時短勤務の給与計算方法と具体例、減額の補填となる給付金について

時短勤務は、仕事と育児・介護を両立するための重要な制度です。

しかし、実際のところ「給与がどれくらい減るのか」と不安に感じる方も多いでしょう。また、企業の労務担当者にとっても、正しい給与計算は頭を悩ませるポイントの一つです。

本記事では、時短勤務における給与の計算方法を、基本給・割増賃金・賞与に分けて具体例を交えながら解説します。さらに「育児時短就業給付金」についてや、給与減額にならないケースについても紹介しますので、ご活用ください。

インボイス制度の概要を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。

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時短勤務の給与計算方法と具体例、減額の補填となる給付金について

時短勤務とは?

時短勤務とは、育児・介護休業法に基づき、3歳未満の子どもを養育する労働者や、要介護状態の家族を介護する労働者が、1日の所定労働時間を短縮できる制度です。時短勤務制度の目的は、従業員が仕事と育児や介護を両立できるよう支援することにあります。

たとえば、3歳未満の子どもを持つ従業員については、所定労働時間を原則6時間とすることが義務化されています。介護の場合は、必ずしも6時間とする決まりはありません。

なお、業務の性質上、労働時間の短縮が難しい従業員に対しては、企業は代替措置を講じなくてはなりません。代替措置として、始業・終業時刻を柔軟に調整できるフレックスタイム制の導入や、事業所内保育施設の設置などが挙げられます。

時短勤務は法律で定められた労働者の権利であり、企業側は適切に対応する義務を負います。

所定労働時間の計算方法や上限については、以下の記事でご確認ください。

関連記事:月平均所定労働時間とは?計算方法や上限を解説

時短勤務の給与の計算方法と具体例

時短勤務を適用した場合、従業員が受け取る給与も労働時間の短縮に応じて減額されるのが一般的です。

時短勤務中の従業員の給与を正しく計算するには、単に基本給を減額するのではなく、割増賃金や賞与の仕組みも踏まえて、正確に算出することが必要です。本章で、具体的な計算方法を解説します。

基本給の計算方法

時短勤務では、短縮された労働時間に応じて基本給を減額します。これは「働いた時間分だけ給与を支払う」という、給与計算の基本的な考え方によるものです。所定労働時間が短くなれば、その分、支払う給与も少なくなります。

時短勤務の給与計算式は「基本給 ×(短縮後の所定労働時間 ÷ 短縮前の所定労働時間)」を用いるのが一般的です。

たとえば、月給20万円で所定労働時間が8時間の従業員が、6時間勤務になった場合は「20万円 ×(6時間 ÷ 8時間)」となり、基本給は15万円に減ります。この場合、労働時間が25%短縮されたことに伴い、給与減額率も25%になります。

給与計算の方法や手順については、以下の記事でわかりやすく解説していますのでぜひご参照ください。

関連記事:給料計算のやり方とは?手順やポイント・注意点をわかりやすく解説

割増賃金が発生する場合の計算方法

時短勤務者であっても、所定の労働時間を超えて働いた場合は割増賃金が発生します。法律で定められた時間外労働・深夜労働・休日労働の規定は、時短勤務者にも同じように適用される点に留意しましょう。

たとえば、短縮後の所定労働時間(6時間など)を超えて、法定労働時間(8時間)の範囲内で働いた分は、通常の賃金で残業代が支払われます。

法定労働時間を超えた分や、深夜・法定休日に労働した際は、定められた割増率に基づき手当が支給されます。時短勤務であっても各種割増賃金のルールは変わりません。

休日労働、深夜労働の手当を計算する方法は、以下の記事でそれぞれ詳しく解説しています。

関連記事:休日出勤手当とは?発生するケースと計算方法を解説

関連記事:深夜手当の計算方法を解説!残業・休日出勤がある場合はどうなる?

賞与の計算方法

賞与も、基本給と同様に時短勤務による労働時間の短縮に伴って減額されるのが一般的です。

多くの企業では、賞与の算定基礎に基本給や勤務評価を用いています。したがって、時短勤務によって基本給が減額されたり、総労働時間が減少したりすると、賞与額にも影響が出る仕組みとなっています。

ただし、減額後の基本給に連動して賞与を算出する場合には、すでに減額されているため賞与に関して新たに減額する必要はありません。

減額後の基本給と連動させず、労働時間や出勤状況をもとに算出する場合には「通常の賞与額 ×(短縮後の所定労働時間 ÷ 短縮前の所定労働時間)」の計算式が一般的です。

たとえば、通常の賞与が40万円で、所定労働時間8時間に対し6時間の勤務だった場合「40万円 ×(6時間 ÷ 8時間)」となり、支給される賞与は30万円と算出できます。

賞与計算の方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ご活用ください。

関連記事:賞与計算のやり方とは?社会保険料や所得税の計算方法も解説

 

給与低下による手取り額の減少を緩和する制度

時短勤務になり従業員の手取り額が減ってしまうと、日々の生活に支障を来す可能性もあります。特に、育児・介護の担い手は経済的負担も大きく、減額は多大な影響を与えるといえます。

そこで、手取り額の減少を緩和する制度が設けられました。主に以下2つの制度が各企業で採用されています。

社会保険料の減額措置

育児を理由に時短勤務へ移行した従業員は、社会保険料の減額措置の対象となることがあります。この制度は、給与低下による手取り額の減少を緩和し、将来の年金額が不利にならないよう従業員を保護する目的で設けられました。

具体的には、時短勤務によって固定賃金が下がった場合、社会保険料の計算基礎である「標準報酬月額」を実態に合わせて見直す手続きを行います。結果として、毎月の保険料負担は軽減されます。

将来の年金額は時短勤務前の高い報酬月額で計算されるため、従業員にとって有利な仕組みが維持されるでしょう。

ただし、育児休業の取得無し・介護事由では、減額や申請の要件が異なるため、留意しましょう。

いずれの場合でも、企業は従業員が安心して働けるよう、減額申請や手続きについてしっかりと対応する必要があります。

社会保険料の計算方法について、詳しくは以下の記事で解説しています。

関連記事:社会保険料の計算方法を解説!毎月の給与と賞与に分けて算出

育児休業の取得条件や期間については、以下の記事をご覧ください。

関連記事:育児休業制度とは?育児休暇との違い、取得条件・期間・給付金を解説

2025年4月から始まった「育児時短就業給付金」

2025年4月1日からは、時短勤務による収入減少を補うための「育児時短就業給付金」という制度が始まりました。目的は、時短勤務を選択した従業員の手取り額の減少を緩和し、仕事と育児の両立を経済面から支援することにあります。

対象となるのは、2歳未満の子どもを養育するために時短勤務で働く被保険者です。

給付額は状況により異なりますが、時短勤務の開始時と比べて月々の賃金が90%以下になった場合は、その10%相当額が給付されます。 たとえば、時短勤務で賃金が15万円になった場合、10%である15,000円が追加で給付されるでしょう。

給付金の支給は、従業員が時短勤務を選択する一助となり得るため、企業側も多様な働き方を許容する体制を整えておくことが大切です。また、具体的な制度や申請手続きについても理解を深めておく必要があります。

参考:厚生労働省「育児休業等給付について」

参考:厚生労働省「育児時短就業給付の内容と支給申請手続(令和8年8月1日時点版)」

実際の手取り額をシミュレーション

では、実際に各種制度を利用した時短勤務者の手取り額がいくらになるのか、例を見てみましょう。

ここでは、月給20万円(所定労働時間8時間)の従業員が、育児休業を取得して復帰し、6時間勤務となった場合の算出例を紹介します。

【時短勤務開始後】

・月給:15万円

・控除される月額保険料・税金合計(※):▲24,920円

・育児時短就業給付金(月額):+15,000円

→実際の手取り額:140,080円

(※)給与から差し引かれる社会保険料や税金は、年齢や居住地・勤務先の制度・特例の適用要件によっても変動するため、必ずしもこの金額となるわけではありません。

個人の状況に応じてよく確認しながら算出しましょう。

時短勤務でも給与が減額の対象とならないケース

時短勤務は原則として給与減額の対象となりますが、下記の制度を導入している企業では、時短勤務を選択しても給与水準が維持される場合があります。

  • 裁量労働制
  • 成果主義

それぞれのケースについて詳しく解説します。

裁量労働制

裁量労働制が適用されている従業員は、時短勤務でも給与が減額されないのが原則です。裁量労働制とは、実際の労働時間に関係なく、あらかじめ労使間で定めた「みなし労働時間」に基づいて給与を支払う制度であるためです。

裁量労働制は、業務の遂行方法や時間配分を労働者の裁量に委ねる専門職や企画職などで導入されるケースが多くあります。

たとえば、みなし労働時間を1日8時間と定めている場合、実労働時間が6時間であっても8時間働いたものとして給与が計算されます。そのため、労働時間の短縮が直接的な給与の減額には結びつきません。

ただし、この制度で働く従業員が育児で時短勤務を利用する場合には、みなし労働時間そのものを8時間から6時間に変更する必要があります。みなし労働時間が減った際には、そのまま給与も減額となるため、留意しましょう。

裁量労働制で残業した場合の計算方法については、以下の記事をご参照ください。

関連記事:裁量労働制は残業代が出ない?発生するケースと計算方法を解説

成果主義

成果主義の賃金制度を導入している場合は、時短勤務であっても給与が減額されない可能性があります。成果主義とは、労働時間の長さではなく、従業員が達成した業績や成果を評価し、給与を決定する考え方です。

つまり、評価の基準は「どれだけ働いたか」ではなく「どのような価値を生み出したか」に置かれます。たとえば、同じ目標を達成した場合であれば、フルタイム勤務者と時短勤務者で給与に差を設けない、といった運用が成果主義にあたります。

したがって、時短勤務者も成果を出すことで給与を維持できる場合があるでしょう。

ただし、評価基準や目標設定が時短勤務の実態に合うかどうかは企業により異なるため、あらかじめ自社の賃金規定を確認しておくのが大切です。

時短勤務に関するポイントと注意点

時短勤務による給与減額を適用するには、根拠を就業規則に明記しておくことが求められます。

給与は労働契約の根幹をなす条件であり、減額に関するルールが曖昧では、労使間のトラブルに発展しかねません。「ノーワーク・ノーペイの原則」に基づき、短縮した時間に応じて給与を減額する旨を就業規則に記載します。

なお、具体的に給与減額の計算方法も明記しておきましょう。単に「減額する」と記載するだけでなく、誰が計算しても同じ結果になる計算式まで明記しておくと、誤解を避けられます。

就業規則に明記することで、従業員は減額について事前に納得し、安心して制度を利用できるようになるでしょう。円滑な制度運用のために、就業規則の整備は必須です。

「バクラク勤怠」で時短勤務の管理を効率化

時短勤務は、労働時間の短縮に応じて給与が減額される制度ではあるものの、社会保険料の特例や給付金など、従業員を支える制度も整備されています。

時短勤務の複雑な給与計算や制度運用を適切に進めるには、日々の正確な勤怠記録が不可欠です。しかし、時短勤務をはじめ多様な働き方が増える中で、勤怠管理業務は煩雑化する傾向にあります。

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