売掛金の時効期間は?完成猶予・更新の方法や時効完成を防ぐポイント

売掛金は一定期間が経過すると時効により請求できなくなる可能性があります。

本記事では売掛金の時効期間や完成猶予・更新の方法、未払い発生時の対応や時効完成を防ぐための管理ポイントについて詳しく解説します。未回収リスクを減らしたい方は参考にしてください。

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売掛金の時効期間は?完成猶予・更新の方法や時効完成を防ぐポイント

売掛金の時効期間

売掛金には消滅時効があり、一定期間を過ぎると請求権を失う可能性があります。2020年4月1日施行の改正民法により、同日以後に発生した売掛金などの債権は、原則として「権利を行使することができることを知った時から5年」または「権利を行使することができる時から10年」で消滅時効が完成します。

一般的な商取引では支払期限が定められているため、実務上は、支払期限を起算点として5年で時効完成を検討するケースが多くあります。たとえば、2020年9月に商品を納品し、支払期限を2020年10月末日と定めている場合は、原則としてその支払期限から5年で時効完成を検討します。ただし、契約内容や支払期日の定め方によって起算点が異なる場合があります。

なお、時効には「主観的起算点」と「客観的起算点」があり、支払期限が起算点となるケースが一般的です。また時効は期間満了だけで成立するわけではなく、取引先が「援用」を行うことで初めて請求できなくなります。

売掛金とはどのようなものか、債権回収の時効については以下で詳しく解説しています。本記事と併せてご覧ください。

関連記事:売掛金とはどのような勘定科目?間違えやすい仕訳方法と具体例を解説

関連記事:債権回収の時効はいつ?消滅時効の考え方や完成猶予・更新方法を解説

売掛金の時効を中断(更新)する方法

売掛金は一定期間が経過すると時効を迎えますが、適切な手続きを行えば、時効の完成を防げます。売掛金の時効を中断(更新)する方法を4つ見ていきましょう。

裁判上の請求

売掛金の時効を中断(更新)する方法として、裁判上の請求があります。これは、債権者が債務者に対して訴訟を提起する手続きです。

裁判上の請求により時効完成が猶予され、裁判が終了し確定判決されると時効が更新される仕組みです。その後判決によって権利が確定すると、その時点で時効が更新され、新たに時効期間が進行します。

なお、もしも訴えが却下されたり途中で取り下げたりしても、却下や取下げから6カ月間は時効の完成が猶予されます。そのため、売掛金の回収が難航していれば、早めに法的手続きを検討してみましょう。

支払督促

支払督促とは、債権者が裁判所へ申し立てを行い、裁判所から債務者へ支払いを督促する手続きです。支払督促の申立てにより完成猶予が生じ、確定等によって時効が更新されるケースがあるため、売掛金を回収できる可能性が高まります。

前述した訴訟の提起よりも比較的簡易に進められる点も、特徴といえるでしょう。

民事調停申し立て

民事調停の申し立ても、売掛金の時効を中断(更新)する方法の一つです。民事調停とは、裁判官や調停委員を介して、当事者同士が話し合いによる解決を目指す手続きです。

民事調停を申し立てると、時効の完成が猶予されます。さらに、調停が成立すると合意内容をまとめた「調停調書」が作成され、法的効力を持つ債務名義として扱われます。

調停調書に基づき強制執行を行うことも可能です。その際は、権利が確定した時点から新たに時効期間が進行します。民事調停申し立ては、訴訟よりも柔軟に解決を図りたいときに有効な方法です。

強制執行

強制執行とは、債務者の預金や不動産などの財産を差し押さえ、売掛金を回収する手続きです。強制執行の申立てを行うと完成猶予・更新の効力が生じますが、取り下げる際は効力がなくなる場合もあります。

たとえ差し押さえる財産が見つからず回収できなかった場合でも、手続きが終了すれば時効更新の効力は発生します。ただし申立てを途中で取り下げると、効力が認められなくなってしまうため、注意が必要です。

なお強制執行を行うには、支払督促や訴訟判決などの債務名義を取得しておく必要があります。強制執行を行う際にあらかじめ何が必要なのかを理解し、実行することも重要です。

債務者による承認

債務者が売掛金の存在や支払い義務を認めることを「債務者による承認」といいます。承認が行われると、その時点で時効が更新され、新たに時効期間が進行します。

債務の承認に該当するのは、以下のとおりです。

  • 売掛金の一部を支払う行為
  • 債務残高確認書への署名・押印

また「支払いを待ってほしい」「分割で支払いたい」といった返済猶予を求める発言も、承認とみなされる場合があります。

債務者とのやり取りは時効更新の証拠となる可能性があるため、メールや書面などで記録を残しておくことが重要です。

売掛金の時効を停止(完成猶予)する方法

売掛金の時効は、中断(更新)だけでなく「完成猶予」によって一時的に停止させることも可能です。時効完成を防ぐために、早めに適切な対応を取りましょう。

売掛金の時効を停止する方法を3つ解説します。

仮差押えまたは仮処分

仮差押えや仮処分とは、訴訟の判決が出る前に、債務者が財産を処分できないようにするための手続きです。仮差押えまたは仮処分を行うことで、売掛金の時効完成を一時的に猶予できます。

仮差押えや仮処分が実施されれば、手続きが終了した日から6カ月間は、時効が完成しません。ただしこれらはあくまで暫定的な措置であり、時効を更新する効力はありません。

そのため仮差押えなどで時効完成を防ぎつつ、並行して訴訟提起などの法的手続きを進めることが重要です。債務者による財産隠しを防ぐ目的でも活用されています。

内容証明郵便での催告

内容証明郵便で催告することも、売掛金の時効を停止(完成猶予)する方法です。

催告は裁判外で取引先に対して支払いを求める手続きのことで、一般的には送付内容や日時を証明できる内容証明郵便で行います。

内容証明郵便で支払いを求める通知を送り、その通知が民法上の催告にあたる場合、催告時から6カ月を経過するまで時効の完成が猶予されます。ただし、催告だけでは時効は更新されず、猶予期間中に再度催告しても、さらに時効完成猶予の効力が生じるわけではありません。

時効完成が迫っている場合は、催告後に裁判上の請求や支払督促など、時効更新につながる法的措置を講じる必要があります。催告を行った記録は証拠として残しておきましょう。

協議を行う旨の書面による合意

2020年の民法改正では、新たな完成猶予制度として「協議を行う旨の書面による合意」が導入されました。この制度は、売掛金の支払いについて当事者同士で話し合いを継続することを書面で合意した際に、時効の完成を猶予できる制度です。

書面による合意が成立すると、原則として1年間は時効が猶予されます。従来は時効を止めるために訴訟提起などが必要でしたが、改正後は法的措置を取らずに協議を続けやすくなりました。

書面による合意は、取引先との交渉による解決を目指したい際に有効な方法といえます。円満な解決を優先したい場面でも活用しやすい制度といえるでしょう。

売掛金の未払いが発生したときの対応

売掛金の未払いが発生した場合は、原因及び自社側と相手側の要因を確認した上で、迅速に対応することが重要です。

請求書を発行し忘れていた場合と送付していた場合の状況に分け、適切な対処法を解説します。

請求書の発行を忘れていた場合

売掛金が未払いになっている場合、請求書の未発行や送付漏れが原因となっているケースがあります。まずは、請求書を発行・送付しているかを確認しましょう。

もしも請求書を出し忘れていれば自己判断で対応せず、まず上司や関係部署へ報告することが重要です。その後取引先へ事情を説明し、丁寧に謝罪した上で請求手続きを進めます。

請求書自体を発行していなければ新規発行を行い、すでに作成済みであれば再発行として対応します。再発行の際は、請求日や支払期限の記載内容に誤りがないか確認しましょう。謝罪文を添えて送付することで、取引先との関係悪化を防ぎやすくなります。

さらに、なぜ請求書の未発行や送付漏れが起きたのか、原因を調査することも重要です。営業担当と経理担当の連携不足や確認漏れなど、人為的ミスが背景にあるケースも少なくありません。

請求書のミスを繰り返すと、取引先からの信用低下につながる可能性があります。再発防止のためにも、チェック体制や業務フローを見直すことも重要です。

請求書漏れや支払拒否の対策方法については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

関連記事:請求漏れや支払い拒否の対策方法は?原因や具体的な対応について解説

請求書を送付していた場合

請求書を送付済みにもかかわらず支払いがない場合はまず取引先へ連絡し、未払いの原因を確認しましょう。単なる支払い漏れや社内処理の遅れなど、故意ではないケースも考えられます。

取引先と連絡が取れなければ、内容証明郵便による催告を検討しましょう。前述しましたが、内容証明郵便を利用すれば、請求や督促を行った事実を証拠として残せるほか、時効完成を6カ月間猶予できます。

その後、取引先と支払方法や支払期限について交渉を進めましょう。一括払いだけでなく、分割払いなど、柔軟な方法を検討するケースもあります。合意内容は、後のトラブル防止のため書面で残しておくことも重要です。

催告や交渉を行っても支払いに応じないときには、支払督促や民事調停、訴訟などの法的手段を検討します。必要に応じて仮差押えを行い、相手方の財産処分を防ぐことも検討しましょう。

売掛金の回収方法や未回収リスクを減らす対策については、以下の記事で解説しているため、ぜひご覧ください。

関連記事:売掛金の回収方法と仕訳例、未回収リスクを減らす対策を解説

売掛金の時効成立を阻止するためのポイント

売掛金の時効が成立すると、請求権を失い、貸倒損失によって自社の資金繰りや経営に影響を及ぼす可能性があります。そのため、日頃から適切な債権管理を行うことが重要です。

特に、請求書の発行日・送付日・支払期限・入金状況などを正確に把握し、未回収の売掛金を早期に発見できる体制を整えましょう。支払遅延を放置すると、時効完成前に必要な対応ができず、そのまま消滅時効を迎えてしまうおそれがあります。

未払いが発生した場合は、まず取引先へ連絡して状況を確認しましょう。必要に応じて催告・支払督促・訴訟など、時効の中断(更新)や停止(完成猶予)につながる法的措置を検討することが大切です。

また売掛金管理のルールをマニュアル化し、エクセルや債権管理システムを活用することで、対応漏れや管理ミスの防止につながります。

貸倒損失や債権管理システムについて詳しくは、以下の記事で解説しています。ぜひご覧ください。

関連記事:貸倒損失とは?処理できる要件と仕訳方法、貸倒引当金との違いを解説

関連記事:債権管理システムとは?主な機能やメリット・導入時の選び方を解説!

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売掛金は、時効を迎える前に適切に管理・回収を行うことが重要です。しかし、請求書の送付や入金確認、督促対応を手作業で行うと、対応漏れや確認ミスが発生しやすくなります。

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