経費精算における消費税の扱いは?軽減税率・インボイス制度の導入で変わる経費処理のポイント

経費精算を行う際に、消費税の扱いが複雑で間違いやすいと感じていませんか?特に軽減税率やインボイス制度への対応が必要となり、経理業務に負担が増えているのではないでしょうか。

適切な経理処理を行うには、軽減税率やインボイス制度の概要や消費税の仕入税額控除などの正しい理解が重要です。

この記事では、経費精算における消費税の基本的な扱い方や軽減税率の導入による変化、インボイス制度への対応方法などを詳しく解説します。

経理の担当経験が浅い方向けの「虎の巻」

経理担当に役立つエクセルの関数・ショートカット集と、多用される勘定科目の一覧を収録しています。ChatGPTで活用できるプロンプト集も付録。

経費精算における消費税の扱いは?軽減税率・インボイス制度の導入で変わる経費処理のポイント

経費精算における消費税の扱い

経費精算で消費税はどのように扱われているのでしょうか。ここでは、経費精算における消費税の扱いについて解説します。

仕入税額控除による二重課税の防止

消費税の二重課税を防ぐための仕組みとして、仕入税額控除があります。売上時に預かった消費税から、仕入れ時に支払った消費税を引く方法です。ただし、仕入税額控除をするには条件があります。具体的には、適格請求書発行事業者の登録申請をした課税事業者で、売り手からインボイス(適格請求書)が発行されていることです。

一定の条件を満たすと免除される

一定の条件を満たす場合、消費税を納める義務が免除されます。消費税を納めなくてもいい事業者は、免税事業者と呼ばれています。免税事業者になる条件は、課税期間の基準期間中において、課税売上高が1,000万円以下であることです。

ただし、基本の条件を満たしている場合でも、特定期間の課税売上高または給与の支払額が1,000万円を超えていれば納税の義務が生じます。免税事業者に該当するかどうか、慎重な判断が必要なケースもあります。

軽減税率とインボイス制度の導入で変わる経費処理

軽減税率とインボイス制度の導入により、経費処理に大きな変化が生じました。

2019年に導入された軽減税率では、標準税率10%に対して、一部の飲食料品や新聞のみ8%の税率が適用されます。これにより、日常的な取引で8%と10%の消費税が混在し、経理処理が複雑化しています。
一方、インボイス制度は、2023年に始まった消費税の仕入税額控除の仕組みです。
適格請求書(インボイス)の発行・保存で、控除が受けられます。なお、適格請求書を発行できるのは、課税事業者のみです。

ここでは、軽減税率とインボイス制度の導入による経費処理の変化を解説します。

税率区分の記載が必要

軽減税率の導入前は、すべての取引で8%の消費税が適用されていたため、経費処理時には消費税がかかるかどうかを確認するだけで十分でした。
しかし、軽減税率の導入後は、購入した品目ごとに8%か10%のどちらが適用されるかを確認し、経費処理の際には税率ごとの正確な記録が必要になりました。
これまでのように一律で処理するのではなく、消費税がかかる品目が軽減税率の対象かどうかを確認し、正確な税率を記帳する必要があります。

たとえば、同じ接待交際費でも、軽減税率適用のものと標準税率適用のものを区別して仕訳しなければなりません。

仕入税額控除を受けるには経費処理時にもインボイスへの対応が必要

インボイス制度の導入により、経費処理の際には、仕入先からの適格請求書の取得が必須となりました。

適格請求書には、発行事業者の登録番号や取引内容、税率ごとの金額、消費税額が正確に記載されていなければなりません。記載内容が正しくない場合、仕入税額控除を受けられず、企業にとって大きな税負担となる可能性があります。

また、3万円未満の取引でも、仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書が必要です。ただし、公共交通機関の利用や自動販売機での購入など特定の取引に限り、帳簿のみでの保存が認められる場合があります。

▼インボイス制度が経費精算に及ぼす影響については、以下の記事で詳しく解説しています。

インボイス制度が経費精算に及ぼす影響とは?領収書の取り扱いの変更点や注意点を解説!

経費精算時の税区分の理解

消費税の経費精算を正確に行うためには、取引ごとの税区分を正しく理解し、記帳することが重要です。

ここでは、税区分の概要や分類、選び方を詳しく解説します。

税区分とは

税区分とは、消費税にかかわる商品やサービスの取引を分類するための基準です。消費税は国内取引に適用され、課税取引、不課税取引、非課税取引、免税取引の4つに区分されます。

税区分は、取引の種類と税率を組み合わせて記載するのが一般的です。

たとえば、イートインの売上には10%の消費税が課されるため、「課税売上10%」と記録します。一方で、テイクアウトの場合は軽減税率8%が適用されるため、「課税売上8%」と区分します。

税区分を正確に行う重要性

正しい税区分の設定は、消費税の確定申告の際に重要です。

先述したように、たとえば、カフェでのイートイン売上には10%の消費税が適用され、テイクアウトには8%の軽減税率が適用されます。万が一、テイクアウトの税区分を誤って10%として申告すると、消費税を多く納税する可能性があります。

申告の修正には、「更正の請求書」を税務署に提出し、説明資料を添付しなければなりません。確定申告の提出が遅れると、還付金の遅延や無申告加算税、延滞税が発生するリスクがあるため、慎重な帳簿付けが重要です。

経費精算での税区分の分類

先述のとおり、消費税は課税取引と不課税取引、非課税取引、免税取引の4つに区分され、取引の内容や課税方式により区分が決まります。

それぞれの税区分の概要は以下のとおりです。

取引区分内容
課税取引

国内で事業者が対価を得て行う取引を指し、消費税の課税対象となります。

以下4つの要件をすべて満たす取引が該当します。

・国内で行う取引

・事業者が事業として行う取引

・対価を得て行う取引

・資産の譲渡※1、貸付※2、または役務(サービス)提供※3

不課税取引

課税取引の要件を満たさない取引を指します。

たとえば、以下のようなものが該当します。

・国外での取引

・給料

・寄付金

・保険金

・共済金 など

非課税取引

課税取引の要件を満たしているものの、取引の性質や社会的配慮から消費税が課されない取引を指します※4。

たとえば、以下のようなものが該当します。

・土地の譲渡や住宅の貸与

・金券や有価証券の譲渡

・社会保険診療 など

免税取引

おもに輸出取引に適用され、国外の事業者への商品販売やサービス提供が該当します。

免税取引を適用するには、輸出許可書や取引が輸出取引等である証明ができる書類を納税地等に7年間保存する必要があります。

※1 「資産の譲渡」とは、「商品の販売」「商品の購入」などの取引

※2 「資産の貸付」とは、「土地を貸す」「建物を貸す」などの取引

※3 「役務(サービス)の提供」とは、「工事」「飲食」「士業」「宿泊」などの取引

※4 「非課税取引」の詳細は国税庁No.6201 非課税となる取引 – 国税庁をご確認ください

税区分について

取引内容や課税方式によって、適切な税区分を選ぶ必要があります。

内容に関しては複雑であるため、最終的な判断や詳しい要件については、税務署や税理士に確認することをおすすめします。

消費税の会計処理を行う際の注意点

申告の誤りや税負担の増加を防ぐためにも、以下では消費税の会計処理を正確に行うための注意点を4つ紹介します。

消費税は租税公課でのみ経費計上可能

消費税の会計処理には、「税込経理方式」と「税抜経理方式」の2つの方法があります。

税込経理方式では、消費税を含めた金額で収入や経費を処理し、消費税は勘定科目の「租税公課」で経費として計上可能です。租税公課とは、事業税、固定資産税、自動車税、不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金をいいます。

一方、税抜経理方式では、消費税を分けて処理するため、経費として計上できません。

したがって、消費税を経費に計上したい場合は、税込経理方式を採用する必要があります。

インボイスと非インボイスを区別して会計する

インボイス制度の導入により、適格請求書と通常の請求書を区別して会計処理をする必要があります。

加えて、8%と10%の消費税率も取引ごとに区別する必要があるため、正確かつスムーズな会計処理には業務フローやシステムの整備が欠かせません。

インボイス経過措置期間が過ぎたら負担割合が変わる

インボイス制度導入後、課税事業者の納税負担を軽減するための経過措置が設けられています。

この措置では、課税仕入れに対する控除割合が3年ごとに変わり、2023~2026年までは80%、2026~2029年までは50%の控除が認められます。

ただし、2029年10月以降は経過措置が終了し、控除が完全に廃止されます。適格請求書発行事業者以外からの仕入れに対する消費税額控除ができなくなるため、注意が必要です。

インボイス対応の領収書がない取引は消費税の控除ができない

これまでは、3万円未満の取引であれば、領収書がなくても帳簿への記帳だけで控除が可能でした。しかし、今後はインボイス制度に対応した領収書を確実に受け取らなければ、消費税の全額控除ができなくなります。

まとめ:複雑な経費精算はAIに任せよう

消費税の経費精算は、軽減税率やインボイス制度の導入により、より複雑になりました。

正しく消費税を計算するには、適格請求書の管理や税率ごとの仕訳など、新たなルールへの適応が必要です。

今回解説した内容を参考にしながら、正しい理解のもとで経費精算を進めてください。

AIで入力レスな経費精算「バクラク経費精算」は、申請者や経理担当者のミスを防止する機能があるシステムです。インボイス制度や電子帳簿保存法に対応しており、経費申請の全体の流れを効率化できます。複雑な経費精算をスムーズに進めやすくなるため、ぜひご活用ください。

AIが大量の領収書を秒速処理する「バクラク経費精算」

パソコン、スマホから手軽に経費精算が可能。領収書をアップロードするとデータが自動入力されるので、原本の回収・ファイリングが不要に。手間のかかるインボイス制度・電子帳簿保存法にも対応しています。簡単で正確な経費精算を実現するツールをぜひご体感ください。