インボイス制度の少額特例とは?要件や注意点をわかりやすく解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-10-07
- この記事の3つのポイント
- インボイス制度の少額特例とは、要件を満たせば帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられる制度
- 少額特例の利用には、対象取引の判定方法やインボイス交付義務を理解しておく必要がある
- インボイス制度にはほかにも似た名称の特例があり、目的や適用条件の違いの理解が重要
インボイス制度の少額特例とは?要件や注意点をわかりやすく解説
インボイス制度には、税込1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存が不要となる「少額特例」があります。
本記事では、少額特例を利用できる事業者や適用要件、必要な帳簿の記載事項、利用時の注意点、ほかの特例との違いをわかりやすく解説します。
インボイス制度の少額特例とは?
インボイス制度の少額特例とは、一定規模以下の事業者が税込1万円未満の課税仕入れを行った場合、インボイスを保存しなくても、必要事項を記載した帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられる制度です。
対象となるのは、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。
なお、特定期間の判定において、課税売上高に代えて給与支払額の合計額による判定はできません。
基準期間とは、個人事業者ではその年の前々年、事業年度が1年の法人では前々事業年度を指します。一方、特定期間は、個人事業者では前年1月から6月まで、法人では前事業年度の開始日から6カ月間です。
少額特例を活用すれば、少額取引におけるインボイスの確認や保存にかかる事務負担を軽減できます。
<少額特例の要件>
対象取引 | 税込1万円未満の国内課税仕入れ(1回の取引単位) |
|---|---|
対象事業者 | 基準期間における課税売上高が1億円以下または特定期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者 |
適用期間 | 2023年10月1日~2029年9月30日 |
少額特例は、対象取引・対象事業者・適用期間のすべての要件を確認したうえで適用する必要があります。特に税込1万円未満かどうかは、原則として1回の取引単位で判定する点に注意が必要です。
少額特例はインボイスの保存を不要とする制度であり、帳簿の保存まで不要になるわけではありません。適用する際は、帳簿に必要事項を正しく記載して保存しましょう。
参考:国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)」
以下の記事では、インボイス制度の負担軽減措置やデメリットについて解説しているので、ぜひご覧ください。
関連記事:インボイス制度が「ひどい」と言われる理由は?負担軽減措置やデメリットを解説
少額特例を適用するための帳簿の記載事項
少額特例を適用する場合、インボイスの保存は不要ですが、一定の事項を記載した帳簿を保存する必要があります。具体的な記載事項は、以下のとおりです。
- 課税仕入れの相手方の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引内容(軽減税率の対象である場合はその旨)
- 課税仕入れに係る支払対価の額
少額特例の適用条件を満たしていれば、上記の事項を記載した帳簿を保存することで仕入税額控除を受けられます。インボイスが不要だからといって、帳簿の保存も省略できるわけではないため、必要事項を漏れなく記録しておくことが重要です。
少額特例を利用するときのポイントと注意点
少額特例を正しく利用するには、対象となる取引の判定方法やインボイスの交付義務などを理解しておく必要があります。
ここからは適用時に判断を誤らないよう、実務上押さえておきたいポイントと注意点を確認しましょう。
取引先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係ない
少額特例の適用において、仕入先がインボイス発行事業者であるかどうかは関係ありません。少額特例は、一定の要件を満たす事業者の課税仕入れに適用される制度であるためです。
仕入先が課税事業者でも免税事業者でも、税込1万円未満などの適用条件を満たしていれば対象となります。仕入先の事業者区分だけで、少額特例の対象外と判断しないように注意しましょう。
以下の記事では、免税事業者について解説しているので、併せてご覧ください。
関連記事:消費税の免税事業者とは?課税事業者との違い・インボイス制度による影響を解説
インボイス交付の義務は免除されない
少額特例が適用される取引でも、インボイス発行事業者の交付義務が免除されるわけではありません。少額特例は税込1万円未満の課税仕入れについて、買手側のインボイス保存を不要とする制度です。
インボイス発行事業者は、課税事業者である取引先からインボイスの交付を求められた場合、少額特例の対象となる取引であっても交付する必要があります。
税込1万円未満かどうかは1回の取引で判定する
少額特例の「税込1万円未満」に該当するかどうかは、商品1点ごとの金額ではなく、1回の取引における課税仕入れの合計額で判定します。
たとえば3,000円の商品を一度に4個購入した場合、合計額は1万2,000円となるため、少額特例の対象外です。一方で、2個ずつ別の取引として購入し、それぞれ6,000円であれば対象となります。
判定は請求書やレシート、契約など通常の取引単位に基づいて行います。少額特例を適用する目的だけで、形式的に取引を分割することは避けましょう。
少額特例と混同しやすいインボイス制度の特例
インボイス制度には、少額特例のほかにも事業者の負担を軽減する特例が設けられています。名称や対象事業者などが似ている制度もあるため、それぞれの目的や適用条件の違いを正しく理解しておきましょう。
少額な返還インボイスの交付義務免除との違い
「少額な返還インボイスの交付義務免除」は、対象となる取引や軽減される負担が異なる制度です。
少額特例は、一定の要件を満たす事業者が税込1万円未満の課税仕入れを行った場合、インボイスの保存を不要とする制度です。つまり、買手側のインボイス保存にかかる負担を軽減することを目的としています。
一方、少額な返還インボイスの交付義務免除は、税込1万円未満の返品や値引き、割戻しなどを行った場合に、売手側の返還インボイスの交付を不要とする制度です。
少額特例は「買手側の保存負担」、少額な返還インボイスの交付義務免除は「売手側の交付負担」を軽減する点で異なります。
適格返還請求書については以下の記事で詳しくまとめているので、参考にしてください。
関連記事:適格返還請求書とは?インボイスで返金や値引き時に必要な記載事項と交付義務
2割特例・3割特例との違い
2割特例・3割特例は、インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者となった事業者の納税負担を軽減する制度です。
2割特例では、一定の要件を満たす事業者の消費税の納付税額を売上税額の2割にできます。適用期間は2023年10月1日から2026年9月30日までの日が属する課税期間です。
また令和8年度税制改正により、一定の個人事業者を対象に、令和9年分・令和10年分の納付税額を売上税額の3割とする「3割特例」が設けられています。
少額特例がインボイスの保存負担を軽減するのに対し、2割特例・3割特例は納税負担を軽減する点が大きな違いです。
2割特例については以下の記事でも詳しくまとめているので、併せてご覧ください。
関連記事:インボイス制度による簡易課税事業者への影響と2割特例について
少額特例を正しく理解してインボイス対応の負担を減らそう
少額特例は、一定の要件を満たす事業者が税込1万円未満の課税仕入れを行った場合、インボイスの保存なしで仕入税額控除を受けられる制度です。適用する際は、対象事業者や取引金額、適用期間などの要件を確認し、必要事項を記載した帳簿を適切に保存する必要があります。
少額特例とほかの特例との違いも理解し、自社に適した方法でインボイス制度に対応しましょう。
請求書処理を効率化するなら「バクラク請求書受取」がおすすめです。紙やメール・Webなどで届く請求書の受領・データ化から、仕訳作成や内容チェックまで効率化できます。
AI-OCRによる読み取りに加え、適格請求書発行事業者の登録番号を国税庁のデータと自動照合します。また、税区分の入力補完も行い、不整合があればアラートで通知も可能です。
インボイス制度への対応を含め、請求書処理の負担を減らしたい企業は、ぜひ導入をご検討ください。