仕入とは?売上原価・経費になる?勘定科目と仕訳方法について解説

商品やサービス展開のために行う仕入は、よく聞く言葉ではあるものの、経理処理について詳しくわからない方もいるでしょう。仕入の計上基準や仕訳にはさまざまなルールが存在しています。

本記事では、仕入とは何か、また仕入の仕訳方法や実際の仕訳例をわかりやすく解説します。仕入の計上方法を理解して、実務にお役立てください。

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仕入とは?売上原価・経費になる?勘定科目と仕訳方法について解説

仕入とは?

仕入とは、商品を販売するために必要とされる材料や物品を別の企業や卸売業者から調達することを指します。また、これらの調達にかかった輸送代や輸入時の関税も仕入に含まれます。

仕入した商品や材料の会計上の勘定科目は、「仕入」もしくは「商品」を使いましょう。仕入した商品が売れた際の仕入代金は、売上原価(経費)として計上可能です。ただし、売れていない在庫品については、経費にならないので注意しましょう。

また、よく似た用語に「売上原価」「経費」がありますが、仕入とは定義が異なるため混同しないことが大切です。
売上原価とは、仕入だけでなく製造した商品の保管費用や人件費、製造設備の減価償却費など、商品の製造や生産に関わるすべての費用を合わせたものを指します。

一方、経費は事業を営むためにかかった費用の総称を指し、仕入の他、広告宣伝費、消耗品費、交際費など多くの項目が含まれます。

つまり、仕入は売上原価、経費の一部です。

仕入の計上基準

仕入を計上するタイミングは、企業によって異なり、計上基準は4つに分類されます。

計上基準

仕訳するタイミング

出荷基準

・仕入先が物品を出荷したときに計上

・大量の商品を扱う小売業や製造業でよく用いられる

入荷基準

・注文した物品が自社に届いたときに計上

・実際の商品数とデータ数の照合がしやすい

検収基準

・入荷後の検品が完了したときに計上

・高額品など丁寧な内容精査が必要とされる現場で用いられる

回収基準

・注文品の決済が完了したときに計上

・支払明細が主な証明

上記のうち、どの方法を採用するかは企業に委ねられていますが、業界によっては統一基準が用いられているケースもあります。

また、企業会計原則に「継続性の原則」と呼ばれるものがあります。これは、一度決めた方法は不必要に変更せず、継続して運用しなくてはならないとするものです。したがって、自社に適した基準を一度選定したら、その後も継続する必要があります。

企業会計原則については、以下の記事をご参照ください。

関連記事:企業会計原則とは?7つの一般原則や企業会計基準との違いを解説

仕入の仕訳方法と勘定科目

仕入を計上する際には、主に以下4つの方法を使って処理をします。使用する勘定科目とメリット・デメリットは以下のとおりです。

 

勘定科目

メリット

デメリット

三分法

・仕入(費用)

・売上(収益)

・繰越商品(資産)

取引ごとに利益を算出しないため、処理が複雑にならず仕訳がしやすい

・取引ごとの利益は把握できない

・決算整理をする必要がある

分記法

・商品(資産)

・商品売買益(収益)

取引ごとの原価や利益をすぐに把握でき、問題の早期発見、在庫管理がしやすい

仕訳に手間がかかり、取引件数が多いと業務負担が大きくなる

五分法

・仕入(費用)

・売上(収益)

・仕入値引・戻し

・売上値引・戻り

・繰越商品

仕入値引・戻しや売上値引・戻りを、仕入や売上勘定と別に管理でき、取引を把握しやすい

勘定科目の数が多いため、仕訳に時間と手間がかかる

総記法

・商品(資産)

・商品売買益(収益)

期中は「商品」のみで処理ができ、シンプルな記録が可能

「商品売買益」を使っての決算整理が必要で、仕訳が複雑になる

どの仕訳方法が適しているかは、企業によって異なります。

たとえば、三分法は取引数が多い大企業や複雑な取引をよく行う企業に向いています。一方、分記法は取引数があまり多くない小規模企業や個人事業主、商品数の少ない企業におすすめです。

五分法は、会計取引を5つの要素に分けて記録する方法です。値引や返品の機会が多い企業にとっては利用しやすいでしょう。

総記法は、仕訳にかかる手間やその複雑さからあまり採用されていません。一般的には、三分法を採用している企業がよく見受けられます。

三分法の詳細は、以下の記事をご確認ください。

関連記事:簿記の三分法とは?分記法や総記法との違い、仕訳方法をわかりやすく解説

仕入の仕訳例

ここからは、実際の仕訳例を見ていきましょう。よく用いられる三分法と分記法の2つについて、それぞれ紹介します。

商品を仕入たときの仕訳

送料込みで35,000円の商品を現金払いにて仕入をした際の仕訳は、以下のとおりです。

仕訳方法

借方

貸方

三分法

仕入

35,000円

現金

35,000円

分記法

商品

35,000円

現金

35,000円

摘要欄には、商品代と送料を別々に記載しておくのがおすすめです。なお、検収と決済が別日となっている場合には、検収基準に基づき「買掛金」を用いて2段階で処理します。

35,000円の商品を検収し、後日銀行口座から代金を振り込んだ場合の仕訳は、以下のとおりです。

仕訳方法

借方

貸方

三分法

検収日

仕入

35,000円

買掛金

35,000円

決済日

買掛金

35,000円

普通預金

35,000円

分記法

検収日

商品

35,000円

買掛金

35,000円

決済日

買掛金

35,000円

普通預金

35,000円

仕入た商品を販売したときの仕訳

35,000円で仕入した商品が45,000円で売れた場合の仕訳は、以下のとおりです。

仕訳方法

借方

貸方

三分法

現金

45,000円

売上

45,000円

分記法

現金

45,000円

商品

35,000円

  

商品売買益

10,000円

分記法では、仕入と売買高の差を記載するため、利益の正確な把握が可能です。

決算整理のときの仕訳

三分法で仕訳する際には決算整理を行い、利益の把握が必要です。

「繰越商品」の勘定科目を使って、期首・期末の仕訳をします。ここでは、期首の商品棚卸高が30,000円、期末が50,000円の場合を紹介します。

仕訳方法

借方

貸方

三分法

期首

仕入

30,000円

繰越商品

30,000円

分記法

期末

繰越商品

50,000円

仕入

50,000円

分記法では商品販売時に利益を算出するため、決算整理を行いません。

仕入税額控除について

仕入を行う際には、消費税の支払が求められます。

しかし、仕入税額控除の適用を受けると、仕入の際に支払った消費税を軽減することが可能です。仕入税額控除の対象になるのは課税仕入で、主に以下のような取引が該当します。

(1) 商品などの棚卸資産の購入

(2) 原材料等の購入

(3) 機械や建物等のほか、車両や器具備品等の事業用資産の購入または賃借

(4) 広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払

(5) 事務用品、消耗品、新聞図書などの購入

(6) 修繕費

(7) 外注費

出典:国税庁「No.6451 仕入税額控除の対象となるもの

なお、上記の購入に伴う加工代や人材派遣料、警備や清掃などの外部委託料も対象です。

 

仕入税額控除を受けるには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 税率ごとに区分した区分経理の実施と帳簿、請求書の保存
  • 法で定められている帳簿記載事項の適切な記載
  • 適格(簡易)請求書の適切な保存

2019年10月以降、税率が8%と10%に分かれていることから、税率ごとに区分し請求書や帳簿を正確に記載する必要があります。また、2023年10月からはインボイス制度が始まり、区分記載請求書から適格請求書へと請求書の要件も変わっている点にも注意しましょう。

仕入税額控除について詳しく知りたい方は、以下の記事をご一読ください。

関連記事:消費税の「仕入税額控除」とは? 計算方法・仕組み・要件をわかりやすく解説

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仕入とは、商品の販売やサービス提供のために必要な材料や物品を外部から調達することです。

仕入の会計処理では、計上基準(出荷・入荷・検収・回収)を自社で選び、三分法や分記法などの仕訳方法を用いて処理します。仕入をした商品が売れた分は売上原価として経費計上できますが、在庫分は経費にならない点に注意が必要です。

また、仕入税額控除の適用には帳簿や請求書の保存などの要件を満たす必要があります。

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