差入保証金の勘定科目は?簿記における正しい仕訳や返還処理をわかりやすく解説

差入保証金は、万が一の際における債務不履行などを防ぐための一時金です。会計処理では、貸借対照表の勘定科目に計上されます。

この記事では、差入保証金の概要や種類、仕訳の具体例を解説します。差入保証金の会計処理を行う際に役立ててください。

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差入保証金の勘定科目は?簿記における正しい仕訳や返還処理をわかりやすく解説

差入保証金とは

差入保証金とは、債権者に負う債務履行を担保するお金です。差入保証金のなかでも、よく知られているのが敷金です。ほかにも契約保証金などが挙げられます。

差入保証金は、不要になると返還されることもある金額です。しかし一部または全額が返還されない契約の場合もあります。

差入保証金の仕訳

差入保証金は、「投資その他の資産」に仕訳されます。貸借対照表では「資産」の部に計上される、固定資産に該当するものです。

差入保証金を伴う契約の契約期間は1年以上の場合が多いでしょう。1年以上の期間で保有される資産は固定資産に分類されるため、差入保証金もまた固定資産であると考えられます。

差入保証金と長期前払費用

差入保証金は契約期間が過ぎれば、全額返還されることが前提とされている費用であるのに対し、長期前払費用は全額返還の保証がされない費用です。

この場合、契約時は差入保証金として計上した費用であっても、1年以上の契約期間が経過し償却された場合、長期前払費用として改めて計上することとなります。あるいは、契約上で返還されないことが決まっている部分について、長期前払費用として計上し償却することも可能です。

差入保証金と受入保証金の違い

「差入保証金」は保証金を支払う側からの呼び方であるのに対し、「受入保証金」は保証金を受け取る側からの呼び方です。保証金を支払った側では、受入保証金と呼ぶことはありません。

受入保証金は、別名を「預り保証金」ともいいます。保証金を受け取った側からすれば将来的に返還するべき金額に該当するため、会計上は負債に分類されるのが特徴です。

差入保証金の種類

差入保証金には、主に次のような種類があります。それぞれについて解説します。

敷金

敷金は、賃貸借契約時に、貸主に債務の担保をするお金です。基本的には、賃貸費用の未払いや、退去時の原状回復費用として使われます。

未払い金がないなど、問題なく契約満了を迎えた場合は敷金が使われることはないため、返還される契約がほとんどです。

権利金

権利金は、別名「礼金」と呼ばれる、差入保証金の1つです。解釈によっては、権利金と礼金とはまったく同じものではないこともあります。礼金は家主に対するお礼、権利金は借地権の設定など借りる側に対する配慮への対価、と分類しているケースもあるでしょう。

権利金は敷金と同じく、賃貸借契約時に預け入れる費用です。契約満了後の返還はないため、最終的には長期前払費用として償却されることとなります。

営業保証金

営業保証金とは、宅地建物取引業者が営業開始時に、供託所に預け入れるお金です。営業保証金として本店は1,000万円、そのほかの店舗は500万円が必要とされています。

営業保証金は不動産取引でトラブルになった際、顧客の利益を保障するために使われます。

ゴルフ会員権保証金等

預託金制のゴルフ場を利用する際に、預託金を支払う場合があります。「ゴルフ会員権保証金」「預り保証金」「相互施設利用保証金」など、さまざまな名称で呼ばれていますが、いずれも同じものです。

これらは契約が終了した場合、会員に返還される費用になるため、差入保証金とみなされています。

差入保証金の消費税の取り扱い

差入保証金は課税対象外取引となるため、消費税は課税されません。これまでに解説してきた敷金、権利金、営業保証金、ゴルフ会員権保証金などはすべて課税対象外です。

ただし事業用の場合、保証金は非課税でも、礼金に消費税がかかるため注意しましょう。ちなみに差入保証金ではありませんが、仲介料にも消費税が加算されます。

差入保証金の償却期間

差入保証金を減価償却費として償却する場合、期間は5年です。契約期間が5年未満の場合、契約期間で償却を決めることができます。

差入保証金を減価償却する際、計上には「長期前払費用」を用います。具体例は次項にて後述するのであわせて参照してください。

差入保証金を勘定科目に計上する具体例

ここでは、差入保証金を勘定科目に計上する際の具体例を、ケース別に4つ解説します。

全額返金するケース

解約時、保証金が全額返金される場合では、差入保証金のみを計上します。

事務所の賃貸契約を行うタイミングを想定し、差入保証金の金額が5,000,000円だった場合の仕訳の方法は以下のとおりです。

借方貸方
差入保証金5,000,000円現金5,000,000円

現金で返金されるケース

賃貸契約の解約に際し、差入保証金が現金で返金となるケースもよくあります。

事務所の賃貸借契約を解約し、5,000,000円の差入保証金が現金で返還されるケースを想定した場合、仕訳の方法は以下のとおりです。

借方貸方
差入保証金5,000,000円現金5,000,000円

長期前払費用を支払うケース

差入保証金の全額もしくは一部を長期前払費用として支払うケースもあります。

ここでは5,000,000円の差入保証金を、普通預金で振り込むケースを想定してみましょう。

差入保証金のうち20%に該当する1,000,000円が償却されるため、返金がなく、契約が5年であれば以下のように記載します。

借方貸方
差入保証金4,000,000円普通預金5,000,000円
長期前払費用1,000,000円  

また1,000,000円を5年間で償却する際に、次のように記載しましょう。

借方貸方
長期前払費用償却200,000円長期前払費用200,000円

1,000,000円の長期前払費用に対して、200,000円の長期前払費用償却を5年繰り返すことで、返金のない分を余すことなく帳簿へ記載できます。

差入保証金を解約するケース

例えば賃貸を退去するなどで、差入保証金が解約となるケースがあります。この場合、原状回復費用などで差入保証金が減額されたうえで、返金になることも多いでしょう。

ここでは、賃貸を退去する際に、原状回復費用が発生するケースを想定します。保証金1,000,000円に対して、修繕費100,000円がかかった場合には以下のように記載しましょう。

借方貸方
現金900,000円差入保証金1,000,000円
修繕費100,000円  

なお修繕の金額が決まっていないケースでは、保証金のみを計上します。これは支払手数料や長期前払費用で処理が終わっているためです。記入の方法は以下のとおりとなります。

借方貸方
現金900,000円差入保証金1,000,000円

まとめ

差入保証金の勘定科目を利用するケースは、差入保証金が発生したときや、差入保証金の解約があったときです。差入保証金が全額返金になるのか、長期前払費用で償却するのか、といった条件によって仕訳の方法が違うため、上記に挙げた例を参照して記載しましょう。

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