マイナンバーを会社に提出するのは義務?必要な理由や提出方法を解説

勤務先にマイナンバーの提出を求められた際、必要性や個人情報流出への不安などから提出を迷う方もいるでしょう。

本記事では、会社が従業員にマイナンバーの提出を求める理由や、提出方法について詳しく解説します。マイナンバーの取り扱いについて理解を深めたい方は、本記事を参考にしてください。

マイナンバーを会社に提出するのは義務?必要な理由や提出方法を解説

マイナンバーを会社に提出するのは義務?

会社へのマイナンバー提出は義務付けられておらず、あくまで任意です。マイナンバー提出に関する法律の定めがないことから、拒否した場合の罰則もなく、提出の拒否が認められます。

ただし会社は、税や社会保障の手続きを行う際に、書類へのマイナンバーの記載が義務付けられています。従業員が提出を拒否した場合、書類の作成に支障をきたす可能性があるため注意が必要です。

参考:厚生労働省「社会保障・税の手続書類へのマイナンバー(個人番号)の記載について、事業主・従業員の皆さんのご協力をお願いします。

会社が従業員にマイナンバーの提出を求めなければいけない理由

会社が従業員にマイナンバーの提出を求める理由は、主に2点です。提出したマイナンバーがどのように利用されるか、詳しく見ていきましょう。

源泉徴収票を作成するため

会社は、税務署へ提出する源泉徴収票に、従業員のマイナンバーを記載しなければなりません。そのため、会社には、遅くとも年末調整の期限(翌年1月31日)までにマイナンバーを提出する必要があります。

なお、従業員に交付する源泉徴収票には、マイナンバーの記載は不要です。不用意に記載すると第三者の目に触れやすくなり、情報漏えいのリスクが高まるため注意しましょう。

以下の記事では、源泉徴収制度の対象となる事業者や税金の納付方法、年末調整の概要や確定申告との違いなどを解説しています。税制度への理解を深めたい方は、併せてご覧ください。

関連記事:源泉徴収制度について|対象となる事業者や計算方法、税金の納付方法などを解説

関連記事:年末調整とは?確定申告との違いや実施期間、必要書類の書き方

社会保険の手続きをするため

社会保険の手続きにおいても、会社は届出書類に従業員のマイナンバーを記載する必要があります。たとえば、健康保険や厚生年金保険、雇用保険の加入・更新手続きを行う場合です。

健康保険や厚生年金保険は雇入時のみでなく、従業員の被扶養者に異動があったときや育児休業を取得したときにも、マイナンバーの記載が必要です。雇用保険に関しては、従業員が就職・退職した際に提出する、資格取得届や資格喪失届に記載します。

社会保険は病気や介護、失業などに備えたもので、制度を維持するには社会保険料の支払いが必要です。社会保険料の詳しい計算方法を知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

関連記事:社会保険料の計算方法を解説!毎月の給与と賞与に分けて算出

マイナンバーの提出を従業員に拒否された時の対応

会社は従業員にマイナンバーの提出を求める際、収集の目的を伝えなければなりません。社会保険や税の手続きに必要な旨を説明し、同意を得られない場合は、理由を確認の上で説得を続けましょう。

たとえば、個人情報の漏えいに不安を抱く従業員には、個人情報保護やセキュリティ対策に関する自社の取り組みを伝える必要があります。個人情報を取り扱うためのマニュアル整備や担当者への研修の実施、電子機器へのセキュリティ対策などを丁寧に説明しましょう。

最終的に提出を拒否された場合は、提出の求めに応じてもらえなかった旨を提出書類に記載します。会社側の義務違反でないことを証明するために、提出を求めた日時や拒否までの経緯を詳しく記載することが重要です。拒否の理由は記載不要です。

マイナンバーなしで社会保険の加入は可能?

マイナンバーを提出しない場合も社会保険に加入できますが、以下の影響が生じる可能性があることを、あらかじめ従業員に伝えておく必要があります。

  • 保険証の発行に通常よりも日数を要する
  • 病院などを受診した際、健康保険証の資格確認に差し障る
  • マイナポータルを活用した行政サービスを受けられない
  • 住民票や戸籍謄本の取得に費用がかかる

社会保険の加入手続きに関しては、自社が協会けんぽまたは健康保険組合のいずれに加入しているかで異なります。

協会けんぽの場合は、従業員の基礎年金番号で手続きできます。ただし、マイナンバーがあれば省略できる住所の記載が必要な点、家族を扶養に入れる場合に、住民票などの本人確認書類を提出しなければならない点に注意しましょう。

健康保険組合の場合は、組合ごとに対応が異なります。マイナンバー不要で手続きを進められる組合が多いですが、マイナンバーの記載が必要な組合もあるため、自社が加入する健康保険組合に確認しましょう。

従業員にマイナンバーを提出してもらう流れ

マイナンバーは特定個人情報に該当するため、個人情報保護法やマイナンバー法に則った厳重な取り扱いが必要です。本章では、従業員にマイナンバーを提出してもらう流れについて解説します。

利用目的を周知する

マイナンバーを提出してもらう際、会社は従業員に利用目的を周知することがマイナンバー法で義務付けられています。

口頭のみでなく、通知書や同意書を書面で発行・配布し、従業員へ確実に知らせましょう。従業員の不安を解消できるように、質問や相談の機会を設ける方法もあります。

なお、社会保険や税などの手続き以外を目的としてマイナンバーを収集することは、マイナンバー法で認められていません。法律で定められた利用範囲を遵守し、従業員に知らせた目的以外に利用しないことを徹底しましょう。

マイナンバーが記載された書面を従業員から受け取る

提出の同意を得られたら、マイナンバーが記載された書面を従業員から受け取ります。マイナンバー確認書類として認められるのは、以下のような書面です。

  • 個人番号カード(マイナンバーカード)
  • マイナンバー通知カード
  • マイナンバーが記載された住民票の写し
  • マイナンバーが記載された住民票記載事項証明書

手書きのメモやメールの文面に記されたものは、マイナンバー確認書類として認められないため注意しましょう。

なお、個人情報保護の観点から、社内でマイナンバーを取り扱う担当者は事前に決めておくのが望ましいです。担当者以外の従業員を経由しなければならない場合は、情報漏えいに注意しながら速やかに回収しましょう。

従業員の本人確認をする

従業員の本人確認には、1点または2点の身元確認書類が必要です。身元確認書類の例は、以下をご覧ください。

書類の点数

本人確認書類

1点で確認可能な書類

個人番号カード・免許証・パスポート・在留カード・身体障害者手帳 など

2点必要な書類

住民票の写し・公的医療保険の被保険者証・児童扶養手当証書・年金手帳 など

個人番号カードは、マイナンバー確認書類と身元確認書類を兼ねており、1枚でスムーズに提出の手続きを進められます。ただし、マイナンバー通知カードは、身元確認書類に利用できないため注意しましょう。

収集した書面を適切に保管する

従業員から収集したマイナンバーは、以下の安全措置を講じた上で適切に保管しなければなりません。

安全措置

措置内容

組織的安全管理措置

マイナンバーの取り扱いに関する規定や運用手段の整備

人的安全管理措置

担当者を対象とした研修や取り扱い状況の確認を定期的に実施

物理的安全管理措置

マイナンバーの保管・利用場所の適切な管理

技術的安全管理措置

マイナンバーへのアクセス権限の設定やセキュリティ対策の実施

収集したマイナンバーは、税や社会保障の手続きで継続的な利用が必要と認められることから、従業員の雇用期間中は法律に基づいて保管するのが基本です。マイナンバーが記載された書類も、併せて保管しましょう。

退職した従業員のマイナンバーは、退職から7年以内の破棄が必要ですが、情報漏えいのリスクを考慮すると、極力早めに廃棄するのが適切です。

ただし、マイナンバーが記載された書類には、それぞれ保管期間が定められているため注意しましょう。たとえば、源泉徴収票は7年間の保管が必要なため、退職後も最長7年間保管する場合があります。

保管期間を過ぎた書類は、速やかに廃棄するのが基本です。マイナンバーを保管していたデータの削除や電子機器の破棄を行った際は、削除・破棄の日時を記録しておく必要があるため注意しましょう。

マイナンバーの提出方法

マイナンバーの提出方法は、個人番号カードとマイナンバー通知カードのいずれを所持しているかで異なります。どちらも手元にない場合を含む、マイナンバーの具体的な提出方法をケース別に見ていきましょう。

個人番号カードを持っている場合

個人番号カードには、12桁のマイナンバーおよび氏名や生年月日、性別などの個人情報が記載されています。顔写真が付いており、身元確認書としても利用できます。

個人番号カードを所持している場合、提出書類はカード両面のコピーのみで問題ありません。マイナンバーをスムーズに提出したい方は、個人番号カードを利用しましょう。

マイナンバー通知カードを持っている場合

マイナンバー通知カードは、氏名や住所などの情報とともにマイナンバーが記載された緑色のカードです。現在は、マイナンバー通知カードの代わりに個人番号通知書が配布されています。

手元にマイナンバー通知カードがある場合は、カード両面のコピーと、先述した1点または2点の身分証明書を提出しましょう。

個人番号カードもマイナンバー通知カードもない場合

個人番号カードとマイナンバー通知カードのいずれも手元にない場合は、マイナンバーが記載された住民票の写しと身分証明証(1点または2点)を提出します。

マイナンバーが記載された住民票の写しは、住民登録のある市区町村の役所で取得できます。マイナンバーは基本的に記載が省略されるため、申請書に記入する際、該当項目にチェックを入れましょう。窓口へ行くのが難しい場合は、インターネットでダウンロードした申請用紙に必要事項を記載し、郵送する方法もあります。

扶養家族のマイナンバー提出における注意点

最後に、扶養家族のマイナンバー提出における注意点を解説します。扶養家族のマイナンバーを提出する目的や方法を理解して、適切に取り扱いましょう。

扶養家族のマイナンバーも必要

税や社会保障の手続きには、従業員本人だけでなく、扶養家族のマイナンバーも必要です。従業員のマイナンバーを収集するときと同様に、利用の目的を説明して従業員の同意を得なければなりません。

なお、扶養家族以外のマイナンバーは、会社で収集できないことがマイナンバー法で定められています。従業員の配偶者や子どもが扶養から外れている場合に、誤って提出を求めないように注意しましょう。

扶養家族の本人確認は従業員本人が実施する

年末調整で扶養家族のマイナンバーを収集する場合、扶養家族の本人確認は従業員本人が実施します。「扶養家族のマイナンバーは従業員が会社に提供する」とされており、従業員は個人番号関係事務実施者に該当するためです。

ただし、マイナンバーを第3号被保険者関係届に利用する場合は、会社が扶養家族の本人確認をしなければなりません。会社に届出を行うのは扶養家族であり、従業員は扶養家族の代理人としてマイナンバーを提出するためです。

本人確認の実施者は、扶養家族のマイナンバー提供が誰に義務付けられているかで異なるため注意しましょう。

まとめ

従業員がマイナンバーを会社へ提出することは義務付けられておらず、罰則などもありません。しかし、会社は税や社会保障などの手続きにおいて、書類へのマイナンバーの記載が義務付けられています。

会社は従業員に、マイナンバーの利用目的を伝えた上で提出を求めることが重要です。それでも同意を得られない場合は、拒否された旨を提出書類に記載しましょう。提出を求めた日時や、拒否までの経緯も記載する必要があります。

マイナンバーの提出方法は、個人番号カードとマイナンバー通知カードのいずれを所持しているかで異なります。どちらも手元にない場合を含め、必要書類を準備して正しく提出しましょう。

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