
基礎控除・給与所得控除の見直しと12月精算|令和8年分の年末調整で何が変わる?
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-09-09
- この記事でわかること / 3つのポイント
- 基礎控除は本則62万円、特例で最大104万円になる
- 給与所得控除の最低保障額は74万円に拡大する
- 拡充分は12月の年末調整で差額精算する
※本記事は2026年9月7日時点の情報です。最新の法令・様式は国税庁のサイトでご確認ください。個別の判定については税理士・社会保険労務士にご確認ください。
令和8年分の所得税では、基礎控除が本則62万円に引き上げられ、特例加算を含めると最大104万円になります。給与所得控除の最低保障額も74万円に拡大し、給与収入ベースの課税最低限は178万円まで広がります。一方で、この拡充分は毎月の源泉徴収には反映されず、12月の年末調整でまとめて精算するという点が実務上の最大のポイントです。この記事では、控除額の中身と12月精算の仕組みを、給与計算担当者の視点で整理します。
基礎控除・給与所得控除の見直しと12月精算|令和8年分の年末調整で何が変わる?
基礎控除の引上げ:本則62万円+特例で最大104万円
本則部分と特例部分の二段構造になっている
令和8年分の基礎控除は「本則部分」と「特例加算部分」に分かれています。本則部分は物価上昇を踏まえた調整として58万円から62万円へ引き上げられました。これに加えて令和8年・9年分は時限的な特例加算が上乗せされ、合計所得金額に応じて最大42万円が加算されます。
| 合計所得金額 | 所得税の基礎控除額 | 内訳 |
|---|---|---|
| 489万円以下 | 104万円 | 本則62万円+特例42万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 67万円 | 本則62万円+特例5万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 62万円 | 本則のみ |
| 2,350万円超〜2,400万円以下 | 48万円 | — |
| 2,400万円超〜2,450万円以下 | 32万円 | — |
| 2,450万円超〜2,500万円以下 | 16万円 | — |
| 2,500万円超 | 0円 | — |
特例加算が適用されるのは居住者で、合計所得金額が655万円以下の場合です。令和8年中を通じて非居住者だった人には特例加算は適用されず、基礎控除額は62万円になります。なお合計所得金額が2,350万円を超える人の基礎控除額(48万円・32万円・16万円・0円)は、令和8年度改正による変更の対象ではありません。
参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」問6-4
住民税の基礎控除は43万円で据え置き
所得税の基礎控除が拡大しても、住民税の基礎控除は43万円のままです。そのため所得税が0円でも住民税は発生する、というケースが出てきます。従業員向けの案内文に、所得税の基礎控除(62万円〜104万円)と住民税の基礎控除(43万円)の違いを1行入れてください。
一方で、給与所得控除の引上げは個人住民税にも同様に及び、令和8年分の所得に係る令和9年度分の個人住民税から適用されます。基礎控除は据え置き、給与所得控除は連動する、という非対称な構造になっている点が案内時のポイントです。
また、後述する「178万円」は所得税だけの目安です。住民税が発生する年収の水準や、社会保険の加入・扶養の基準(106万円・130万円など)は別の制度で決まるため、案内文では「所得税の話」であることを明示してください。
特例加算は令和10年分以後に区分が変わる
特例加算は期間限定の措置で、令和10年分以後は適用区分が変わります。令和10年分以後は、合計所得金額が132万円以下の場合に37万円が加算されて99万円、それ以外(2,350万円以下)は本則の62万円です。
あわせて、基礎控除額と給与所得控除の最低保障額については、消費者物価の変動に応じて2年ごとに見直す仕組みが設けられました。控除額は今後も定期的に変わる前提で、社内マニュアルや手当の支給条件を設計しておく必要があります。社内マニュアルの控除額一覧には、「令和8年・9年分」と適用年分を見出しに入れてください。
給与所得控除の見直し:最低保障額は74万円
本則69万円+特例5万円
給与所得控除の最低保障額は、本則部分が65万円から69万円に引き上げられ、令和8年・9年分は特例として5万円が加算されるため74万円となります。給与収入220万円以下の区分が74万円となり、220万円を超える区分の給与所得控除額に改正はありません。
| 給与等の収入金額 | 令和8年・9年分 | 令和10年分以後 |
|---|---|---|
| 220万円以下 | 74万円 | 収入金額×30%+8万円(69万円未満となる場合は69万円) |
| 220万円超 | 改正なし | 改正なし |
家内労働者等の事業所得等の所得計算の特例についても、必要経費に算入する最低保障額が65万円から69万円に引き上げられました(令和8年分以後)。国税庁のQ&Aでも、配偶者や特定親族の合計所得金額を見積もる際の家内労働者等の最低保障額は69万円と示されています。給与所得控除の特例加算5万円は、この特例には上乗せされません。
課税最低限178万円の内訳
令和8年・9年分について、給与収入ベースの課税最低限178万円は次の内訳です。
- 基礎控除:104万円(本則62万円+特例42万円)
- 給与所得控除:74万円(本則69万円+特例5万円)
これにより従来の「160万円の壁」が「178万円の壁」に移動します。ただし合計所得金額が489万円を超える場合や給与以外の収入がある場合はこの計算がそのまま当てはまらないため、従業員への説明では「給与収入だけの人の目安」と前置きするのが正確です。178万円は所得税がかからない給与収入の目安であり、住民税や社会保険の基準とは一致しません。
なお令和8年・9年分については、給与収入が69万1,000円以上220万円未満の場合、給与所得の金額を表によらず次の金額とする特例が設けられています。国税庁が作成する「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」には、この特例が織り込まれています。
| 給与等の収入金額 | 給与所得の金額 |
|---|---|
| 69万1,000円以上74万1,000円未満 | なし |
| 74万1,000円以上219万1,000円未満 | その収入金額−74万円 |
| 219万1,000円以上219万3,000円未満 | 145万1,000円 |
| 219万3,000円以上219万6,000円未満 | 145万3,000円 |
| 219万6,000円以上220万円未満 | 145万6,000円 |
参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」問3-1
年末調整では改正後の「金額の表」を使う
給与所得控除の最低保障額の引上げに伴い、所得税法で定める令和8年分以後の「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」が改正されました。年末調整の税額計算では、必ず令和8年分の改正後の表を使用してください。国税庁が作成する表については、この改正と、前述した給与収入69万1,000円以上220万円未満の特例を加味した表とすることが示されています。給与計算ソフトの更新版がこの改正後の表に対応しているかを、年末調整の開始前に確認してください。
参考リンク:国税庁「令和8年分 年末調整のしかた」
なぜ12月にまとめて精算するのか
令和8年分の源泉徴収税額表には令和8年度改正分が入っていない
令和8年分の源泉徴収税額表は、令和7年度改正を反映して公表されています。ここで注意が必要なのは、令和7年度改正による基礎控除の特例加算(37万円・30万円・10万円・5万円)は令和8年分にも適用があり、この水準はすでに令和8年分の源泉徴収税額表に織り込まれているという点です。織り込まれていないのは、今回の令和8年度改正で拡充された分(本則62万円への引上げ、特例加算の42万円・5万円への差し替え、給与所得控除の最低保障額74万円)です。したがって令和8年1月から11月の月次源泉徴収は、今回の改正前の水準で計算した税額を天引きしている状態になります。
国税庁の資料では、この令和8年分の税額表を「改正前の『源泉徴収税額表』」と表記しています。令和8年11月までの給与の源泉徴収事務に変更は生じません。なお令和9年1月1日以後に支払うべき給与については、改正後の源泉徴収税額表を使用して源泉徴収税額を計算します。
参考リンク:国税庁「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A」問1-1・問4-1
12月の年末調整で精算する控除額の差
令和8年12月に行う年末調整では、改正後の控除額で計算した1年間の税額と、改正前の「源泉徴収税額表」によって徴収してきた税額を精算します。このとき効いてくる控除額の差は次のとおりです。
基礎控除
| 合計所得金額 | 改正前(令和8年分) | 改正後(令和8・9年分) | 差 |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 | 104万円 | 9万円 |
| 132万円超〜336万円以下 | 88万円 | 104万円 | 16万円 |
| 336万円超〜489万円以下 | 68万円 | 104万円 | 36万円 |
| 489万円超〜655万円以下 | 63万円 | 67万円 | 4万円 |
| 655万円超〜2,350万円以下 | 58万円 | 62万円 | 4万円 |
給与所得控除
最低保障額が65万円から74万円になるため、差は9万円です。ただしこれは給与収入220万円以下の人に生じる差で、給与収入が220万円を超える場合の給与所得控除額に改正はありません。
注意したいのは、改正前(令和8年分)の基礎控除額は本則58万円そのものではなく、本則58万円に令和7年度改正の特例加算(37万円・30万円・10万円・5万円)を加えた金額だという点です。したがって「本則の4万円+特例42万円」がそのまま精算対象になるわけではありません。課税最低限が160万円(95万円+65万円)から178万円(104万円+74万円)と18万円動くのも、基礎控除9万円と給与所得控除9万円の差によるものです。
参考リンク:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」1ページの基礎控除の表とその注2
多くの従業員で還付が発生する
月次で反映されていない控除を12月にまとめて精算するため、多くの従業員で還付が生じます。ただし還付額は合計所得金額の区分によって大きく異なります。控除額の増加が最も大きいのは合計所得金額336万円超489万円以下の層(基礎控除68万円→104万円で差36万円)で、132万円以下の層は基礎控除9万円+給与所得控除9万円で計18万円、489万円を超えると差は4万円にとどまります。同じ職場でも還付額に大きな差が出ることを、案内文で先に伝えておくと問い合わせを減らせます。
11月中に、還付原資の確保方法、12月給与への反映方法、預り金がマイナス残高になる場合の仕訳の3点を経理と決めてください。処理の具体例は「年末調整と給与計算の連携」の記事で解説しています。
12月に給与支払がない場合は年末調整で救えない
令和8年分の最後の給与を令和8年11月30日以前に支払った場合、その年末調整では改正後の控除は適用されません。この場合、本人が確定申告をすることで改正後の控除の適用を受けます。国税庁は、次のような人が該当し得るとしています。
- 年の中途で非居住者となった人
- 死亡により退職した人
- 休業・休職し、令和8年末までに復職していない人
- 年の中途で退職し、年末調整を受けていない人
年末で契約が終わる有期雇用者や、11月末で締める運用がある場合は特に注意が必要です。なお、11月30日以前に準確定申告書を提出していた場合は、令和8年12月1日から令和13年12月1日までの間に更正の請求を行うことで、改正後の控除の適用を受けられます。
給与計算の実務でやること
システムの更新時期を2つに分けて確認する
給与計算ソフトを利用している場合、確認すべき更新は2つあります。ひとつは令和8年12月の年末調整対応、もうひとつは令和9年1月以後の源泉徴収税額表への対応です。国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」では、令和9年分の源泉徴収税額表を令和8年8月末頃に国税庁ホームヘージへ掲載する予定と示されています。掲載後の税額表を入手し、年末調整と並行して翌年1月の月次計算の準備も進めてください。
参考リンク:国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」
検算のポイント
- 基礎控除額が合計所得金額の区分に応じて正しく適用されているか(489万円・655万円の境目)
- 還付額の水準が、合計所得金額の区分ごとの控除額の増加分と整合しているか(132万円以下は18万円、336万円超489万円以下は36万円など)
- 給与所得控除後の金額の表が令和8年分の改正後版になっているか
- 月次累計の源泉徴収税額と年税額の差額が、想定どおり還付側に振れているか
- 給与収入が69万1,000円以上220万円未満の従業員について、給与所得の金額が特例どおりに算出されているか
- 年末調整の対象外となる従業員(11月30日以前に最後の給与を支払った人など)を除外できているか
- 過納額を年末調整を行った月分の徴収税額から差引いても還付しきれない場合の取扱い(以後の月分から順次差引き、2か月を経過しても還付しきれない見込みなら所轄税務署へ還付請求書を提出)を確認できているか
システムで自動化できる範囲と、人が確認する範囲
給与計算ソフトが令和8年分の改正に対応すれば、基礎控除額の区分判定、改正後の金額の表による年税額の計算、12月給与への還付額の反映を自動で処理できます。一方で、従業員本人の合計所得金額の見積額、中途入社者の前職源泉徴収票の合算、最後の給与の支払日の確認は人が行う必要があります。
「今年は還付が多いのはなぜか」「毎月の手取りはなぜ増えないのか」という問い合わせに備え、月次は従来どおり、12月に精算という構造を、案内文とFAQに先に記載してください。
改正後の控除計算と源泉徴収簿・帳票作成をまとめて処理したい場合は、バクラク給与をご検討ください。料金や対応範囲の詳細はお問い合わせください。
よくある質問
Q.合計所得金額と給与収入はどう違いますか
A.給与収入は源泉徴収票の支払金額、合計所得金額はそこから給与所得控除を引いた後の金額に他の所得を加えたものです。基礎控除の区分判定(489万円・655万円)は合計所得金額で行います。
Q.基礎控除の区分判定はどの申告書で行いますか
A.「給与所得者の基礎控除申告書」の「判定」欄と「控除額の計算」欄で行います。この欄は令和8年分で改正後の金額に修正されるため、前年の様式を流用できません。
Q.合計所得金額が489万円をわずかに超える従業員への説明で注意点はありますか
A.特例加算が42万円から5万円に下がるため、還付額が同じ部署の他の従業員と大きく違います。区分の境目にあたる従業員を事前に抽出し、案内時に区分ごとの控除額を示してください。
Q.配偶者のパート収入も178万円を目安にしてよいですか
A.178万円は本人に所得税がかからない給与収入の目安です。扶養の判定は別の基準で、同一生計配偶者は合計所得金額62万円以下(給与収入136万円以下)で判定します。配偶者特別控除の対象となる配偶者は合計所得金額62万円超133万円以下(給与収入136万円超207万円以下)です。所得の下限はいずれも令和8年分から58万円超→62万円超に4万円引き上げられています(配偶者特別控除の上限133万円は据置き)。改正前の「合計所得金額58万円以下(給与収入123万円以下)」という基準は、扶養控除等の所得要件の改正が令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用される関係で、11月30日以前の源泉徴収事務にだけ残る数字です。年末調整の判定にそのまま使わないよう注意してください。社会保険の扶養(106万円・130万円など)はさらに別の基準です。
まとめ
令和8年分は、基礎控除104万円・給与所得控除74万円という拡充と、それを12月の年末調整でまとめて精算するという特殊な運用が組み合わさる年です。控除額の適用区分と、年末調整で反映すべき差額の内容を正しく押さえておけば、計算そのものは仕組みとして整理できます。
次にとる行動は1つです。合計所得金額が489万円・655万円の境目にあたる従業員を、前年の源泉徴収簿から10月中に抽出してください。
参考・出典
本記事は、国税庁が公表する一次情報にもとづいて作成しています。各セクションには根拠となる出典を確認日とあわせて記載しています。以下は本記事全体の主な出典です。制度の個別の当てはめについては、税理士・社会保険労務士または所轄税務署にご確認ください。
制度の根拠
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