消費税に小数点以下の端数が発生した場合の処理方法は?税率の種類なども解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-09-06
2019年10月1日の消費税率引き上げに伴い、「区分記載請求書等保存方式」が導入されました。これにより、税率ごとに分けて記載する方式がスタートしています。その後、2023年10月1日からはインボイス制度(適格請求書等保存方式)に変更となり、請求書の記載項目やルールが変更されました。
本記事ではインボイス制度によって、消費税の算出に小数点以下の端数が発生した場合の処理方法や税率の種類、請求書作成における端数処理のポイントを詳しく解説します。
読むことで、軽減税率の対象商品や小数点以下の端数処理のルールを理解できるでしょう。
消費税に小数点以下の端数が発生した場合の処理方法は?税率の種類なども解説
請求書において小数点以下の端数が発生するケース
消費税は、商品の売買だけでなくサービスへの対価にもかかる税金で、税込価格は、税抜き価格に対して消費税率をかけた金額です。消費税率は、消費の内容によって定められた税率で8%と10%があります。
消費税には、税込価格を1つの金額で表示する内税方式と、本体価格と消費税を別々に表記する外税方式の2つの計算方法があります。一般消費者向けの価格表示では内税方式が義務付けられていますが、取引先への請求書発行時にはその縛りはなく、内税方式で一括表示しても、本体価格と消費税を分けて記載しても問題ありません。
この請求金額を算出する際、消費税率を乗じた結果や売上金額自体に1円未満の端数が生じるケースがあります。
インボイス制度導入による消費税の端数処理の変更点
2023年10月1日からのインボイス制度の導入により、仕入税額控除の対象となるのは、適格請求書が発行された取引のみです。従来の区分記載請求書と異なり、インボイス制度では1つの適格請求書に税率ごとに1回の端数処理の必要があります。
例えば、標準税率10%と軽減税率8%が混在する場合は、税率ごとに端数処理を行った後に合算金額を記載する必要があります。ただし、商品ごとの消費税額を参考とした記載は許可されており、端数処理の方法は事業者が独自に決定します。
消費税の税率の種類
消費税の税率は次の2種類です。
- 標準税率(10%)
- 軽減税率(8%)
順に解説します。
標準税率(10%)
標準税率は10%(消費税率7.8%、地方消費税率2.2%)です。この税率が適用される商品には、ビールやワインなどの酒類やドラッグストアで購入する医薬品や医薬部外品、トイレットペーパーやおむつ、シャンプー、化粧品などの日用品が含まれます。
また、レストランでの食事代、書籍や雑誌なども標準税率の対象です。
軽減税率(8%)
軽減税率は8%(消費税率6.24%、地方消費税率1.76%)で、地方消費税の税率は、消費税額の78分の22で計算します。
軽減税率8%は、特定の商品の販売に適用され、主に、食品表示法に基づく飲食料品(酒類を除く)や新聞がその対象です。しかし、外食やケータリングなどはこの軽減税率の対象になりません。また、医薬品や医薬部外品なども除外されます。
軽減税率の対象となる商品
軽減税率は8%で、対象品目は以下の通りです。
- 酒類・外食を除く飲食料品(食品表示法に規定する食品)
- 週2回以上発行される新聞(定期購読契約に基づくもの)
おもちゃやカード付きのお菓子など、食品と食品以外の商品が販売時点でセットになっている場合は、税抜価額が1万円以下、食品の価額の占める割合が2/3以上に限り、セットのまま軽減税率の対象になります。
また、軽減税率の適用対象となる新聞は、一定の題号を持ち政治、経済、社会、文化などの一般社会的な情報を掲載しているものと決められています。また、週に2回以上発行され、定期購読契約に基づいているものです。
小数点以下の端数処理のルール
財務省のホームページでは消費税の相当額に小数点以下(1円以下)の端数が生じる場合を次のように記載しています。
『「税抜価格」に上乗せする消費税相当額を算出した際に小数点以下1円未満の端数が生じる場合がありますが、その端数をどのように処理(切捨て、切上げ、四捨五入など)して「税込価格」を設定するかは、それぞれの事業者のご判断によることとなります。』
消費税の端数処理は、通常、切り上げ、切り捨て、または四捨五入のいずれかが使われます。どの方法を採用するかは、事業者の裁量によって決定され、消費税の課税標準額や請求書の金額に適用されます。一般的に「切り捨て」を採用している事業者が多い傾向です。
消費税率は10%と8%の2種類がありますが、国税の対象は10%の場合7.8%です。企業は消費税を納税する際、端数処理方法を統一する必要があります。
請求書における端数処理のポイント
請求書における端数処理のポイントは次の4つです。
- 適格請求書1枚につき端数処理は1回まで
- 請求書内の商品ごとの端数処理はできない
- 端数処理方法は社内で統一する
- 取引先に端数処理方法を事前に確認する
順に解説します。
適格請求書1枚につき端数処理は1回まで
2023年9月末までの区分記載請求書等保存方式では、端数処理の回数に関するルールは定められていませんでした。しかし、2023年10月から導入されたインボイス制度では、適格請求書1枚につき端数処理は1回までのルールが設けられています。
例えば、標準税率10%と軽減税率8%が混在する場合は、それぞれの税率ごとに端数処理の後、合算金額を記載する必要があります。端数処理の方法は事業者の裁量に委ねられており、切り上げ、切り捨て、四捨五入のどれかが選択できます。
請求書内の商品ごとの端数処理はできない
適格請求書等保存方式に基づき、従来の請求書には以下の項目を追加する必要があります。
- 適格請求書発行事業者の登録番号
- 軽減税率の対象品目である旨(※印などをつけることにより明記)
- 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)および適用税率
- 税率ごとに区分して合計した消費税額など(消費税額および地方消費税額の合計額)
国税庁が発表している「適格請求書等保存方法の概要」によると、4の税率ごとに区分した消費税額などで生じた1円未満の端数処理については、先に述べたように「一請求書あたり、税率ごとに1回ずつ」端数処理を行うルールがあります。そのため、それぞれ商品ごとに消費税を計算し1円未満の端数処理を行うことは認められていません。
端数処理方法は社内で統一する
消費税の端数処理方法は事業者の判断に委ねられているため、社内で統一したルールを設けることが重要です。ルールが統一されていないと、同一の商品・サービスでも担当者によって消費税額が異なり、取引先とトラブルに発展するリスクがあります。
無用な混乱を避けるため、端数処理に関する社内ルールを明確に定め、全従業員に周知・徹底することが求められます。
取引先に端数処理方法を事前に確認する
取引先との間で端数処理の方法の認識を合わせておくことが重要です。それぞれの端数処理が異なっていると、請求時に金額に違いが生じていまい、トラブルになる可能性があります。
事前に取引先との間で端数処理の方法について合意しておくことで、請求時に金額のズレを防ぎ、スムーズな取引を確保できるでしょう。
まとめ
消費税に小数点以下の端数が発生した場合の処理方法や税率の種類、請求書における端数処理のポイントについて解説しました。2023年10月1日からインボイス制度が導入され、消費税の端数処理に変更が加えられています。事前にルールを確認し、取引先との認識合わせをしておくことで、金額のずれを防ぎ、スムーズな取引につながるでしょう。
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