滞留債権とは?不良債権との違いやリスク・回収方法を解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-02-18
- この記事の3つのポイント
- 滞留債権とは、取引先との掛け取引で支払期限を過ぎても入金が確認できない債権のことである
- 滞留債権を放置すると入金が遅れるだけでなく、会計処理や資金繰り、企業の信用力に影響を及ぼす
- 滞留債権は放置すれば回収が難しくリスクも高まるため、早めに回収へ動くことが重要である
滞留債権とは?不良債権との違いやリスク・回収方法を解説
滞留債権とは、取引先との掛取引において、期日を過ぎても回収できていない債権のことです。放置すると不良債権化や資金繰り悪化など、経営に大きな影響を及ぼします。 本記事では滞留債権の基礎知識からリスク、回収方法、未然に防ぐ管理・対策まで解説します。
1.滞留債権とは
滞留債権(たいりゅうさいけん)とは、売掛金などの債権のうち、あらかじめ定めた支払期日を過ぎても取引先から入金が確認できない状態のものです。掛取引では期日どおりに回収できることが前提ですが、期日を1日でも過ぎれば滞留債権に該当します。
基本的には、遅れてはいるものの、今後の回収が見込まれる債権が、滞留債権として扱われます。未入金の状態が長期化した場合は以下のように区分が変わるため、注意しなければいけません。
- 滞留債権:支払予定日を超えたもの
- 長期滞留債権:支払予定日から6カ月を超えたもの
- 長期未収入金:支払予定日から1年を超えたもの
ひと言で滞留債権といっても期間に応じて呼び方が変わるため、正しく把握しておくことが重要です。
2.滞留債権と不良債権の違い
滞留債権と混同しやすい言葉に不良債権がありますが、滞留債権と不良債権の違いは、将来的に回収できる可能性が残っているかどうかです。
滞留債権は、支払期日を過ぎているものの、取引先の一時的な資金繰り悪化や手続きの遅れなどが原因で、状況が改善すれば回収できる見込みがある債権です。一方で不良債権は、取引先の倒産や廃業などにより回収が困難、またはほぼ不可能と判断される債権を指します。
3.滞留債権が発生する原因
滞留債権は、取引先側または自社側の要因によって発生します。ここからは、それぞれ滞留債権が発生する原因について、見ていきましょう。
3-1.取引先に原因がある場合
取引先に原因がある場合の具体例は、以下のとおりです。
- 経営悪化や資金繰り不良
- 納品物の未検収・クレームによる支払保留
- 入金忘れや請求書紛失などの事務的ミス
取引先の経営状況が悪化している場合、資金繰りの問題から期日どおりの支払いができず、滞留債権が発生しやすくなります。状況が深刻な場合は、そのまま不良債権化する可能性も否定できません。
また、サービス内容や納品物について認識のズレがあると、検収が進まず支払いが保留されることがあります。さらに、請求書の紛失や入金処理の失念など、担当者のうっかりミスも原因の一つですが、この場合は催促により解消するケースが多いでしょう。
3-2.自社に原因がある場合
自社に原因がある場合の具体例は、以下のとおりです。
- 請求書の発行・送付漏れ
- 請求書の記載内容や支払期日の誤り
- 入金消込作業のミスや管理体制の不備
自社側のミスによって滞留債権が発生するケースも少なくありません。請求書を発行・送付していなければ、取引先は支払いを行えないため、帳簿上は滞留債権です。
また、金額や支払期日の記載誤りがあると、想定した期日に入金されない原因になります。さらに、実際には入金されているにもかかわらず、消込作業が行われていない場合も滞留債権として残ってしまいます。
4.滞留債権の影響やリスク
滞留債権を放置すると、単に入金が遅れるだけでなく、会計処理や資金繰り、企業の信用力にまで悪影響を及ぼしかねません。ここからは、滞留債権の影響やリスクについて詳しく見ていきましょう。
4-1.貸倒損失として計上することになる
滞留債権の影響やリスクの一つ目は、貸倒損失としての計上です。滞留債権を最終的に回収できないと判断した場合、その債権は「貸倒れ」となり、会計上は貸倒損失として処理します。
貸倒損失は損金に算入でき、税務上は節税効果が期待できますが、無条件に計上できるわけではありません。貸倒損失の要件は、以下のとおりです。
- 法律上の貸倒れ:取引先が法的整理を行った場合
- 事実上の貸倒れ:支払能力がなく全額回収不能と判断された場合
- 形式上の貸倒れ:取引停止後一定期間が経過した場合
要件について、詳細は後述します。
4-2.債権の消滅時効が成立する
2つ目のリスクは、債権の消滅時効の成立です。滞留債権を放置すると、民法で定められた消滅時効が成立し、債権そのものが消滅するリスクがあります。
現在の民法では債権の時効は、権利を行使できると知った時から5年、または権利を行使できる時から10年です。
2020年4月の法改正以降に発生した債権は、原則として5年の時効期間が適用されており、一定期間何も対応しなければ回収権を失ってしまいます。時効を防ぐには、裁判上の請求や支払督促、債務の承認を得るなど、法的に有効な手続きを行うことが必要です。
4-3.資金繰りが悪化し黒字倒産に陥る
黒字倒産も、滞留債権のリスクです。黒字倒産とは、帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、売掛金を回収できないことで現金が不足し、支払いができずに倒産する状態を指します。
特に売上が拡大している成長期の企業では、滞留債権が増えると資金繰りへの影響が大きくなります。利益が出ているから安心と考えず、確実な回収を前提とした管理が欠かせません。
4-4.社会的信用が低下する
4つ目のリスクは、社会的信用が低下する点です。貸倒れや時効消滅が発生すると、与信管理や入金管理が不十分な企業という評価を受けやすくなり、取引先や市場からの信頼を損なう可能性があります。
また、金融機関が融資審査において重視するのは、債権管理の状況です。滞留債権が多い企業は資金管理能力に問題があると見なされ、融資を受けられなかったり、条件が厳しくなったりする恐れがあります。
その結果必要な資金調達ができず、事業機会を逃すリスクも高まるでしょう。
5.滞留債権を回収する方法
滞留債権は放置するほど回収が難しくなり、時効や貸倒れといったリスクも高まります。そのため、状況に応じて段階的に手段を強めながら、早めに回収へ動くことが重要です。
ここからは、滞留債権を回収する方法について、詳しく見ていきましょう。
5-1.取引先に連絡し、話し合いをする
滞留債権の確認ができたら、まずは取引先へ早い段階で連絡し、支払い状況を確認しましょう。いきなり催告書や法的手段を示すと関係悪化につながるため、最初は電話やメールで丁寧にヒアリングし、支払いが遅れている理由の把握が大切です。
連絡の際は責める言い方を避け「請求書をご確認いただけましたでしょうか」「本日時点でご入金が確認できておりません」など、事実確認のトーンで進めると角が立ちにくいです。
あわせて自社側の請求書未送付や入金チェック漏れなどがないかを事前に確認しておくことで、不要なトラブルも防げます。
5-2.督促状や催告状を送付する
連絡しても入金がなかったり、取引先と連絡が取れなかったりする場合は、支払いを求める文書の送付が必要です。一般的には、まず柔らかい表現で支払いを促す「催促状」を送り、それでも反応がなければ、より強く支払いを求める「督促状」へ進みます。
督促状では支払い期限を明確に示し、支払いがなければ、次の手段に移行する旨を記載することが一般的です。督促状を重ねても期限までに入金がなければ、法的措置を取ることを通知する「催告書」を送付します。
督促状について詳しくは以下の記事で解説しているので、ぜひご覧ください。
関連記事:督促状とは?催促状や催告書との違いや書き方を例文とともに解説
5-3.内容証明郵便で督促をする
話し合いや通常の督促で解決しない場合、次の手段として内容証明郵便による督促を検討します。内容証明郵便は「誰が、誰に、いつ、どのような内容を送ったか」を郵便局が証明してくれる仕組みで、後の交渉や裁判になった際の記録として残せることが特徴です。
内容証明自体に支払いを強制する効力はありませんが、債権回収に本気であることが伝わり、心理的プレッシャーによって支払いに応じるケースもあります。さらに重要なのが、内容証明郵便は債権の時効を中断させる効果が期待できる点です。
5-4.法的手続きを行う
内容証明郵便を送っても支払いがない場合は、訴訟などの法的手段を検討します。ただし、法的手続きは費用や手間がかかることもあるため、債権額とのバランスを見ながら進めることが重要です。
代表的な手段には支払督促や民事調停、少額訴訟、通常訴訟があります。ここからは、それぞれの法的手続きについて詳しく見ていきましょう。
5-4.1.支払督促
支払督促は、裁判所に申立てを行い、債務者に支払いを命じる督促を出してもらう手続きです。裁判所から直接送達されるため、通常の督促状よりも相手に与えるプレッシャーが強く、早期の支払いにつながることがあります。
手続きは比較的簡易で、弁護士に依頼せず進められるケースもあり、時間やコストを抑えやすい点がメリットです。相手が異議申立てをしなければ、短期間で強制執行(差押え)へ進められますが、異議が出ると通常訴訟へ移行する可能性があります。
5-4.2.民事調停
民事調停は、裁判所の調停委員が間に入り、当事者同士の話し合いで解決を目指す手続きです。勝ち負けを決めるのではなく、双方が合意できる条件を探るため、分割払いなど柔軟な解決が図りやすい点が特徴です。
また非公開の調停室で行われるため、外部に内容が漏れにくく、風評リスクを抑えられます。ただし相手に支払う意思がなく、合意に至らない場合は不成立となるため、別の手段に切り替える必要があります。
5-4.3.少額訴訟
少額訴訟は60万円以下の金銭債権を対象に、簡易裁判所へ申し立てできる手続きです。原則として1回の審理で判決まで進むため、迅速な回収を目指しやすいのがメリットです。
一方で、証拠はその場で調べられるものに限られるなど制約があり、相手が通常訴訟への移行を求めた場合や異議が出た場合は、通常訴訟として再度審理されることがあります。
5-4.4.通常訴訟
通常訴訟は、債権額に制限がなく利用できる、一般的な民事訴訟手続きです。請求額が60万円を超える場合、通常訴訟を選択することになります。判決には執行力があるため、支払いを命じる判決が出れば、支払いがなされない場合に差押えなどの強制執行も可能です。
ただし通常訴訟は、他の手続きに比べて時間とコストがかかりやすく、専門的な対応が必要になる場面もあります。費用対効果を見極め、必要に応じて弁護士など専門家への相談を検討するとよいでしょう。
6.滞留債権を回収できなかった場合の対処方法
話し合いや督促、法的手続きを尽くしても滞留債権を回収できない場合は、貸倒損失としての計上を検討します。
貸倒損失とは、取引先の倒産や資産状況の悪化などにより、売掛金などの債権が回収不能と判断された場合に、その金額を損失として計上する会計処理です。
回収見込みのない債権を資産として残し続けると、財務状況を実態より良く見せてしまい、経営判断を誤る原因になります。
貸倒損失として計上できれば課税所得を圧縮でき、法人税などの税負担を軽減できる可能性があります。ただし、回収不能であれば無条件に損金算入できるわけではありません。以下のような一定の条件を満たすことが必要です。
- 法的整理により債権が切り捨てられた場合
- 債権の全額が事実上回収不能と判断できる場合
- 取引停止後1年以上弁済がない場合 など
また貸倒処理にあたり、回収努力の経緯や取引停止の事実、相手の倒産状況などを示す証拠書類を保管しておかなければいけません。
要件を満たさない処理は否認される恐れもあるため、帳簿管理を徹底したうえで、判断に迷う場合は税理士など専門家へ相談するとよいでしょう。
参考:国税庁「No.5320 貸倒損失として処理できる場合」
7.滞留債権の管理方法
滞留債権の不良債権化を防ぐためには、管理方法を整えておくことが重要です。代表的な管理方法は、Excelとクラウド型システムがあります。
管理方法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
Excel | ・コストがかからない ・業務に合わせて自由にフォーマット作成ができる | ・入力や管理作業に手間がかかる ・属人化しやすい |
クラウド型システム | ・入金消込や集計を自動化できる ・請求書発行から管理までを一元化できる | ・月額費用などコストが発生する ・操作に慣れるまで時間がかかる場合がある |
Excel管理は低コストで始めやすい一方、業務負荷やミスのリスクが高まりやすい点に注意しなければいけません。取引量が多い場合や属人化を避けたい場合は、クラウド型システムの導入を検討すると、滞留債権の発生防止と管理効率の向上が期待できます。
8.滞留債権を防ぐための対策
滞留債権を防ぐためには、以下のように大きく5つの対策があります。
- 債権の回収状況の定期的なチェック
- 取引先の与信管理の徹底
- 請求書発行システムの活用
- 徹底した債権回収
- 請求代行サービスの活用
それぞれの対策について、順番に見ていきましょう。
8-1.債権の回収状況を定期的にチェックする
滞留債権を防ぐためには、売掛金の回収状況を定期的に確認することが重要です。取引先の支払い遅延は、単に確認漏れや事務的なミスが原因で発生するケースも少なくありません。
そのため売掛金管理簿などを活用し、取引先ごとの債権額や支払期日、入金状況を可視化しておくことが重要です。確認作業は一人で行うと見落としが生じやすいため、複数人でチェックする体制を整えれば、請求漏れや回収遅延を防ぎやすくなります。
8-2.取引先の与信管理を徹底する
取引先の与信管理の徹底も、滞留債権を防ぐ対策です。与信限度額を設定し、一定額を超える取引を制限することで、回収不能リスクを抑えられます。
また与信管理は取引開始時だけでなく、継続的に見直すことが重要です。取引先の経営状況は変化するため、定期的に信用情報を確認し、必要に応じて取引条件や限度額を調整し、過度なリスクを回避しましょう。
8-3.請求書発行システムを活用して記載ミスや発行漏れをなくす
人的ミスによる請求書の記載誤りや発行漏れを防ぐために、請求書発行システムを活用するのも有効な対策です。システムを利用すれば、金額の転記ミスを防げるほか、作成から送付までを一括で管理できます。
また請求業務を後回しにすることによる発送漏れも防げるため、滞留債権の発生自体の抑制効果も期待できるでしょう。法改正に対応した機能を備えたシステムを選べば、業務効率と正確性の両立が可能です。
請求書発行システムの導入メリットや機能については、以下の記事でご確認ください。
関連記事:請求書発行システムを導入するメリットは?主な機能や種類・選び方も紹介
8-4.債権回収を怠らない
債権回収を怠らないことも、重要な対策です。掛取引は、商品やサービスを提供しただけでは完結せず、代金を回収して初めて取引が成立します。
売掛金は取引先に資金を貸している状態であるという認識を、社内で共有することが重要です。入金が遅れた場合は早期に催促を行い、回収を先延ばしにしない姿勢が求められます。
営業部門と経理部門が連携し、受注だけでなく回収までを含めた管理を徹底すれば、黒字倒産のリスクも防げるでしょう。
8-5.請求代行サービスを活用する
請求業務の負担が大きい場合、請求代行サービスの活用も有効な対策です。請求代行では、請求書の発行から入金管理、消し込み処理までを一括で任せられるため、人的ミスの防止につながります。
サービスによっては与信管理や支払督促まで対応しているものもあり、滞留債権の予防と業務効率化を同時に実現できます。社内リソースが限られている場合は、アウトソーシングの導入を検討するとよいでしょう。
9.滞留債権を防ぐには「バクラク債権管理」がおすすめ
債権管理とは、売掛金の回収状況を継続的に把握し、未回収や滞留を防ぐための重要な業務です。滞留債権を放置すると、不良債権化や資金繰り悪化、社会的信用の低下といったリスクにつながるため、回収対応だけでなく日常的に防止する仕組みづくりが欠かせません。
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