勘定科目「預り金」とは?仕訳(貸方・借方)の例と会計処理をわかりやすく解説

預り金とは、企業が従業員や取引先などから一時的に預かった金銭を管理するために使用される勘定科目です。これには、従業員の社会保険料や源泉徴収税などの控除金が含まれることが多く、後に指定された機関や相手に支払われるまでの間、企業がその金額を一時的に預かる形で管理します。

本記事では、預り金の基本的な仕組みや具体的な使用例について詳しく解説します。

経理の担当経験が浅い方向けの「虎の巻」

経理担当に役立つエクセルの関数・ショートカット集と、多用される勘定科目の一覧を収録しています。ChatGPTで活用できるプロンプト集も付録。

勘定科目「預り金」とは?仕訳(貸方・借方)の例と会計処理をわかりやすく解説

預り金とは

預り金とは、会社が一時的に従業員や取引先からお金を預かった際に使われる勘定科目です。給料から差し引いて、税務署に納付する源泉徴収や住民税などが預り金にあたります。前受金は最終的に売上になりますが、預り金は会社には残りません。

前払いで代金を受け取ったときの請求書の書き方とは?記載項目や注意点を解説

預り金の種類

預り金にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる目的で管理されています。代表的なものには、従業員の給与から差し引かれる源泉所得税や住民税、社会保険料などがあります。これらは、企業が従業員に代わって納税や保険料の支払いを行うため、一時的に預かる形となります。

また、賃貸不動産の賃借人から預かった保証金や、取引先からの入札保証金も預り金に該当します。預り金は「社会保険料預り金」「住民税預り金」などの補助科目を設定し、各種の預かり金が正確に管理されるよう処理されます。

預り金と立替金・前受金・仮受金との違い

預り金は、企業が従業員や取引先から一時的に預かった金銭を管理するための勘定科目ですが、立替金、前受金、仮受金とは異なる目的で使用される勘定科目です。それぞれの違いを以下で解説します。

立替金との違い

預り金は、企業が従業員や取引先から一時的にお金を預かり、後に税務署や年金事務所などの第三者に支払うために使用します。たとえば、源泉所得税や社会保険料など、給与から天引きしたものが該当します。

一方で、立替金とは、本来は従業員や取引先などが負担する必要のある費用を、会社が一時的に立て替えて支払った場合の勘定科目です。一旦は会社が費用を負担しますが、後から従業員や取引先などに返済してもらう必要があります。すでに触れたとおり、立替金に該当する費用は多岐にわたります。

勘定科目「立替金」とは?仕訳例と出納帳などの帳簿の経理処理を解説

前受金との違い

前受金とは、商品やサービスを提供する前に、報酬を受け取った場合に用いられる勘定科目です。代金の一部を受け取ったとき、もしくは代金の全額を商品・サービスの提供よりも先に受け取った場合にも前受金が用いられます。

一方、立替金は、企業が従業員や取引先に代わって一時的に費用を支払った場合に使用する勘定科目です。この費用は後に従業員や取引先から返金を受けることが前提です。

前払いで代金を受け取ったときの請求書の書き方とは?記載項目や注意点を解説

仮受金との違い

仮受金とは、目的は決まっていないがお金を受け取った際に用いられる勘定科目です。一方、預り金は特定の目的で従業員や取引先から預かったお金を管理し、税金や保険料などが対象となります。

前払いで代金を受け取ったときの請求書の書き方とは?記載項目や注意点を解説

【事例別】経費精算の返金処理に必要な仕訳・勘定科目

預り金の仕訳例

預り金の勘定科目は、企業が従業員や取引先から一時的に預かった金額を管理するために使用されます。以下では、具体的な仕訳例を紹介し、それぞれの処理方法を解説します。

1.給与から源泉所得税を差し引いて支給する場合

例:給与40万円から源泉所得税8万円を差し引き、32万円を支給する場合

  • 借方: 給与 400,000円
  • 貸方: 預り金(源泉所得税) 80,000円、現金/預金 320,000円

このケースでは、企業が従業員に給与を支払う際に、源泉所得税を控除します。差し引いた源泉所得税8万円は後日税務署に納付するため、一時的に「預り金」として処理されます。預り金を適切に管理し、後日納付が必要なタイミングで処理することが重要です。

2.住民税を従業員から預かり納付する場合

例:従業員の住民税2万円を預かり、後日銀行で現金納付した場合

  • 借方: 預り金(住民税) 20,000円
  • 貸方: 現金 20,000円

この場合、従業員の給与から住民税を預かり、納付するまでの間「預り金」として計上します。後日、納付を行った際には預り金から現金が支払われる仕訳が必要です。企業はこのように従業員に代わって税金を一時的に管理し、正確な納付を行います。

3.弁護士への報酬支払時の源泉所得税の場合

例:弁護士に月額報酬5万円を支払うが、源泉所得税5,105円を控除する場合

  • 借方: 支払手数料 50,000円
  • 貸方: 現金 44,895円、預り金(源泉徴収税) 5,105円

この仕訳では、弁護士への報酬から源泉所得税を控除し、控除した分を「預り金」として計上します。弁護士報酬のような外部の専門家に支払う手数料も、源泉所得税を差し引いた上で納付が必要です。これにより、適切に税務署への納付処理が可能になります。

4.顧客から保証金を預かった場合

例:賃貸不動産で賃借人から保証金10万円を預かった場合

  • 借方: 現金 100,000円
  • 貸方: 預り金 100,000円

賃貸契約において、賃借人から保証金を受け取った際、その金額は将来返還される可能性があるため「預り金」として計上されます。保証金は、契約期間終了後に返還されるか、特定の条件下で処理されることが多いため、預り金として負債計上することで正確な管理が必要です。

5.年末調整で還付金が発生した場合

例:年末調整で従業員に1万円の還付が発生し、給与と合算して支払う場合

  • 借方: 預り金(年末調整) 10,000円
  • 貸方: 現金 10,000円

年末調整で従業員に対して還付金が発生した場合、その金額を「預り金」として計上し、還付の際に現金が支払われる形で処理されます。この仕訳によって、年末調整で多く控除された分を正確に還付し、帳簿上の処理を整えることができます。

預り金の残高がマイナスになった場合は?

預り金の残高がマイナスになる場合があります。たとえば、源泉徴収した税額よりも年末調整で還付する金額が多かった場合など、このような状況では適切な処理が必要です。

以下で、マイナス残高を処理する主な方法を解説します。

未収入金で振り替える

預り金がマイナスになる場合、未収入金として処理する方法があります。例えば、源泉徴収税額よりも年末調整で還付する金額が多く、預り金が不足している場合には、一時的に未収入金という勘定科目に振り替えて処理します。

その後、適切な時期に未収入金を再度振り戻す仕訳を行い、最終的に帳簿を調整します。

立替金で相殺する

もう一つの方法は、マイナスとなった預り金残高を立替金という資産科目に振り替えて処理することです。特に、雇用保険料や社会保険料のように年に一度の支払いが発生する場合、この方法が利用されます。

立替金として処理することで、企業が一時的に費用を負担し、その後に適切な相手から返金を受けるという形式で帳簿を整理します。

次期の納付で調整する

年末調整で預かりすぎた分を還付した結果、預り金がマイナスになった場合は、次期の納付額と相殺する方法もあります。たとえば、翌月の源泉徴収税や社会保険料の納付時に、過剰分を相殺して処理することで、預り金のマイナスを調整することができます。

この方法では、翌期に発生する納付額を減らす形で対応します。

預り金を会計処理する際の注意点

預り金を適切に処理するためには、納付スケジュールや金額の正確さを確保することが重要です。以下に、預り金を会計処理する際の主な注意点を解説します。

納付期限を守る

預り金の代表的なものには源泉所得税、住民税、社会保険料などがあります。これらは納付期限が決まっており、例えば源泉所得税は給与支払いの翌月10日までに納付しなければなりません。

期限を過ぎると「不納付加算税」などのペナルティが課されるため、納付スケジュールをしっかりと管理し、遅延を防ぐことが重要です。

正しい金額を仕訳する

預り金を処理する際、給与や報酬から差し引く税金や保険料を正確に計算し、正しい金額を仕訳する必要があります。

誤った仕訳は、決算時や納税時に問題を引き起こす可能性があるため、特に源泉所得税や社会保険料の計算には細心の注意が求められます。誤差が生じないよう、適切な計算と仕訳が必要です。

預り金の残高が正しく管理されているか確認する

預り金の残高が常に正しく管理されているかを定期的に確認することも大切です。年末調整や社会保険料の納付で一時的に残高がマイナスになる場合がありますが、適切に処理しないと納付時に混乱を招く恐れがあります。

定期的に預り金の残高をチェックし、仕訳の整合性を保つことが、正確な財務管理のために欠かせません。

まとめ

「バクラク請求書発行」では、書類の発行から送付先への到着まで、すべての業務を本サービスだけで完結できます。
さらに、部署や拠点が多くても一元管理が可能で、インボイス制度や電子帳簿保存法にも簡単に対応できるため、法制度の変化にも柔軟に対処できます。業務の時間短縮と効率化が図れ、管理業務にかかる負担を大幅に減らせます。
さらに詳しい情報や導入をご希望の方は、以下のリンクから詳細をご確認ください。

請求書・見積書・納品書を簡単作成「バクラク請求書発行」

請求書・見積書・納品書等あらゆる帳票の作成、稟議、送付、保存の一連の業務をデジタル化。基幹システムから出力するCSVファイルを瞬時に変換し、様々な帳票のレイアウトを柔軟に作成・編集可能です。もちろんインボイス制度と電子帳簿保存法にも完全対応しているため、負担の大きなバックオフィスの業務を一律で効率化する機能を提供します。

収入印紙に対する割印は、法律で義務付けられています。また、収入印紙の不正な再利用を防ぐためにも、割印は必要です。割印なしなど収入印紙への対応に不備がある場合、ペナルティとして過怠税が課される可能性があります。ペナルティを避けるため、収入印紙の適切な貼付と割印について理解し、適切に対応しましょう。

バクラク請求書発行は、支払業務の自動化により、スムーズな経理業務に貢献します。稟議・仕訳・支払・管理などの一連のフローをなめらかに連携し、インボイス制度や電子帳簿保存法にも簡単に対応可能です。経理業務の効率化をお考えの人は、ぜひバクラク請求書発行をご検討ください。