為替手形とは?約束手形との違いや種類、仕訳例をわかりやすく解説
- 記事公開日:
- 最終更新日:2026-02-18
- この記事の3つのポイント
- 為替手形とは、取引において振出人・支払人・受取人の三者が関わる有価証券の一つ
- 為替手形は、一般的に輸出入の取引や資金調達などの場面で使われ、信用の保証にも役立つ
- 為替手形には複数のメリットがある一方、不渡りを出すとリスクが大きいため注意が必要である
為替手形とは?約束手形との違いや種類、仕訳例をわかりやすく解説
為替手形とは、三者が関わる有価証券の一つであり、国際間取引や資金調達などでよく使われます。 入出金なしで買掛金の消し込みができたり、支払いの確実性が高かったりするなど、複数のメリットを得られます。ただし、為替手形はデメリットや注意点もあるため、利用する際には正しい理解が必要です。 本記事では、為替手形の概要と種類、メリット・デメリットを紹介します。注意点や仕訳例も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
1.為替手形とは?
為替手形とは、手形を振り出す「振出人」代金を支払う「支払人」代金を受け取る「受取人」という三者が関与して使用される手形の一種です。振出人・支払人・受取人が取引に関わり、以下のような役割を担います。
取引に関わる人 | 役割 |
|---|---|
振出人 | 手形を発行し、支払人に支払いを委託する |
支払人 | 指定の期日に受取人へ代金を支払う |
受取人 | 期日に手形を呈示し、代金を受け取る |
振出人の役割は、事業間での取引において、売上債権をもつ企業や事業者などが担います。
為替手形は、支払人が支払い手続きを行うために用いる手形(証券)です。振出人が支払人に依頼し、受取人が代金を受け取る、という流れで使用します。
特に、遠隔地間での取引や、三者間の債権・債務を相殺したい場合などに、効率的な決済方法として用いられることが一般的です。
2.為替手形と約束手形の違い
為替手形と似た言葉に「約束手形」があります。どちらも支払い手続きに使用する証券ですが、それぞれ仕組みが異なります。
約束手形は、振出人と受取人の二者間で取引する場合に用いられる証券です。振出人が受取人に対して「代金の支払い」を約束し、期日までに指定の代金を支払います。
一方、為替手形は「振出人→支払人→受取人」の流れで代金を支払うための手形です。為替手形と約束手形は、取引に関わる人数や支払う人が異なります。
約束手形の詳細を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。小切手との違いや仕訳、26年の廃止予定についても解説しています。
関連記事:約束手形とは?小切手との違い・仕訳と26年の廃止予定についてわかりやすく解説
3.為替手形の種類
為替手形には、大きく3つの種類が存在します。それぞれ詳しくみていきましょう。
3-1.他人宛為替手形
「他人宛為替手形」とは、振出人・支払人・受取人の三者がすべて異なる場合に成立する手形です。為替手形の基本的な形式とされています。
他人宛為替手形は、振出人が支払人に対してもつ債権と、受取人が振出人に対してもつ債務の2つの債権債務を一度に相殺・決済するために利用されます。三者間の複雑な取引関係を簡略化し、効率的な決済を実現できる点が特徴です。
3-2.自己受為替手形
「自己受為替手形」とは、為替手形に関わる三者のうち、振出人が受取人を兼ねる形式の手形です。振出人・支払人・受取人は、それぞれ以下のような役割を担います。
取引に関わる人 | 役割 |
|---|---|
振出人 | 手形を発行し、支払いに責任を負う |
支払人 | 手形の代金を支払う |
受取人 | 期日に代金を受け取る(振出人が兼ねる) |
自己受為替手形は「いつ、いくらを、自分に支払ってほしい」と受取人に依頼をするための手形です。振出人が自身の手元にある債権を確実に回収するために、支払人に支払いを委託し、代金を自分で受け取るという仕組みです。
主に遠隔地にある支払人から、確実な代金回収を図りたい場合に利用されます。
3-3.自己宛為替手形
「自己宛為替手形」とは、為替手形に関わる三者のうち、振出人が支払人を兼ねる形式の手形です。それぞれが担う役割は以下のとおりです。
取引に関わる人 | 役割 |
|---|---|
振出人 | 手形を発行し、支払いを約束する |
支払人 | 代金を支払う(振出人が兼ねる) |
受取人 | 期日に代金を受け取る権利をもつ |
自己宛為替手形では、振出人が「期日になったら自身が受取人に代金を支払う」という直接的な支払い義務を負います。主に、約束手形よりも裏書譲渡(手形の譲渡)を容易にする目的や、法的な手続き上の理由がある場合に利用されます。
4.為替手形利用の流れ
一般的な為替手形利用の流れは以下のとおりです。
- 振出人が手形を作成する
- 振出人が支払人に対して支払いの委託をする
- 支払人が委託を承諾し、手形に署名する
- 振出人が受取人に手形を交付する
- 支払人は、期日までに指定口座に代金を入金する
- 受取人が金融機関で手形を呈示する
- 受取人が手形に記載された金額の代金を受け取る
取引が発生したら、はじめに振出人が為替手形を作成します。続いて、振出人が支払人に支払いを委託し、承認した場合に手形へ署名を行います。
委託が完了した後、振出人から受取人に手形が交付され、期日に代金の支払い・受取が完了する、という流れです。
上記の流れを用いることで、振出人は支払人から受け取るはずだった代金で、受取人への支払いを済ませられます。2つの債権・債務を同時に清算でき、決済の手間を簡略化できます。
5.為替手形はどのような場面で使われるのか
為替手形は、国際取引や資金調達など、さまざまな場面で使われる証券です。本章では、為替手形を利用する3つのシーンを紹介します。
5-1.輸出入の取引
為替手形は、国際取引である輸出入において、現金を直接送付するリスクを避け、支払いを円滑に進めるために利用されることが一般的です。
特に「荷為替手形」として、船荷証券などの運送書類と手形を併せることで、商品の引き渡しと代金決済を確実に連動させる重要な役割を果たします。
5-2.資金調達
為替手形は、資金調達を図る場面でも利用されます。支払期日の前でも、銀行や手形割引業者に手形を売却することで、早期の現金化が可能です。
また、期日までの資金繰りを改善したい・急な支出に対応したいといった場合にも、上記の現金化を活用することで、資金の流動性を確保できます。
5-3.信用の保証
為替手形は、信用の保証として用いられることもあります。手形は金融機関を介して決済されるため、新しい取引先などに対して確実な支払い能力(信用力)があることの照明が可能です。
現金よりも商取引における信用を高める効果があり、円滑な取引関係の構築に役立ちます。ただし、手形が不渡りになると信用を失うリスクがあるため、利用時は慎重な対応が必要です。
6.為替手形の記入項目
為替手形は有価証券の一種であり、記入項目に関しては法的なルールが存在します。主な記入項目は以下のとおりです。
- タイトル:為替手形であることを示す文言
- 手形金額:手形によって支払われる金額
- 満期日:支払期日
- 支払地:手形金の支払が行われる場所
- 受取人の氏名または名称:手形金を受け取る人
- 振出日:手形を作成した日付
- 振出人の署名または記名押印:手形を発行した人
- 支払人の氏名または名称:手形金を支払う人
- 支払委託文句:支払人に支払いを委託する旨の記載
参考:あいち銀行「為替手形用法」
上記の記入がない場合は、手形が無効となるため注意が必要です。
特に「為替手形」という文言と支払委託文句の項目は、手形法によって定められた手形要件のため、必ず記載しなければいけません。
また、金額や満期日など、取引に関する具体的な情報は正確に記入し、振出人と支払人が明確に識別できるようにすることも重要です。手形取引の信用性と安全性を保つための基本とされているため、押さえておきましょう。
7.為替手形のメリット
本章では、為替手形を利用するメリットを紹介します。
7-1.入出金なしで買掛金の消し込みができる
為替手形のメリットは、振出人が現金や預金の入出金手続きを行うことなく、売掛金と買掛金を相殺できることです。
振出人は、自身が支払人に対してもつ売掛金を原資として、受取人に対する買掛金の支払いを委託します。為替手形における三者間取引により、振出人は手形を振り出すだけで、
代金回収と支払いの両方を同時に完了できます。
経理処理の手間や資金移動コストの削減が可能といえるでしょう。
7-2.ほぼ確実に支払われる
為替手形は、支払いの強制力が非常に高く、ほぼ確実に代金を回収できるというメリットもあります。為替手形による支払いが遅延すると不渡りとなり、支払人(または振出人)の信用の失墜に直結するため、高い確率で支払いが実行されます。
特に自己受為替手形の場合は、債権をもつ立場から手形を振り出すため、債権回収の手段としての役割が強いほか、支払人が拒否するケースもほとんどありません。
7-3.支払日までに余裕がある
支払日までに余裕がある点も、為替手形を利用するメリットの一つです。支払期日は、振出日から数カ月後に設定されることが多く、支払いまでに時間的な猶予が生まれます。
手元資金をすぐに用意する必要がなくなり、猶予期間を資金繰りに活用できます。売上代金が入金されてから支払いに充てるなど、計画的な資金管理を行ううえで大きな利点となるでしょう。
7-4.支払利息がない
為替手形による支払いは、銀行などからの借入金の返済とは異なり、利息が発生しません。金銭の貸し借りの際に生じる利息コストを負担することなく、支払期日までの猶予を得られるというメリットも得られます。
8.為替手形のデメリット
為替手形はメリットが多い一方、デメリットも存在します。デメリットを理解したうえで、うまく活用することが重要です。
8-1.不渡手形を出すと信用が落ちる
為替手形には、支払いの確実性が高い反面、不渡手形を出すことによるリスクが大きいというデメリットがあります。不渡手形とは、支払期日に手形が銀行に呈示された際、支払人の不払いや当座預金口座の残高不足などにより、手形代金の引き落としができない状態です。
企業が不渡りを出すと、金融機関から取引停止処分を受ける可能性があります。取引停止処分は、1回目の不渡りから6カ月以内に2回目の不渡りを出した場合に適用されます。
一度取引停止処分を受けると、金融機関からの融資が困難になり、取引先の信用も大きく低下するため、細心の注意が必要です。
8-2.支払人の口座にお金がないと現金化できない
為替手形は有価証券の一種ですが、最終的な決済は支払人の当座預金口座からの引き落としに依存します。支払人の口座に残高がない場合は、手形に記載された満期日であっても現金を受け取ることができません。
為替手形は、確実性が高い支払方法ではあるものの、確実に現金化できる保証はないため、受取人は支払人の信用力を慎重に見極めることが重要です。
8-3.利子と手数料が発生することがある
為替手形は、満期日(受取日)が来る前に、銀行などで手形を売却して現金化することが可能です。ただし、早期現金化を行う場合、満期日までの利息相当額と手数料が発生します。
手形を売却する受取人にとっては、即座に資金を得られるという魅力がある一方、割引料や手数料のコストが発生するデメリットもあるため注意が必要です。
9.為替手形の利用で注意したいポイント
本章では、為替手形の利用で注意したいポイントを紹介します。正しく使えるよう、理解を深めましょう。
9-1.印紙代の負担
為替手形は、印紙税法上の課税文書にあたるため、印紙税を納める必要があります。
別表第一の課税物件の欄に掲げる文書のうち、第五条の規定により印紙税を課さないものとされる文書以外の文書(以下「課税文書」という。)の作成者は、その作成した課税文書につき、印紙税を納める義務がある。 |
|---|
参考:e-Gov法令検索「印紙税法 第三条」
印紙代は、手形を作成した振出人が負担し、手形に収入印紙を貼付して納税するのが一般的です。しかし、為替手形は振出人・支払人・受取人の三者が関わるため、手形によっては振出人の署名がない場合もあります。
上記のような場合は、印紙税の負担者が不明確になるリスクがあるため、事前の取り決めが重要です。納税義務者を確認したうえで、契約書や請求書などに負担者を明記しましょう。
参考:国税庁「No.7103 約束手形又は為替手形」
9-2.裏書の扱い
為替手形は、裏書をすることで第三者への譲渡が可能です。裏書とは、譲渡先の氏名や住所などを記入したうえで署名・捺印する行為を指し、譲渡した者を裏書人と呼びます。
ただし、裏書をすると手形が不渡りになった場合、譲渡人に償還義務(遡及義務)が発生するため注意が必要です。決済手段として手形を利用する場合は、支払人の信用力だけでなく、裏書人にも支払能力があるかを確認しておきましょう。
また、裏書人においても、手形を受け取る際は支払人が支払不能になった場合のリスクを負うことを理解する必要があります。
10.為替手形の仕訳例
本章では、為替手形の仕訳例を差出人・受取人・支払人ごとに詳しく解説します。
10-1.振出人
振出人が為替手形の発行時に行う仕訳は以下のとおりです。
- 支払人に対する売掛金を相殺
- 受取人への買掛金の支払いとして処理
具体的には、売掛金と買掛金の両方を減少させます。現金の移動なしで、2つの債権債務を相殺決済する仕訳を行いましょう。
10-2.受取人
受取人は、為替手形を受け取る際と代金を受け取る際に、それぞれ仕訳を行います。
- 手形の受取時:受取手形(資産)を計上し、売掛金を相殺
- 代金の受取時(満期日):当座預金や現金を計上し、受取手形を相殺
為替手形を受け取った時点では「受取手形」として処理し、満期日に現金または預金へ振り替える仕訳を行います。
10-3.支払人
支払人が仕訳を行うタイミングは、為替手形を引き受けた時と、代金を支払う時です。
- 手形の引き受け時:買掛金を相殺、別途支払手形を計上する
- 代金の支払い時(満期日):支払手形・当座預金や現金を相殺する
勘定科目は「支払手形」を使用しましょう。
11.為替手形の特徴を理解して正しく利用しよう
為替手形は、振出人・支払人・受取人の三者が関わる手形です。遠方での決済を簡略化できたり、高い確率で支払いが完了したりするなど、さまざまなメリットがあります。また、満期日まで猶予があることで、資金調達にも役立てられます。
ただし、為替手形には、不渡り時のリスクが大きい・早期現金化をする際に手数料が発生するなどのデメリットもあるため注意が必要です。
決済方法に為替手形を用いる際は、支払人の支払能力を含め、慎重に検討・見極めることが重要です。