裁量労働制は残業代が出ない?発生するケースと計算方法を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2025-08-05
- この記事の3つのポイント
- 裁量労働制は、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ合意した時間を働いたとみなす制度
- 裁量労働制は「勤務時間全体をみなす」制度で、みなし残業制は「残業時間のみをみなす」仕組み
- みなし労働時間が法定労働時間を超える場合や深夜時間帯に労働する場合は残業代が必要
裁量労働制は、実際の労働時間に関わらず、あらかじめ合意した時間を働いたとみなす制度です。一見すると「残業代が発生しない」と思われがちですが、深夜労働や法定休日出勤など特定条件下では割増賃金の支払い義務が生じます。
本記事では、裁量労働制の本質的な仕組みを整理した上で、残業代が発生する具体的なケースと計算方法、制度導入のメリット・デメリットを解説します。
インボイス制度の概要を知りたい方は、以下の記事もご覧ください。
関連記事:インボイス制度とは?意味や概要、対象となる事業者への影響を図解でわかりやすく解説
裁量労働制は残業代が出ない?発生するケースと計算方法を解説
裁量労働制における残業代の取り扱いは?
裁量労働制とは、労働者に業務の進め方や時間配分の裁量を委ね、実際の労働時間に関わらず「みなし労働時間」を働いたとする制度のことです。
原則として、みなし労働時間内で業務が完結している場合、実際の労働時間がみなし時間を超えていても、追加の残業代は支払われません。
ただし、以下の例外ケースでは割増賃金の支給が必要です。
まず、労使協定で定めたみなし労働時間が法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えている場合です。たとえば、みなし時間を1日10時間と設定した場合、超過分2時間に対して25%以上の割増賃金が発生します。
次に、深夜時間帯や法定休日に労働した場合です。深夜時間帯(22時〜翌5時)の労働には25%以上の深夜割増が、法定休日の労働には35%以上の休日割増が別途適用されます。
これらの例外は、実際に働いた時間ではなく、「みなし労働時間」のうち深夜や休日に該当する時間帯を基準に計算される点に注意しましょう。
週40時間労働を超えた場合の計算方法は、以下の記事でご確認ください。
深夜手当の計算方法
月給制の場合「月給÷1カ月の平均所定労働時間」で、時給換算します。月平均所定労働時間は「(365日-年間休日数)×1日の所定労働時間÷12」で算出するのが一般的です。
たとえば月給25万円、月平均労働時間160時間なら時給1,562.5円となり、深夜労働1時間あたり1,953円(1,562.5円×0.25)が手当です。
月給計算時は家族手当や通勤手当を除外し、基本給のみを対象とします。もし日給制であれば「日給÷1日の所定労働時間」にて時給を求め、同様に25%を乗算しましょう。
月平均所定労働時間についての詳細のほか、計算方法や上限を知りたい方は以下の記事を確認してみてください。
残業時間の概要や計算方法は、以下の記事でも詳しく解説しています。
関連記事:時間外労働とは?定義や法改正された上限規制内容、計算方法を解説
裁量労働制とみなし残業制の違い
裁量労働制が「勤務時間全体をみなす」制度であるのに対し、みなし残業制(固定残業代制)は「残業時間のみをみなす」仕組みです。
具体的には、裁量労働制では業務の進め方や時間配分について労働者に裁量が与えられます。そのため、実際の労働時間の管理が不要となり、原則として追加の残業代は発生しません。
一方みなし残業制は、あらかじめ想定した残業時間分の賃金を基本給に含めるもので、実際の残業が設定時間を超えた場合にのみ追加支給が発生します。
たとえば「月20時間分の固定残業代を含む給与」の場合、実際の残業が15時間でも20時間でも基本給は変わらず、20時間を超えた分だけが追加計算対象となります。
みなし残業における、違法・トラブルとなるケースについては、以下の記事で詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
裁量労働制で残業代が発生するケースと計算方法
裁量労働制下で残業代が発生する典型的な3ケースについて、計算方法を実例付きで解説します。
みなし労働時間が法定労働時間を超える場合
みなし労働時間が法定労働時間を超える場合を見ていきましょう。
たとえば、労使協定で1日10時間のみなし労働時間を設定した場合、法定時間(8時間)を2時間超過しています。
時給2,500円の従業員が月20日勤務すると、超過分は40時間(2時間×20日)となり、割増率25%を適用した残業代は125,000円(2,500円×40時間×1.25)です。
上記の金額は基本給に含まれているため、別途支給する必要はありませんが、賃金明細での明示が義務付けられます。
深夜時間帯に労働する場合
みなし労働時間内であっても、22時〜翌5時に作業した時間には25%の深夜割増が別途必要です。
たとえば時給2,000円で、みなし時間8時間のうち22時〜24時の2時間が深夜労働に該当する場合、追加支給額は1,000円(2,000円×0.25×2時間)です。
上記の手当は基本給に含まれないため、別途計算・支給が必須な点に注意しましょう。
深夜手当の発生するケースに該当するかを見極め、計算が必要です。残業・休日出勤がある場合はより複雑になるため以下の記事を参考にしてください。
関連記事:深夜手当の計算方法を解説!残業・休日出勤がある場合はどうなる?
法定休日に労働する場合
法定休日とは、1週間に1日(もしくは4週間に4日)取得させなくてはいけない休日のことです。
法定休日に出勤し、みなし時間内に含まれる場合、35%以上の休日割増が適用されます。また、深夜時間帯が重なった場合は、休日割増+深夜割増の合計60%以上の率が適用されます。
たとえば、時給1,800円で8時間勤務した場合、通常賃金14,400円に加え、割増分5,040円(1,800円×8時間×0.35)の追加支給が必要です。
休日出勤手当についての概要や、発生するケースと計算方法については以下の記事をご確認ください。
裁量労働制のメリット・デメリット
裁量労働制の導入には、生産性向上と労務リスクの両面が存在します。裁量労働制のメリット・デメリットを踏まえた上で、裁量労働制を導入するか否か検討しましょう。
裁量労働制のメリット
裁量労働制の最大の利点は、労働時間管理のコスト削減と生産性向上です。
時間ではなく成果で評価されるため、従業員は効率的に業務を進める意識が高まります。加えて、短時間で成果を上げた場合でも収入は減りません。
成果に応じて労働時間を抑えることも可能になるため、従業員にとっては仕事の効率化によりメリットが大きくなります。
企業側はあらかじめ決めた労働時間と賃金を基に人件費を算出でき、残業代計算の負担が軽減されます。人件費予測が容易になり、将来的な雇用計画の見通しも立てやすくなるでしょう。
また、裁量権を与えられることで優秀な人材の獲得競争力が向上し、ワークライフバランスを重視する層の定着率向上も期待できるでしょう。
裁量労働制のデメリット
裁量労働制のデメリットとして、制度の運用には企業側の丁寧な説明と理解促進が欠かせないことが挙げられます。裁量労働制を導入するには、労使協定の締結や労働基準監督署への届出、従業員の同意が必要です。
残業代が原則発生しないため、制度に慣れている人には適していても、不慣れな人には長時間労働の負担となることがあります。
勤務時間の自由さは魅力ですが、仕事と私生活の切り替えが難しく、生活リズムを崩す要因にもなるでしょう。また、成果重視の評価制度であっても、長時間労働や出退勤管理の矛盾が生じる場合もあります。
経験豊富な人にとっては問題になりにくい一方、制度に慣れていない従業員には負担が大きく、長時間労働によるモチベーションの低下や業務の非効率化を招く可能性も考慮しなくてはいけません。
裁量労働制における残業代の管理は「バクラク勤怠」の導入がおすすめ
裁量労働制とは、実際の労働時間に関わらず「みなし労働時間」を働いたとする制度のことです。ただし、裁量労働制で残業代が発生するケースもあります。
裁量労働制の複雑な残業代計算を効率化するには、リアルタイムの勤怠管理が不可欠です。
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