外注費の定義とは?仕訳例や間違いがちな勘定科目・経理処理をわかりやすく解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-10-17
業務を外注して報酬を支払ったときは、外注費として経費計上します。しかし、外注費の具体的な仕訳方法や、外注費と給与との区別が分からない担当者もいるでしょう。この記事では、外注費の具体的な仕訳方法や、給与をはじめとする外注費と迷いがちな経費について解説します。ぜひ参考にしてください。
外注費の定義とは?仕訳例や間違いがちな勘定科目・経理処理をわかりやすく解説
外注費(業務委託費)とは?
外注費とは、自社の業務の一部を外部の事業者へ委託したときに発生する費用です。通常、業務委託契約に基づいて支払われます。
【源泉徴収に注意】外注費の仕訳例
報酬・料金として個人に外注費を支払う場合は、一般的に源泉徴収の必要があります。以下では、源泉徴収の有無別に、外注費の具体的な仕訳例を紹介します。
【源泉徴収なし】法人に支払う場合
外注費の支払先が法人であれば、源泉徴収は不要です。例えば、コールセンター業者(法人)に業務を委託し、月額10万円を支払った場合の仕訳例は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
外注費 | 100,000円 | 普通預金 | 100,000円 | 月額報酬(法人) |
【源泉徴収あり】個人に支払う場合
個人に外注費を支払う場合は、原則として源泉徴収が必要です。源泉徴収する際は「預り金」という勘定科目を使用します。
例えば、個人のデザイナーにロゴデザインを依頼して10万円を支払ったときは、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
外注費 | 100,000円 | 普通預金 | 89,790円 | デザイン料 |
預り金 | 10,210円 | 源泉徴収 |
100万円に満たない報酬・料金の場合、源泉徴収税は外注費に10.21%を乗じて算出します(2024年8月現在)。
源泉徴収税が発生する具体的な仕事内容
源泉徴収税が発生する可能性が高い報酬・料金は、主に以下のとおりです。
- 原稿料
- 講演料
- 弁護士、公認会計士、司法書士などの士業の報酬
- スポーツ選手、技芸者の報酬
- モデル、タレント、俳優などの芸能関連の報酬
- 外交員の報酬
- 映画やテレビジョン放送などへの出演料
源泉徴収の対象となる所得や報酬については、以下の記事も参考にしてください。
外注費と迷いがちな勘定科目と仕訳例
外注費と迷いがちな勘定科目の仕訳例を解説します。外注費と、支払手数料や販売促進費・広告宣伝費、給与との区別を理解して、会計処理を進めましょう。
支払手数料との違いと仕訳例
外注費は直接的に発生する費用です。一方、支払手数料とは、商品やサービスそのものではなく、取引に付随して発生する経費を指します。専門性が高い仕事を外注する際は、支払手数料が発生しやすい傾向があります。
例えば、税理士に顧問料として月額3万円の報酬を支払い、併せて源泉徴収(10.21%=3,063円)を行ったときは以下のように記帳しましょう。
借方 | 貸方 | ||
支払手数料 | 30,000円 | 現金 | 26,937円 |
預り金 | 3,063円 |
支払手数料については、以下の記事も参考にしてください。
支払手数料になる経費と仕訳例5選|雑費や租税公課など迷いがちな勘定科目や注意点も解説
販売促進費・広告宣伝費との違いと仕訳例
外注費と販売促進費は、支出の目的で区別できます。外注費は、製品やサービスの生産・提供に直接関わる費用です。一方、販売促進費は、販売促進を直接の目的とする費用です。
例えば、製造委託費やシステム開発の委託費などは外注費となりますが、ノベルティグッズの製造・デザインにかかった費用は、販売促進費に分類されます。また、販売促進費のなかでも、広告を利用した場合は広告宣伝費となります。
以下は、ノベルティグッズのデザインを制作会社(法人)に依頼し、20万円を支払ったときの仕訳です。
借方 | 貸方 | ||
販売促進費 | 200,000円 | 普通預金 | 200,000円 |
販売促進費・広告宣伝費については、以下の記事も参考にしてください。
広告宣伝費(広告費)には何が含まれる?取引金額に応じた注意点や仕訳の例を紹介
給与との違いと仕訳例
外注は外部の企業や個人に対して支払う費用ですが、給与は自社の従業員に支払う費用です。ただし、外注費として経費計上していても、業務の内容によっては給与と判定される場合があります。
以下は、従業員の給与20万円を、締め日当日に預金からの振込で支払う場合の仕訳です。
借方 | 貸方 | ||
給料手当 | 200,000円 | 普通預金 | 200,000円 |
外注費で経費計上する税務上の優位性
給与ではなく外注費で経費計上するメリットは、以下のとおりです。
- 支払先が法人の場合、所得税の源泉徴収の必要がない
- 社会保険料の負担がない
- 消費税の仕入税額控除の対象となる可能性がある
前述のとおり、支払先が個人の場合は、外注費でも原則として源泉徴収が必要となる点に注意してください。
外部の企業や個人は社会保険の被保険者にはならないため、外注費であれば社会保険料は発生しません。
また、外注費が消費税の仕入税額控除を受けられると、消費税負担の軽減につながる場合があります。
外注費ではなく給与と判断されたときのペナルティ
外注費として処理していた支払が、税務調査などで給与と判断された場合のペナルティについて解説します。誤った会計処理は、追加の税負担や罰則につながる可能性があります。
源泉所得税の遡及納付
外注費ではなく給与と判断されると、源泉所得税が「徴収もれ」の状態となります。本来納めるべきであった源泉所得税を、後日さかのぼって納付しなければなりません。
延滞税および加算税の発生
給与と判断されると、延滞税や不納付加算税が課せられる恐れがあります。延滞税の税率は、翌日から2か月を経過する日まで年2.4%で、以降は8.7%です。不納付加算税の税率は、支払うべき源泉徴収税額の10%です。
また、納付すべき税額を過少申告したと判断されると、過少申告加算税の対象となる恐れもあります。延滞税および加算税については、以下の記事も参考にしてください。
源泉徴収制度について|対象となる事業者や計算方法、税金の納付方法などを解説
※参考:源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁
消費税の仕入税額控除の取消と追加納付
給与には消費税がかからないため、外注費ならば適用される可能性がある仕入税額控除を受けられません。取り消された仕入税額控除分の消費税を追加で納付すると、予期せず税負担が増加します。税負担が大きければ、キャッシュフローに影響する可能性もあります。
偽装請負として給与と判定される基準
以下の特徴に該当する場合、偽装請負として給与と判断される可能性が高まります。
- その業務が、特定の個人や企業にしか依頼できない専門性の高さを持っている
- 作業中、依頼主から直接的な指示や管理を継続的に受ける
- 成果物ではなく、作業時間に応じて報酬を請求できる
- 勤務時間や日当・時間給が、あらかじめ設定されている
- 業務に必要な主要な機材や材料を、依頼側が提供している
外注費として認められるためには、適切な業務委託契約の締結と、契約内容に沿った業務実態が不可欠です。税務調査の際には実際の業務遂行方法も精査されるため、注意が必要です。
外注費として認めてもらうためのポイント
外注費として認めてもらうためのポイントを解説します。税務調査の際には、外注先にも調査が及ぶ可能性があります。外注先との間で契約形態に関する認識を十分に共有しておきましょう。また、外注先との関係性を証明するためには、契約書や証憑書類の保管管理も重要です。
外注先との契約形態に関する認識統一
外注先との契約形態に関する認識統一として、以下の方法が挙げられます。
- 適切な業務委託契約書を作成し、自社と外注先の関係性を明確に定義する
- 外注費としての支払である旨を外注先に明確に伝える
- 社内の組織図や従業員名簿に外注先の企業や個人の名称を掲載しない
上記の措置により、雇用関係ではなく業務委託関係であると明確になり、外注先や税務署の誤解を防げます。
契約書および証憑書類の適切な保管管理
税務調査の際に、適切な契約書や請求書などの証憑書類を提示できると、外注先との正当な関係性を証明しやすくなります。法で定められた期間まで、契約書や請求書などの証憑書類を適切に保管管理しておきましょう。また、外注先から請求書を受け取る際は、勤務日数や時間給などといった雇用関係を思わせる表現を避けるよう、事前に依頼しておくことがおすすめです。
外注費と給与の支払日の分離
外注費と給与の支払日を同じタイミングに設定すると、契約形態について外注先の誤解を招く恐れがあります。外注費と給与の支払日は、意識的に分けて設定しておきましょう。
外注費の経費計上に関する注意点
2023年10月から導入されたインボイス制度により、消費税の仕入税額控除を受けるには適格請求書が必要となりました。仕入税額控除を受けたければ、外注先が適格請求書(インボイス)を発行できる事業者であるか確認のうえ、契約を結ぶ必要があります。
また、外注先が確定申告を適切に行っていないと、税務調査の際に外注費として認められない可能性があります。確定申告をしているかどうかも、外注先に確認しておいてください。
まとめ
外注費は、業務を外注して報酬を支払ったときに使用する勘定科目です。適切に外注費として経費計上すると、法人への支払の場合に源泉徴収が不要となり、社会保険料の負担も生じません。また、消費税の仕入税額控除を受けられる可能性があります。
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