個人のクレジットカードで会社経費の立替は可能?必要書類や仕訳例を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-10-01
- この記事の3つのポイント
- 支払方法よりも支払い内容の証明が重要なので、個人カードでの経費立替は問題ない
- カードで経費立替をしても、領収書や利用明細、レシートなどの書類を用意しなければならない
- 個人カードで会社経費を立替する場合は、公私の区別を明確にすることが前提である
個人のクレジットカードで会社経費の立替は可能ですが、証憑の適切な管理や期限内の精算手続き、プライベート利用との区別など、いくつかルールがあります。
本記事では、立替時のメリットや注意点、必要書類の種類や記載項目、仕訳例、保管期間について詳しく解説します。
個人のクレジットカードで会社経費の立替は可能?必要書類や仕訳例を解説
個人のクレジットカードで会社経費を立替しても問題ない?
個人名義のクレジットカードで会社経費を立替しても、会計上は問題ありません。立替者の支払方法よりも「いつ・誰が・どこで・何の費用を・いくら」支払ったかを証明できることが重要であるためです。
会社経費の立替は、起業直後で法人カードが未発行の場合や、従業員が業務出張の交通費をカード決済する場合に発生します。法人カードがなくても、記録と証憑が揃えば適切な経費処理が可能です。
個人のクレジットカードで会社経費の立替をするメリット
個人のクレジットカードを使用して会社経費を立替すると、現金払いにはないメリットがあります。本章では、主なメリットについて詳しく見ていきましょう。
利用明細の管理がしやすい
クレジットカードで経費を立替すると、利用明細で支出の詳細を簡単に確認できます。クレジットカードは利用状況が一目でわかるため、現金払いに比べて管理が簡単に行える点がメリットです。
さらに、会計ソフトとカードを連携することで、領収書やレシートを確認しながら手作業で入力する手間が不要になります。経費データが自動で反映されるため、経理処理の効率化や経理担当者の負担軽減が期待できるでしょう。
ポイントやマイルをためられる
個人カードで会社経費を立替すると、利用額に応じてポイントやマイルが付与されます。たとえば、オフィス賃料や光熱費、通信費などの高額な経費をカード払いすれば、効率的にポイントをためられます。
出張時の交通費や宿泊費も立替した場合、年間で数千円相当の特典が得られることもあるでしょう。ただし、これらのポイントの所有権や扱いは会社規定によって異なります。
規定がない場合は事前に会社へ確認し、ルールに従うことが重要です。適切な運用は、企業と従業員双方のメリットにつながるでしょう。
支払いまでに余裕がある
クレジットカードを利用し、口座から引き落とされるには通常1〜2カ月の猶予があります。支払いまでの猶予期間を活用することで、資金繰りや支払計画の調整が可能です。
急な出費や一時的な資金不足があっても余裕をもって対応できるため、キャッシュフロー改善にもつながります。
急な支払いにも対応できる
個人のカードによる経費立替が認められていると、出先で予期せぬ費用が発生し、会社のカードが手元にない状況でも急な支払いに対応できます。
ただし、利用限度額や緊急性の基準、承認手続きなど、事前に社内ルールを明確にしておくことが大切です。ルールの明確化は、不正利用の防止や健全なカード運用にもつながります。
領収書・レシートの保存要件や方法について詳しく知りたい方は、以下の関連記事を参考にしてください。
関連記事:領収書・レシートはスキャン保存で問題ない?保存要件・方法を解説
クレジットカード支払いでの経費精算で必要な書類
クレジットカードで経費を立替した場合でも、経費精算時は証拠書類が必要です。支払いの事実や内容を証明できる書類を必ず用意しましょう。
本章では、クレジットカード支払いでの経費精算で必要な書類について解説します。
領収書
クレジットカード決済であっても、経費精算時は領収書が必要です。会社経費として処理するときに「いつ・どこで・何を・いくら」購入したかを証明するためです。
電子取引の場合は、電子データを忘れずに保存してください。カード払いの場合は、領収書を省略するケースもありますが、精算時にはレシートや利用明細だけでなく、正式な領収書も受領しておくとよいでしょう。
特に、立替金精算時には、証憑書類を失念すると精算できないこともあるため、購入時に受け取る習慣をつけましょう。
領収書に記載が必要な項目
領収書を経費精算に使用する際は、以下の5つの項目が記載されている必要があります。
- 発行者(店舗名や住所)
- 宛名(個人名または会社名)
- 金額(消費税率ごとの合計)
- 年月日(決済日)
- 購入内容(商品・サービスの名称)
上記の項目が揃っていれば、カードの利用明細やレシートも領収書の代わりに使用可能です。なお、小売業・旅行業・旅客運送業・飲食店業・駐車場業など、一部の業種では宛名の省略が認められています。
また、利用明細はインボイス記載要件を満たさないため、仕入税額控除を行う場合は、領収書またはレシートを必ず受け取ってください。
受領時の注意点
領収書を受け取る際は「クレジットカード決済」や「カード利用」などの記載があるか必ず確認してください。カードを利用した記録は印紙税の扱いに関わるため、注意しましょう。
カード決済の場合は、直接現金を受け取らないため、印紙税法上の課税文書には該当せず、収入印紙は不要です。しかし、領収書にカード払いである旨の記載がなければ現金取引とみなされ、5万円以上では収入印紙の貼付が必要です。
カード払いの記載がなく、収入印紙も貼らなかった場合、印紙税の貼付漏れとして過怠税を課される可能性があります。精算の効率化と法令遵守のため、領収書のただし書きや備考欄に「クレジットカードによる受領」等が明記されていることを必ず確認しましょう。
クレジットカードの領収書に収入印紙が必要か、詳しくは以下の記事で解説していますので、理解を深めたい方はご一読ください。
利用明細・レシート
領収書が発行されない場合は、利用明細やレシートで代用できます。
ただし、領収書と同様、5つの必要項目(発行者・宛名・金額・日付・購入内容)がすべて記載されていることが条件です。不足がある場合は、別途証明できる書類を添付して精算しましょう。
経費精算に使える書類について、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
関連記事:経費精算はクレジットカードの明細書でも可能?経費精算に使える書類を解説
出張旅費規程の作成方法について、詳しくは以下の記事をお読みください。
関連記事:出張旅費規程の作成方法は?メリットや手当の相場、ルールの注意点を解説
クレジットカード支払いでの仕訳例
クレジットカードで経費を立替した場合、立替時から精算までの流れを正確に仕訳することが重要です。
本章では、立替金の発生時や精算時、ポイントやマイル利用で値引きがあった場合の仕訳例を具体的に紹介します。
立替金が発生したとき
立替金は、従業員が会社のために一時的に自己資金を支出した際に発生します。
従業員Bが取引先訪問の際に会議用の茶菓子4,400円を購入し、個人のカードで支払った場合、仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
会議室 | 4,400円 | 立替金 | 4,400円 | ○○商店にて茶菓子購入 |
分割払いを選んだ場合は、支払額のうち利息部分を「支払利息」として別途記帳します。立替金は多くの従業員に発生する可能性があるため、補助科目や従業員別管理で整理しておくと、精算漏れや誤計上の防止につながるでしょう。
立替金の精算をしたとき
立替金は、現金または給与と一緒に支払って精算します。立替金を4,400円とし、現金で精算する場合の例は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
立替金 | 4,400円 | 現金 | 4,400円 | 立替金精算 |
給与とまとめて支払う場合は、総支給額に立替金を加算して仕訳します。たとえば、給与200,000円に立替金4,400円を加えて振り込む場合は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
立替金 | 4,400円 | 普通預金 | 204,400円 |
給与 | 200,000円 |
ポイント・マイル使用によって値引きが発生したとき
ポイントやマイルを利用して支払額が減った場合、差額は「値引き」または「雑収入」で処理します。クレジットカードで事務用品12,000円を購入し、翌月にポイント利用で1,200円割引され、口座引き落としが10,800円になった場合の仕訳は以下のとおりです。
【購入時】
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 12,000円 | 未払い金 | 12,000円 |
【支払時(値引き処理)】
借方 | 貸方 | ||
未払い金 | 12,000円 | 普通預金 | 10,800円 |
値引き | 1,200円 |
複数科目に該当する支出で割引があった場合や、割引分の科目特定が難しい場合は「雑収入」で計上します。ポイント利用は経理処理が複雑になるため、発生時のメモや証憑の保管が不可欠です。
経費精算後の書類の保管期間
経費精算が終わった後も、領収書や利用明細などの証憑書類は一定期間保管する義務があります。法人の場合、取引に関する書類は原則7年間、個人事業主の場合は青色申告で7年、白色申告で5年の保存が必要です。
電子取引データでも期間は変わらず、同様に保存する必要があります。保存期間は書類の発行日ではなく、確定申告期限の翌日から起算します。
保管を怠ると青色申告が取り消されたり、課税額が増えたりするペナルティを受ける可能性があるため、管理を徹底しましょう。
個人のクレジットカードで会社経費の立替をするときの注意点
個人のカードで会社経費を立替する場合は、公私の区別を明確にすることが前提です。プライベートの利用と混在すると、経費精算時に誤りや不正の原因となります。
また従業員は、期限内に領収書や利用明細を添えて経費精算手続きを行うことが重要です。領収書が発行されない場合は、必要項目を満たした利用明細やレシートを提出します。
経理担当者は、精算日を給与支払日に合わせると処理が効率化し、管理も容易になります。経費精算ルールや必要書類を従業員に周知し、期限遵守を徹底することで、スムーズかつ正確な精算の実現が可能です。
法人カードで経費精算するメリットやデメリットは、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひお読みください。
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個人のクレジットカードで会社経費を立替することは会計上問題なく、利用明細管理やポイント付与などのメリットがあります。ただし、領収書や利用明細の提出、公私の区別、期限内の精算などの注意点を守る必要があります。
書類の保管期間や仕訳方法を正しく理解し、効率的で正確な経理処理を行いましょう。
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