前払費用の勘定科目は?仕訳例・計上タイミングと特例を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-10-17
前払費用は、資産として貸借対照表に表記する必要がある勘定科目です。前払費用の仕訳には複数の注意点があるため、事前に把握したうえで計上する必要があります。この記事では、請求書を発行する担当者に向けて、前払費用の勘定科目や仕訳方法などを解説します。前払金との違いや特例などもまとめているため、ぜひ参考にしてください。
前払費用の勘定科目は?仕訳例・計上タイミングと特例を解説
前払費用とは
前払費用とは、契約したサービスを続けて受けるために、まだ提供が行われていないサービスに対して支払った費用のことです。前払費用は、英語では「Prepaid expenses」と表記されます。たとえば、火災保険の効力を生じさせるには、事前に保険料の支払いが必要です。
また、物件の賃貸では、翌月の家賃を前払いするケースが一般的になっています。最近増えているサブスクリプションサービスは、年間契約をすると1年分の料金を一括で支払う場合も少なくありません。貸借対照表に次の会計期間以降の費用の前払いが含まれている場合、資産に該当します。具体的には、前払保険料、前払家賃、前払費用などです。
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前払金との違い
前払費用は、すでに解説したとおり継続してサービスを利用するために前払いした費用です。保険料、家賃、リース料などが該当します。前払金も前払いした費用を表していますが、継続性はありません。そのため、たとえば購入費、修繕費、宿泊代などが該当します。
また、会計処理の違いもあります。前払費用は費用とみなされ、会計処理上の勘定科目は「前払費用」です。一方、将来利用するサービスや商品の提供に備えて支払った前払金は、資産とみなされ「前払金(前渡金)」の勘定科目を使用します。ただし、勘定科目の「前払費用」と「前払金(前渡金)」は同じ意味があり、どちらを使用しても問題ありません。
長期前払費用とは
長期前払費用とは、年度の途中で1年以上にわたる契約に基づいて支払われた費用のうち、1年を超える部分のことです。たとえば、火災保険や自動車保険では複数年分の保険料を一括で支払う場合があります。この際、1年を超える分は長期前払費用として会計処理しなければなりません。
法人の場合、法人税法の規定により、繰延資産が長期前払費用として扱われることもあります。法人税法においては、繰延資産の範囲が比較的広く設定されており、長期前払費用として処理することで、適切なタイミングで費用を計上できます。
短期前払費用とは
短期前払費用とは、まだ受け取っていないサービスに対して支払った費用を指します。1年以内に回収や決済の期限がある場合、ワンイヤールールに基づいて流動資産に計上します。ただし、継続的に利用するサービスに対して、先に支払った費用がすべて短期前払費用になるわけではありません。
短期前払費用として計上するには等質等量のサービスに該当し、時間の経過に応じて費用化される必要があります。また、支払った事業年度に役務提供が開始されることも条件です。
短期前払費用の特例
短期前払費用の特例により、支払日から1年以内にサービスを受けるなら、支払った費用をその年度の費用として損金に算入可能です。ただし、運用目的の借入金の支払利子は収益と対応させる必要があるため、特例の対象にはなりません。
短期前払費用として支払いが認められるとその課税期間において仕入税額控除の対象になり、消費税の節税効果を得られます。短期前払費用の特例を適用できると費用の早期計上が可能になるため、法人税や所得税などについても負担を軽減できます。
前払費用の勘定科目
支払いの際に費用と前払費用をそれぞれ計上する仕訳について、具体的に解説します。ここでは、支払時の条件を以下のとおりとします。
- 決算期が3月である
- 2年契約の火災保険の保険料210,000円を9月に支払った
保険期間2年の場合
保険期間が2年の場合、当期分とそれ以降の保険料を分けて計上します。また、短期前払費用と長期前払費用の振り分けも必要です。具体的な仕訳の例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
保険料 | 52,500円 | 現預金 | 210,000円 |
短期前払費用 | 105,000円 | ||
長期前払費用 | 52,500円 |
保険期間18か月の場合
保険期間が18か月の場合も、当期分とそれ以降の保険料を分けて計上します。当期以降の期間は1年以内であるため、短期前払費用のみで計上できます。具体的な仕訳の例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
保険料 | 70,000円 | 現預金 | 210,000円 |
短期前払費用 | 140,000円 |
前払費用に関わる消費税について
前払費用に関わる消費税の仕訳についても解説します。ここでは、支払時の条件を以下のとおりとします。
- 決算期が3月
- 2年契約のサブスクリプションサービスの料金198,000円を3月に支払った
- 税抜方式
料金198,000円に消費税が含まれており、消費税は18,000円です。まずは当期分の仮払消費税のみ計上し、翌期以降で随時計上していく必要があります。具体的な仕訳の例は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | ||
通信費 | 7,500円 | 現預金 | 198,000円 |
仮払消費税 | 750円 | ||
短期前払費用 | 99,000円 | ||
長期前払費用 | 90,750円 |
前払費用の仕訳の流れと計上タイミング
前払費用の仕訳をするタイミングを大別すると、以下の3つです。
- 支払時
- 決算時
- 翌期首
それぞれのタイミングにおける仕訳について、以下の条件で解説します。
- 会計期間:4月1日~3月31日
- 12月1日から翌年11月30日までの1年分のリース料
- 24万円を現金で支出
1.支払時
前払費用を支払時に仕訳する場合、以下のように記載します。
借方 | 貸方 | ||
賃借料 | 240,000円 | 現金 | 240,000円 |
2.決算時
会計期間が3月31日までであるため、12月から3月までの4か月分のみを当期の費用として計上できます。金額は8万円です。よって、残りの8か月分の16万円については、前払費用として資産に計上する必要があります。具体的には、以下のように記載します。
借方 | 貸方 | ||
前払費用 | 160,000円 | 現金 | 160,000円 |
3.翌期首
翌期に入ったら、以下のとおり仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
賃借料 | 240,000円 | 現金 | 240,000円 |
また、決算時に資産として計上した16万円の前払費用を再振替えし、翌期の経費とする必要があります。
短期前払費用の特例の場合
費用収益対応の原則のほかに重要性の原則もあり、重要性が低い費用は簡便な処理が認められています。具体的には、前払費用に当たる賃借料、保険料、地代家賃、借入金利息などが対象です。支払日を起点として1年以内にサービスの提供を受けられる場合、支払額は支払日の事業年度の損金に算入できます。通常よりも簡便な処理で前払費用を計上可能です。
特例を適用するには、以下の条件を満たしている必要があります。
- 前払費用の要件を満たしている
- 役務の対価である
- 一定の契約に基づいて継続的に役務を受けるために費用を支払う
- 繰延べ処理によって費用化されている
- 支払が完了している
- 支払日から1年以内に役務の提供を受けられる
- 毎期継続して経費として計上する
まとめ
前払費用は、継続的にサービスを受けるために前払いした費用を計上するための勘定科目です。タイミングに応じて仕訳を行う必要があります。また、長期前払費用や短期前払費用があり、条件に基づいて正しく計上しなければなりません。特例を適用できる場合もあるため、条件をよく確認したうえで計上しましょう。
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