インボイス制度が一人親方に与える影響とは?対応策・注意点についても解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-06-04
- この記事の3つのポイント
- インボイス制度は、消費税の仕入税額控除を適正に行うために導入された仕組みである
- 一人親方は取引先からインボイスの交付を求められたり、契約見直しを迫られたりする可能性がある
- インボイス制度では、請求書や経理処理が煩雑になるため事務負担の増加にも備えることが必要
2023年10月より始まったインボイス制度により、一人親方にも取引先対応や経理処理に大きな影響が生じています。
本記事では一人親方が取るべき対応策や注意点、さらに業務負担を軽減する方法について解説します。
インボイス制度の概要を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:インボイス制度とは?意味や概要、対象となる事業者への影響を図解でわかりやすく解説
インボイス制度が一人親方に与える影響とは?対応策・注意点についても解説
そもそもインボイス制度とは?
インボイス制度とは2023年10月から、消費税の仕入税額控除を正確に行うために導入された制度です。インボイスは「適格請求書」と呼ばれ、一定の要件を満たす請求書や領収書などの証憑書類を指します。
インボイスを発行するためには「適格請求書発行事業者」の登録が必要です。また発行の際には、以下の記載が義務付けられています。
- 事業者名および登録番号
- 取引年月日
- 取引内容
- 税率ごとの金額・税額
- 受領者名など
なお適格請求書発行事業者に登録しなければ、免税事業者として消費税の納税義務はありません。登録すれば課税事業者となり、消費税を納めることが必要です。免税事業者と課税事業者の違いについては、次章で詳しく説明します。
インボイス制度について詳しくは以下のページで解説しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:インボイス制度とは?意味や概要、対象となる事業者への影響を図解でわかりやすく解説
課税事業者と免税事業者の違い
課税事業者とは、消費税を納める義務がある事業者のことです。課税事業者は、基準期間や特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、または適格請求書発行事業者として登録した場合に該当します。
個人事業主の場合の期間は下記のとおりです。
- 基準期間:前々年の1月1日から12月31日まで
- 特定期間:前年の1月1日から6月30日まで
インボイス制度に関係なく、課税売上高が一定額を超えると自動的に課税事業者となりますが、適格請求書を発行するには、別途課税事業者への登録をしなければなりません。
一方で免税事業者は上記の条件に当てはまらず、消費税の納税義務が免除されている事業者です。免税事業者である場合、取引先から敬遠されるリスクもあるため注意が必要です。
課税事業者と免税事業者については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
インボイス制度が一人親方に与える影響
2023年10月にスタートしたインボイス制度は、建設業などで働く一人親方にも大きな影響を与えています。特に免税事業者である場合、取引先との関係に影響を及ぼす可能性もあります。
ここからは、インボイス制度が一人親方に与える具体的な影響について見ていきましょう。
取引先からインボイスの交付を求められる可能性がある
相手先が課税事業者である場合、仕入税額控除を受けるためにインボイスの交付を求められます。
適格請求書を発行できない免税事業者のままでいると、取引先に不利益が生じるため、インボイスの発行を希望される場面が増えるでしょう。
これまでどおりの関係を続けたいのであれば、適格請求書発行事業者への登録申請を行い、インボイス登録事業者になる選択が無難といえます。
取引先からの仕事が減少する可能性がある
企業から下請けとして仕事を受注している一人親方で、インボイス対応ができない場合は、仕事が減少するリスクがあることを考えなければいけません。
インボイスを発行できない免税事業者との取引では、取引先が仕入税額控除を受けられず、実質的に税負担が増えてしまうためです。
現在は経過措置により、2026年9月までは80%、2029年9月までは50%の仕入税額控除が認められていますが、最終的には控除ができなくなります。取引先が免税事業者との取引を減らす可能性は高まるでしょう。
また取引を継続できた場合でも、取引条件の見直しや価格交渉を求められることも考えられます。
新規の取引先の開拓が難航する可能性がある
免税事業者の場合、新たな取引先の開拓に難航する可能性があります。免税事業者の一人親方に仕事を依頼すると、取引にかかる消費税が仕入税額控除の対象外となり、取引先の負担が増えるためです。
特に新規案件では、インボイス対応を求める企業が増えているため、登録の有無が取引可否に直結するケースも見られます。
インボイス制度に対して一人親方が取るべき対応策
インボイス制度の導入により、一人親方も取引先との関係や、今後の働き方を見直す必要が出てきました。免税事業者、課税事業者それぞれの立場によって、取るべき対応策は異なります。
ここからは、インボイス制度への対応策をパターン別にわかりやすく解説します。
免税事業者の場合
まず免税事業者の場合、適格請求書発行事業者になるかどうかを検討することが必要です。インボイスを発行できなければ、取引先が仕入税額控除を受けられず、取引継続に支障が出る恐れがあるためです。
たとえば主な取引先が課税事業者であり、インボイスを必要とする場合、自身も適格請求書発行事業者として登録しなければ、今後の仕事量や契約条件に影響が及ぶ可能性があります。
免税事業者の一人親方は取引先の要望を確認したうえで、必要に応じて課税事業者に変更し、適格請求書発行事業者の登録申請を行いましょう。
課税事業者の場合
課税事業者であっても、インボイス発行をする義務はありません。なぜならインボイス発行はあくまで事業者の任意であり、状況に応じた判断が求められるためです。
たとえば主な取引先がインボイスを必要としない場合や、取引先の多くが消費者である場合は、無理に登録しないという選択肢も考えられます。
適格請求書発行事業者になる場合は、以下の必要な対応を確実に進めましょう。
- 登録申請
- 売上先への通知
- インボイスの発行・保存
- 仕入書類の管理など
取引先や事業スタイルを踏まえ、インボイス登録の要否を検討することが重要です。
インボイス制度で一人親方が注意すべきポイント
インボイス制度に対応するにあたり、一人親方は特に注意すべきポイントを知っておかなければなりません。ここからは、見落としやすい重要な注意点について解説します。
適格請求書発行事業者になると消費税の納税が義務付けられる
適格請求書発行事業者になると、消費税の納税義務が発生します。
たとえば年商1,000万円以下など免税事業者の要件を満たしていた一人親方であっても、インボイス登録を行えば、課税事業者に切り替わり消費税を納めなくてはなりません。
その結果、これまでと同じ売上規模では手取りが減少する可能性があるため、消費税分を考慮した取引額の交渉や、仕事量の検討が必要です。適格請求書発行事業者となる際は、この点をしっかり理解したうえで判断しましょう。
経理処理が大きく変わり煩雑になる
インボイス制度に対応する課税事業者になると、経理処理がこれまでより格段に複雑になる点も、注意するポイントです。煩雑になる理由は、インボイス要件を満たした請求書や領収書の保存、記帳作業、税額計算など、事務作業が大幅に増えるためです。
たとえば取引ごとに適格請求書かどうかを区別し、帳簿への正確な記載と保存が求められるようになります。
適格請求書発行事業者の登録や義務については、以下の記事で詳しく解説しています。
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インボイス制度は、消費税の仕入税額控除を適正に行うために導入された仕組みです。インボイスを発行するには事業者登録が必要で、免税事業者か課税事業者かによって対応が異なります。
一人親方は取引先の要望に応じて、課税事業者・適格請求書発行事業者になるかを検討することが必要です。課税事業者でも、インボイス登録の有無は慎重に判断しなければなりません。
また、インボイス対応により経理処理が煩雑になる点に注意が必要です。手作業はミスや負担増のリスクを伴うため、請求書処理の自動化が有効な対策です。
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