所得税は年収いくらから発生する?計算方法・税率についても紹介
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-06-12
- この記事の3つのポイント
- 所得税は収入から控除分を引いて算出する。会社員は年収103万円を超えると所得税がかかる
- 所得税の課税対象は、個人事業主の場合課税所得48万円超、パートなどは年収103万円超
- 所得税は正しく申告・納付しなければならず、できていない場合には罰則が科せられる場合がある
所得税は私たちの収入に深く関わる税金ですが、仕組みが複雑で、働き方によっていくらから発生するかも異なるものです。
本記事では、所得税の基本的な仕組みや、具体的な計算方法をわかりやすく解説します。さらに、確定申告が必要になるケースや、所得税を抑えるための方法についても詳しく紹介します。
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関連記事:インボイス制度とは?意味や概要、対象となる事業者への影響を図解でわかりやすく解説
所得税は年収いくらから発生する?計算方法・税率についても紹介
所得税とはどのような税金か
所得税とは、個人の1年間の所得に対して課される税金です。所得とは、収入から必要経費などを差し引いた金額を指します。
所得税は、国税の中でも特に重要な基幹税の一つとされており、国は徴収した税金によって財源を確保し、公共サービスなどを提供しています。
会社員やパート・アルバイトの場合は、勤務先の会社が所得税の納付を代行する「源泉徴収制度」を採用しているのが一般的です。一方で個人事業主は、自分で所得を計算し確定申告を通じて納税します。
参考:国税庁「所得税のしくみ」
源泉徴収制度については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
所得税の計算方法・税率
所得税が実際にいくらになるのかは、計算方法と税率によって決まります。基本的な計算式は以下のとおりです。
(年間の総所得金額-所得控除額)×所得税の税率- 税額控除額
所得税を算出するには、計算式に出てくる「年間の総所得金額」などを順番に求める必要があります。ここからは、所得税を計算する具体的な手順を詳しく解説します。
年間の収入から経費・給与所得控除を差し引く
年間の総収入から、収入を得るためにかかった費用を差し引くのが、所得税計算の最初のステップです。
個人事業主であれば、事業を運営するために支出した仕入代金、事務所の家賃、光熱費などの「経費」を1年間の総収入から差し引きます。
一方、会社員やパート・アルバイトなど給与所得者の場合は、収入金額に応じて一定額が自動的に控除される「給与所得控除」という仕組みを採用します。
給与所得控除額は、年収が高くなるほど控除額も大きくなるのが一般的です。個人事業主か、給与所得者かによって計算方法は異なりますが、まずは収入から経費や給与所得控除を引く計算から始めましょう。
参考:国税庁「No.1410 給与所得控除」
所得控除を差し引く
続いて、2-1で算出した所得金額から、さらに「所得控除」を差し引きます。所得控除は、納税者の個人的な事情を税負担に反映させる制度です。
所得控除の代表的なものに「基礎控除」があります。基礎控除とは、納税者本人に一律で適用される控除です。
また、社会保険料控除は、納税者や生計を同一にする家族のために支払った、健康保険料や国民年金保険料の全額を適用できる控除です。
そのほか、生命保険料控除、医療費控除、扶養控除、寡婦控除など、個々の状況に応じた所得控除が複数存在します。所得控除を適用すると、課税対象となる所得金額をさらに減らせるでしょう。
参考:国税庁「No.1100 所得控除のあらまし」
所得税の税率をかける
所得控除を差し引いた後の金額(課税所得金額)が確定したら、次のステップです。課税所得金額に所得税の税率を乗じます。なぜなら、日本の所得税は、所得が多くなるほど税率も高くなる「累進課税制度」を採用しているためです。
具体的な税率は、課税所得金額に応じて段階的に設定されています。以下は課税所得税率の速算表を示します。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率 計算方法・計算式 平成27年分以降」
2037年までは、所得税額に2.1%の復興特別所得税が上乗せされる点も覚えておきましょう。
参考:国税庁「No.2260 所得税の税率」
税額控除があれば差し引く
最終ステップとして、前章で計算した所得税額から、適用できる「税額控除」があれば差し引いてください。
代表的な税額控除には、住宅ローンを利用してマイホームを取得したり、増改築したりした場合に受けられる「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」があります。
また、配当所得がある際の配当控除や、外国で納税した場合の外国税額控除などが存在します。税額控除を適用した後の金額が、実際に納付すべき所得税の確定額です。
残業時間の概要や計算方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:時間外労働とは?定義や法改正された上限規制内容、計算方法を解説
所得税は年収いくらから発生する?
所得税がかかり始める年収のラインは、働き方によって異なります。なぜなら、会社員、アルバイト・パート、個人事業主では、収入の計算方法や適用される控除が違うためです。
働き方ごとに、所得税が発生する年収の目安を見ていきましょう。
会社員
会社員の場合、給与所得者に適用される控除額が関係しているため、年収が103万円を超えると所得税が発生します。
会社員の所得税計算では、まず収入から「給与所得控除」を差し引かれます。年収が162万5,000円までの場合、給与所得控除額は最低55万円です。
さらに、納税者本人に一律で「基礎控除」が適用されます。合計所得金額が2,400万円以下であれば、基礎控除額は48万円です。
二つの控除額を合計すると「55万円(給与所得控除) + 48万円(基礎控除) = 103万円」となる計算です。
したがって、年収が103万円を超えない限り、課税される所得が発生せず、所得税はかかりません。年収が103万円を超えた部分に対して、所得税率がかかることになるのです。
アルバイト・パート
アルバイトやパートでは、月収が88,000円を超えると、給与から所得税が天引きされます。雇用主が概算で所得税を預かる「源泉徴収」の仕組みによる徴収です。
ただし、毎月所得税が引かれているからといって、必ずしも年間の所得税が発生するわけではありません。前述のとおり、年収103万円以下であれば、給与所得控除と基礎控除により、最終的に所得税はかかりません。
月収88,000円を超えた月に所得税が源泉徴収されていても、年間の合計収入が103万円以下であれば、年末調整を通じて天引きされた所得税は全額還付されます。年間収入の見込みを立てておくのが大切でしょう。
個人事業主
個人事業主で所得税が発生するのは、原則として年間の「所得」が48万円を超えたときです。個人事業主の所得とは、年間の総収入から事業に必要な経費を差し引いた金額を指します。
個人事業主の所得税は「(総収入-必要経費)-各種所得控除」で計算された課税所得に税率をかけて算出します。所得控除の中でも、合計所得金額が2,400万円以下である場合に適用されるのが48万円の「基礎控除」です。
つまり、収入から経費を引いた所得が48万円以下であれば、基礎控除によって課税所得がゼロ以下となり、所得税は発生しません。
ただし、所得48万円以下とは、基礎控除のみを考慮した場合です。社会保険料控除や生命保険料控除など、他の所得控除を適用できる場合は、所得税が課税され始める所得金額のラインが48万円よりもさらに高くなるのです。
結果として、控除額の分だけ、より多くの所得があっても所得税がかからないケースが生じます。
所得税の確定申告が必要になるのはいくらから?
所得税を正しく計算し納付するために、一定の条件に該当する人は「確定申告」を行う必要があります。確定申告とは、1年間の所得と税額を計算し、税務署に申告・納税する手続きです。
個人事業主やフリーランスで働く人は、年間の合計所得金額が基礎控除額(通常48万円)を超える場合、原則として確定申告が義務付けられています。
一方、会社員は基本的に年末調整で所得税の精算が完了します。しかし、給与所得以外の副業による所得(収入から経費を引いた額)が年間20万円を超える場合は、確定申告が必要です。
また、医療費控除や寄付金控除などを受けたい場合も、確定申告を行ってください。
参考:国税庁「確定申告が必要な方」
103万の壁は160万に引き上げられる
2025年3月31日に成立した税制改正により、年収103万円の壁は160万円に引き上げられることが正式に決定しました。改正は2025年12月の年末調整から適用されます。
この税制改正は、配偶者の年収が103万円を超えると扶養から外れ、世帯全体の手取り収入が減少してしまう、といった状況の改善が目的です。
年収103万円を意識して働く時間を調整する「働き控え」が課題となっていました。しかし、年収が160万円まで引き上げられることで、より多くの人が就業時間を気にせず働けるようになると期待されています。
他にもある年収の壁
所得税がかかるかどうかの「103万円の壁」以外にも、働き方や手取り収入に影響を与える可能性のある「年収の壁」がいくつか存在します。年収の壁がもたらす影響を詳しく見ていきましょう。
106万の壁
年収106万円は、パートなどが社会保険に加入する義務が発生するかどうかの目安となる金額です。
一定の条件を満たし、年収106万円を超えると、社会保険への加入が義務付けられます。毎月の給与から厚生年金保険料と健康保険料が天引きされるため、手取り収入が減少することになるでしょう。ただし、将来受け取る年金額が増えるなどのメリットも存在します。
なお「年収106万円」という基準は2026年10月に撤廃される予定です。しかし、社会保険への加入要件である「週20時間以上の勤務」など、撤廃されない条件もあるため注意しましょう。
130万の壁
年収130万円の壁とは、配偶者の社会保険の扶養に入れるかどうかの境目となる金額です。年収が130万円を超えると、原則として配偶者が加入している勤務先の健康保険や、厚生年金の扶養家族から外れます。
扶養から外れた場合、国民健康保険や国民年金の保険料を全額自己負担で支払わなければなりません。前述の「106万円の壁」による勤務先の社会保険加入の条件に該当しない人であっても同様です。
150万の壁
年収150万円は「配偶者特別控除」の満額適用に関する壁です。納税者本人の所得税を計算する際、生計を一にする配偶者の所得に応じて受けられる所得控除の一つに配偶者特別控除があります。
配偶者特別控除は、配偶者の年収が150万円を超えると、年収に応じて控除額が段階的に減額されていく仕組みです。
たとえば、配偶者の年収が150万円以下ならば、満額の38万円が控除されます。配偶者の年収が201万6,000円を超えると、配偶者特別控除の額はゼロになります。
年収150万円を超えた時点から、納税者本人の所得税負担が徐々に増え始めるため、世帯全体の手取りを考える上で、150万円も一つの壁となるでしょう。
所得税を正しく納税できていないとどうなる?
所得税を正しく、期限内に納税できていない場合、法律に基づいた厳しい罰則を受ける可能性があります。納税は国民に課せられた義務であり、所得税法などのルールを守ることが求められるためです。
たとえば、会社員で年末調整を受ける必要があるのに意図的に怠った場合、所得税法違反として、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるケースがあります。
さらに、年末調整や確定申告で納税額が確定したにも関わらず、所得税を納付しなかった場合には、より重い罰則として10年以下の懲役または200万円以下の罰金が科される可能性も否定できません。
確定申告で計算した納税額が本来納めるべき額より少なかったり、納付期限を過ぎてから納税したりした場合には、ペナルティとして過少申告加算税や延滞税といった付帯税が本来の税額に上乗せされます。
所得税を抑えるための方法
所得税は納めるべきものですが、法律で認められている制度を活用して、負担を軽減できる場合があります。
ここからは、所得税を抑えるための代表的な方法を3つ紹介しましょう。利用できるものがないか検討してください。
所得控除を活用する
所得税額を抑える基本的な方法として、所得控除を最大限に活用することが挙げられます。
所得控除には、基礎控除や社会保険料控除の他にも、生命保険料控除、医療費控除、寄付金控除、扶養控除などさまざまな種類が存在します。
適用できる控除がないか見直してみてください。特にiDeCo(個人型確定拠出年金)は、拠出した掛金の全額が所得控除の対象となるため、資産形成を進めながら所得税の負担を軽減できるメリットがあります。
利用可能な控除を漏れなく申告すると、節税効果を高められるでしょう。
税額控除を活用する
税額控除の活用も、所得税を直接的に減らすための有効な手段です。
代表的な税額控除として「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」があります。住宅ローン控除は対象の人が多く、控除額も大きい傾向にあるため、該当する場合は条件を把握しておきましょう。
住宅ローン控除以外にも、配当控除などがありますので、対象となるものがないか確認してみるとよいでしょう。
青色申告で確定申告する
個人事業主やフリーランスの人にとって、確定申告を「青色申告」で行うのは、所得税を抑えるための有効な選択肢です。
青色申告を使う大きなメリットは「青色申告特別控除」です。期限内に確定申告を行うなどの要件を満たせば、最大で55万円、e-Taxによる電子申告を行えば最大65万円もの金額を所得から差し引けます。
ただし、青色申告は、事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。また、複式簿記による帳簿付けが求められる点も注意してください。
参考:国税庁「No.2072 青色申告特別控除」
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所得税の計算や年収の壁を意識した働き方の調整には、日々の労働時間を正確に把握するのが不可欠です。
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