。

まとめ

本記事では、請求書保存の必要性をはじめ、破棄してもよいのかどうかや請求書の保管方法について解説致しました。

2022年1月に改正された電子帳簿保存法では、以前よりも請求書を電子化し保管することのハードルが低くなっており、社内でフローを確立してしまえば、請求書の管理がしやすくなっています。

ペーパーレス化はSDGs(持続可能な開発目標)にも直結する取り組みとなります。まだ紙媒体で請求書の保管を行っているということであれば、この機会に電子化していくことを推奨致します。

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畠山謙人税理士

監修 畠山謙人

2010年に公認会計士試験合格後、約10年間大手監査法人や事業会社で主に上場企業での財務経理業務に従事。現在は畠山謙人公認会計士事務所の代表及び税理士法人赤坂共同事務所のパートナーとして、税務顧問、スタートアップ支援、財務アドバイザリー等を行う。