個人事業主の売上仕訳の方法|消費税や事業主貸・事業主借についても紹介

個人事業主が事業経営を継続するうえで、正しい売上仕訳は欠かせない要素です。売上仕訳は取引方法や消費税区分など、さまざまな仕訳方法があるため、専門知識がないと難しく感じるかもしれません。

そこで本記事では、個人事業主の売上仕訳の方法をわかりやすく解説します。消費税や事業主貸・事業主借についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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個人事業主の売上仕訳の方法|消費税や事業主貸・事業主借についても紹介

個人事業主の売上の仕訳方法

個人事業主の売上は、現金・売掛金・クレジットカード取引で仕訳が異なります。

ここでは、個人事業主の売上の仕訳方法をみていきましょう。

現金での売上の仕訳

個人事業主が65万円の青色申告控除を受けるためには、55万円控除・電子帳簿保存法の要件を満たすこと、貸借対照表・損益計算書等を添付して期限内にe-Taxで申告することが必要です。55万円控除を受けるためには、「複式簿記」の仕訳が求められます。

店舗で商品を販売し、その場で現金を受け取る場合は「売上」の勘定科目を用い、取引を「借方」と「貸方」に分けて記録します。

現金売上が100,000円だった場合の仕訳例は、以下のとおりです。

借方

貸方

摘要

現金

100,000円

売上

100,000円

現金売上

上記の取引では「現金」という資産と「売上」という収益が同時に発生しています。摘要欄には「現金売上」のほか「商品販売」など、取引内容が分かるように記載するのが望ましいです。

上記のとおり、現金売上の場合の仕訳方法はシンプルです。「現金」と「売上」の金額が一致しているかを確認・記帳することで、リアルタイムかつ正確な収支を把握できます。

売掛金の仕訳

個人事業主が事業を継続するなかで「商品販売後に後日売上が入金される」という取引もあるでしょう。請求書を発行して後日売上が入金される場合は、売上時と入金時に分けて仕訳が必要です。

クレジットカード売上では、本業での取引においては「売掛金」、本業以外の取引等においては「未収入金」を用いて処理するケースがあります。

売掛金は提供した商品やサービスの代金を受け取る権利を指し、同じ名称の勘定科目で仕訳を行うことで、後日代金が入金されることを示します。

50,000円の商品(サービス)を販売した段階(売上時)の仕訳例は、以下のとおりです。

借方

貸方

摘要

売掛金

50,000円

売上

50,000円

商品Aの取引

借方と貸方は、金額が同じになるように記録します。

一方、後日入金された場合は、以下のように売掛金が消滅したことを示す仕訳を行います。

借方

貸方

摘要

普通預金

50,000円

売掛金

50,000円

商品Aの取引

クレジットカード取引の売上の仕訳

商品やサービスの販売にクレジットカード決済を導入している場合もあるでしょう。クレジットカード取引の場合は、売上時と入金時に計2回の仕訳を行い、その際には決済手数料も記録する必要があります。

クレジットカードによる売上が100,000円だった場合の仕訳例は、以下のとおりです。

<売上時>

借方

貸方

摘要

売掛金

100,000円

売上高

100,000円

クレジットカード売上

<入金時>

借方

貸方

摘要

普通預金

97,000円

売掛金

100,000円

クレジットカード売上

支払手数料

3,000円

-

-

クレジットカード決済手数料の支払い

※クレジットカードの支払手数料3%で試算

なお、クレジットカード取引の場合はポイントの還元・使用がされる場合もあります。

その他売上にかかわる仕訳例

事業では、単なる「売上」だけではなく、返金対応や手数料、回収不能など、さまざまな状況に応じた対応が求められます。

ここでは、その他売上に関わる仕訳例を見ていきましょう。

返金をしたとき

販売後、商品やサービスに不備があり返金する場合、主に以下2つの仕訳方法があります。

  • 売上計上時の真逆の仕訳を行う
  • 「売上戻り高」などの勘定科目を用いる

100,000円の売上に対して、20,000円の返金があった場合、売上時の真逆の仕訳例は以下のとおりです。

借方

貸方

摘要

売上

20,000円

売掛金

20,000円

売上

一方「売上戻り高」の勘定科目を用いる場合は、以下の仕訳を行います。

借方

貸方

摘要

売上戻り高

20,000円

売掛金

20,000円

売上戻り高

上記の仕訳によって、売上時に計上していた売上金額を消すことができます。

前者の仕訳方法のほうがシンプルですが、損益計算書には返品後の総額しか表示されないため「どれだけの返品があったのか」を把握するのは困難です。

しかし「売上戻り高」の勘定科目を用いれば、売上高から返金を差し引いた「純売上高」の計算過程を把握できます。

前受金・送料・手数料が発生するとき

前受金とは、商品やサービスを提供する前に、代金の一部または全部を受け取った際に用いる勘定科目です。

商品やサービスの提供前に受け取った代金は「前受金(負債)」として処理するのが一般的です。その後、商品を引き渡したタイミングで「売上」に振り替える仕訳を行います。

たとえば、商品10,000円のうち3,000円を先に受け取った場合は、まず「前受金」として処理し、その後納品時に「売上」へ振り替えます。具体的な仕訳例は、以下のとおりです。

<前受金受け取り時>

借方

貸方

摘要

普通預金

3,000円

前受金

3,000円

普通預金

<納品時>

借方

貸方

前受金

3,000円

売上高

10,000円

売掛金

7,000円

また、取引によっては送料や手数料が自社負担になる場合もあります。このような場合の一般的な仕訳例は、以下のとおりです。

<100,000円の商品を販売し、代金は後日受け取ることになった。商品発送時にかかる送料は5,000円で、発送時に現金で支払った場合>

借方

貸方

売掛金

100,000円

売上

100,000円

荷造運賃

5,000円

現金

5,000円

<売上10,000円に対して振込手数料200円が差し引かれる場合>

借方

貸方

普通預金

9,800円

売掛金

10,000円

支払手数料

200円

-

-

使用する勘定科目はケースごとに異なる点に留意してください。

売掛金が回収不能になったとき

取引先の倒産や経営悪化などにより売掛金が回収できなくなった場合、計上した金額は「貸倒損失」として費用処理するのが基本です。

貸倒損失は、回収不能が確定した売掛金などの債権を損失として処理する勘定科目です。100,000円の売掛金が回収不能と確定した場合は、以下のように仕訳を行います。

借方

貸方

日付

借方科目

補助科目

借方金額

貸方科目

補助科目

貸方金額

6月1日

貸倒損失

-

100,000円

売掛金

A社

100,000円

なお、税務上貸倒損失として認められるには「回収不能が明確であること」など厳格な要件を満たす必要があります。回収の可能性が残っている段階では、貸倒損失ではなく、貸倒引当金などで見積処理を行う点に注意が必要です。

なお、青色申告者かつ一定要件を満たす場合には、貸倒引当金の計上が認められます。

消費税の仕訳方法

一定以上の課税売上高などの要件を満たす「課税事業者」は、消費税の経理処理が必要です。

ここでは、個人事業主の消費税の仕訳方法を解説します。

税込経理方式

「税込経理方式」とは、取引金額に消費税を含めて処理する方法です。

たとえば、税込11,000円(本体10,000円+消費税1,000円)の商品を販売した場合の仕訳例は、以下のとおりです。

借方

貸方

摘要

売掛金

11,000円

売上

11,000円

商品Aの売上

この方式は、売上や経費をすべて税込金額で記録するため、日常の仕訳がシンプルになります。

一方、税抜経理方式と比べて消費税額を把握しにくくなる点に、注意が必要です。なお、免税事業者は、帳簿上で税抜経理方式を採用していても、所得税の計算上は税込経理方式で処理されます。

税抜経理方式

「税抜経理方式」とは、取引金額を本体価格と消費税に分けて処理する方法です。売上や経費は税抜金額で計上し、消費税部分は「仮受消費税」「仮払消費税」などの勘定科目で管理します。

たとえば、税込11,000円(本体10,000円+消費税1,000円)の売上があった場合の仕訳例は、以下のとおりです。

借方

貸方

摘要

売掛金

11,000円

売上

10,000円

商品Aの売上

-

-

仮受消費税

1,000円

売上と消費税を分けて記録することで、消費税管理を明確に行えます。

「事業主貸」と「事業主借」の仕訳

「事業主貸」と「事業主借」は、事業資金と個人資金のやり取りを記録するための勘定科目です。事業用とプライベート用の支出・入金を区分するために、適切な仕訳が求められます。

ここでは「事業主貸」と「事業主借」の仕訳方法を解説します。

事業主貸

「事業主貸」とは、事業用資金を個人の生活費などに使用した場合に用いる勘定科目です。事業で得た資金を私的な理由で使った際に記録するもので、資本の払い出しのような性質を持ちます。

たとえば、事業用口座から生活費(100,000円)を支払った場合の仕訳は、以下のとおりです。

借方

貸方

摘要

事業主貸

100,000円

普通預金

100,000円

生活費

また、売上から源泉徴収された場合にも「事業主貸」が使われることがあります。売上50,000円から源泉徴収された場合の仕訳例は、以下のとおりです。

借方

貸方

摘要

普通預金

44,895円

売上

50,000円

商品Aの取引

事業主貸

5,105円

源泉徴収税

ただし、管理上の観点から、源泉徴収の場合は「事業主貸」ではなく「仮払税金」を使うケースもあります。「仮払税金」を用いることで、税金の仕訳だけをピックアップでき、計算時の負担が軽減されます。

事業主借

「事業主借」とは、個人のお金を事業用に支出した場合に用いる勘定科目です。個人事業主は事業と個人の資金が混在しやすく、個人資金で立替えた経費などを記録するために事業主借が使用されます。

たとえば、個人のお金から5,000円分の消耗品を購入した場合の仕訳は、以下のとおりです。

借方

貸方

摘要

消耗品

5,000円

事業主借

5,000円

事業用消耗品

また、なかには個人の口座から事業用口座に資金を移動する場合もあるでしょう。たとえば、200,000円の資金を移動する場合は、以下のように仕訳を行います。

借方

貸方

摘要

普通預金

200,000円

事業主借

200,000円

事業資金振替

なお、事業用口座の資金に利息が生じた場合、事業収入ではなく個人の利子所得とみなされますが、記帳上は事業主借で処理される場合もあります。

利息の仕訳は、上記と同じ勘定科目を用いて「借方:普通預金 100円 / 貸方:事業主借 100円」のように仕訳を行いましょう。

仕訳のよくある間違いと対策

個人事業主が売上仕訳を行う際には、いくつかの注意点があります。

ここでは、仕訳について、よくある間違いと対策をみていきましょう。

よくある間違い

個人事業主の売上仕訳では、以下のようなミスが起こりやすいとされています。

  • 売上の計上漏れ
  • 売上の二重計上
  • 勘定科目の混同
  • 借方・貸方の逆仕訳
  • 消込ミス
  • キャッシュレス決済の手数料処理ミス
  • 消費税区分の誤り
  • 事業用・プライベート用の支出区分の混在

売上の計上漏れだけでなく、請求書の再発行による二重計上や勘定科目の混同による計上ミスなどが挙げられます。特に、二重計上や消込ミス、消費税区分の誤りなどは、申告漏れや消費税計算の誤りといった税務リスクにもつながるため、注意が必要です。

ミスを防ぐための対策

仕訳ミスを防ぐためには、毎月の取引を定期的に確認する「月次決算」を行うことが重要です。月単位で帳簿を確認することで、売掛金の回収漏れや売上の二重計上などを早い段階で発見しやすくなります。

月次決算では、主に以下の点を確認すると効果的です。

  • 売上と入金額が一致しているか
  • 売掛金の残高に未回収漏れがないか
  • 同じ請求を重複計上していないか
  • クレジットカードやキャッシュレス決済の入金額と帳簿が一致しているか
  • 前受金や未収金が正しく処理されているか
  • 消費税の処理方法(税込・税抜)が統一されているか
  • 領収書や請求書など証憑書類が揃っているか

上記のように、毎月帳簿を確認する習慣をつけることで、確定申告前の修正負担を減らし、正確な会計処理が可能です。

仕訳方法を理解して正確に処理をしよう

個人事業主が円滑な事業継続を目指すなら、正しい売上仕訳が欠かせません。勘定科目や消費税区分などを理解して仕訳を行うことで、経営状況の把握をしつつ、申告漏れや消費税の計算ミスといった税務リスクを軽減できます。

売上仕訳は、Excelテンプレートが存在するほか、近年は仕訳を自動化できるシステムも多く展開されています。ただし、取引先数が多い場合は、入力ミスの防止や証憑管理を効率化するために、専用システムを活用するのがおすすめです。

自身に合った管理方法を活用し、正確な仕訳処理を行いましょう。

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