電子帳簿保存をやらない場合の懸念は?罰則・リスクとシステム導入の必要性を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-10-11
電子帳簿保存法の2022年改正を経て、2024年1月からは電子取引に関する適切なデータ保存が義務化されています。電子帳簿保存法を自社に導入しない場合、どのような問題が起きるのでしょうか。
この記事では、電子帳簿保存に対応できていないケースの懸念を解消するため、電子帳簿保存法に違反した際の罰則やリスク、デメリット、注意点、システム導入の必要性を解説します。
電子帳簿保存をやらない場合の懸念は?罰則・リスクとシステム導入の必要性を解説
電子帳簿保存を自社へ導入しないのはOK?
法人税を納めている普通法人や公益法人、所得税の納税義務がある個人事業主が対象で、原則はほぼ全事業者が電子帳簿保存法の対象です。しかし、電子データを全く取り扱っていない企業や個人事業主は、例外として扱われ、対象外と規定されています。
電子帳簿保存法は、国税関係書類や帳簿の電子データ保存についての法律です。改正を重ねていますが、2022年1月に大きく見直されてから2年間の移行期間を経て、2024年1月1日に電子取引のデータ保存が完全義務化されました。法改正の意図は不正や悪用を防ぐための罰則が強化されたこと、ペーパーレスの促進もあります。
詳細は以下の記事を読んでみてください。
電子帳簿保存法に関連する罰則
電子帳簿保存法には、違反した場合の罰則規定が設けられています。ここでは、電子帳簿保存法関連の罰則を3つ解説します。
電子帳簿保存法とは?2024年義務化の内容や注意点などわかりやすく解説
1. 会社法で過料が科される
電子帳簿保存法に違反すると、会社法(会社の設立や運営、仕組みなどについて定められた法律)にも違反する場合があります。
会社法第九百七十六条に記載されている帳簿や書類の記録や保存に関連する規定によると、国税関係の帳簿書類の保存を適切に行っていない場合、100万円以下の過料が科せられる可能性があります。電子帳簿保存法を守っておらず、電子取引の情報を電子データで保存していない場合はこの罰則に該当する恐れがあるので注意が必要です。
2. 青色申告の承認が取り消される
電子帳簿保存法への違反が明らかになると、控除の大きな青色申告の承認が取り消される場合があります。
ただし、青色申告の取り消しは「電子データの一部を保存せずに書面で保存した」というだけでは適用されません。従来同様に帳簿への記帳が正しく行われており、確定申告にも反映されているケースで、保存すべき内容が書面などの保存データで確認できれば、承認取り消しまでに至ることはないでしょう。
一方、「要請があっても帳簿書類を提示しない」「保存要件に従っていない」などの違反は承認取り消しの可能性があるため注意が必要です。
3. 追徴課税が発生する
電子帳簿保存法を守らず、電子データの改ざんや隠蔽などが判明した場合は、追徴課税の対象になります。税務調査が入った際に、書類に隠蔽や偽装などが発覚した場合は、申告漏れなどに課される重加算税(35%)に加えて、ペナルティとして10%が加重となります。
2022年の法改正には、このような帳簿の不正や悪用を防ぐための罰則強化の意図があります。悪質と指摘された場合は、それなりのペナルティが課せられるため注意しましょう。
電子帳簿保存の対応をやらないとどうなる?主なデメリット
電子帳簿保存の対応をしない場合、前述した罰則以外にもセキュリティ面などにおいてもさまざまなリスクが生じます。電子帳簿保存法を導入しない場合に起こり得る、主な問題点やデメリットを解説します。
セキュリティ上のリスクが増加する
国税関係の書類全てを紙文書のみで管理すると、改ざんや紛失の可能性が高くなり、セキュリティ上のリスクが増加します。長期間の紙文書保存は、書類が劣化したり紛失したりする可能性もあります。電子データはクラウド上に保存もしておけますが、紙文書のみでは災害時には物理的に消失してしまうでしょう。
また、紙ベースでの管理は、人的ミスも起こりやすくなります。電子帳簿保存システムを導入し、データ管理に移行すれば、今後はAI活用の監視システム発展なども期待されるため、人的ミスなどインシデントの発生予防も見込めます。
経理業務がさらに非効率化される
国税関連の書類が紙文書のみの場合、印刷や検索、管理に電子データよりも時間や労力がかかり、結果的に経理業務の効率が低下することにも繋がってしまいます。取引先や他社が一斉に電子帳簿保存に移行しているなか、自社だけ電子帳簿保存を進めないままでは、経理業務の非効率化がさらに際立つことになるでしょう。
さらに、2024年10月から郵便料金も値上げされ、郵送や印刷などのコストもますますかさんでしまいます。電子保存に適したシステムを導入しないままでは、時間もコストも他社より余計にかかってしまうデメリットが懸念されます。
書類保管をする物理的なスペースが必要になる
請求書や領収書、納品書などは、法人の場合7年間の保管が必要とされています。そのため、紙の書類を保管をするための、物理的なスペースが必要です。会社の規模によっては保存すべき書類が大量になるため、適切なスペース確保や拡張、維持にコストがかかるデメリットがあります。
紙ベースでの保管は、書類の印刷代がかかるのはもちろん、ファイルやキャビネットなど保存ケースの購入費やスペース管理の人件費などもかかってしまうのも問題点として挙げられます。
社内データを電子帳簿保存法へ対応させる流れ
次は、国税関連の社内データ全てを電子帳簿保存法へ対応し、適切なシステムを導入する際の流れを紹介します。具体的なステップに沿って、どのような点で電子帳簿保存法に違反している、導入していないと判断されてしまうのか、これから対応する場合はぜひ参考にしてください。
1.自社の電子取引を整理し、把握する
電子帳簿保存の対応に際して最初にするべきステップは、「誰が、どの方法で請求書を発行・受領しているか」など、担当と保管方法、毎月や年間の取り扱い件数などを調査し、自社の取引の状況を正確に把握することです。
次にどの文書を電子化すべきなのかを理解し、自社の電子取引の内容を整理しましょう。的確に規模と状況を把握しておくことが重要です。
2.電子データの保存方法と保存場所を決める
電子帳簿保存要件を満たし、電子帳簿の保存場所の整理をきちんと行うには、データ保存の要件を理解し、必要なデータを適切に保存できることが重要です。
まず、請求書などの受け取りから最長2か月とおおむね7営業日以内に、電子データ化に対応しなければなりません。電子データ保存にあたっては、真実性の確保のためにタイムスタンプ、可視性の確保のために「取引年月日」「取引先名」「取引金額」の3項目で検索可能なことなどを理解し、違反を避けるようにしましょう。
また保存場所は、自社に適した規模の電子データの保存方法を探して比較検討し、決める必要があります。
3.システムの導入を検討し、業務フローを整える
電子帳簿保存法の保存要件を満たすには、体制と環境の整備が必要ですが、専門システムの導入もその1つです。
タイムスタンプを付与する改ざん防止の措置など、各区分で定められた要件を満たして適切に対応するには、使い勝手の良い電子帳簿保存システムを導入した方が正確かつ業務負担を軽減できます。自社の規模や目的に合わせてシステムの導入を検討しましょう。
さらに社内コンプライアンス教育を徹底し、電子帳簿保存法に沿った社内ルールを設定して業務フローを的確に運用するのも重要なポイントです。
導入が間に合わない場合は電子帳簿保存法の猶予措置が適応
電子取引の電子データ保存に関して、要件どおりの導入や対応が間に合わない中小企業などは、一定の要件を満たす場合、2024年1月以降にやり取りする電子取引データ保存の猶予措置が認められています。
所轄税務署長が相当の理由があると認め、税務調査の際などに、電子取引データのダウンロードとプリントアウトした書面の提示や提出の求めに応じられる場合は、検索要件と改ざん防止措置の一部は非対応でも大丈夫です。
人手不足や資金繰りが間に合わなかったなどの理由で、適切なシステムの導入や社内業務フローの整備が間に合わなかったなどの状況が説明できれば、電子取引データ保存に関する猶予措置の対象となる可能性があります。
しかし、いずれにしても帳簿や電子取引データのダウンロード、プリントアウトは必要になるため、全く対応しなくて良いというわけではありません。できるだけ早く、電子帳簿保存法に対応したシステムの導入を進めましょう。
なお、こちらの猶予措置の期間は未定です。
電子帳簿保存にシステムを導入しないと管理コストがかさむ
電子帳簿保存法改正の施行によって、紙のみでの保存が認められなくなっているため、このまま電子帳簿保存のシステムを導入しないとかえって管理コストがかさむ恐れがあります。
電子帳簿保存に適切なシステムを導入することで、取引情報の保存要件は容易に満たすことが可能です。さらに、データのバックアップやセキュリティ対策を任せられるなどのメリットも多数あります。
バクラク電子帳簿保存では、書類の保管や、書類のデータ化にかかる時間を削減することも可能です。電子帳簿保存法に完全対応し、使いやすくわかりやすいため、ぜひご検討ください。
まとめ
電子帳簿保存法を導入しない場合、どのようなリスクやデメリットが発生するのかを解説しました。まだ電子帳簿保存に適切に対応できていない場合は、電子帳簿保存法の保存区分に対応した電子帳簿保存システムの導入がおすすめです。