収入印紙の経費計上方法は?勘定科目や購入・ストック・決算など仕訳例を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2024-12-09
契約書や領収書などの課税文書には、収入印紙を貼付する決まりがあります。しかし、収入印紙関連の経費計上方法がわからず、困っている人も多いのではないでしょうか。購入後、ただちに使用するかストックするかで、収入印紙の経費計上方法は変わるため、注意が必要です。この記事では、収入印紙の勘定科目や具体的な仕訳例を解説します。ぜひ参考にしてください。
▼収入印紙については、以下の記事で詳しく解説しています。
収入印紙を経費計上するときの勘定科目
購入後、ただちに使用するかストックするかで、選ぶべき勘定科目は変わります。
購入後ただちに使用するときは租税公課
購入後、ただちに収入印紙を使用するときは、印紙税を納めたことになるため「租税公課」として経費計上します。
ただし、租税公課には経費として認められないものもあるので、該当するかどうかは都度確認が必要です。
ストックするときは貯蔵品
購入した収入印紙をストックする場合は、「貯蔵品」の勘定科目を使用します。
通常、収入印紙や各種消耗品は購入時点で費用として経費計上しますが、期末までに使用しないケースもあるでしょう。未使用の収入印紙は、企業にとってまだ使用できる資産です。決算時に未使用の収入印紙は貯蔵品として資産に振り替えることになります。
しかし、収入印紙や消耗品を一つずつ管理して、振り替える処理を行うのは大変です。そのため、継続的に購入・消費するものは、購入後ストックする場合でも貯蔵品の勘定科目で経費計上が可能とされています。
未使用分を決算時に「貯蔵品」へ振り替える理由
租税公課で経費計上した未使用の収入印紙を決算時に貯蔵品に振り替えるのは、不適切な経費計上を防ぐためです。
貯蔵品に振り替えずに計上すると、未使用分の金額が損益計算書に反映されます。これでは利益を正確に算出できません。決算前に、必要以上に収入印紙や郵便切手を購入して経費計上する企業が出てくる可能性もあり、脱税行為にもつながります。
そのため、収入印紙の未使用分は、決算時に貯蔵品へと振り替えなければなりません。翌年度以降に使用した場合は、費用として処理されることになります。
収入印紙の経費計上に関する注意点
収入印紙の経費計上に関する注意点を解説します。金券ショップで購入した際の消費税や、雑費で計上するリスクなどに注意してください。
金券ショップで購入すると課税される
収入印紙は基本的に非課税ですが、金券ショップで購入した場合は、消費税の課税対象となるため注意しましょう。金券ショップを使えば収入印紙の購入費用を抑えられますが、仕訳が複雑化します。なお、課税事業者の立場からすると、課税仕入として収入印紙を購入することは消費税の節税につながります。
雑費では計上しない
「雑費」は、どの勘定科目にも該当しない支出を経費計上するときに使用される勘定科目です。収入印紙には租税公課や貯蔵品という勘定科目が割り当てられるため、雑費にはあたりません。仕訳で雑費を乱用すると、取引の内容がわからなくなり税務調査で指摘を受ける恐れもあります。収入印紙関連に限らず、むやみに雑費で経費計上することは控えましょう。
印紙の受け払い簿を整備する
受け払い簿とは、収入印紙の日々の購入や使用状況を記録する帳簿のことです。受け払い簿を活用すると、誰がいつ、いくらの収入印紙を使用したのか把握しやすくなるため、仕訳のミスを減らせます。
また、税務調査では「未使用の収入印紙の金額」と「会計上の貯蔵品の残高」が一致しているかを確認されることがあります。その際に、受け払い簿の提出を求められることがあるため、作成・整備しておくとよいでしょう。
受け払い簿の一般的な記載項目はこちらです。
- 購入時:購入日時、印紙種別、枚数、金額など
- 使用時:使用日時、使用者、使用目的、印紙種別、枚数、金額など
収入印紙の管理を徹底する
収入印紙は原則、払い戻しや返品ができません。しかし、金券ショップに持っていくと換金してもらえるため、換金性のある資産といえます。特に、建設業や不動産業などの高額な取引では収入印紙の金額も大きくなりやすいため、盗難や紛失がないような管理体制が必要です。以下は管理体制の一例です。
- 施錠可能な場所に保管する
- 実在庫と帳簿の枚数にずれがないかを定期的に確認する
- 取扱者を限定し、不特定多数が触れられないようにする
また、印紙税の処理は税務調査において、指摘を受けやすい項目です。適切な会計処理や盗難・紛失などのリスクの観点からも、収入印紙の管理を徹底することが重要になります。
【具体例】収入印紙をただちに使う目的で購入し「租税公課」で経費計上する方法
ここでは、収入印紙をただちに使う目的で購入した場合の経費計上方法を紹介します。また、使用しきれずに在庫を残したまま決算を迎えた場合も、あわせて解説します。
非課税で購入したとき
「法務局で200円の収入印紙を50枚購入し、1万円を現金で支払ったあと、すべての収入印紙を使用した」場合は、以下のように記帳します。
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
購入したものを即座に使用しているため、印紙税を納めたとして租税公課で経費計上します。
金券ショップで購入したとき
「金券ショップで400円の収入印紙を10枚購入し、現金で3,920円支払ったあと、すべての収入印紙を使用した」と仮定しましょう。消費税率は8%です。
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 3,630円 | 現金 | 3,920円 |
仮払消費税 | 290円 |
租税公課として記帳する点は、購入場所を問わず同じです。ただし、金券ショップでの購入は課税取引となるため、仮払消費税を計上する必要があります。
決算時に在庫が残っていたとき
「法務局で200円の収入印紙を50枚購入したが、決算時に4枚残っていた」場合は、在庫分を租税公課から貯蔵品へと振り替える必要があります。
借方 | 貸方 | ||
貯蔵品 | 800円 | 租税公課 | 800円 |
翌期に繰り越したとき
「前期に在庫を確認した200円の収入印紙4枚分を、今期に繰り越した」場合は、以下のように記帳します。
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 800円 | 貯蔵品 | 800円 |
決算でいったん貯蔵品に振り替えたものの、翌期には租税公課に戻している点がポイントです。
【具体例】収入印紙をストックするため「貯蔵品」で経費計上する方法
以下では、購入した収入印紙をただちに使わず、貯蔵品としてストックする際の経費計上方法を解説します。
購入後ストックしたとき
「法務局で200円の収入印紙を100枚購入し、現金で2万円支払ったあとストックした」場合は、以下のように記帳します。
借方 | 貸方 | ||
貯蔵品 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 |
収入印紙を使っていないため、貯蔵品として記帳します。金券ショップで購入した場合は、消費税分を「仮払消費税」の勘定科目で借方に計上しましょう。
収入印紙を貼付した文書を交付したとき
上記のように「200円の収入印紙が100枚ストックされている状態」で「1枚を契約書に貼付して交付した」としましょう。この場合は、以下のように記帳します。
借方 | 貸方 | ||
租税公課 | 200円 | 貯蔵品 | 200円 |
使用するタイミングで、貯蔵品から租税公課に勘定科目を変更してください。
決算時に在庫が残っていたとき
最初から貯蔵品として記帳しているため、決算時の経費計上は不要です。また、使用した収入印紙についても、すでに租税公課として記帳済みのため追加で処理をする必要はありません。
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収入印紙は、購入後ただちに使用する場合は「租税公課」、ストックする場合は「貯蔵品」の勘定科目で経費計上します。租税公課で経費計上したにもかかわらず、決算時に未使用の在庫があった場合は貯蔵品に振り替えましょう。
また、収入印紙は購入場所によって課税対象かどうかが異なります。基本は非課税になりますが、金券ショップで購入したものに対しては消費税が発生します。非課税の場合とは仕訳方法が異なるため、注意して経費計上してください。
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