債権譲渡とは?仕組みやメリット、通知が届いた場合の対処法を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-07-02
- この記事の3つのポイント
- 債権譲渡とは、債権者が保有する債権(売掛金・貸付金など)を第三者に譲渡する法的手続きの一つ
- 債権を有償で譲渡する場合、譲渡人は譲受人から譲渡代金を受け取ることができる
- 譲受人が債権譲渡を債務者に主張するには、譲渡人からの通知や債務者の承諾などの対抗要件を備える必要がある
債権譲渡とは、債権者が保有する債権を譲受人となる第三者に譲り渡す法的手段の一つです。
売掛金や貸付金などを第三者へ有償で譲渡すると、債権を支払期日前に資金化できることがあります。また、契約内容によっては、督促や債権管理に関する業務負担を軽減できる場合もあります。
本記事では、債権譲渡の仕組みと流れ、メリットを解説します。債権譲渡を行う際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
債権譲渡とは?仕組みやメリット、通知が届いた場合の対処法を解説
債権譲渡とは?
債権譲渡とは、債権者が保有する債権を第三者に譲り渡すことを指します。この場合、債権者を譲渡人、第三者を譲受人と呼びます。
A社がB社に金銭を貸している場合、B社は債務者として、債権者であるA社に返済する義務を負わなければいけません。一方、A社がC社に債権譲渡をすると、返済義務を負う者は引き続きB社ですが、債権者がA社からC社に変更されます。
たとえば、A社がB社に対して50万円の商品を販売したにもかかわらず、代金が未回収の期間が長く続くと、A社の資金繰りに影響しかねません。この売掛債権を第三者へ有償で譲渡することで、A社は譲受人から譲渡代金を受け取り、支払期日前に資金を確保できることがあります。
債権については、こちらの記事で詳しく解説しています。似た用語との違いや債務者への法的手段も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
関連記事:債権とは?似た用語との違いや契約種類、債務者への法的手段を解説
債権譲渡の仕組みと流れ
債権譲渡の流れは、大きく2つの手順で行われます。
ここでは、債権譲渡の仕組みと流れをみていきましょう。
譲渡契約の締結
債権譲渡を行う場合は、はじめに債権者(譲渡人)と第三者(譲受人)との間で「債権譲渡契約」を締結します。後日のトラブルを防ぎ、債権譲渡における契約条件を明確にするため、債権譲渡契約書を作成するのが一般的です。
債権譲渡契約書に記載する主な内容は以下のとおりです。
- 債権の種類(売掛金・貸付金など)
- 債権を特定するための情報(債務者情報など)
- 譲渡代金の金額
- 支払日など
債権譲渡契約書の様式は問われないため、手書きやWordでの作成でも問題ありません。ただし、押印は実印を用いるのが一般的です。
法的トラブルを考慮し、専門家に相談しながら契約書を作成するのが望ましいでしょう。
対抗要件の具備
債権譲渡契約を締結したあとは、必要に応じて債務者や債務者以外の第三者に対する「対抗要件」を備えます。対抗要件とは、債権が譲渡されたことを債務者や第三者に主張するための法的な条件のことです。
民法では、譲受人が債務者に対して債権譲渡を主張するために、以下の対抗要件が定められています。
債務者対抗要件 (右記のいずれか) | ・譲渡人から債務者へ「債権譲渡通知書」を送付する ・債務者の承諾を得る |
|---|---|
第三者対抗要件 | ・確定日付のある証書によって通知または承諾を行う (例:内容証明郵便など) |
債権譲渡通知書とは、債権が譲渡されたことを債務者に通知する文書です。一般的には、通知内容を証明できる内容証明郵便が使われることが多いです。
債権譲渡契約は譲渡人と譲受人の間で成立しますが、債務者に通知または承諾がなければ、債務者は従来どおり譲渡人へ弁済してしまう可能性があります。また、第三者対抗要件を備えていなければ、他の債権者などとの間で権利関係のトラブルが生じることもあります。
そのため、債権譲渡を行う際は債務者への通知や承諾の取得に加え、必要に応じて確定日付のある証書を利用し、適切に対抗要件を備えることが重要です。
参考:e-Gov法令検索「民法467条」
債権譲渡登記制度について
債権譲渡登記制度とは、法人が多数の債権を一括譲渡する際に便利で、債務者以外の第三者に対する対抗要件を備える方法の一つです。
法務局の債権譲渡登記ファイルに、債権譲渡に関する所定の事項を登記することで、債権譲渡の事実を公示できます。登記をすると、債務者以外の第三者との関係では、確定日付のある証書による通知があったものと法律上みなされ、第三者対抗要件を備えることができます。
ただし、債権譲渡登記だけで債務者への対抗要件を満たすことはできません。債務者に対する対抗要件を備えるには、譲渡人もしくは譲受人が、登記事項証明書を交付して債務者に通知するか、債務者の承諾を得る必要があります。
また、債権譲渡登記を行うと債権譲渡の事実が公になるため、取引先など、事前に把握されたくない相手に知られてしまう可能性がある点に注意が必要です。
企業が債権譲渡を活用する理由とメリット
企業によって、債権譲渡を活用する理由はさまざまです。
ここでは、企業が債権譲渡を活用する理由とメリットを解説します。
早期資金化できる
企業が債権譲渡を活用する大きなメリットは、債権を早期に資金化できるケースがあることです。
回収期日前の売掛債権を第三者へ有償で譲渡する場合、譲渡代金を受け取ることで、通常の入金期日より前に資金を確保できることがあります。
たとえば、A社がB社に対する債権を保有する一方で、C社への支払いが翌月10日に迫っている場合、通常は自己資金で支払い代金を賄う必要があります。しかし、支払いが集中していたり、自己資金が不足していたりする場合に、支払い代金を用立てるのは難しいかもしれません。
その場合、債権譲渡を行い、A社がB社に対して有する債権を第三者へ有償で譲渡すると、通常の入金期日より前に譲渡代金を受け取り、C社への支払いに充てられます。
債権譲渡担保として利用できる場合がある
売掛金などの債権は、金融機関等から融資を受ける際の担保として活用できる場合があります。
売掛金などの債権を担保として提供することで、資金調達や取引を円滑に進めやすくなるといった点がメリットです。
また、債権譲渡によって、債務者の倒産などによる回収不能リスクも譲受人へ移転できることがあります。ただし、譲渡人に償還義務や買戻義務がある契約では、譲受人から返還や債権の買戻しを求められる場合もあるため、契約条件の確認が必要です。
債権譲渡のデメリット
債権譲渡には早期現金化といった活用方法がある一方で、注意すべきデメリットもあります。債権譲渡の主なデメリットは以下のとおりです。
- 有償譲渡の場合、譲渡価格が債権の額面金額を下回ることがある
- 債務者への通知などにより、債権譲渡の事実を取引先に知られることがある
前提として、債権を有償で譲渡する場合、債権の額面金額と同額で譲渡できるとは限りません。譲渡価格は債務者の信用力や回収リスクなどを考慮して当事者間の合意によって決定するため、実際には債権額よりも低い金額で譲渡することがあります。
また、債務者に対して債権譲渡を主張するためには、原則として債務者へ通知または債務者の承諾が必要です。そのため、債務者が譲渡の事実を知ることがあります。
場合によっては、取引先との関係に影響を与える恐れもあるため、事前に手続きの流れや影響を確認しておくことが重要です。
債権譲渡を行う場合の注意点
ここでは、債権譲渡を行う場合の注意点を解説します。
債権譲渡制限特約がある
債権譲渡を検討する際は、契約書に「債権譲渡制限特約」が設けられていないかを確認する必要があります。「債権譲渡制限特約」とは、譲渡人と債務者との間で、債権の譲渡を制限または禁止する取り決めのことです。
債権譲渡制限特約が設けられていても、基本的に債権譲渡は可能です。
一方で、譲受人が譲渡制限特約の存在を知っていた場合や、重大な不注意によって知らなかった場合、債務者は原則として譲受人への支払いを拒むことができます。
ただし、譲受人が債務者に一定期間内に譲渡人へ支払うよう求めても支払いがない場合、債務者は譲渡制限特約を理由に支払いを拒めないことがあります。
債権譲渡制限特約があるからといって、すべての債権譲渡が無効になるわけではありませんが、トラブルを防ぐためにも事前に確認しておくことが重要です。
債権には消滅時効がある
債権譲渡を行う際は、譲渡対象となる債権の消滅時効に注意が必要です。
債権には法律で定められた時効があり、時効期間の経過後に債務者が援用すると、原則として債務の履行を求めることができなくなります。時効が完成した債権は回収が困難となり、譲受人から譲渡を敬遠される可能性があります。
また、時効が迫っている債権は譲渡価格が低くなるケースも少なくありません。債権譲渡を検討する際は、契約上の支払期限に加え、裁判上の請求や強制執行、債務の承認など、時効に影響する事情を確認することが大切です。
債権回収の時効について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
関連記事:債権回収の時効はいつ?消滅時効の考え方や完成猶予・更新方法を解説
自分の借金が債権譲渡されたらどうなる?
借金の返済が長期間滞ると、金融機関や貸金業者が保有する債権が債権回収会社などへ譲渡されることがあります。債権譲渡が行われても、借金そのものや債務者の返済義務がなくなるわけではありません。債務者は原則として、譲受人へ返済する義務を負います。
ここでは、個人の借金が債権譲渡された場合に生じる主な影響と対処法をみていきましょう。
債権譲渡された場合の影響
借金が債権譲渡されると、債権者が譲渡人から譲受人へ変更されます。返済義務はそのまま存続するため、今後は新しい債権者に対して返済を行わなければなりません。
返済の滞納が続いている場合は、その事実が信用情報機関へ事故情報として登録される可能性があります。信用情報に影響が及ぶと、新たな借入やクレジットカードの審査に通りにくくなることがあるため注意が必要です。
また、契約上の条件に該当すると、債権回収会社から残債務を一括請求されたり、支払い遅延により遅延損害金が加算されたりする場合もあります。なお、債権譲渡だけを理由に一括請求されるわけではありません。
支払期日を過ぎても返済しない場合は、訴訟提起や支払督促の申し立てが行われることがあります。財産や給与の差押えにつながる恐れがあるため、通知を受け取った際は速やかに内容を確認することが大切です。
債権譲渡された場合の対処法
債権譲渡通知書が届いた場合は、通知内容が事実に基づくものかを確認します。差出人や譲渡人の情報を確認し、架空請求や詐欺ではないことを確かめましょう。
そのうえで、通知書に記載されている借入内容や残高、契約日などに誤りがないか、また消滅時効が完成していないかを確認します。
通知書で一括返済を求められたとしても、すぐに支払えない場合もあるでしょう。一括請求が難しい場合に「分割返済の交渉を行うべきか」「任意整理や個人再生、自己破産などの債務整理を検討すべきか」といった点を判断するのは困難です。
対応を誤ると不利な状況に陥る可能性もあるため、弁護士などへ相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
「バクラク債権管理」で債権管理業務を効率化
債権譲渡は、債権者が保有する債権を第三者に譲り渡す法的手段の一つです。対抗要件を満たせば、債務者の返済義務は存続したまま、譲受人が新たな返済先となります。
債権譲渡は複数のメリットや活用方法がある手段ですが、デメリットや注意点を理解したうえで行うことが大切です。適切な債権管理を行うことで、債権譲渡ではない手段で資金繰りの安定化を図れます。
「バクラク債権管理」を活用すれば、債権管理を正確かつ効率的に行えます。請求書の送付から入金消込・仕訳作成・残高管理・督促まで行えるほか、取引先へのリマインドや未入金の督促の効率化を図り、長期滞留債権の早期把握や長期化の抑制につながる点も魅力です。
債権管理業務を効率化したい企業は、ぜひ「バクラク債権管理」の導入をご検討ください。
「バクラク債権管理」は、債権管理業務の負担を減らし、債権回収を加速させるシステムです。入金と請求の自動照合、AIによる消込提案、仕訳データの自動生成などの機能により、債権管理にかかる工数を大幅に削減します。
また、「バクラク請求書発行」と併用することで、請求書発行から督促までのプロセスを一気通貫で効率化でき、経理担当者はもちろん、現場社員の負担も軽減します。