「適格請求書発行事業者」とは?税務署への登録手続きと消費税納付の義務を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-09-06
2023年10月1日から、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が始まりました。適格請求書等保存方式(インボイス制度)の開始に伴い、さまざまな変更が発生しており、適切な対応が求められます。この記事では、適格請求書の発行者や適格請求書発行事業者の登録手続きなどについて解説するので、参考にしてください。
「適格請求書発行事業者」とは?税務署への登録手続きと消費税納付の義務を解説
「適格請求書発行事業者」とは
適格請求書発行事業者とは、適格請求書発行事業者の登録申請手続きを行い、納税地を管轄する税務署長の登録を受けた事業者を指します。適格請求書発行事業者として登録されると、適格請求書の発行が可能になります。なお、登録申請自体は個人でも法人でも可能で、最低限の条件を満たせば事業規模や売上高の上限は問われません。
「適格請求書発行事業者登録制度」とは
適格請求書発行事業者登録制度は、消費税の課税事業者が適格請求書発行事業者として登録されるための制度です。事業形態の種類は問わず、法人、個人事業主、フリーランスが対象になります。
しかし、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合、免税事業者となるため登録ができません。
免税事業者は、課税事業者選択届出書を提出し、課税事業者に変更してから登録申請する必要があります。
適格請求書発行事業者の登録手続き
適格請求書発行事業者として登録する場合の手続きについて解説します。具体的な手順とそれぞれの内容は以下の通りです。
1.登録申請書を作成する
まず、適格請求書発行事業者の登録申請書に必要な情報を記載します。登録申請書は国税庁のサイトからダウンロードすることが可能です。登録申請書は2枚に分かれており、それぞれ必要な情報の記載やチェックを行います。具体的な記載内容は以下の通りです。
1枚目 | ・提出日 ・所轄税務署 ・申請者住所 ・納税地 ・事業者名 ・代表者氏名 ・法人番号 ・事業者区分などの事業情報 ・マイナンバー(個人事業主の場合) |
2枚目 | ・上部(免税事業者の確認箇所) ・下部(登録要件の確認) |
2.税務署に申請書を提出する
登録申請書を税務署に提出します。税務署への提出方法は、以下の通りです。
- 管轄地域の税務署に直接提出する
- 管轄地域のインボイス登録センターへ郵送で提出する
- e-Taxで申請する
なお、e-Taxでの申請以外では本人確認書類を用意しなければなりません。本人確認書類として用意するものは、以下の通りです。
- マイナンバーカード
- 通知カードなどの番号確認書類と運転免許証などの身元確認書類のセット
- 各本人確認書類の写し
e-Taxで申請する際は、e-Taxソフトにアクセスし、マイナンバーカードを使ってログインします。利用者識別番号を取得したら、登録申請データを作成・送信しましょう。
3.審査・登録・公表が行われる
書類の提出が完了すると、税務署またはインボイス登録センターで審査が行われます。登録されると、登録簿に適格請求書発行事業者として記録された後、国税庁のインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトに公表されます。公表される内容は、以下の通りです。
- 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
- 登録年月日
- 法人(人格のない社団等を除く。)については、本店または主たる事務所の所在地
- 特定国外事業者(事務所、事業所等を国内に有しない国外事業者)以外の国外事業者については、国内において行う資産の譲渡等に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地
4.登録手続き完了の通知が来る
登録手続きが完了すると、完了した旨の通知が届くため確認しましょう。管轄地域の税務署に直接提出したり、郵送でインボイス登録センターに書類を提出したりした場合は、所轄地域の税務署から登録番号と登録手続き完了の通知が送られます。
なお、e-Taxでの申請の場合は、登録していたメールアドレスに登録通知データを確認するためのメールが届きます。
適格請求書発行事業者の登録をしない場合の注意点
適格請求書発行事業者に登録しないと、適格請求書の交付はできません。また、適格請求書がないと、取引先が仕入税額控除を受けられなくなります。結果的に取引先の税負担が増えるため、値下げを要求される可能性がある点には注意しましょう。
適格請求書発行事業者の義務
適格請求書発行事業者になると、いくつかの義務が課せられます。ここからは、具体的な内容とそれぞれの詳細を解説します。
適格請求書等を発行する
買い手側から適格請求書の発行を求められた場合、発行に対応しなければなりません。しかし、一定の条件を満たすと適格請求書を発行する必要がなくなります。たとえば、農業協同組合・漁業協同組合での取引や、3万円未満の公共交通機関の運賃などが該当します。
ただし、原則として適格請求書発行事業者として登録している状態で、適格請求書の発行を断るべきではありません。なぜなら、消費税法に抵触するためです。
発行した適格請求書等の写しを保存する
適格請求書を交付した場合は、一定期間その写しを保存することが求められます。具体的な条件は以下の通りです。
- 交付した日または提供した日を含む課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間保存する
また、電子データを用いて作成した適格請求書については、電子帳簿保存法に基づいた形での保存も必要になります。
参考:電子帳簿保存法 電子取引データの保存方法をご確認ください|国税庁
消費税を納税する
適格請求書発行事業者として登録できるのは課税事業者のみなので、消費税の納税義務が課せられます。消費税の課税方式は以下の通りです。
課税方式 | 対象となる事業者 | 納税額の計算方法 |
本則課税 (一般課税) | すべての事業者 | 納税額 = 売上税額 – 仕入税額 |
簡易課税 | 基準期間の課税売上額が5,000万円以下で、かつ「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出した事業者 | 納税額 = 売上税額 – 売上税額 × みなし仕入率 |
2割特例 | 適格請求書発行事業者に登録し、免税事業者から課税事業者になった事業者 | 納税額 = 売上税額 × 20% |
まとめ
2023年10月1日から始まった適格請求書等保存方式(インボイス制度)に伴い、経理業務でさまざまな変更や対応が求められています。そのため、専用システムを活用して経理業務を正確かつ効率的に行うことが推奨されます。
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