インボイス制度で振込手数料の処理方法は?買手・売手どちらが入金時に負担するべき?

インボイス制度の施行により、振込手数料の経理処理が複雑になることも少なくありません。手数料の負担者は誰なのか、適格請求書の保存はどのようにするのかなど、複数の疑問が出てくることもあるでしょう。

そこで、この記事では振込手数料の基本ルールからインボイス制度における対処方法まで、分かりやすく解説します。効率的な経理処理のポイントを押さえて、取引先との円滑なコミュニケーションを実現するために、ぜひ最後までお読みください。

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インボイス制度で振込手数料の処理方法は?買手・売手どちらが入金時に負担するべき?

振込手数料は買手が支払うのが原則

取引の基本ルールとして、振込手数料は買手が負担します。この決まりはインボイス制度施行後も変わりません。ただし、取引先との契約により振込手数料が先方負担となるケースがあります。

先方負担とは請求書を発行した側、すなわち売手が振込手数料を負担します。当方負担は請求書を受け取った側、つまり買手が振込手数料を負担します。

振込手数料の請求書については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

関連記事:請求書の振込手数料は「先方負担(支払い側)」が基本!書き方や依頼文を紹介

インボイス制度による振込手数料処理での変更点

インボイス制度施行後、振込手数料にかかる消費税の仕入税額控除を受けるには、金融機関から発行された適格請求書を保存しなければなりません。

しかし、振込手数料は少額特例に該当する可能性があります。少額特例とは、税込1万円未満の課税仕入れを行う際に、適格請求書の保存がなくても内容を記載した帳簿の保存のみで税額控除が受けられる措置です。

少額控除の対象となれる事業者には条件があるため、制度の概要を把握しておきましょう。少額特例は、2029年9月30日までが適用対象期間です。

参考:国税庁「少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要

買手側の対応は振込手数料の支払い方法によって変わる

振込手数料の処理は、支払い方法によって対応が異なります。銀行窓口、ATM、インターネットバンキングといった支払いごとに、正確な理解と適切な対応が必要です。それぞれの支払い方法における対応方法について解説します。

銀行窓口

銀行窓口で振込手数料を支払う場合、金融機関で適格請求書が発行されます。適格請求書を保存することで仕入税額控除が適用されますので、必ず受け取り保管方法に注意してください。

ATM

ATMで振込手数料を支払う場合、自販機特例に該当するため適格請求書は発行されません。自販機特例とは、3万円未満の自動販売機・自動サービス機による取引には適格請求書が不要になる少額特例の一種です。ATMで振込を行った際は、振込明細を帳簿に記載して対応します。

参考:国税庁「自動販売機及び自動サービス機の範囲

インターネットバンキング

インターネットバンキングを利用する場合、適格請求書のデータをダウンロードして保存する必要があります。インターネットバンキングを利用した振込は、電子取引に該当するため電子帳簿保存法の要件を満たした形で保存しなければなりません。

電子帳簿保存法については、以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:電子帳簿保存法とは?2024年義務化の内容や注意点などわかりやすく解説

売手が振込手数料を支払う場合の対応

売手が振込手数料を支払う場合、以下の3つの対応があります。

  • 売上値引として処理
  • 役務の対価として処理
  • 立替払いとして処理

上記の対応について仕訳例を挙げながら解説します。

売上値引として処理する

売手は振込手数料を売上値引きとして処理することが可能です。具体的には、請求額から振込手数料を差し引いた金額で請求書を発行し、その差額を売上値引きとして記録する方法です。

たとえば、20万円の請求金額で振込手数料が880円の場合、実際に請求する金額は振込手数料を差し引いた199,120円です。売上値引きの仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
買掛金199,120円売掛金200,000円
売上値引880円  

この処理における振込手数料相当額は売上げに係る対価の返還等として扱われ、適格返還請求書(返還インボイス)の発行義務がありました。しかし、2023年の改正により振込手数料が1万円未満であれば、発行義務は免除されます。

適格返還請求書について詳しく解説した以下の記事も参考にしてください。

役務の対価として処理する

振込手数料を役務の対価として処理する場合、売手は買手に対して振込手数料相当額を役務提供として扱います。つまり、売手が買手から決済上のサービスを受けたと考える方法です。

たとえば、5万円の請求金額で振込手数料が330円の場合、売手の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
現金49,670円売上50,000円
仕入330円  

この処理では、売手は買手から振込手数料に関する適格請求書を基に仕入税額控除を行うことが可能です。条件として、買手が適格請求書発行事業者であり、売手は取引に関する適切な記録保持を行う必要があります。

しかし、振込手数料が1万円未満の場合は、少額特例が適用されます。

立替払い(支払手数料)として処理する

立替払い(支払手数料)は、売手が振込手数料を一時的に立替えて支払う方法です。振込手数料を差し引いた金額が振り込まれるため、値引きされたように思いますが、実際には売上金額に変更はありません。

この処理では、買手から売手に対して金融機関が発行する適格請求書と立替金精算書を提出する必要があります。これにより、売手は振込手数料に含まれる消費税分について仕入税額控除が受けられます。

一方、買手がATMを利用して振込を行った場合、適格請求書や立替金精算書の提出は不要です。売手は帳簿に必要事項を記載し、適格請求書が不要である理由とATMの利用場所を明記することで、仕入税額控除の適用ができます。

たとえば、請求額15万円で振込手数料が550円の場合、売手の仕訳は以下のとおりです。

借方貸方
現金149,450円売上150,000円
(金融機関からの)仕入550円  

振込手数料を取引先に負担してもらいたいときには

振込手数料を取引先に負担してもらうためのアプローチは、新規取引先と既存取引先で異なります。

新規取引先の場合、契約を結ぶ前に振込手数料の負担について明確に取り決めておくことが望ましいでしょう。契約書や請求書に、振込手数料は貴社でご負担いただくようお願いしますと記載することで、負担について明示できます。

既存取引先の場合は、これまで自社が振込手数料を負担していた場合に変更を求めることになります。一方的に、請求書に振込手数料は貴社でご負担くださいと記載して送付すると、これまでの関係性に悪影響を及ぼす可能性があります。

変更を依頼する際、直接交渉の場を設けて振込手数料の負担変更について話し合うのが望ましいでしょう。また、既存取引先との交渉では相手が拒否した場合は無理に要求せず、そのまま引き下がる方が賢明な場合もあります。

少額な振込手数料のために、顧客との信頼関係を失わないように注意してください。
新規・既存の取引先それぞれに合わせて適切なアプローチを行えば、振込手数料の負担について円滑な合意形成が可能です。

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インボイス制度により、振込手数料の負担者や処理方法が異なり、ミスや問題が生じやすくなります。また、適格請求書の保存や少額特例への対応、支払い手段ごとの経理処理を手作業で行うと、業務負担が増加し効率が低下する可能性があります。
少額特例や自販機特例など制度上の優遇措置を正しく理解し、適格請求書の保存や帳簿記載の要件を確認しましょう。そこで、おすすめなのがバクラク請求書受取です。請求書を自動でデータ化し、インボイス制度にも完全対応しています。
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